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検出可能光領域の制御によるサブ μm オーダーの被測定物の測定

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 122-141)

6-1. 目的

前章までは、MMD を用いたタンパク質の定量測定に関する研究結果を示してきた。 し かし、MMD で測定できる被測定物はタンパク質に限定されるわけではなく、様々なサイズ の被測定物の測定を可能にする122,123,132,139。 これは、マイクロ波域から可視域の様々な周 波数で共振状態が作り出せるという MMD の特徴による。 この特徴を物質定量測定法に 応用すれば、様々なサイズの被測定物に対して、そのサイズに適した共振電磁界空間(検 出可能光領域)を作り出すことが可能であることを意味している。 これは、検出可能光領域 がセンサー表面から100 [nm] 以下と微小で、被測定物のサイズがタンパク質等の分子レベ ルに制限されるSPRセンサー113-121では実現できない利点と言える。

しかしながら、先行研究では被測定物としてタンパク質を用いた報告が多く、検出可能光 領域を MMD 構造により制御することで、タンパク質より大きな被測定物であってもタンパク 質と同様に検出できるというMMDの利点に関する議論が不十分であった122-138

本章では、電磁界シミュレーションにより、MMD 構造と検出可能光領域の関係を明らか にした154。 また、より大きな被測定物のモデルとして、粒径100 [nm] のシリカやポリスチレ ンの球状粒子を用いた実験系により、MMD の検出可能光領域を制御することで、タンパク 質より大きな被測定物であってもタンパク質と同様に検出できることを明らかにした154

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6-2. 実験方法

6-2-1. 実験試料

2章の2-1-2節に示した製造方法で、金属薄膜に正方形の貫通穴を正方格子状に周期配

置した MMD を作製した。 2 章の 2-1-4 節に示した設計式により、電磁波通過帯の周波数 が100THz付近になるように設計し、周期Pを2.6 [μm]、孔の1辺の長さDを1.9 [μm]、厚 みTを0.8 [μm] とした。 得られたNi製MMDに対し、Auの無電解メッキを行い、MMD全 表面が数十nmのAu層で覆われたMMDを作製し、これを実験で用いた。

6-2-2. モデル粒子の MMD への吸着操作

タンパク質より大きな被測定物のモデルとして、シリカ球状粒子とポリスチレン球状粒子を 用いた。 MMDへの粒子の吸着には、BiotinとStreptavidinの特異吸着を利用した。

始めに、Au表面を有するMMDに対して、Au-チオール結合を利用して、Biotin分子の固 定化を行った。 濃度0.5 [mg mL-1] のHS-(CH2)11-NH-CO-Biotin (ProChimia社、FT 005)

のエタノール溶液にMMD を室温で16 時間浸漬した。 次に、Streptavidinで表面修飾され た平均粒径100 [nm] のシリカ球状粒子(Micromod社、43-19-102)とポリスチレン球状粒子

(Micromod 社、01-19-102)を用意し、Biotin を固定した MMD に対し、これら粒子の吸着反 応を行った。 吸着反応は、所望の粒子質量濃度[mg mL-1]に調整した粒子のPBS溶液を用 いて、Biotinを固定化したMMDをそれら溶液に浸漬して、室温で16時間揺動するという手 順で行った。 MMD に対する粒子の特異吸着性を調べた実験では、Biotin を固定化した

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MMD と固定化していない MMD を濃度 2.5 [mg mL-1] のシリカ粒子溶液と濃度 1.0 [mg mL-1] のポリスチレン粒子溶液に浸漬して吸着反応を行った。 また、MMD への粒子吸着 量の粒子溶液濃度依存性を調べるための実験では、濃度 0.025、0.25、2.5 [mg mL-1] のシ リカ粒子溶液と濃度0.010、0.10、1.0 [mg mL-1] のポリスチレン粒子溶液を用いて吸着反応 を行った。 なお、実験結果は、粒子を球と仮定して体積を求め、シリカの密度 2.2 [g cm-3] とポリスチレンの密度1.05 [g cm-3] を用いて1粒子の質量を求め、粒子質量濃度[mg mL-1] を粒子数モル濃度[mol L-1]に換算したものを使用した。

6-2-3. 電磁波透過特性の評価方法

MMDの電磁波透過特性の測定は、4章、5章と同様の方法で行い、粒子吸着によるディ ップ点の周波数変化量を求めた。 1 つの実験条件に対し、8 個の MMD の測定を行い、8 個の平均値を算出した。

6-2-4. 電磁界シミュレーションの条件

3章の3-2-3節の Fig. 3-3に示した計算モデルを用いて計算を行った。 単位格子には、

凹形孔MMD を用い、周期 P、孔寸法 D、厚み Tは実際の MMDと同じ寸法にした。 凹 形孔の突起部のXY面内寸法は 0.06×P [μm] 角とし、厚みは他のMMD 部と同じにした。

