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理想的なインプラントの上部構造を目指して Visions Towards the Ideal Implant Superstructure

座長 細川隆司

九州歯科大学口腔機能再建学講座 口腔再建リハビリテーション学分野 Chairperson

Ryuji Hosokawa

Div. of Oral Reconstruction and Rehabilitation Dept. of Oral Functional Reconstruction Kyushu Dental College

インプラントの上部構造の設計や材料選択につ いては,残念ながら科学的根拠に基づいた臨床判 断の指針は存在しない.近年,臨床イノベーショ

ンとしてCAD/CAMやジルコニア系セラミックス

の適用が急速に普及しているが,装着後長期にわ たる変化への対応を考えると疑問も残る.そこで,

本セッションでは,臨床医,歯科理工学の研究者,

そして歯科技工士それぞれの立場から臨床上の問 題点を明らかにして頂くとともに,現時点で考え られる理想的な上部構造とはどのようなものかに ついて議論を重ねつつ,本学会として未来に向け ての研究や臨床の方向性を探ってみたい.

武田先生からは,インプラント補綴治療の経過 観察を通じて,インプラントによる補綴治療介入 の本質的な問題点は何かについて,具体的に提言 して頂く予定である.

木原敏裕先生からは,インプラント上部構造の 長期経過を踏まえて,トラブルを回避するために 考慮すべきファクターやリスク回避の臨床判断に ついてご教示頂く予定である.

桜井保幸先生からは,デジタル技工とメタルフ リーによる上部構造作製についてラボサイドから みた切り口で,イノベーティブな側面と,あまり 語られることのない問題点やトラブルについても 御教示頂き議論を深めて行ければと思っている.

最後に,伴 清治先生からは,ジルコニアセラ ミックスの材料学的特性を踏まえて,最近流行の フルカンタージルコニアの問題点や対合歯の摩耗 などについても材料工学的側面から論じて頂き,

臨床医に対するメッセージを頂きたいと考えてい る.最後に,武田先生や木原先生,桜井先生から 指摘された上部構造の臨床的問題点をどう解決し て行くか,伴先生を交えて総合討論させて頂き,

未来に向けての提言ができればと考えている.

トピックス

●インプラント上部構造

●長期予後

●臨床イノベーション

理想的なインプラント上部構造を目指して 武田孝之

東京支部

Toward the ideal implant superstructure Takayuki Takeda

Tokyo Branch

インプラント上部構造に関する最近のトピック

CAD/CAMに衆目が集まっている。確かに様々

な改良点はあるものの、未だに長期経過を観察し た報告は十分とは言えない。

一方、おぼろげにインプラントの長期性を十年 一単位と考えていた時代とは異なり、二十年以上 経過する症例を数多く目の当たりにする中で、補 綴完了時には特に注意しなかったことが次々と起 こってきている。

合併症と言えない日常的な変化だけを見ても、

天然歯の移動によるコンタクトポイントの喪失、

切端線の差などの歯列内における天然歯との不調 和など。そして、力がかかる咬合面は咬耗、磨耗、

破損など天然歯でも経験してきたことが当然のご とくインプラントでも起こってくる。この点にお いても私たちは天然歯で経験してきたことを踏襲 し支持組織を守るために、特に力の負担の大きい 最後臼歯に対しては磨耗することを是として咬合 関係を構築してきた。しかし、自然提出しながら 咬頭嵌合位を維持する天然歯とインプラントを同 じ考え方で補綴してよいのかなどと言った単純な 疑問が今更ながらに噴出してくる。

また、インプラント適用患者の大半を占める年 齢層は高齢者が1/3、50歳以上で70%となり、

治療後短期間で全身的状況が大きく変化し、口腔 内に色濃くその影響がでてくる可能性が高い。

それゆえ、今後インプラント上部構造に求めら れる重要点は起こりうる変化に簡便に、そして、

確実に対応ができることである。

そこで、インプラント上部構造の設計、構造、

材質について経験に基づいた考え方を報告する。

トピックス

●インプラント上部構造

●長期経過

●構造と材質

ジルコニア製インプラント上部構造の研磨 仕上げと対合歯の摩耗について

伴 清治

愛知学院大学・歯学部・歯科理工学講座

Surface finishing of zirconia superstructures of implant and wear of antagonist

Seiji Ban

Department of Dental Materials Science, School of Dentistry, Aichi Gakuin University

インプラント上部構造として各種セラミックス が臨床応用されている。機械的強さという点では、

ジルコニアの優位性に疑問の余地はない。さらに、

透明性を改良したジルコニアが市販されてきてお り、「フルカンター」と呼ばれ、ジルコニア表面に 前装陶材を被覆せずに、ジルコニア本体表面が口 腔内に露出する上部構造が普及しつつある。これ に伴い対合歯の摩耗を危惧する問い合わせを最近 多く受ける。

