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δ+L

δ δ+Q δ+Q+L

δ+γ

γ δ+γ+Q

γ+Q γ+Q+L

Te mp er at u re ()

1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000

0 0.1 0.2 0.3

S content (%)

Temp er at u re ()

1600 1500 1400 1300 1200 1100

1000 0 0.1 0.2 0.3

S content (%) L δ δ+L

δ+γ

γ γ+L

図4-10 Fe-0.2mass%Mn-S三元系計算状態図

図4-11 Fe-S二元系計算状態図

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分可能であると考えられる。このことは、表4-2に示したように1250℃で1時間の保熱 による平衡処理を行った後に1200℃で加工を実施した時、Mn 添加量の多い鋼では割れは 観察されず、少ない鋼では割れが発生した結果は上記の推察を支持するものと考えられる。

従来、Sに起因するγ域での熱間脆性をQ相の析出を通じて回避するために添加される Mn量は、S の当量よりはるかに多いことも/34/、上記液相の晶出とMnS 析出の速度論的 な差異を考慮したものと考えられる。

以上のように、薄鋳片-直接熱延プロセスにおける耳割れに見られるγ域圧延での熱間 脆性は、再融反応による液相の出現が原因であることを示唆するものである。そこで、こ れを検証するため、B鋼を用いて1050℃で実施する保定の前に、鋳造後、直ちに鋳片を取 り出し、表面温度:1100~1400℃で圧延を開始し、50→35→20 の 2 パスで圧延を実施し た。そして、これまでの実験と同様に4mmまで熱延を実施し、700℃での巻取処理後の熱 延板のエッジ部の耳割れ発生状況を調査した。得られた結果を写真4-5に示す。保定前 に実施した圧延温度によって耳割れの発生状況が異なる。すなわち、この圧延温度が高い ほど耳割れの発生は軽微となるが、1327℃以下の温度で圧延を開始したものは、その後に

実施した1050℃×30minでの保定の有無に関わらず耳割れが発生する。一方、最も高温で

ある1437℃で圧延を開始した熱延板には、耳割れは発生していない。なお、熱延板で観察

された耳割れは、保定前の圧延時にすでに発生していることを確認している。従来、CC-

DRでは、鋳造後に高温で圧延を行うと、低融点の介在物等により熱間脆性割れが発生する ことが知られているが、1400℃を超える温度域での圧延による影響については検討されて いない。こうした高温域の圧延による割れ発生の有無は、Sに起因した再融反応による液相 の出現と深い関係があるものと考えられる。このことから、低C-Al-k鋼においては、低鋳 造後に圧延を施す場合、適切な温度域を設定する必要がある。

4-4-4 MnSの析出と熱延板組織の関係

熱延板における混粒組織の出現は、熱延時の再結晶の遅れに起因した、変態前のγ組織 の不均一性が原因と考えられる。本実験で混粒組織が観察された材料は、熱延前に固溶 S が多く存在するもので、熱延中に微細に析出したMnSによるpinning及び粒界偏析傾向が

強い固溶Sのsolute drag効果により再結晶が著しく抑制されたためと考えられる。また、

割れが生じたものと混粒組織の出現が良く対応するのは、熱延前に固溶 S が存在しかつ、

液相が現れるほどSが粒界に偏析しているためと考えられる。

63

1108 ℃ 1295 ℃ 1327 ℃ 1437 ℃ 保 定 な し 保 定 あ り 1 0 5 0 ℃ × 3 0min

写真4-5熱延板の耳割れ発生状況に及ぼす鋳造後圧延温度の影響

64

4-4-5 MnSの析出と冷延・焼鈍後の材質との関係

MnSの析出と冷延・焼鈍板の材質との関係を明確にするために、J鋼について恒温処理 に伴う析出物の形態変化を、抽出レプリカによる電顕観察で詳細に調査した。図4-12 にその結果を示す。恒温処理によって0.05μm 以下の MnS が減少し、それ以上の大きさ のMnSが増え、全体としてMnSの数は減少している。0.05μm以下の微細なMnSは主 として熱延中に析出したものと考えられる/40/。この結果と、図4-7との対比から、0.05 μm以下のMnSの量が少ないほど冷延・焼鈍板の延性が増加し、加工性が良好になること がわかる。この結果は、連続鋳造-熱間圧延直結プロセスでのMnSの析出挙動で明らかと なった結果/41/とも一致するものである。また、図4-7で示した析出処理による時効指数

(Aging Index:A.I.)の減少は、0.05μm以上の大きさのMnS/40/の数が増えたことによ り、セメンタイトの析出核として有効に作用した結果、過時効処理中にセメンタイトの析 出が促進され、最終的に固溶C量が減少したためと考えられる。

0.1 1 10

0.1 1 10 100

M n S 析出密度 (個 / μ m

2

)

1050℃での保定時間(min) Total

<0.05μm 0.05-0.1μm

≧ 0.1μm

J鋼:0.2Mn-0.010S

図4-12 MnSの析出サイズの変化

65 4-4-6 鋳片組織の影響

図4-13に本章で得られた実験結果から、冷延前のミクロ組織の中で大きな結晶粒群 の粒径と、冷延・焼鈍後の材質特性として、引張試験後の試験片表面に生じるリジングと 呼ばれる表面欠陥(肌荒れ)との関係を示す。冷延前の最大粒径が 100μm 以下となれば肌 荒れの発生は抑制できることから、熱延で実施する圧下率を十分に確保する必要があり、

