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は「をみなご」または「をんなご」からの転とされるから,

新しい形であろう。文献では「をなご」は狂言に現われ

る。

 ONNAからONAGOが出てきたとき,2語併用で

意味を分担し合ったときONNAの方が一般的な「女」

の意味からはずれていったというよ弓な事情があったか とも思われる。たとえば,ONNAが「恋人」「情婦」の意 味を分担したなど。そのために「女」の普通称を示すもの

としてのONNAは沈下してしまったと考えるわけで ある。しかし,これについては各地におけるONNA

という音形式の意味,ないしは「一入」「情婦」などを意味 する語についての精密調査をした上でないと,確言する ことはできない。ONNAは九州では,ごく北部を除い てはほとんど現われず,ONNAはこの地方で完全に駆 逐されたことを示している。他の地方のONNAは,

その地方でONAGOという語形を追ってあとから活力 をとりもどしたものであろう。特に分布の形,すなわち 北陸でONAGOが二つに断ち切られている形からいえ

るようである。このように古い語形が復活した理由とし ては,AMA類という語が,もとは「女」を意味していた にもかかわらず,後,意味の下落を生じ,いわば戦線か ら脱落した点をあげることもできよう。つまり,他の地 方のようにはONNAの意味が下落しなかったのであ

る。北海道における半島部以外のONNAは,新しく標 準語としてはいったものと思われる。

 138図によれば,ONAGOを卑語とする地点が点々 とある。これらの地点では,一つの例外もなく,卑語で ない普通称の形はONNAである。新しくはいった標準 語が一般称のために使われ,在来のものを卑語に移す現 象は,広く一般に認められるところである。ONNAを 卑語であるとしたのは,兵庫に1地点あるだけである。

これらの点は,上に述べたONNAが悪い方の意味を分 担したとする説にはつこうの悪いものである。

 ONAGOSYUU, ONAGOSIは元来は複数的なもの

であったろうが,今その意味でなく使われている。紀伊 半島,四国中央部山地に,特にONAGOSIが多いのは・

この語形がかなり古いことを示しているようである。

 ONNAGOは, ONNAからONAGOへの過渡期

を表わすという説がある。「男」のONOKOGOときれ いに対応する入谷島のものは,あるいはこの過渡期のも のであろうか。宮城北部や岩手の東南海岸部のものも そうであるかも知れな、・。しかし,ONNAの周辺の

ONAGOの中に分布するそれらは,この二つの語形の 衝突によって生じた中間的なものと考えることもできよ

う。ONANGOもまた中間的な語形とすることがで

き,吉野川上流に多く見られる。

 UNAGOは「牝牛」のUNAMEと関係があるかも知

れない。

 凡例のUNAGU以下HUNATまでは,奄美から沖

縄本島とその属島までに分布する。ONAGOに対応す るものおよびその変種と考えられ,この類は文献ではと もあれ,相当古い歴史を持っていることを思わせる。

 沖縄に多いWINAGUからYUNAGUまでは,

「をなご」に対応するものおよびUNAGUなどから変 化したものであろう。WINAGUが新しい傾向を示す ものと思われる。『沖縄語辞典』によれば unnaもある 如くであるが,この調査では現われなかった。これは

「男」の,utukuと同様,新しい文章語なのであろう。

『沖縄言辞期で卑称としている jumuwinagu( jumu一 は罵りの接頭辞)はこの調査では出てこなかった。この 語に限らず,琉球列島では卑称は一つも出てこなかっ た。注目すべきことであろう。

 メロ類ではMEROOが目立つ。このMEROOを

「女等」の延とするのはr大言海』の説である。『大日本国 語辞典』には「めらは(女童)」の転とある。いずれにして

もME一は「女」であって,この類のものを赤で示した。

しかし,もっとも古い和語と思われるMEそのものは この調査には現われなかった(あとで述べる琉球先島の MIDUMUなどとも比較せよ)。

 137図ではMERO類は北陸に強い地盤を持ってい る。長崎はMERAで,北海道のものをこの北陸から の輸入と考えれば,狭い意味でのMERO類はここ以外 にはないわけである。しかし,138図の卑称の方を見る

と,全国に薄くではあるが拡がっていることがわかる。

卑称としては古くから広まったが,北陸で意味が上昇す ると同時に強固に広まっていったと考える方が,その 逆,つまり,普通称として昔拡がったものが,北陸を除い て各地で卑称になったと考えるよりは自然であろう。も し後者ならば,他の地域に普通称を現わすこの類が多少 とも残っているのが当然ではなかろうか。なお,ME−

