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RA・BERA・BIRU・HERO・PERO・HERAを

対象とし,これらの前にほかの語形のついた複合語形も 参考のためとりあげた。ただし,116図「唇」のKU−

CIBIRUだけは標準語と同形で,全国にまんべんなく 分布しており,図が煩雑になるので,原則とは違ってく

るが,地図から省いた。

 次に,凡例の説明をする。表中のある欄に位する符号 は,その位置を左にたどると何という語形であるかがし るされており,真上にたどると,どの意味に使われている かがしるされている。符号の体系は,形が語形を示し,色 が意味を示している(したがって,凡例の表で,横には同 形の符号が並び,縦には同色の符号が並ぶことになる)。

符号の形はできるだけ原図である116図〜119図と共通 するよう心がけた。なお,複合語の一部分としてベロな

どが含まれている語形はぬき符号となっている。符号の 色は,赤系統が身体部分,青系統が分泌液となっている。

 地点の見方について説明する。ここでとりあげた語形 がどの地図にも現われていない地点には,この地図で符 号をまったく示していない。該当語形がある場合は,そ の語形を示す形の符号をしるし,4種の意味のどれであ るかを示す色をその符号に与える。同一地点に該当語形 が二つ以上の意味で使われている場合は,符号がアーク なしに接して並べてある。すなわち,同一地点で一つの 語形が二つ以上の意味にまたがって使われている(二つ 以上の意味が語形によって区別されていない)言合は,

まったく同じ形で色の異なる符号が横に接して並ぶこと になる。なお,アーク印がないので,具体各地点の詳細 について疑問が起こりうる。その場合は各図によって確 かめられたい。

 次に地図を大観しよう。九州西部・奄美。沖縄を除い て,ベロがなんらかの意味で使われていることがわか る。このうち,北海道・東北北部では分泌液で使われる 傾向が強く,他地域では身体部分を表わす傾向が顕著な

ことがわかる。ベロが分泌液を意味することが本来的な のか,身体部分を意味することが本来的なのか不明であ るが,前者が意味分野の圧迫などの理由で新しく発生し た可能性が強いようである。

 区別の有無という点から見ると,東北北部・北海道で は「唾」と「誕」とを共通の語形で表現する地点がかなりあ

り,岩手の一部・北海道ではこれらと「舌」との区別のな い地点も目立っている。「唇」の揚合は,全国的に複合語 となるので,「舌」とは区別されるが,「唇」の後部分と

「舌」とが同じ語形である地域が,福島・関東・中国地方 などに見られる。なお,中部地方には「唇」がKUCIBE−

RA,「舌」がHERAの地点や地域がある。ベロ類がは じめ舌に用いられ,のち唇に用いることが,近畿から全 国的に広まったかとも思われる。

 なお,区別のありなしという観点をとる場合は,この 説明冒頭に述べたッ・ッバ類・ヨダレ類・シタ・シタキ 類などについて116図〜119図を比較した結果と対照し つつ考える必要がある。

 ッ・ッズ類・ッバ類に注目すれば,九州。琉球で「唇」

と「唾」,沖縄島で「唇」と「舌」,和歌山で「唾」と「誕」が区

別されない事になり,結局4者の区別のはっきりして いるところは近畿と四国くらいということになる。地点 としては区別があっても,隣接地域では別の意味を表わ す語形を,多分借用して区別をしているのではないかと 思われる現象が東北北部(唾と誕),東北南部・東関東

(舌と唾),琉球(唇と唾,唇と舌)などに認められる。

 こうなってくると,これらの区別の比較的あいまいな 現象が,古くは全国に分布していて,近畿など中央日本 で区別をはっきりさせる傾向が発生し,それが周辺に及 んで,一方,地方では何らかの手段で区別を受け入れよ

うと努力している一というのが現状ということになろ

うか。

 なお,本証131図「垢」にも,大分の国東半島付近に5地 点ベロが現われて注目される。一部に同音衝突が見られ るようである。このほか,『全国方言辞典』によれば,ベ ロの見出しのもとに「あいなめ」「どう(泥)」「乳児」「せい の高い人」の意味で使う地方が指摘されている。アクセ ントの点から同音語と認めることのできないものも含ま れている可能性もあるが,併せて考えるべき問題であ

る。

121.おやゆび(親指)

 5本の素謡(121図〜125図)を表わす諸語形において,

語形の後半の「ゆび」にあたる部分についてどう言うかの 結果は,総合的に126図に示しておいたので,「ゆび」部 分の語形に関する説明はそちらにゆずる。ただし,この 121図(以下125図までも同じ)でも,「ゆび」部分の語形 までを符号の形の区別によって表現することにした。す なわち,「〜ゆび」の「ゆ」の部分がユのものにはぬりつぶ し符号を,ヨにはぬりつぶしの大符号を,イには中ぬき

