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MMD の共振電磁界解析による定量 測定の測定原理の導出

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 50-60)

3-1. 目的

先行研究により、MMD を用いた物質の定量測定が実現できる可能性は示唆された。 し かし、測定原理や基本性能に関する議論が不十分であった 122-138。 また、それらの議論が 不足したまま、高感度センシングが期待できる、ラベルフリー検出が期待できるなどの報告 が行われていた。 MMD を用いた物質定量測定法を確立し、実用化を目指すためには、

先行研究からさらに詳細な検討が必要であり、測定原理や基本性能である定量性(被測定 物の質量が測定できること)、直線性(被測定物の質量と測定値が比例すること)、感度(被 測定物の単位質量当たりの測定値)を明確にする必要があった。

本章では、2 章の 2-2 節で説明した方形空洞共振器やアンテナの理論を参考にして、

MMD の共振電磁界解析により、MMD を用いた物質定量測定法の測定原理を明らかにす ることを目的とした。 初めに、電磁波の斜入射時にディップ波形が生じるという先行研究の

知見から122-138、ディップ波形の物理機構(共振形態)を明らかにした。 次に、先行研究では

困難とされた電磁波の垂直入射でディップ波形が生じる MMD 構造を示し、物理機構の理 解が正しいことを明らかにした。 次に、ディップ点における共振形態を等価回路でモデル化 し、等価回路によりMMDの共振が再現できることを明らかにした。 最後に、等価回路の共 振周波数の式から、MMDを用いた物質定量測定法の測定原理を明らかにした。

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3-2. 実験方法

3-2-1. 実験試料

2章の2-1-4節に示した周波数制御方法により、通過帯が1 [THz] 付近に生じるように設

計したNi製のMMDを用いた。 MMD構造は、正方形状の貫通穴を正方格子状に周期配 置した構造とし、正方格子の周期Pを260 [μm]、貫通穴の1辺の長さDを180 [μm]、金属 薄膜の厚みTを20 [μm] とした。

3-2-2. 電磁波透過特性の評価方法

次章以降ではFT-IR 装置を用いているが、本章では直線偏波の平面波を用いる必要があ ったため、それが可能な内作のTHz-TDS(THz Time-Domain Spectroscopy)装置を用いて、

MMD の電磁波透過特性の測定を 行った。 Fig. 3-1 に、THz-TDS の概要を 示す。

THz-TDS では、『光導電アンテナ』と呼ばれる半導体基板上に形成されたダイポールアンテ

ナ(図のEmitterとDetecter)により、光パルスからテラヘルツパルスへの変換を行っている。

動作概要は以下の通りである。 フェムト秒レーザーから出た光パルスが対物レンズを通し

て Emitter のダイポールアンテナの給電点付近に照射される。 その光パルスにより半導体

の電子が励起され伝導電子が生じ、ダイポールアンテナに印加している電圧により、ダイポ ールアンテナにパルス電流が流れる。 このパルス電流によりダイポールアンテナのアンテ ナ動作が生じテラヘルツパルスに変換され放射される。 Siレンズと放物面鏡で平行電磁波 に成形されDetecter側へ入射する。 Detecterでは、同様に光パルスにより伝導電子が励起

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-5 0 5 10 15 20

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

Amplitude (nA)

Time (ps)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 1E-7

1E-6 1E-5 1E-4 1E-3 0.01 0.1 1

Normalized power

Frequency (THz)

0 20 40 60 80 100 120

Phase

Detectorの 検出波形例

Fig. 3-1 Measuring the transmission spectrum using THz-TDS.

され、Emitter から入射してくるテラヘルツパルスの電場により電圧が印加されることにより、

ダイポールアンテナにパルス電流が流れる。 このパルス電流を測定し、その時間領域波形 をフーリエ変換することで周波数領域波形(測定結果)を得る。 物質の電磁波透過特性の 測定は、放物面鏡間にある平行電磁波領域に物質を配置することで行われる。 また、ダイ ポールアンテナから放射されるテラヘルツ電磁波は直線偏波であるため、EmitterとDetecter を回転させることで偏波面を変えた測定が可能となる。

Fig. 3-2に、MMDへの電磁波の入射方法を示す。 図に示すように、XY平面に配置され

たMMDに対し、THz-TDSのEmitterからの平行電磁波を+Z軸方向に入射した。 X軸を 回転軸として回転角θでMMDを回転させることで斜入射を、θ = 0 [deg]とすることで垂直入 射を実現した。 また、EmitterとDetecterを回転させることで、Y方向の直線偏波Ey とX方 向の直線偏波Ex による電磁波透過特性を測定した。

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EyEx

θ

Fig. 3-2 Schematic diagram of electromagnetic wave radiation on the MMD with an oblique incidence angle.

