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第 4 章 SiO 2 薄膜・ SiO 2 /Si 界面系の局所誘電率 分布分布

4.1 SiO 2 の結晶構造

第 4 SiO 2 薄膜・ SiO 2 /Si 界面系の局所誘電率

表4.1: SiO2の結晶構造と構造パラメータ.値は本研究での計算条件(平面波のカットオフエネルギー65Ry, GGA)での結果である.

α-quartz β-quartz α-cristobalite β-cristobalite tridymite

Lattice hexagonal hexagonal tetragonal cubic hexagonal

Molecules per cell 3 3 4 8 4

Lattice Constant a= 5.01 a= 5.09 a= 5.09 a= 7.21 a= 5.27

(˚A) c = 5.50 c= 5.59 c= 7.12 c= 8.60

Internal coordinates u= 0.476 u= 0.208 u= 0.438

x= 0.415 y= 0.257 z= 0.127

Eg(eV) 5.72 5.58 6.41 6.53 5.39

K-Γ A-Γ Γ(direct) Γ(direct) Γ(direct)

はパラメータu, x, y, zを用いて、

Si: (3a) (u, 0, 0) (u, u, 13) (0, u,23) O : (6c) (x, y, z) (y−x, x, x+13) (y, x−y, z+23)

(x−y, y, z) (y, x,23−z) (x, y−x,13−x)

と指定される[78]。ユニットセル内にはSiO2が3分子含まれ、そのユニットセルと結晶構造を図4.6に示 した。構造パラメータを表4.1.1に示した。格子定数はa= 5.01˚A、c= 5.50˚A(実験値[78]はa= 4.91304˚A、

図4.2: α-quartz(P3221)の結晶構造.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

c=5.40463˚A)となっており、a、cはそれぞれ2%、1.8%だけ実験値より大きいがほぼ一致している。電子

の交換相関項にLDAを用いた計算結果 [12]は実験値よりも小さくなっているが、GGAを用いた計算結 果 [24]と本研究の構造パラメータはよく一致した。α-quartzには対称性がP3221となる構造も存在し、ら せん軸の方向がP3121とは異なる。β-quartzは、P3121構造とP3221構造の平均として存在していると考 えられている。

図4.3にエネルギーバンド構造を示した。バンド構造の特徴は、過去の計算とよく一致している[41, 7]。

バンドギャップは5.72eVで間接ギャップ(K-Γ)となっており、他のGGAによる計算結果(約5.6eV) [7]同 様にギャップが過小評価されている。

バンド端の確率密度を調べるために、伝導帯端(Γ点)を図4.8に、価電子帯端(K点)の確率密度を図4.9 に示した。伝導帯端の確率密度は酸素原子の周りにほぼ球対称に広がっているので、伝導帯端は酸素の2s 軌道から成り立っていると考えられる。価電子帯端(K点)の確率密度も酸素原子近傍に局在している。

表4.2: α-quartz結晶の構造パラメータ

a c Si-O bond[˚A] Si-O-Si angle[deg.] O-Si-O angle[deg.]

Experiment 4.913 5.405 1.61 143.7 110.88, 110.41, 108.37, 108.37 This work 5.01 5.50 1.622, 1.626 146.38 110.54, 109.16, 109.10, 108.33 LDA(Ref. [12]) 4.805 5.29 1.605, 1.610 137.7 111.39, 109.11, 108.39, 108.33 GGA(Ref. [24]) 4.97 5.52 1.622, 1.625 145.5

-20 -15 -10 -5 0 5 10

Γ K H A Γ M L A

E ne rgy(e V )

図4.3: α-quartzのバンド構造.価電子帯は赤い実線、伝導帯は黒い破線で示した.

