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で60%の圧延を実施した。鋳造後直ちに1400℃で圧延を実施した場合、どちらの鋼におい
ても耳割れは発生しなかった。また、1200℃まで放冷してから圧延を行うと、耳割れが発 生した。しかし、1200℃で圧延を実施する前に1250℃で1時間の保熱後に圧延を行うと、
Mn添加量の多い鋼では耳割れは生じなくなるが、Mn添加量が少ない材料では、耳割れの 発生を回避することができなかった。
次に、Mn添加量を変化させたD、E及びF鋼の簡熱材の熱延板のミクロ組織を写真4
-4に示す。この場合、写真4-1で S 添加量が多い時に観察された混粒組織が、低 Mn 鋼で観察される。また、図4-5に抽出残渣で捕えられなかったS量を示すDissolved S
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と添加Mn量との関係を示す。Mn添加量が0.3mass%以上となるとDissolved S量は検出 されないことから、低Mn 鋼で観察された混粒組織は、固溶 Sあるいは抽出残渣で捕えら れなかった微細なMnSが熱間圧延後のオーステナイトの再結晶を抑制したことに起因する ものと考えられる。
そこで、上記推定を検証するために、C 鋼について鋳片を取り出した後、付加的に一旦
1050℃の加熱炉に装入し、30min 保熱した後に熱延を実施し、その熱延板のミクロ組織を
前述の写真4-2の d)に示す。さらに、この保熱処理による冷延・焼鈍後の材質変化と、
熱延板中のDissolved S量を図4-6に示す。なお、比較として1050℃で保熱を行わなか った材料での結果も示す。1050℃で30minの保熱により、Dissolved S量は大きく低下し ている。それに伴って、冷延・焼鈍後のYP及びTSが低下するとともに、Elが大きく向上 する。したがって、熱延前に析出処理を実施することにより、混粒組織の形成を回避する ことができ、その結果、冷延・焼鈍後の機械的性質が軟質化し、加工性が改善される。
そこで、G、H、I及びJ鋼を用いて、より系統的に析出処理による簡熱材の材質変化を 調査した。図4-7にその結果を示す。ただし、この材料は800℃で1minの焼鈍を行った
-0.001 0.000 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 0.007 0.008 0.009 0.010
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
固溶 S 量 (m as s%)
Mn量 (mass%)
図4-5 熱延板の固溶S量に及ぼすMn添加量の影響
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35 40 45 50
-5 0 5 10 15 20 25 30 35 40
t- E l ( %)
1050℃での保定時間(min)
0 0.005 0.01 0.015
200 250 300 350 400
-5 0 5 10 15 20 25 30 35 40
固溶 S 量 (m as s%)
Y P ,T S ( M P a)
1050℃での保定時間(min)
YP
TS
固溶S量
図4-6 冷延・焼鈍後の引張特性及び熱延板での固溶S量に及ぼす保定時間の影響
56 150
200 250 300 350
0.1 1 10 100
YP,TS (MPa)
1050℃での保定時間(min) YP
TS 40
45 50
0.1 1 10 100
t-El (%)
1050℃での保定時間(min) 0
0.005 0.01
0.1 1 10 100
固溶S量(mass%)
1050℃での保定時間(min)
○ 0.1Mn-0.005S(G)
● 0.1Mn-0.010S(H)
△ 0.2Mn-0.005S(I)
▲ 0.2Mn-0.010S(J)
0 50 100
0.1 1 10 100
A.I. (MPa)
1050℃での保定時間(min)
図4-7 Mn及びS添加量による鋳造後保定時間の影響
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後、フェライト中の固溶C量を極力少なくするために680℃まで5℃/secで冷却し、その後、