3-2-3. 電磁界シミュレーションの条件

MMDの電磁波透過特性、及び、その共振電磁界を電磁界シミュレーションソフト(CST社、

MICROSTRIPES)を用いて計算した。 Fig. 3-3 に計算モデルを示す。 図の原点は MMD

の孔中心とし、MMDの主面方向にX軸とY軸、主面と垂直方向にZ軸を設定した。 また、

図中のMMDは単位格子に相当し、周期 P、孔寸法 D、厚み Tは実際のサンプルと同じ寸 法を用いた。 境界条件は、MMDの単位格子を囲むY=±P/2 の面とX=±P/2 の面を周 期境界として計算した。(図では点線で表示した。) 波源は、原点から-Z方向に2P離れた 位置に設定し、X方向、乃至、Y方向の偏波面を持つ平面波を+Z方向に入射した。 検出 面は、原点から+Z 方向に 2P 離れた位置に設定した。 MMD の材質は Ni とし、表面イン ピーダンスに変換して計算した。(2章の2-3-3節参照。) また、Fig. 3-3 は垂直入射の様子

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X Y Y

Z

Periodic boundary

MMD’s unit cell

Wave source Detector plane

Periodic boundary Incident wave

O O

Fig. 3-3 Calculation model of simulation for transmission spectrum of MMD.

を示しているが、斜入射を行う場合は、Fig. 3-2 の実測と同様に、X 軸を回転軸として回転 角θでMMDを -Z軸側に傾けることで対応した。 また、Fig. 3-3 は正方形孔のMMDを示 しているが、本研究で考案したMMDの新規構造である凹形孔MMD と台形孔MMDにつ いも同様に配置して計算を行った。

3-3. 結果

3-3-1. 斜入射時の電磁波透過特性と共振電磁界解析結果

先行研究では、MMD 主面に対し、電磁波を斜入射した時にディップ波形が生じ、垂直入 射した時に生じないことが報告されている 122-138。 本節では、実験と計算により斜入射時の ディップ波形の再現を行い、ディップ点における物理機構を計算により明らかにした150-151

THz-TDSを用い、Fig. 3-2 に示したように回転角 θ = 9 [deg] で ‐Z軸側にMMDを傾け、

X方向の直線偏波 Ex とY方向の直線偏波 Ey を +Z軸方向に入射し、各々の直線偏波に

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Fig. 3-4 Transmission spectra of MMD with respect to each linearly polarized wave E

x

and E

y.

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 0

20 40 60 80 100

T

Y

T

X

透過率 (%)

周波数 (THz)

0.8 1.2 1.6

0.4

Frequency / THz 100

80 60 40 20 0

Transmittance / %

Ex Ey

対する電磁波透過特性を測定した。 なお、この構成では、Ex が垂直入射、Ey が斜入射に 相当する。 結果を Fig. 3-4 に示す。 横軸は周波数[THz]、縦軸は透過率[%]とした。 青 線で Ex、赤線で Ey の入射に対する結果を示した。 この結果から、Ey の入射(斜入射)で ディップ波形が得られ、Ex の入射(垂直入射)でディップ波形が得られないことがわかった。

次に、Fig. 3-3 の計算モデルを用い、斜入射時の電磁波透過特性を計算した。 X 軸を回 転軸として、回転角θ = 0 [deg] (垂直入射)と回転角θ = 5 [deg] (斜入射)のMMDに対し、

Y方向の直線偏波Ey を +Z軸方向に入射した。 Fig. 3-5 に計算結果を示す。 横軸は周

波数[THz]、縦軸は透過率[%]とした。 黒線で垂直入射、赤線で斜入射に対する結果を示

した。 この結果から、斜入射時にディップ波形が得られ、垂直入射時にディップ波形が得ら れないことがわかった。 また、青点線円内に示した垂直入射時の通過帯ピーク点の周波数

が1.015 [THz]、斜入射時のディップ点の周波数が0.932 [THz]になることがわかった。

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Fig. 3-5 Calculation results of transmission spectra of MMD.