突起部は、Y軸上の +Y側の正方形孔の辺中心部に形成した。 また、導電率は、Auの導 電率σ=4.6×107 [ S m-1] を用いた。(導電率の計算処理は、2章の2-3-3節を参照。)

計算では、初めに、ディップ点の周波数における共振電磁界の空間的な広がりをエネルギ

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Fig. 6-1 Simulation model that divides the space in the vicinity of the MMD into minute spaces and calculates the energy density of the resonant electromagnetic field at the frequency of the dip point in each minute space.

Y

Z O

Periodic boundary

Periodic boundary MMD

Minute space 50nm

ー計算により求めた。 Fig. 6-1 に計算モデルを示す。 図中の緑線で示すように、Fig. 3-3 の計算モデルに対し、MMD 近傍の空間を原点から +Z 方向に幅 50 [nm] の微小空間で 分割し、各微小空間についてディップ点の周波数における共振電磁界のエネルギー[J]を計 算し、各微小空間の体積[m3]で割ることで、各微小空間におけるエネルギー密度[J m-3]を算 出し、各微小空間の Z 方向の位置(幅 50 [nm] の中央を位置とした)とエネルギー密度の 関係から、MMDのディップ点の周波数における共振電磁界の空間的な広がりを求めた。

MMDの検出可能光領域の空間的なサイズを求めるために、厚み t [nm] の板状の仮想

物質をMMDの +Z 側の主面に配置し、仮想物質の厚みtを変化させた時のMMDのディ

ップ点の周波数変化量を計算した。 Fig. 6-2 に計算モデルを示す。 茶色部の板状構造体 が仮想物質を示し、材料特性として、比誘電率εr = 3、誘電正接tanδ = 0を用いた。(誘電特 性の計算処理は、2章の2-3-4節を参照。)

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Fig. 6-2 Simulation model that calculated the frequency change of the dip point due to the thickness of the virtual material.

t

Virtual material

X Z Y

MMD

X

Y Z no.11

no.12 no.13

no.21 no.22

no.23

no.31 no.32

no.33

Fig. 6-3 A calculation model that calculated the influence of the suction position of the object to be measured.

粒子のMMD上の吸着位置の違いによるディップ点の周波数変化量の変化を明らかにす るために、Fig. 6-3 の計算モデルで計算を行った。 図は、MMD 単位格子(青色部)のコー ナー付近の拡大図(単位格子の 1/4 部分)を示した。 図の no.11~no.33 の位置(赤色部)

から1個所を選び、粒子のモデルとして1辺が100 [nm] の立方体の仮想物質(εr = 3、tanδ

= 0)を1個付着させ、仮想物質の付着によるディップ点の周波数変化量 ⊿f を計算した。

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Fig. 6-4 Transmission spectra of measurement and calculation results.

6-3. 結果

6-3-1. 電磁波透過特性の測定結果と計算結果の比較

電磁波透過特性について、Biotin固定化前のMMDの測定結果とFig. 3-3 の計算モデル による計算結果の比較を行った。 Fig. 6-4 に結果を示す。 横軸は周波数[THz]、縦軸は 透過率[%] とした。 実線は測定結果、点線は計算結果とした。 これらの結果から、測定と 計算共に、通過帯は100THz付近にあり、ディップ点の周波数が測定で97.4 [THz]、計算で 97.6 [THz] とよく一致していることがわかった。

6-3-2. 共振電磁界の空間的な広がりに関する計算結果

Fig. 3-3とFig. 6-1の計算モデルを用い、ディップ点の周波数における共振電磁界の空間

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Fig. 6-5 Calculated result of the energy density E

d

of the resonant electromagnetic field at the frequency of the dip point in the minute space at the position Z

m

.

的な広がりをエネルギー計算により求めた。 Fig. 6-5 に結果を示す。 横軸は微小空間の Z 方向の位置 Zm [nm]、縦軸はその位置における微小空間のエネルギー密度 Ed [arb.unit]

とした。 エネルギー密度は、全微小空間におけるエネルギー密度の最大値で規格化した。

また、エネルギー密度が最大値から 1/e になる縦軸の位置に赤点線を記入した。 この結 果から、MMD の主面付近( Zm = 400 )でエネルギー密度が最大になること、MMD の孔 内部( 0 ≦ Zm < 400 )はエネルギー密度が0.73~1.00と比較的大きいこと、MMDの外 部( Zm > 400 )は主面から離れるに従ってエネルギー密度が減衰し、Zm = 700付近で最 大値の 1/e になることがわかった。 エネルギー密度が最大値の 1/e 以上の空間を共振電 磁界空間と定義すると、MMD の共振電磁界空間は、孔の内部、及び、主面から外部に主 面垂直方向に約300 [nm] の距離( Zm = 700 )になることが明らかになった。

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Fig. 6-6 Calculated result of relation between thickness of the plate-shaped virtual substance and frequency change of dip point.

