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TE11-like mode 共振 TE10-like mode 共振
Fig. 3-14 Calculation result of frequency characteristic S21 parameter using an equivalent circuit model.
次に、C成分とL成分に具体的な値を入れて、Fig. 3-13 の等価回路のS21パラメーターを 回路シミュレーターにより計算した。 S21 とは、等価回路へ入力した電力と等価回路から出 力される電力の比を示し、S21 = 1は電力透過率が100 [%]、S21 = 0は電力透過率が0 [%]
を意味する。 Fig. 3-14 に結果を示す。 左図にディップ点のTE11-like mode共振の等価回 路、右図に通過帯ピーク点のTE10-like mode共振の等価回路の計算結果を示した。 横軸 は周波数[THz]、縦軸は S21(無次元)とした。 計算に用いた C 成分と L 成分の値は、
TE11-like mode共振で、C1 = C2 = 0.89 [fF]、C3 = C4 = 0.70 [fF]、L1 = L2 = L3 = L4 = 16.4 [pH]、
TE10-like mode共振で、C1 = 0.93 [fF]、L1 = L2 = 28.1 [pH] とした。 なお、C成分の値は、
前節の電磁界計算結果の電界[V m-1]と共振エネルギー[J]から、L 成分の値は、電流[A m-1]から求めた。 これらの結果から、Fig. 3-10 のTE11-like mode共振とTE10-like mode 共振の電磁波透過波形が、Fig. 3-13 の等価回路により再現できることがわかった。 また、
Fig. 3-14 のディップ点の周波数は0.977 [THz]、通過帯ピーク点は0.985 [THz]となり、Fig.
3-10 の電磁波透過特性から得られたそれら周波数と概ね一致することがわかった。
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Fig. 3-15 Calculation result of transmission spactra of concave hole MMD when thickness T is changed.
3-3-5. MMD の厚みの影響
2章の 2-2-1節に示した方形空洞共振器には、X、Y、Z方向のモードナンバーがあるよう
に、3方向の共振が存在する。 対して、MMD の孔は、厚み方向(Z方向)に金属壁が存在 せず、開口になっているため、方形空洞共振器のように、Z方向の共振が存在するか不明で
あった122-138。 本節では、MMDのZ方向の共振の存在を明らかにした。
凹形孔MMDをFig. 3-7 の向きでXY面に配置し、Fig. 3-3 の計算モデルを用い、Y方 向の直線偏波Ey を +Z軸方向に垂直入射し、MMDの厚みT [μm]を、T = 20、60、130とし た時の電磁波透過特性を計算した。 Fig. 3-15 に結果を示す。 横軸は周波数[THz]、縦軸 は透過率[%]とした。 青色でT = 20、緑色でT = 60、赤色でT = 130の結果を示した。 これ らの結果から、図中の黒点線円内のこれまで議論してきた第一のディップ点以外に、厚み T が大きくなると、紫点線円内の第二のディップ点が生じることがわかった。
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Fig. 3-16 Comparison of resonance electric fields at two dip points frequencies of concave hole MMD with the thickness of 130[μm].
X
Y Y
X Z
(Z=0)
(Y=0)
(X=0)
Electric field 1ST Dip Point
( at 1.004THz )
Z
X
Y Y Z
X Z
(Z=60.3)
(Y=0)
(X=0)
Electric field 2ND Dip Point
( at 1.073THz )
続いて、T = 130で得られた2つのディップ点について、共振電磁界の計算を行った。 Fig.
3-16に、第一のディップ点 1.004 [THz] と第二のディップ点1.073 [THz] における電界強度 分布の計算結果を示す。 第一のディップ点では、Z = 0 [μm] のXY面、Y = 0 [μm] のZX 面、X = 0 [μm] のYZ面、第二のディップ点では、Z = 60.3 [μm] のXY面、Y = 0 [μm] の ZX面、X = 0 [μm] のYZ面の結果を示した。 カラースケールは、Fig. 3-11と同じスケール を用いた。 また、主要な位置における電界の向きを白矢印で示した。 この結果から、第一 のディップ点では、前節までと同様にTE11-like mode共振が生じていることがわかった。 ま た、第二のディップ点では、Z = 0 [μm] 付近の電界がゼロとなり、+Z側の電界の向きと -Z 側の電界の向きが反転することがわかった。
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Fig.3-17 Electric field intensity distribution in XY plane of Z = 0 at dip point frequency of concave hole MMD.