ジルコニアに対する摩耗の研究は、整形外科領 域において20年以上前から行われており、アルミ ナあるいは金属製骨頭よりもジルコニア製骨頭の 方が有意に高密度ポリエチレンカップの摩耗が小 さいと結論づけられている。ジルコニアが硬いと いう理由で、軟らかいポリエチレンが良く摩耗す るという事実はないと確証されている。一方、歯 科領域におけるジルコニア製歯冠修復物と対合歯 の摩耗についての結論は一致していない。しかし、

年代別に詳細を検討すると、ある傾向が導かれる。

すなわち、1990年代前半の発表によるとジルコニ アに対合するエナメル質の摩耗は、金合金、コン ポジットレジン、リューサイト含有ガラスと対合 する場合よりも多いと報告されている。しかし、

最近の報告によると、鏡面研磨したジルコニアに 対合するエナメル質は、陶材を被覆した面に対合 している場合よりも摩耗が少ないという報告が多 くなっている。これは、表面の鏡面研磨の程度に、

対合するエナメル質の摩耗が大きく影響されるこ とを示唆している。著者らは、ジルコニア表面の 鏡面研磨方法に関する比較研究を行っており、そ の結果を踏まえ、ジルコニアの研磨仕上げと対合 歯の摩耗について説明する。さらに、ジルコニア 特有の性質についても言及する。

トピックス

●ジルコニア製上部構造

●研磨仕上げ

●対合歯の摩耗

長期症例における上部構造の変化 木原敏裕

奈良県

Change of the superstructure in the long term case Toshihiro Kihara

Nara Prefecture

インプラントを臨床に取り入れて 23 年が経過 し、この間に様々なフィクスチャーや補綴物を用 いてきた。長年変化のない補綴物もあれば次々と 壊れていく補綴物にも遭遇するがそれらはどのよ うな理由で違いが出てくるのであろうか? 単純 に大臼歯部にポーセレンを用いれば割れる、とい う単純な問題ではなくどのような時にどのような 上部構造の補綴物を用いれば術後に安定した状態 が得られるのか、ということを考えなければなら ない。

大きな項目として、・骨格の問題、・歯列の問 題、・骨の問題、・歯の問題、などがあるが大きな 視野から順に小さな視野を見るべきであり一本の 歯の治療が上手くいったかどうかではなく、根本 的な問題点がどこにあるのかを考慮するべきであ る。

*骨格の問題として、Ⅰ級関係の骨格を持ってい れば大きな問題はないが日本人においてはⅡ級 関係の患者も多く、またⅢ級関係においても上 部構造にどのような影響があるのかを考えなけ ればならない。

*歯列の問題として、少数歯の欠損の場合で歯列 不正があると基本的には矯正治療が必要である が現実的には一本の欠損に対して全顎の矯正を 受け入れる患者が少ないのも事実である。

*骨の問題として、高さ、幅、角度など様々な状 況の中でフィクスチャーと上部構造との角度が 適正でないような場合歯根膜を持つ天然歯とは 何が違うのかということも考慮すべきである。

*歯の問題として、欠損部のインプラントよりも 残存している無随歯に対する配慮が必要である。

特に咬合力の強い患者の場合は将来の歯根破折 にどのように対応するかが重要である。

補綴物が天然歯でない限り理想的な上部構造は あり得ないであろう。だからこそ我々歯科医師は 出来るだけ個々の患者に合った永続性のある補綴 物を製作しなくてはならない。

トピックス

●外的要因

●内的要因

●材料の問題

インプラント上部構造に求められる要件 桜井保幸

有限会社 ファイン

The requirements for implant superstructures Yasuyuki Sakurai

Fine Co.,Inc.

近年、インプラント上部構造への審美性や機能 性に対する要求も高まりそれらを満足する治療ゴ ールを獲得するためにラボサイドには、診査・診 断や治療計画時に必要とされる診断用ワックスア ップの重要性が問われ、それを元にした外科用ス テントを作製しより理想的なインプラント埋入位 置とインプラント上部構造の関係が構築出来るよ うになってきたと思われる。しかし、長期経過を 観察すると天然歯補綴と全く違う状況のため様々 な問題がサイドにも報告されている。特に上部構 造の変化には目を疑う経験も有るのではないだろ うか。現在、CAD/CAMを利用してのアバットメ ントやフレームの作製が可能となり、以前に比べ てより高品質で適合の良い補綴物の作製が出来る ようになってきた。

また、セラミックスやハイブリッドレジンに加 えジルコニアを使った上部構造の作製も臨床では 多く見受けられる。

今回は、より無理なく多数歯インプラント上部 構造を作製するために必要なクリニックサイドと の情報共有の在り方、インプラント埋入位置と上 部構造の関係、リスクを考慮した上部構造の形態 と材質についてラボサイドからの考えを報告しま す。

トピックス

●ラボサイドに必要な情報

●埋入位置と上部構造の関係

●マテリアルセレクション