図4-3の結果から 50%以上の圧下率が必要となる。

それゆえ、当然のことながら鋳片厚を 4mm として熱延を省略した鋼では、冷延・焼鈍後 の材質特性として、引張試験後の試験片表面にリジングが生じる。これは、写真4-1に 示したように、冷延前の組織であるフェライト粒が 100μm を超える粗大粒であることが原 因である。冷延前の結晶粒を微細化するには、圧下率を増やすこと以外に冷却速度を高め ることでも達成できる。

そこで、B 鋼について鋳造後の冷却速度を変化させるため、鋳造厚を 4~20mm、さらに鋳 型の材質を鉄及び銅として、鋳造時の冷却速度が異なる鋳片を作製した。得られた鋳片を 表裏研削して 4mm として、650℃に設定された電気炉に装入後、1h の保熱処理を行った。そ の後、そのまま炉内で 300℃以下の温度域まで炉冷を行った後、取り出して室温になるまで 空冷した。なお、ここで示す鋳片の冷却速度は、鋳造後、直ちに鋳型から鋳片を取り出し、

0 10 20 30 40 50 60

10 100 1000

肌 荒 れ 評点

冷延前の最大粒径(μ m)

極大 大 中 小 なし

図4-13 冷延前の最大粒径と肌荒れ評点の関係

66

1400~1100℃の間で測定した鋳片表面の温度変化から求めた平均冷却速度とした。図4-

14に冷延・焼鈍後の引張特性に及ぼす鋳造後の冷却速度の影響を示す。鋳造後の冷却速

図4-14 冷延・焼鈍後の引張特性に及ぼす鋳片の冷却速度の影響

67

度の増加に伴い、降伏点及び引張強度が高くなるとともに延性が低下する。また、r_値は1.0 以下の低い値を示す。一方、鋳片の冷却速度が50℃/sec 以下になると、従来工程で製造し た鋼板には生じないリジング状の肌荒れが引張試験後に生じる。これは、巻取処理後の表 層部が脱炭の影響を受けて粗大粒化した熱延板を、冷延・焼鈍した鋼板に生じるものと類 似している。さらに、このリジング状の肌荒れ高さに対する鋳造後の冷却速度の影響につ いて調査した結果を図4-15に示す。なお、ここで示すリジング状の肌荒れ高さは、JIS5 号引張試験片に 20%の引張ひずみを与えた後、試験片表面の粗度を測定し、その最大うねり で評価した。このリジング状の肌荒れ高さは鋳片の冷却速度が遅いものほど大きく、冷却 速度が 70℃/sec 以上になると肌荒れ高さは 10μm 程度と軽微になり、現行工程の冷延鋼板 と同程度となる。これは、写真4-6に示すように、鋳造後の冷却速度が速くなるとミク ロ組織が微細化することによるものと考えられる。とくに 70℃/sec 以上の冷却速度となる と、鋳片のミクロ組織としてベイニティックフェライトが形成されるようになる。さらに 冷却速度が速くなるに伴い、このベイニティックフェライトの割合が増加していることも わかる。それに伴いリジング状の肌荒れ高さが軽減することから、冷延前のミクロ組織と してベイニティックフェライトを形成させることは、熱延板段階でのミクロ組織を 100μm 以下とすることと同様の効果があるものと考えられる。

0 5 10 15 20 25 30

10 1000

リ ジ ン グ状の 肌荒 れ高 さ ( μ m)

鋳片の冷却速度(℃/s) (1400~1100℃) 100

50 500

図4-15 リジング状の肌荒れ高さに及ぼす鋳片の冷却速度の影響

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前述したように鋳造後の冷却速度の増加に伴いリジング状の肌荒れは軽減する。しかし、

冷延・焼鈍後の材質は硬質となる。その原因としては、これまでの調査結果から、鋳片段 階での MnS の析出量の差に起因するものと考えられる。そこで、各鋳片から電界抽出した 残さを用いて、その析出量を調査した。図4-16に得られた結果を示す。鋳片の冷却速 度の増加に伴い、MnS の析出量が減少しており、図4-14に示した引張特性の変化と良く 対応している。したがって、熱延工程が省略できる程度まで鋳片厚を薄くした場合、冷延・

焼鈍後の材質を現行工程材と同程度にまで軟質化するためには、これまでにも述べてきた ように鋳片段階での MnS の析出を十分に促進させることが必要である。

写真4-6 鋳造後の冷却速度に伴う鋳片のミクロ組織の変化

69 4-5 結言

冷延軟質鋼板として低C-Al-kを対象とし、短縮化した製鋼-熱延工程における熱間加工 性及び冷延・焼鈍後の材質に及ぼす影響について、とくに添加S量及びMnSの析出挙動に 着目した検討を行い、以下の知見が得られた。

(1)薄鋳片-熱延簡・省略プロセス材は、通常プロセス材と比較すると全体的に硬質で あり、加工性が劣る。とくに添加される S 量が多くなると、熱延段階でエッジ部に耳割れ が生じるばかりでなく、熱延板におけるミクロ組織が混粒組織となるとともに、冷延・焼 鈍後の引張特性として、降伏強度及び引張強度が高く、延性が大きく低下し、現行プロセ ス材との差が大きくなる。

(2)(1)の傾向は、Mn添加量の増加や熱延前のMnSの析出処理により緩和される。

(3)熱延前の析出処理によるMnSの析出は比較的短時間で進行する。この時、添加S量 とMn量の積が等しい場合、その添加量の比が異なると析出速度が異なることがわかった。

これは熱力学的な視点から考察すると、MnSの析出が分配局所平衡条件で進行しているも 図4-16 MnSとして析出するS量に及ぼす鋳片の冷却速度の影響

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