図4.4: α-quartzにおける伝導帯端(Γ点)の確率密度.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

4.1.2 β-quartz

β-quartz構造はhigh-temperature-quartzともよばれ、高温で安定な結晶相で六方晶系(P6222)となってい る。これは、2つのα相であるP3221とP3121の間で転移が起こるときの中間に位置する構造で、α-quartz において、uα= 1/2, x= 2uβ, y=uβ, z= 1/6の場合である。

また、各原子の位置はパラメータuを用いて、

Si: (3c) (12, 0, 0) (0, 12, 23) (12, 12, 13) O : (6j) (u, 2u, 12) (2u, u, 12) (u, u,56)

(u,2u,12) (2u, u,16) (u, u,56)

と指定され、α-quartz同様にユニットセル内には3分子含まれている。図4.6にβ-quartzのユニットセルと 結晶構造を示した。格子定数はa= 5.09˚A、c= 5.59˚A(実験値[78]はa= 5.01˚A、c=5.47˚A[ca. 600C])と

図 4.5: α-quartzにおける価電子帯端(A点)の確率密度.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

図 4.6: β-quartzの結晶構造.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

なっており、a、cはそれぞれ1.6%、2.2%だけ実験値より大きいがほぼ一致している。Si-O結合長は1.62˚A、

Si-O-Si結合角は153.73、O-Si-O結合角は110.93、109.77、107.73となっている。格子定数がα-quartz よりも大きいにもかかわらず、Si-O結合長はほぼ同じなのは、Si-O-Si結合角がα相よりも大きくなってい るからである。

図4.7にエネルギーバンド図を示した。バンド構造の特徴は、過去の計算とよく一致していた[41]。間接

ギャップ(K-Γ)となっており、ギャップは5.72eVとなっていた。

バンド端の確率密度を調べるために、伝導帯端(Γ点)を図??に、価電子帯端(A点)の確率密度を図??に 示した。伝導帯端の確率密度は酸素原子の周りにほぼ球対称に広がっているので、伝導帯端は酸素の2s軌 道から成り立っていると考えられる。価電子帯端(A点)の確率密度も酸素原子近傍に局在しており、酸素 の2p軌道から成り立っていることが分かる。

4.1.3 α-quartz と β-quartz の比較

β-quartzは2つのα-quartz構造であるP3221とP3121の間で転移が起こるときの中間に位置する構造 である。つまり、らせんの回転が右回りから左回りに変わるときの中間的な構造であり、鞍点になっている 可能性がある。全エネルギー計算の結果においてもβ-相はα-相にくらべ一分子あたりのエネルギーで、本 研究の計算条件で8meV、Keskarらの計算(LDA) [35]で63meV、Liuらの計算(LDA) [42]で40meV不 安定となっている。過去の報告でも二つのα相の時間平均としてβ相が観測されるという議論 [71, 36]と、

実際に高温で存在するという議論に分かれており [69]、現在も解決には至っていない。

本研究においてもβ相の安定性、α相との違いを確認するためにフォノンの分散関係を計算し図4.10に

-20 -15 -10 -5 0 5 10

Γ K H A Γ M L A

E ne rgy (e V )

図4.7: β-quartzのバンド構造.価電子帯は赤い実線、伝導帯は黒い破線で示した.

図4.8: α-quartzにおける伝導帯端(Γ点)の確率密度.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

図4.9: α-quartzにおける伝導帯端(A点)の確率密度.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

示した。黒い実線はα-quartz、赤い実線はβ-quartzのフォノン分散関係を示している。α-quartzの分散関 係は、過去の計算結果 [19]とよく一致してた。β相の分散関係を見てみると、α相の分散に比べ振動数が 低くなっていることが分かる。このことからβ相はα相に比べソフト化しているといえる。また、Γ点の 光学モード(A1)に負の振動モードがβ相には現れるため、β相は安定には存在しないことが予想される。

このA1モードはαからβの相転移に関係する方向の固有モードである。よってβ相は変位型の相転移に より現れると考えられる。

Frequency(THz)

0 5 10 15 20

A Γ K M Γ

図 4.10: α-,β-quartzのフォノンバンド構造.黒、赤の実線はそれぞれα-, β-quartzのフォノンバンドを 示している.計算にはGonzeらの提唱したDFPT(Density Functional Perturbation Theory)に基づく方 法 [18, 20]を使用した.