6-3-3. 仮想物質による周波数変化量の計算結果

Fig. 3-3とFig. 6-2の計算モデルを用い、MMD主面に配置した板状の仮想物質の厚みt

[nm] を変化させた時のディップ点の周波数変化量 ⊿f [THz] を計算した。 Fig. 6-6 に結 果を示す。 横軸は仮想物質の厚み t [nm]、縦軸は仮想物質によるディップ点の周波数変 化量 ⊿f [THz] とした。 プロット点で計算結果を示した。 また、0 ≦ t ≦ 300 の範囲内 にある 7 つのプロット点を対象とした 1次回帰式を実線で示した。 この結果から、1次回帰 式を算出した 0 ≦ t ≦ 300 の領域では、仮想物質の厚み t とディップ点の周波数変化量

⊿f が、比例することがわかった。( 相関係数R2 = 0.993 ) また、t > 300の領域では、仮 想物質の厚み t が大きくなるに従って、厚み t の変化に対するディップ点の周波数変化量

⊿fの変化量が小さくなり、前述の1次回帰式から乖離していくことがわかった。

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Table 6-1 Measurement results of frequency change amount of dip point due to adsorption of silica particles and polystyrene particles.

Name Sample ⊿f/THz

AVE. σ

① After immobilizing MMD immobilized with biotin in PBS -0.02 0.05

② Adsorption of silica particles to MMD before immobilizing biotin 0.23 0.16

③ Adsorption of silica particles on biotin-immobilized MMD 2.02 0.26

④ Adsorption of polystyrene particles to MMD before immobilizing biotin 0.15 0.18

⑤ Adsorption of polystyrene particles on biotin-immobilized MMD 1.27 0.31

6-3-4. MMD に対する粒子の特異吸着性の評価

Biotin 固定化前後の MMD について、濃度 2.5 [mg mL-1] のシリカ粒子溶液と濃度 1.0

[mg mL-1] のポリスチレン粒子溶液を用いて吸着反応を行い、反応前後のディップ点の周

波数変化量 ⊿f [THz] を測定した。 Table 6-1に結果を示す。 サンプル②と③はシリカ粒 子溶液に対する結果で、②がbiotin固定化前、③が固定化後のMMDに対する結果を示し た。 サンプル④と⑤はポリスチレン粒子溶液に対する結果で、④が biotin 固定化前、⑤が 固定化後の結果を示した。 サンプル①は、コントロールとして、biotin 固定化後の MMD を PBS溶液のみで処理した結果を示した。 各サンプル6個のMMDの測定を行い、平均値と 標準偏差を算出した。 これらの結果から、シリカ粒子、ポリスチレン粒子共に、biotin 固定 前のMMDの ⊿f は小さく、biotin固定化後のMMDの ⊿f は大きくなることがわかった。

また、固定化前に対する固定化後の ⊿f の倍率は、シリカ粒子で約 9 倍、ポリスチレン粒 子で約8倍になることがわかった。

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Fig. 6-7 Frequency change amount Δf of the dip point due to particle adsorption.

6-3-5. 粒子溶液濃度による周波数変化量の変化の測定結果

シリカ粒子とポリスチレン粒子の溶液濃度を変えて吸着反応を行うことで、粒子吸着によ るディップ点の周波数変化量の濃度依存性を調べた。 Fig. 6-7 に結果を示す。 横軸は粒 子数モル溶液濃度M [mol L-1]、縦軸はディップ点の周波数変化量 ⊿f [THz] とした。 各 条件について10個のMMDの測定を行い、その平均値と標準偏差を算出した。 青色のプ ロット点でシリカ粒子、赤色のプロット点でポリスチレン粒子の測定結果を示した。 解離定 数を KD [mol L-1]、飽和周波数変化量を ⊿fmax [THz] とした時のLangmuirの式によるフィ ッティング結果を、青線でシリカ粒子、赤線でポリスチレン粒子を示した。 これらの結果から、

シリカ粒子で、KD = 4×10-10 [mol L-1]、⊿fmax = 2.30 [THz]、ポリスチレン粒子で、KD = 8×

10-11 [mol L-1]、⊿fmax = 1.43 [THz] とすることで、Langmuirの式で表現できる変化が生じて いることがわかった

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