5 信号特性
5.1 QZS 信号の全般特性
5.1.1 RF 特性
5.1.1.1 信号構造
QZS信号の信号構造のサマリーを表 5.1.1-1に示す。
表 5.1.1-1 QZS信号の信号構造 信号名称
(信号略称)
チャンネル
識別 PRN符号と拡散方式 航法メッセージ
L 1 信 号
L1-C/A信号
(QZS-L1) -
適用文書(1)のC/A信号のPRNコー ドと同一のコード系列※。拡散方式は BPSK(Bi-Phase Shift Key)(1)。
適用文書(1)の C/A 信号と同一のデ ータ構造、ビットレート、符号化方式を 持ち、同様の航法メッセージである。
L1C信号
(QZS-L1C)
L1CD 適用文書(3)の PRN コードと同一のコ
ー ド 系 列※。QZS-1 の 拡 散 方 式 は BOC(Binary Offset Carrier)(1,1)。
適用文書(3)と同一のデータ構造、ビ ットレート、符号化方式を持ち、同様 の航法メッセージである。
L1CP
適用文書(3)のオーバーレイ符号と同 一のコード系列で変調される。
L1-SAIF信号
(QZS-L1-SAIF) -
適用文書(1)のC/A信号のPRNコー ドと同一のコード系列※。拡散方式は BPSK (1)。
適用文書(4)と同一のデータ構造、ビ ットレート、符号化方式を持ち、同様 の航法メッセージである。
L2C信号
(QZS-L2C) -
適 用 文 書(1)の L2C信号のPRNコ ー ド と同 一 の コ ー ド 系 列※。 拡 散 方 式はBPSK(1)。
L2C(CM)コード
適用文書(1)と同一のデータ構造、ビ ットレート、符号化方式を持ち、同様 の航法メッセージである。
L2C(CL)コード データレス
L5信号
(QZS-L5)
Iチャンネル
適用文書(2)のL5信号のPRNコード と同 一 のコ ード 系 列※。拡 散方 式 は BPSK(10)。
適用文書(2)と同一のデータ構造、ビ ットレート、符号化方式を持ち、同様 の航法メッセージである。
Qチャンネル
適用文書(2)のL5信号のPRNコード と同 一 のコ ード 系 列※。拡 散方 式 は BPSK(10)。
データレス
LEX信号
(QZS-LEX) -
Kasami系列。
拡 散 方 式 は BPSK(5)。
2チャンネルは、シ ョ ー トコ ー ド と ロ ン グコー ドを交 互に 切り替えることで得 られる。
ショートコード
2000ビット/フレームであり、フレーム の先頭にはプリアンブルに加えてフレ ームの内容を識別できるタイプ ID が ある 。 コ ー ド シ フ トキ ー イ ング によ り 250[sps]×8=2[kbps]であり、リードソロ モン符号が付加されている。
ロングコード データレス
※ 適用文書(1)と(2)、(3)によると、GPS-Ⅲへの対応のためPRNコードが拡張されているが、現行MCSにおけるQZS-1では対応していな い。
IS-QZSS Ver. 1.6 5.1.1.1.1 L1
補完信号の信号構造
L1信号と呼ぶ信号には、L1C/A信号とL1C信号、L1-SAIF信号がある。この内、L1C/A信号と L1C信号を総称して「L1補完信号」と呼ぶことにする。
L1補完信号は、互いに直交する2つの搬送波を持つ。位相関係の仕様は、5.1.1.6.1項による。
この内、いわゆるIチャンネルには、L1C/AとL1CDがあり、QチャンネルにはL1CPがある。
L1C/A、L1CD、L1CPはそれぞれ、L1C/A信号、L1C信号のデータチャンネル、L1C信号のパイロ ットチャンネルに相当するビット列
C
L1C/A、C
L1CD、C
L1CPでBPSK変調されている。QZS-1では、L1CD の変調ビットが"0"の時の搬送波 L1CDの位相に対し、L1CD の変調ビットが"1"の時は搬 送波L1CDは180度反転している。また、L1CPの変調ビットが"1"の時は搬送波L1CPの位相は、
L1CDの変調ビットが"0"の時の搬送波L1CDの位相に対して90度進んでおり、"0"の時は90度 遅れている。
QZS-1のL1信号の位相関係は、GPS-Ⅲ(適用文書(1)参照)と異なっている。特に、QZS-1では
L1CDとL1CPが直交しているのに対し、GPS-Ⅲではこれらは同相となっている(図 5.1.1-1)。
図 5.1.1-1 QZS-1とGPS-ⅢのL1信号位相関係
(反時計回りの方向は位相の進みを示す。また各信号の位相は変調ビットが"0"の時の相対位相を示す。)
