• 検索結果がありません。

結言

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 141-158)

7-1. 本研究の総括

MMD を用いた物質定量測定法における測定原理、及び、センサーとしての基本性能(感 度、定量性、直線性)を明らかにし、MMD を用いた物質の定量測定が実現可能であること を示すことが本研究の目的であった。

第 3 章では、MMD を用いた物質定量測定法の測定原理を明らかにした。 物質の定量 測定に用いるMMDのディップ波形は、TE11-like mode共振によって生じていることを明らか にした。 このTE11-like mode共振は、等価回路により、LC並列共振回路でモデル化でき、

その共振周波数 f がディップ点の周波数に対応していることを明らかにした。 そして、

MMD に物質が付着すると、共振空間の見掛け誘電率が増加し、等価回路の C 成分(キャ パシタンス成分)が増大し、共振周波数 f が低下することによって、物質の定量測定が実現 していることを明らかにした。 また、共振周波数 f の式から、物質付着による C 成分の増 加量 δ と共振周波数の変化量 ⊿f が比例することを示し、定量測定において直線性が あることを明らかにした。

第4章では、MMDを用いたタンパク質の定量測定が実現可能であることを明らかにした。

タンパク質をモデル化した仮想物質の付着によるディップ点の周波数変化の計算から、仮想 物質の質量[ng mm-2]とディップ点の周波数変化量[THz]が比例すること、感度[THz ng-1

mm2]とディップ点の周波数の二乗[THz2]が比例することを明らかにした。 また、Biotin と

- 141 -

Streptavidin の特異吸着を利用した実験から、MMD に吸着した Streptavidin の質量[ng mm-2]とディップ点の周波数変化量[THz]の関係、感度[THz ng-1 mm2]とディップ点の周波数 の二乗[THz2]の関係が、計算と同様の傾向になることを明らかにした。 これら計算と実験 の結果から、定量測定の基本性能である、直線性、定量性、感度が示され、MMD を用いた タンパク質の定量測定は実現可能であることが明らかになった。

第5 章では、MMDを用いたタンパク質の定量測定において、前章の Streptavidinとは異 なる3種類のタンパク質を用いた実験により、タンパク質の種類が定量測定に及ぼす影響を 明らかにした。 Avidin、BSA、Lysozymeの3種類のタンパク質をMMDに非特異的に吸着 させ、ディップ点の周波数変化量を測定した結果、感度[THz ng-1 mm2]がディップ点の周波 数の二乗[THz2]に比例すること、その比例係数はタンパク質の種類によらず概ね同じになる ことを明らかにした。 また、その関係は、タンパク質自身が持つ吸光特性に殆ど影響を受 けないことを明らかにした。 これらの結果から、MMD を用いたタンパク質の定量測定は、

タンパク質の種類に関係なく、同一の定量関係(検量線、質量換算式)で測定できることが 示唆された。 さらに、測定装置(測定誤差)の制約によって生じる測定限界値を示し、実用 上で測定可能なタンパク質の吸着量の下限値を明らかにした。

第6章では、検出可能光領域の大きさをMMD構造で制御することにより、タンパク質より 大きな被測定物であっても、タンパク質と同様に検出できることを明らかにした。 MMD の 検出可能光領域は、ディップ点の周波数における電磁波の波長をλ0とすると、孔の内部、及 び、主面から外部に約 0.10λ0の空間になることを計算により明らかにした。 また、MMDの 周期 P で波長 λ0 が制御できることを実験により示し、検出可能光領域を MMD 構造で制

- 142 -

御できることを明らかにした。 さらに、その検出可能光領域に収まるサイズの平均粒径 100 [nm] のシリカ粒子とポリスチレン粒子を Biotin と Streptavidin の特異吸着を利用して MMD 表面へ吸着させた実験結果から、粒子数モル溶液濃度[mol L-1]とディップ点の周波 数変化量[THz]の関係がLangmuirの式で近似される濃度平衡曲線となり、特異吸着を利用 したタンパク質の定量測定で得られる結果と同様になることが明らかになった。 これらの結 果から、タンパク質より大きな被測定物であっても、検出可能光領域を MMD 構造で制御し て被測定物のサイズに応じた検出可能光領域を設定することで、タンパク質と同様に定量 測定できる可能性が高いことが明らかになった。

以上の研究から、MMD を用いた物質の定量測定は実現可能と結論した。 定量測定の 測定原理が、等価回路の C 成分の増加による共振周波数の低下で説明されることから、被 測定物は検出可能光領域に収まるサイズのものであればどのような物質でも定量測定が可 能と考えられる。 本研究では、主に、タンパク質の定量測定を議論したが、今後は、ウィル ス、細菌、細胞等のより大きなサイズの生体物質の定量測定について明らかにしていく予定 である。

- 143 -

7-2. 謝辞

博多のホテルで博士学位論文(D 論)を書いている時、鏡に映った自分の T シャツを見て、

こんな言葉がプリントされているのに気がつきました。 「世に生を得るは事を為すにあり。」

う~ん、なるほど。 それまでは、単なるシャツの柄だったので、突然、目の前にあらわれた 有難い言葉(坂本竜馬の言葉だそうです)に、少し驚いてしまいました。 56 歳のおっちゃん が何故博士号を目指すのか? D 論の中身よりも、寧ろ、読者の興味は、そちらの方にある のでは?と考えていたところだったので、これも何かの縁かなと思い、その有難い言葉を使 わせて頂いて、動機などを書いてみることしました。