符号を,エには中ぬきの大符号を,「ゆ」が直前の母音と 融合したものや脱落したものには中ぬきの細符号を与え

た。「び」の部分がべであるものにも一定の符号を与え た。さらに,;奄美・沖縄などにある,ウビ,ウイビ,ウ ヤビなどにもそれぞれ一定の符号を用いた。「ゆび」部分 のついていない語形には線符号を与えた。

 なお,凡例における語形表示で,たとえば「親指」なら ば,「おや」部分と「ゆび」部分との切れ目については,

OYAYUBI, OYAUUBI, POOIIBIなどわかりや

すいものが多かったことと,ODEBIなど融合して分 離できないものもあったことなどの理由により,形態論 的な観点による切れ目表示を必ず入れて示すことはしな かった。ただし,切り方について誤解を起こす恐れのあ る場合にだけ 印を入れて切れ目を示した。これは,121 図から125図までの七二共通の扱いである。 印を入れ

る揚合を列挙すれば次のとおり。

(1)子音の直後に母音や半母音が続く場合,直前の子 音と結合して音節を作るのではないことを示す(例 HITOSAT IT, GOSUN,YUBI)。

② 3個分の母音が続く場合,ふつうは切れ目があると 予想される異母音連続に切れ目がなく,同母音連続に切 れ目があることを示す(例UPU UIBI)。

(3〕3個分の母音の全部が異母音連続,あるいは全部が 同母音連続で,どの母音間に切れ目があるか見当のつき にくい場合に切れ目を示す(MINA UIBI, CYUU−

SAI,UIBI, UPU,UUBI)。

 121図の分布を見ると,緑の符号を与えたオや類が全 国に広く分布し,赤の符号を与えたオオ類が東北。佐 渡・入丈・西九州・奄美。沖縄などの辺境の地に離れて 分布し,空の符号を与えたオト類が東北北半と北海道南 部にややまとまって分布している,と概略的に言うこと ができよう。

 オや類は「ゆび」部分の変種のほか,特に問題はない が,香川のIYA〜は「親」かど5か疑問も残る(徳島に祖 谷という地名がある)。UYA〜は奄美では規則的な音 韻対応によりオヤにあたるものと考えられる。名古屋付 近のOYEEBIは〔oj撒bi〕であって, OYAIBIからの 規則的な音変化によるものである。

 オオ類は「大」にあたると思われるものをまとめて一類 とした。東北北部のOYUBI, OIBI, OYOBI, OEBI,

は古語の「および」に由来するというよりは,この地方で 長音が発音されにくいという音韻の傾向を考えると,そ

れそれ00YUBI,001BI,00YOBI,00EBIなど

にあたるものであろう。ただし,近畿に1地点だけある OYUBIは「および」すなわち「大」のつかない「指」だけ にあたる語形であって,それを親指の場合にだけ使うと いう現象なのかも知れない。佐賀・長崎のUU〜は,こ の地方の音韻の傾向から言ってオオにあたる。第1集 17図によれば,「大きい」はこの地方ではHUTOKAで あるが,HUTOYUBIはこの121図にはまったく現わ れていない。このずれについて歴史的にいろいろ推定も 可能であろうが,接頭語の土目と,形容詞形オオキイと の文法的相違にもとつく歴史上のずれについては,留意 しておく必要があろう。入日島のBOO〜,沖縄のMA−

GI〜は,ともに「大きい」の意味であることは17図に よって明らかである。沖縄のBUBI, BUUBIもオオ ユビを意味するUPUUBIなどからの変化形と考え赤 の類に分類したが,ただ「指」だけを示すUIBI, WIIBI などからの変化形かも知れない。入重山では,Wに対 応してBが現われる。

 以上,オオ類は音韻的にオオに対応するもののほか,

意味的に「大」に対応するものをも含むことになる。後者 はあるいは,前者の翻訳かも知れないとい弓疑いがない わけではないが,とにかく,この類は辺境の地に離れて 分布するところがら,大局的にはオや類よりは古いもの であろうと思われる。

 中央語の文献によってこれを確かめるには,前田富襟 氏「指のよび方について」(「文芸研究」56集・昭和42年

7月)によるのが便利である。そこには5本の各指の名 称について,各時代の文献の用例を調査した結果が載せ られている。ここに同論文付載の一覧表を,筆者の許可 を得て転載する。

 親指については,奈良・平安から中世ごろまでオホユ ビであり,近世初期はまだオオユビが多いが,西鶴の作 品あたりからオヤユビも出はじめ,以後オオユビとオヤ ユビの併用で,前者が正しい名称後者が俗なものという ニュアンスがあったらしいとのことである。

 この歴史は,さきの分布からの推定と矛盾しない。す なわち,古くは中央もオオ類であって,全国に連続して 分布していたことになる。これが中央で「大」から「親」へ 変化してそれが周辺に広まったのであろうが,その理由 のひとつには,小指との対照がある。コユビのコが「小」

から「子」に移行することとの平行関係を,考慮してみる わけである。また,オオとオヤとの音の類似,意味の関連

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