0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

0 20 40 60 80

100600 500 400 300 200

= 0°

= 5°

Tr an sm itt an ce (% )

Frequency (THz)

0.6 0.8 1.0 1.2

Frequency / THz

100 80 60 40 20 0

Transmittance / %

θ=0[deg]

θ=5[deg]

電磁波の斜入射時に生じるディップ波形が、実験と計算により再現できたことから、ディッ プ点の物理機構を明らかにするために、Fig. 3-5に示した垂直入射時の通過帯ピーク点と斜 入射時のディップ点の周波数における電界強度分布を Fig. 3-3 の計算モデルにより計算し た。 Fig. 3-6 に結果を示す。 図は、Z = 0 [μm]のXY面におけるMMD単位格子内の電界 強度分布を示した。 電界強度は、分布図内の最大値で規格化し、図中のカラースケールに 従い表示した。 また、MMD の金属部を白色で表示した。 この結果から、通過帯ピーク点

では、2 章の 2-2-1 節で説明した方形空洞共振器の TE10 モード的な共振(以下 TE10-like

mode と呼ぶ)が生じていることがわかった。 また、ディップ点では、TE11 モード的な共振

(以下TE11-like modeと呼ぶ)が生じていることがわかった。

- 56 - Y

X

0.932 [THz]

TE11 like mode 1.015 [THz]

TE10 like mode

Normalized electric field

0 0.5 1

Z=0[μm] Z=0[μm]

Fig. 3-6 Electric field distribution in XY plane of Z = 0 [μm] at frequency of passband peak point and dip point.

3-3-2. 凹形孔 MMD と台形孔 MMD の電磁波透過特性と共 振電磁界解析結果

前節で、斜入射時のディップ点でTE11-like mode共振が生じていることが明らかになった。

その結果から、電磁波をMMD主面に対し垂直入射した時にディップ波形が生じない理由は、

入射電磁波とTE11 like mode共振間で結合が生じないためという仮説を立てた。 この仮説 を証明するため、仮説をもとに、垂直入射でディップ波形が得られるMMD の新規構造2種 類を考案した。 本節では、それら新規構造に関する実験結果と計算結果を示した150-151

Fig. 3-7 に、新規構造の外観写真を示す。 図の『凹形孔 MMD』では、従来の正方形孔

MMD に対し、微小な正方形状の突起部を X 軸と平行な +Y 側の正方形孔の辺中心に形 成することで孔形状を凹形にした。 突起部の XY 面内寸法は 20 [μm]角とし、厚みは他の

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Fig. 3-7 A photograph of concave hole MMD and trapezoidal hole MMD.

凹形孔MMD構造 台形孔MMD構造

MMD部分と同じにした。 また、図の『台形孔MMD』では、従来の正方形孔MMDに対し、

X軸と平行な正方形孔の対向する二辺の長さを調節し、孔形状を台形にした。 台形孔の上 底の長さは160 [μm]、下底の長さは200 [μm]とした。

両MMDをFig. 3-7の向きでFig. 3-2のように配置し、Y方向の直線偏波Ey とX方向の 直線偏波 Exを +Z 軸方向に垂直入射し、THz-TDS を用いて電磁波透過特性を測定した。

また、Fig. 3-3 の計算モデルを用い、実サンプルと同じ構造と配置で、両偏波の垂直入射時 の電磁波透過特性を計算した。 Fig. 3-8の左図に凹形孔MMD、右図に台形孔MMDの結 果を示す。 横軸は周波数[THz]、縦軸は透過率[%]とした。 青色で Ex 入射時の結果、赤 色で Ey 入射時の結果を示した。 また、実線で計算結果、プロット点で測定結果を示した。

これらの結果から、両構造共に、Y 方向の直線偏波 Ey を垂直入射した場合にはディップ波 形が得られ、X 方向の直線偏波 Ex を垂直入射した場合にはディップ波形が得られないこと がわかった。 また、計算結果と実測結果は、よく一致することがわかった。

ドキュメント内 博士学位論文 (ページ 50-60)