フォノンモードの計算から、Quartz結晶の誘電率を計算し、表4.3に示した。β-quartzについては、Γ 点で負の振動モードが現れたため、静的誘電率については計算していない。Lyddane-Sachs-Tellerの関係、

表4.3: Quartz結晶の誘電率.

ε ∆ε Born Charges

⊥ , ⊥ , Si(,) O(,) α-quartz 2.41 2.44 4.55 4.77

3.46 -1.73

β-quartz 2.34 2.36 3.49 -1.75

ω2L ωT2 = ε0

ε (4.1)

を用いてα-quartz結晶の光学・静的誘電率の比と、Γ点でのTO(250cm−1)、LO(343cm−1)モードの比を 比較したところ両者はよく一致した。

4.1.4 α-cristobalite

α-cristobalite構造ははlow-cristobaliteともよばれ、200C以下で安定な結晶相となり、ユニットセルは 正方晶で空間群はP4121となっている。図4.11にα-cristobaliteの結晶構造を示した。Si-O結合長は1.622˚A となっており、Si-O-Si結合角は150.04となっていた。

また、バンド構造を図4.12に示した。バンドギャップは6.41eVで直接ギャップ(Γ点)となっていた。

4.1.5 β-cristobalite

β-cristobalite構造ははlow-cristobaliteともよばれ、高温で安定な結晶相となり、ユニットセルは立方晶 となっている。図4.13にβ-cristobaliteの結晶構造を示した。各原子の位置は格子点からわずかにずれてお り、空間群はP213となる。

図 4.11: α-cristobaliteの結晶構造.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

-20 -15 -10 -5 0 5 10

Z A M Γ Z R

E ne rgy (e V )

図4.12: α-Cristobaliteのバンド構造.価電子帯は赤い実線、伝導帯は黒い破線で示した.

図 4.13: β-cristobaliteの結晶構造.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

4.1.6 Tridymite

tridymite構造も六方晶のユニットセルをとり、空間群はP6/mmcとなっている。各原子の位置はパラ

メータuを用いて、

Si: (4f) ±(1/3, 2/3, u) ±(2/3, 1/3, u+ 1/2) O(1): (2c) ±(1/3, 2/3, 1/4)

O(2): (6g) (1/2, 0, 1/2) (0,1/2,1/2) (1/2,1/2,0) (1/2,0,0) (0,1/2,0) (1/2,1/2,1/2)

と指定される。通常は高圧下でかつ200C以上で安定となり、図4.14に示した構造となっている。Si-O結

図 4.14: Tridymiteの結晶構造.青い球、赤い球はそれぞれ、Si、O原子を示す.

合の長さは全て1.61˚Aとなっており、Si-O-Si結合角は180と109.5、O-Si-O結合角は109.45、109.49 からなっている。

電子状態についても調べてみるため、エネルギーバンド構造を図4.15に示した。エネルギーギャップは

-20 -15 -10 -5 0 5 10

Γ K H A Γ M L A

E ne rgy (e V )

図4.15: Tridymiteのバンド構造.価電子帯は赤い実線、伝導帯は黒い破線で示した.

5.39eVでΓでの直接ギャップとなっている。また、価電子帯端(Γ点)では4重縮重している。確率密度分

布を調べたところ、価電子帯端も伝導帯端も酸素の軌道で成り立っていることが分かった。

4.1.7 SiO

2

結晶のまとめ

SiO2の薄膜モデルを構築するために、バルク結晶の構造と電子状態について評価を行った。得られた格 子定数、バンド構造は過去の文献とよい一致を得た。電子状態を調べると、全ての結晶構造において価電子 帯端の波動関数は酸素原子に起因していた。また、β-quartzの安定性を議論するために、α-、β-quartzの フォノン分散関係を比較したところ、β-quartzにはソフトモードが現れ、安定には存在しないことが予測 された。

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