正真正銘、嘘偽りのない動機をお話すると、D論は国会図書館に残るという話を先生から お聞きし、博士号を目指してみようという気になりました。 で、その心は? 自分は、良い父 親ではなかった、子供達には申し訳ないことをしたなあと常々思っていて、これを機に、せめ てもの罪滅ぼしに、子供達にメッセージのようなものが残せたらと考えたからです。 なので、

少しの間、横道にそれますが、本論の隠された主目的の達成にお付き合いください。

(子供達へ) 竜馬の言葉は、世の中のために何かどえらい事をしろと言っているように聞 こえるかもしれませんが、お父さんはそうは思いません。 皆が皆、偉い人になれる訳はない のですから。 だから、お父さんが博士号をとろうとしていること、別に、偉いことでもなんでも ないと考えています。 お父さんの前にそれがあって、面白そうだったので為しているだけ。

毎週、君達のお弁当作りをしていたのとあまり変わらない感覚です。 むしろ、竜馬の言葉は、

良く生きるための秘訣を教えてくれているような気がします。 結局、為すべき事は何でもよく

- 144 -

て、結果も成功でも失敗でもどちらでもよくて、大切なのは、それを自分で選んで為すことな のではないかと思います。 お父さんは、良く生きるとは、納得して生きることだろうとずっと 考えていました。 生きていれば、良いことよりも悪いことの方が多いなあというのが実感で すが、さりとて立ち止まるわけにもいかないので、良いも悪いも淡々とこなしていく他はない。

そこで、必要になるのが全てを納得すること、また、納得するために必要になるのが、自分で 選んで為すことになるのではないかと思います。 自分自身で自分の生き方に納得できてい れば、もうそれで十分良く生きることができると思います。 だから、君達は、君達の前にある ことを為せばそれでよいと思います。 また、それで良く生きることができればと願っておりま す。 竜馬の別の言葉に、「人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある。」

という言葉もあります。 挫折、失敗があってもトライした自分を肯定し、納得しなさい。 そう すれば前に進めるし、前に進めば、次の道は必ずあるから。 がんばってね。 (父より)

ずいぶんと横道に逸れてしまいましたが、本論の主目的も無事達成いたしましたので、以 下に、お世話になった方々への謝辞を述べさせていただきます。

指導教員である九州大学大学院工学研究院の三浦佳子教授へ。 初めて、先生とお会 いしたのは、先生がまだ北陸先端大におられる頃で、第一印象は...かなり「ビビり」ながら お話伺ったという記憶があります。(正直、めっちゃ怖かったです。) それから 10 年近く、仕 事をご一緒させて頂いておりますが、第一印象は劇的に改善していることをお伝えしておき ます。 また、自分が今の仕事を続けてこられたのも先生のお陰だと感謝いたしております。

今回の D論の指導では、大変ご迷惑をおかけしました。 論文って何?、英語苦手やねん、

と世迷言を言うポンコツおやじを相手に、初歩の初歩から指導して頂いたこと、大変感謝い

- 145 -

たしております。 何もお返しは出来ませんが、あと少し(定年まであと3年半!)はご一緒で きると思いますので、その中で、喜んで頂けるような成果が出せるよう努力する所存です。

論文の共著者である福岡大学工学部の瀬戸弘一助教と㈱村田製作所の近藤孝志博士 へ。 今回、研究成果をD論としてまとめることが出来たのは、お二人がMMD研究をリード してきて頂いたお陰だと感謝いたしております。 瀬戸先生は、永らく MMD を用いたタンパ ク質の定量測定に取り組んでこられ、その成果があればこそ、今回の研究に取り組むことが 出来たと大変感謝いたしております。 また、近藤博士は、社内外において MMD 研究を継 続させ盛り上げるために大変苦労されたこと、深い学識を総動員してMMD研究を今日まで 導いてこられたこと、そして、今回の D 論の査読では原稿を赤ペンだらけにしてくれたこと、

大変感謝いたしております。

MMD に関する研究で一緒にお仕事させて頂いた、長浜バイオ大学バイオサイエンス学 科の長谷川慎教授、京都大学大学院農学研究科の小川雄一准教授、鈴木哲仁助教、大阪 市立大学大学院工学研究科の菜嶋茂喜講師へ。 皆様との活発な議論があったからこそ、

今回の研究に結び付いたと感謝いたしております。 長谷川先生には、バイオ関係のほぼ 全てをご指導いただき大変感謝いたしております。 小川先生、鈴木先生には、MMD 研究 の第一人者として貴重なご指導をいただき大変感謝いたしております。 菜嶋先生には、

MMDの物理機構に関して先端的なご指導をいただき大変感謝いたしております。

最後に、本研究を支えてくれた沢山の人たちへ。 皆様の支えがあればこそ、研究を続け てこられました。 多分、自分一人では、何も出来なかったと思います。 全て、皆様のお陰 だと考えております。 本当に、ありがとうございました。

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 141-158)