第 5 章 次世代 PMT 、 Ultra Bialkali PMTBialkali PMT
5.4 R3479 と R8900U との比較結果
5.4.1 R3479 との量子効率比較
量子効率の比較では、まず各々で1 Photoelectronを測定しそのHV値を 決定、その後100 Photoelectrons程度の大きな光量のNDフィルターの設 定で測定し比較を行った。1 Photoelectronの測定でHV値が定まりゲイン を揃えてあるので、同じNDフィルターの設定で測定されるPhotoelectron 数の比が量子効率の比率となる。なお、測定に使用した6 mm 角のマス クは同じものを双方のPMTで使用しその誤差を考えなくて良い設定とし た。
表5.4にBialkaliとUltrabialkaliの量子効率比の測定結果を示す。
model eective
area(mm2) measuredp.e. p.e./mm2 Q.E. ratio R3479
(Bialkali) 36.0 75.6±0.3 2.10±0.01 1.00 @470nm R8900U-200-M4
(Ultra Bialkali) 36.0 109.5±0.4 3.04±0.01 1.45 @470nm 表 5.4: BialkaliとUltra Bialkaliの量子効率比
双方の受光面よりも十分に小さい6mm角の領域以外をマスクして測定 した。
双方のPMTの有効面積は6 mm角の同一マスクで覆っているので同面 積である。その為、測定したPhotoelectron数がそのまま量子効率比とな る。その結果、R8900U-200-M4(UltraBialkali)の方がR3479(Bialkali)と 比べて約1.45倍量子効率が良い事が分かった。
PMT、光電子増倍管はその形状ごとにカソードから第一ダイノードへ
の電子の収集率(fKD1)が異なる。この値はR3479で0.8、R8900Uシリー ズで0.7である。今回の測定では、R3479がラインフォーカス型、R8900U がメタルチャンネルダイノード型でその形状が大きく異なる中で測定を 行ったので、表5.4の結果には電子の収集率(fKD1)の違いが含まれてい る。従って、この値を除き補正を行なわなければならない。電子の収集 率(fKD1)を除き、補正を行った量子効率比の結果を表5.5に示す。表に
のでfKD1を除くと量子効率比はR8900Uの方が約1.65倍大きくなった。
この結果より、材質のみの比較でBialkaliよりも、UltraBialkaliの方が量 子効率が良い事が分かった。
model Q.E. ratio
with fKD1 fKD1
Q.E. ratio without fKD1 R3479
(Bialkali) 1.00 0.80 1.00 @470nm R8900U-200-M4
(Ultra Bialkali) 1.45 0.70 1.65 @470nm
表 5.5: カソードから第一ダイノードへの電子の収集率(fKD1)を除いた 量子効率比。fKD1はR3479(Bialkali)の方が大きいのでfKD1を除くと量 子効率比はR8900Uの方が約1.65倍となった。
PMT、光電子増倍管の量子効率は、入射光の波長に大きく依存する。
そこで、R3479、R8900Uシリーズの製造元である浜松ホトニクス社が公 開しているデータシートでPMTの波長依存性について調べた。
図5.17(93頁)に今回使用したPMTの光電面の材質、Bialkaliと Ultra-Bialkaliにおける量子効率の入射光波長依存性を示した(このグラフには Super Bialkali(SBA)の量子効率も示してあるが、今回の実験ではSBAは 使用していない)。今回、標準光源として日亜化学製LED NSPB510sを 使用している。このLEDの発光スペクトルは46頁、図4.8に示すように 波長470 nm付近が最も強い。この波長470 nmでの量子効率を図5.17よ り読み取るとBialkali(黒)では約21% 、UltraBialkali(赤)では約29% と なる。これより、波長470 nmではUltraBialkaliの量子効率は、Bialkali と比較して約1.35倍となる事が分かる。
ところで、この図5.17のデータシートには前述した収集率fKD1は含 まれておらず、純粋に光電面の違いによる量子効率を表している。測定 結果では収集率fKD1を除いた量子効率の比は1.65倍となり浜松ホトニ クスの値1.35倍より大きくなった。この違いが生じる第一の理由として、
LEDの発光スペクトルが拡がりを持っている事が考えられる。図4.8を
見るとLEDの発光スペクトルは確かに470 nm 付近が最も強いが、ある 程度の拡がりを持っている。そこで、このスペクトルの拡がりを考慮し てLEDからの入射光量を考えた。
図4.8から波長440nm〜500nmにおける強度を10nm刻みで読み取り、
その波長に対応する量子効率を図5.17より読み取った。表5.6(94頁)が その値である。
図 5.17: BialkaliとUltra Bialkaliにおける量子効率の波長依存性。測 定に用いた470nmの波長のLED(図4.8)では、Bialkaliが約21%、Ultra Bialkaliが約29% である。この比較データは入射窓ガラスがBorosilicate ガラス(ホウ珪酸ガラス)の際の比較データである(入射窓ガラスによる 違いを考慮した比較については後述する)。
波長inmに対する相対強度をwi、Bialkaliの量子効率をϵi(BA)、
Ultra-LEDの波長(nm) 相対強度 BAの量子効率(%) UBAの量子効率(%)
440 0.20 24 35
450 0.45 23 33
460 0.80 22 31
470 1.00 21 29
480 0.60 19 26
490 0.20 16 23
500 0.10 15 21
表 5.6: LEDの波長別量子効率。BAはBialkali、UBAはUltraBialkaliを 表す。
Bialkaliの量子効率をϵi(U BA)とすると、ばらつきを考慮した量子効率は、
< ϵ >= Σwiϵi
Σwi (5.3)
で表される。これより、Bialkali、UltraBialkaliの双方のばらつきを考慮 した量子効率を計算すると、
< ϵBA>= 20.85 (5.4)
< ϵU BA>= 29.24 (5.5)
となる。よって、29.24/20.85 = 1.40となり、UltraBialkaliのほうが量子 効率が約1.40倍良いといえ、この結果でも、収集率fKD1を除いた測定結 果の量子効率比1.65倍よりも小さくなってしまう事が分かった。
上記に示した測定結果とHPKKデータの違いの理由はPMTの個体差 によるばらつきも考えられるが、今回の測定の統計エラーは非常に小さ く(1%以下)、また後述するR8900U-203-M4の測定でも統計エラーも1%
以下と非常に小さい。これらの事実から考えると、個体差によるばらつき がHPKKデータとの違いの理由であるとは考えにくい。従って、R8900U シリーズの量子効率は今回の測定通り実際に浜松ホトニクスの値よりも 高いものと考えられる。