X Y
3-3-6. 隣接する孔間の共振電磁界解析
先行研究では、MMD の異常透過現象 27-28の原理として、疑似表面プラズモン 78-83 を用 いた説明がなされている。 本節では、本研究と先行研究の説明との整合性を示すため、
MMDにおける隣接孔間の共振電磁界の計算結果を示した。
計算では、隣接する孔間の共振電磁界をわかりやすくするため、Fig. 3-3 の計算モデル の一部を変更し、凹形孔MMDの単位格子を3×3個配置した構造を新たな単位にして計算 を行った。 Fig. 3-17 に、ディップ点におけるZ = 0 [μm] のXY面の電界強度分布の計算 結果を示す。 図中の6本の白点線の位置、X = 0、80、130 [μm] のYZ面、Y = 0、80、130
[μm] のZX面の電磁界分布により、隣接孔間の共振電磁界を調べた。 Fig. 3-18に、これ
ら 6 面の電磁界強度分布の計算結果を示す。 隣接孔間に電磁界が生じている図について は、電界と磁界の向きを黒矢印で示した。 この
結果から、電界はX = 0のYZ面とY = 0のZX 面で隣接孔間にまたがる電界が生じ、その電界 は孔を仕切る金属(図中の白色部分)表面に対 して垂直に流入出する向きで生じていることが わかった。 また、磁界はX = 80のYZ面とY = 80のZX面で隣接孔間にまたがる磁界が生じ、
その磁界は孔を仕切る金属部分を周回する向 きで生じていることがわかった。
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Electric field Magnetic field
X=0
X=80
X=130
Electric field Magnetic field
Y=0
Y=80
Y=130
Fig. 3-18 Magnitude and direction of electromagnetic fields of ZX plane and YZ plane at X = 0, 80, 130 [μm], Y = 0, 80, 130 [μm].
-20 -10 0
[dB]
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3-4. 考察
3-4-1. ディップ波形の物理的意味
先行研究により、MMD の電磁波透過波形の通過帯中にあらわれるディップ波形は、電磁 波をMMD主面に対して斜めに入射した場合や集光して入射した場合に生じ、MMD主面に 対して垂直に入射した場合は生じないことが報告されている122-138。 Fig. 3-4 の実験結果と
Fig. 3-5 の計算結果から、これらの報告が再現することがわかった。 ディップ波形の物理
機構を明らかにするため、Fig. 3-5 の計算結果をもとに共振電磁界解析を行った。 Fig. 3-6 から、斜入射時のディップ点では方形空洞共振器の共振形態に類似するTE11-like mode共 振が生じていることが明らかになった。 また、垂直入射時の通過帯ピーク点では TE10-like mode 共振が生じていることが明らかになった。 これら 2 つの共振は、方形空洞共振器と MMD の構造の類似性から、MMD 構造に由来する固有共振モードと考えられる。 以上の 結果から、MMDの電磁波透過波形の通過帯中にあらわれるディップ波形は、これら2つの 固有共 振モ ード が 電 磁波に より 同時 に励 起さ れ 、周 波数 的に 近接し て存在 す るこ と
(TE10-like mode共振が作る通過帯にディップ波形を形成するTE11-like mode共振が重な ること)によって生じていることが明らかになった。
3-4-2. 垂直入射でディップ波形が得られない理由
Fig. 3-6 のTE11-like mode共振の電界強度分布から、垂直入射でディップ波形が得られ ない理由は、垂直入射した電磁波と TE11-like mode 共振モード間の結合が生じないためと
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いう仮説を立てた。 2章の2-2-2節のアンテナ動作で説明したように、電磁波の送受はダイ ポールの時間振動によって実現される。 これは、アンテナに限らず、一般的な物質におけ る電磁波の吸収(受信)と放射(送信)にも当てはめることができる。 例えば、FT-IR で有機 分子の吸光スペクトルが得られるのは、分子が持つ固有振動に応じて分子が持つダイポー ルが時間振動するからであり、これが電磁波を吸収(受信)するからである。 この吸収を実 現するためには、電磁波の周波数と分子が持つ固有振動数(ダイポールの振動数)を一致 させ、かつ、電磁波の電場の振動方向とダイポールの振動方向を一致させる(少なくとも電 磁波の電場の振動方向の成分を有する)ことで、共振を生じさせる必要がある。 MMD の 固有振動モードでもダイポールの時間振動を伴えば、電磁波との結合(吸収と放射)は可能 となる。 Fig. 3-12 の両固有共振モードの電界の向きからわかるように、通過帯ピーク点の