5.1.1.1.2 L2C
信号の信号構造
L2C信号は、単一の搬送波を持つ。その搬送波は、あるビット列
C
L2CでBPSK変調されている。そのビット列
C
L2Cは、2つのチャンネルを意味する 2種類のビット列C
L2CM 、C
L2CLが時間的 に交互に選択されて生成されたものである。5.1.1.1.3 L5
信号の信号構造
L5信号は、互いに直交する二つの搬送波を持つ。位相関係の仕様は、5.1.1.6.1項による。
それぞれの搬送波は、それぞれ異なる 2 つのチャンネルを意味する 2 種類のビット列
C
L5I5、C
でBPSK変調されている。L5Iの変調ビットが"0"の時の搬送波L5 の位相に対し、L5IのL1
CPL1
CD、 L1C/A
QZS-1
L1
C/AL1
CD、 L1
CPGPS- Ⅲ
IS-QZSS Ver. 1.6 5.1.1.1.4 L1-SAIF
信号の信号構造
L1-SAIF 信号は、単一の搬送波を持つ。その搬送波は、あるビット列
C
L1SAIFで BPSK 変調されている。
5.1.1.1.5 LEX
信号の信号構造
LEX 信号は、単一の搬送波を持つ。その搬送波は、あるビット列
C
LEXで BPSK 変調されてい る。そのビット列C
LEX は、2つのチャンネルを意味する2種類のビット列C
LEXS、C
LEXLが時間 的に交互に選択されて生成されたものである。5.1.1.2 周波数
QZS の源振周波数
f
Sは、QZS が受ける相対論効果による影響を平均的に補償するために基準周波数
f
0 = 10.23[MHz]に対してオフセットしている。周波数は、以下の通りである。(
1 5.399 10)
10230000[ ] 10229999.994476823[ ]1 0 10
0
Hz Hz
f f
fs f × = − × × ≅
+∆
= −
なお、QZS軌道が楕円であるために相対論効果による影響が変動するが、この影響は6.3.2項(2) に示す式により補償することができる。また、他の要因による QZS 時刻の変動は、6.3.2 項(1)に示 す式により、航法メッセージに含まれる SV クロックパラメータ(いわゆる af0、af1、af2)を使用して補 償することができる。
5.1.1.3 相関損失
全てのQZS信号について、準天頂衛星の測位ペイロード内の系内で、特にPRNによる拡散変調 を行う時の相関損失は、その送信電力とそれを逆拡散変調時の損失のない受信機で逆拡散する とした場合の受信電力との比で表現した場合に、0.6[dB]以下とする。
5.1.1.4 搬送波位相雑音
全ての QZS 信号について、PRN コード及び航法メッセージを重畳する前の変調されない搬送波 の位相ノイズのスペクトラム密度は、片側帯域10[Hz]のPLL(Phase Locked Loop)がその搬送波を 0.1[rad](RMS)で位相追尾できるレベル以下である。
具体的には、全てのQZS信号について、その位相ノイズは、以下の図 5.1.1-2を満足している。
図 5.1.1-2 全QZSS信号の位相ノイズ
-47 -47
-77 -94
-101 -105 -110 -120
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.E-02 1.E-01 1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 オフセット周波数 (Hz)
位相ノイズ密度 (dBc/Hz)
IS-QZSS Ver. 1.6 5.1.1.5 スプリアス
全ての QZS 信号について、PRN コード及び航法メッセージを重畳する前の変調されない搬送波 の強度に対するスプリアスの強度は、-40[dB]以下である。
5.1.1.6 信号内の位相関係 5.1.1.6.1 位相直交
L1CDと L1CP、L5Iと L5Qのそれぞれ 2 つの搬送波は 90[度]で直交しており、その揺らぎは+/-5[度]を越えない。
5.1.1.6.2 PRN
コードと搬送波の位相関係
全てのQZS信号について、QZSのアンテナ位相中心において、PRNコード位相と搬送波位相 の差の変動は、1.2[ns]を越えない。
また、その差の30[s]以内の変動は、0.01[ns](≒0.3[cm])を越えない。
5.1.1.6.3PRN
コードジッタ
5.1.1.6.3.1PRNコードジッタ
PRNコードゼロクロスの間隔のジッタσjitter(図 5.1.1-3による)は、3σ値で2[ns]を越えない。