セメンタイトの析出核を効率良く生成させるために100℃/secで235℃まで急冷し、直ちに
350℃まで10℃/secで加熱し、5minで260℃まで傾斜過時効処理を実施した。この図から
明らかなように、1050℃で保熱処理を実施する場合、10min程度の比較的短時間で材質が 軟質化し、固溶 S 量が減少するに伴い、降伏点、引張強度、時効指数(Aging Index(A.I.)) が減少し、延性が向上する。
4-4 考察
4-4-1 材質特性に及ぼす鋳片厚みの影響
図4-3に示したように鋳片厚み(熱延圧下率)の増加によりr_値が高くなり、また、肌荒 れが生じなくなったのは、熱延板での組織観察結果よりミクロ組織が微細化したためと考 えられる。すなわち、r_値の向上については、一般的に言われているように熱延板組織の微 細化により、冷延・焼鈍後の ND//(111)方位の核生成場所が増えたことによる効果である。
また、肌荒れが生じなくなったのは、熱延板のミクロ組織が微細化したことにより、熱延 板段階での集合組織に方位的な類似性を有する広い領域(コロニー)が無くなり、リジングの 発生が抑制されたためと考えられる。
4-4-2 材質特性に及ぼすMnS析出挙動の影響
以上述べたように、MnSの固溶・析出挙動がミクロ組織及び冷延・焼鈍後の材質特性に 大きく影響を与えることが明らかとなった。そこで、このMnSの析出挙動についてより詳 細に検討する。
本実験で用いた鋼のうち、添加されたMnとS量の積が等しいH及びI鋼について、図 4-7に示した固溶S量のデータを用いて図4-8にMnSの析出分率を示す。ここで縦軸 はS添加量の異なる二つの鋼の析出挙動を比較するため、実験から得られた析出S量を各 鋼のS添加量で割って析出率:Xとして表記したものである。右側縦軸にはMnSの溶解度 積/30/から計算される計算平衡析出量から算出した平衡析出率を示す。この図からH及びI 鋼はともに最終的にはほとんど等しい析出率を示すにもかかわらず、析出途上の経時変化 に違いがある。この違いからMnSの析出挙動の本質について考察する。
γ中でのSの拡散速度はMnに比べて十分に速いことから、MnS析出のkineticsはMn の拡散が律速するものと仮定する。この時、析出途上でのγ中の S の活量は析出物近傍や 遠方によらずほぼ一定と考えられる。さらにγ/MnS界面が分配局所平衡条件を満たして
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いると仮定すれば、γ中の平均組成がaXj(j=Mn,S)の時の析出物界面の組成:aXjは、図 4-9(a)に示すように、aXjを含むSのγ中のSの等活量線と固溶度線の交点組成として近 似的に求めることができる。一方、平均組成がaXjのγ中に存在する半径RのMnSの成長 速度:vは、界面を挟むMnのマスバランスとγ中のFickの法則及びZenerの定常下での 近似解/31/から、次式で示される。
v~(D/R){( aXMn/Vγ-bXMn/Vγ)/( 0XMn/VMnS-bXMn/Vγ)}・・・・(1)
ここでDはγ中のMnの拡散係数、0XMnはMnS中のMn濃度、Vγ及びVMnSはそれぞれ γ相及び MnS 相のモル容積を示す。(1)式から、界面組成がγ中の平均組成から偏って いるほど、すなわち、(aXMn-bXMn)の値が大きいほど MnS の成長速度:vが大きいこと がわかる。図4-9(b)は、H及びI 鋼の成分系における初期γ中Mn 濃度:iXMn、平均濃 度:aXMn、界面濃度:bXMn、平衡濃度:eXMnの関係を模式的に示したものである。この図 から析出量はH鋼の方が約2倍もあるにも関わらず、析出途上での(aXMn-bXMn)の値は I鋼の方がH鋼よりも大きくなり、(1)式を考慮すれば、図4-8に示す両鋼の析出の経 時変化の差異が理解できる。
MnS の析出は図4-8に想定したように分配局所平衡下で進行するという考え方に基 づくと、(aXMn-bXMn)の値は析出物構成元素の添加比:Mn/S(一般的には、析出を律速
0 0.5 1
0 10 20 30 40
X: M nS の析出分率
1050℃での保定時間(min)
0.85 0.86
● 0.1Mn - 0.010S(H)
△ 0.2Mn - 0.005S(I)
図4-8 H及びI鋼におけるMnS析出挙動
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