TE10-like mode 共振では、共振電界が Y 方向で振動するためダイポールの振動方向も Y
方向となる。 故に、TE10-like mode共振の共振周波数と一致する周波数のY方向の直線 偏波の電磁波を垂直入射すれば、電磁波とTE10-like mode共振の結合が実現される。 一 方、ディップ点のTE11-like mode共振は、Fig. 3-12 から、MMDが凹形孔でなく正方形孔で あった場合、XY面内でみた電界成分はX軸についてもY軸についても対称となり、XY面 内の合成電界はどのような時間でも常にゼロになり、ダイポールの時間振動も常にゼロにな ると考えることができる。 電磁波を垂直入射した場合、電磁波の電場方向は XY 面内の方 向となるため、XY 面内のダイポールの時間振動がゼロの正方形孔 MMD では電磁波との 結合が生じないと考えた。 この仮説を証明するため、仮説に基づいて垂直入射でもディッ プ波形が得られるMMDとして、Fig. 3-7 に示した凹形孔MMDと台形孔MMDの2種類を
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考案した。 その意図するところは、孔形状を凹形、台形にすることで、Y 方向の対称性を崩 すことにある。 そうすることで、Y方向の電界成分がゼロではなく有限で残り、結果ダイポー ルの Y 方向の時間振動が得られ、Y 方向の電場振動を有する電磁波であれば垂直入射し ても電磁波との結合が実現されると考えた。 Fig. 3-8 に示したように、実験と計算の両方 から、垂直入射により、凹形孔 MMD と台形孔 MMD でディップ波形が得られ、仮説が正し いことが明らかになった。
3-4-3. MMD を用いた物質定量測定法の測定原理
MMD を用いた物質の定量測定の測定原理を明らかにするため、高周波電気理論で用い られる等価回路により現象のモデル化を行った。 Fig. 3-11 とFig. 3-12 の結果から、ディッ プ点のTE11-like mode共振と通過帯ピーク点のTE10-like mode共振の共振形態の詳細が 明らかになった。 それらの結果をもとに、Fig. 3-13 に示した両共振の等価回路を得た。
Fig. 3-14 に、等価回路のC成分とL成分に具体的な値を入れて等価回路のS21(電力透過
率)の周波数特性の計算結果を示した。 Fig. 3-14 から、これら等価回路により、Fig. 3-10 の MMD の電磁波透過特性と同様の電力透過波形が得られることがわかった。 以上の検 討から、Fig. 3-13 の等価回路により両共振をモデル化できることが明らかになった。 これ ら等価回路から、MMDを用いた物質定量測定法の測定原理は、以下のように示された。
Fig. 3-13 の等価回路は回路理論によって、Fig. 3-19 に示すC成分とL成分の並列共振 回路にまとめることができる。 図中のC*は、Fig. 3-13 の等価回路中のC成分の合成キャ パシタンス、L* は、L成分の合成インダクタンスに相当する。
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Fig. 3-19 Circuit summarizing
equivalent circuit of Fig. 3-13 using a circuit theory.
C
*L
**
2 *
1 C L
f Eq. 3-1
この並列共振回路の共振周波数f は、Eq. 3-1 になることが知られている。
Fig. 3-14 の回路計算で用いたC成分とL成分の値を用いてC* と L* を求め、Eq. 3-1 に より共振周波数 f を計算すると、TE11-like mode 共振の f が 0.9773 [THz]、TE10-like mode共振のf が0.9847 [THz]になり、Fig. 3-14 の結果とよく一致することがわかった。
MMD に物質が付着すると、共振空間の見掛け誘電率が増加する。(付着前は空気であ った空間が付着後は物質が存在することになり、見掛け誘電率が増加する。) それにより、
L*C*並列共振回路の合成キャパシタンス C* が増大する。 Eq. 3-1 から、C* が増大すると、
共振周波数 f は低下すると説明できる。 これらの仕組みが、MMD を用いた物質定量測 定法の測定原理を示している。 すなわち、付着する物質の量が増加するほど、見掛け誘電 率が増加し、C* が増大することから、f の低下量が大きくなるという定量関係が成り立つこと がわかる。