図 5.1.1-3 コードジッタσjitterの定義 完全で理想的なPRNコード
エッジにジッタのある現実的なPRNコード
σjitter σ
jitter σ
jitter σ
jitter σ
jitter σ
jitter
σjitter
IS-QZSS Ver. 1.6 5.1.1.6.3.2 PRN
コードの
rising/fallingエッジの遅れ
PRNコードについて、fallingエッジを正しいと見た時のrisingエッジの遅れ時間(或いは進み 時間)Δ(図 5.1.1-4による)の平均は、1.0[ns]を越えない。
図 5.1.1-4 PRNコードのrising/fallingエッジ遅れ時間Δの定義
5.1.1.7
信号間の
PRNコード位相関係
全てのQZS信号は、5.1.1.2項に示す周波数を持つ単一で同一のクロックから生成されている。
全ての QZS 信号について、QZS のアンテナ位相中心において、それぞれの PRN コード位相の 位相差は、表 5.1.1-2に示す値を越えない。
表 5.1.1-2 信号間のPRNコード位相の差
また、その位相差の変動は、3σ値で2[ns]を越えない。
また、その位相差の30[s]以内の変動は、0.01[ns](≒0.3[cm])を越えない。
また、その位相差は、航法メッセージ(TGD、ISC(Inter-Signal Correction)等)に含めてユーザに送 信され、その精度はTGDについては4.5[ns](3σ)以下、ISCについては3.0 [ns](3σ)以下である。
完全なPRNコード
Fallingエッジが遅れるPRNコード
Risingエッジが遅れるPRNコード
Δ Δ Δ
Δ Δ Δ Δ
L2 LEX L5
25 ns 35 ns 20 ns L1
15 ns 10 ns L2
20 ns LEX
IS-QZSS Ver. 1.6 5.1.1.8 最低信号強度
円偏波受信で0[dBi]の利得を持つ等方性アンテナを地上に設置し、仰角10[°]以上のQZSから のQZS信号を受信した時、その受信電力は表 5.1-1に示す値よりも小さくならない。
サービスエリア内の各地の受信電力は、概ね、3.1.3.6項に示すようになる。
5.1.1.9 偏波特性
全てのQZS信号は、右旋円偏波である。
L1-SAIF 信号を除く他の全ての信号の円偏波の楕円の長軸短軸の電力比率(軸比)は、L-ANT
のボアサイト中心方向から±10[°]のビーム範囲で、電力比でL1信号は1.0[dB]、L2信号とLEX 信号とL5信号は2.0[dB]を越えない。
また、L1-SAIF信号の軸比は、1.0[dB]を越えない。
5.1.1.10 アンテナ位相中心特性
L1-SAIF信号を除く全てのQZS信号で、L-ANT のアンテナ位相中心は、L-ANT のボアサイト中
心方向から±10[°]のビーム範囲で、+/-1[cm]の範囲にある。
また、L1-SAIF信号は別のアンテナであるLS-ANT から送信され、そのアンテナ位相中心は、LS-ANTのボアサイト中心方向から±10[°]のビーム範囲で、+/-1[cm]の範囲にある。
L1-SAIF信号とそれ以外の信号のエフェメリスデータは、LS-ANTとL-ANTのアンテナ位相中心
に対応しているので、互換性は無い。
5.1.1.11 PRN
コード
5.1.1.11.1 補完信号GPSと同属のPRNコードを使用する。詳細は、5.2節以降の各節および適用文書(1)、(2)、(3)参 照のこと。PRN番号は、193番~197番である。QZSの1号機は193番、2号機以降は順に194 番から割り当てられる。198 番~202 番は、システムが使用するのでユーザは使用してはならな い。
5.1.1.11.2 補強信号 (1)L1-SAIF
信号
いわゆる、GPSのL1C/A信号と同属のPRNコードを使用する。4詳細は、適用文書(1)を参 照のこと。PRN番号は、183番~187番である。QZSの1号機は183番、2号機以降は順 に 184番から割り当てられる。188番~192番は、システムが使用するのでユーザは使用し てはならない。
(2) LEX
信号
カサミ系列を使用する。詳細は、5.7節による。PRN番号は、193番~197番である。QZSの 1号機は193番、2号機以降は順に194番から割り当てられる。198番~202番は、システ ムが使用するのでユーザは使用してはならない。
IS-QZSS Ver. 1.6