RO類は「若い女」の意味でなら使弓という地点もあっ たが,題意により地図には取り上げなかった。

 MERAは九州西部と鹿児島に分布している。これは MEROと語形は近いが,分布は非常に離れている。

r大言海』説は,この語形には適合しようか。

 MESU, MEN, MENTA, MENDA など,

「牝・雌」を示す語を主として卑称として使う地点では,

「男」の方にも共通する傾向がある(なお136図の説明そ の部分参照)。MESUの両日計4地点は,すべて「男」

にはOSUがあり, MENの2地点中1地点は「男」で

ON, MENTAの14地点中7地点がONTA, MENDA

の1地点は「男、.1でもONDAというように比較的よく 対応している。

 多くは卑称ではあるが,このほかMENCU, MECCI などの「牝・雌」を示すと思われる語形がある。しかし対 応する「男」の言い方がないため,「牝・雌」であることは 確言できない。MENCUは,一方が普通称,他方が卑 称の違いはあるが,北海道と四国に1地点ずつあるし

(北海道の被調査者の両親は大分県出身),MENCUU は静岡3地点,山口1地点となっている。なお「女」の卑・

称としてはONCUUが山口にある。 MENCUUに

対して「牡・雄」のONCUU が考えられるが,これが

「牝・雌」を示すことに転換したのかも知れない。地点は

山口のMENCUUとそう近くはないが,遠くでもな

い。なお136図「男」にONCUUという語形はない。ま た(一)MECCU(U)は鹿児島にあり, MECCIは熊本

にある。MECYOなどの一CYOは, AMACCYOな

どの℃YOと同じであろうか。分布では非常に離れ ている(MECYO類は九州, AMACYO類は東海・関 東)。ただし,MENCYA(A)の一CYAもこれと関係 があるならば,これは計4地点静岡にあるから,東海地 方で重なる。しかし,AMACYAとい5のはない。以

上でわかるように,「男」「女」は「牡・雄」「牝・雌」とは 密接な関係があるので,これらについても調査すべきで あったと,いまは思う。

 卑称のMETAは九州に主力があるが,なお青森に も1地点あり,METTA類になると青森が主力で,な お熊本に1地点あり注目される。MEETAはその中間 として神奈川,埼玉に各1地点ある。これらがすべて関 係あるものならば広い範囲に少しずつ分布していること になる。

 MEKKAIおよびその変化形MEK:KEは青森以北

北海道に現われる(秋田にもこの類はあるが)。特に普通 称としては北海道にあるだけであって,これは北海道の 特色といっていいであろう。もっとも,この北海道でも 卑称の方が多い。北海道の半島部はMEKK:E,その他

にMEKKAIが多いが,後者は標準発音的に直した

ものであろう。いずれにしても海岸部の語である。これ に対応する「男」のOKKAIは北海道に1地点あるだけ で有力ではない。おそらくOSU:MESUに類推して あとからできた語形であろう。この一1くE,一KAIにつ いてはよくはわからないが,あとで述べる一KESIと 関係があるかも知れない。なお,これは「女の子」につい て言5という注のあるものが他に多かったが題意により 図には示していない。

 METACIは「女たち」であろう。

 凡例のMIDUMU以下の赤は琉球先島に現われる。

「女ども」の意であろう。ここにME一を持ったものが現 われているのは,日本語のたどりうる最古のものを示す ものかと思われる。「男」のBIKIDUMUなどと対応 しMI−DUMUと切れる。この先島にも卑称は現われ ていない。『八重山語彙』にあって,この調査に現われな かったのは,ミドー(竹富), ミドゥヌ(波照間), ミー

ドゥム(鳩間),ミンドゥン(小浜)である。

 NESYOO類はもちろん「女性(によしょう)」からき ているであろう。分布から見て,この類が一度中央の語 形となったことを思わせるものがある。あとからできた ONAGO類に圧:倒されて今卑称を主とするようになり つつあるところである。その姿はたとえば佐渡に典型的 である。全島おそらくNESYOOであったところに南 西からONAGOが伸びてきて,前者を卑称に落とし,

やがて消してしまう過程であろうか。NYOSYOOと いう語形がないのもおもしろい。ナ行拗音の発音が日本 人にとってむずかしかったころの語形であったと考える

ことができようか。

 NYOOBOOの類もやはり一度は中央に地歩を占め たのではあるまいか。それがNESYOOの類よりあと であることは分布から推定できる。北陸へはNYOO−

BOの形で残り,中国地方では,中国山地でNYOO−

BO,北の日本海岸に近くなるとNYOOBAが多く

なっている。この類は「女房」から出発しているので,表 面的にはNYOOBO(0)がもとの形に近く, NYOO−

BAの方が変化形であると考える方が自然であろう。こ の自然さとこの中国地方の分布の姿は合わないようでも あるが,中国山地は交通不便であると見れば残存と考え てさしつかえないと思う。一方, NYOOBAのAを

「にょうばう」の字音に関連させることも考えうる。な お,この類がほとんど卑称としては使われないことは,

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