第 4 章 PMT R3479 パフォーマ ンステスト
4.5 ライトガイドの傷による集光率の低下
CANGAROO-IIIでは、PMTにライトガイド(図4.24)を取り付け、小 型鏡で反射されたチェレンコフ光の入射をコントロールしている。
図 4.24: CANGAROO-IIIで使用しているWinston Cone型ライトガイ ド。ライトガイド本体に筒をつけ、この筒をPMTに接着して固定する。
CANGAROO-IIIで用いているライトガイドはWinston Cone型と呼ば れるものである(図4.25)。図4.25の赤の曲線はWinston Coneの断面を 表す。基本的には二つの回転した放物線から成る。図のo'に放物線の焦 点がくるようになっているためz'軸に平行な入射光は全てo'に集まる。
従って、図の領域A内の光は反射無しか一回反射でWinston Coneを通 過する。一方、B領域の光は反射を繰り返し再び外に出るので通過でき ない。これはWinston Cone内面の任意の点にθ0より大きな角度で入射 し反射した光は必ずz > 0の領域で二回目の反射をすることから明らか
である(最初の入射角がθ0より大きいと、二回目以降の反射時の入射角
は必ずθ0より大きいのでいつもz >0の領域で反射する。そして、ある 時点でz軸正の方向に向かって反射し始める)。
z
z’
r’ r
o
o’=focus1 θ
θ a
a’
●
-f L
z’= r’ -f1 4f
2
on-z’axis
A : pass with 0 or 1 bounce
B : rejected B
a’
a light
0 0
●focus2
図 4.25: Winston Coneの原理図。赤の曲線はWinston Coneの断面を表 す。基本的には二つの回転した放物線から成る。領域Aからの光は反射 無しか一回反射でWinston Coneを通過する。一方、B領域からの光は反 射を繰り返し再び外に出ていく。
実際に製作したWinston Cone型のLGはポリカーボネートでできてお り、内面はアルミ蒸着され更にSiOでコーティングされている。反射率 はチェレンコフ光の主波長域300nm〜400nmで約80% である。又、この 形状は入射角約33°以上のノイズ光をカットする。これはライトガイド からみて鏡がこの値の角度ほどに広がっているからである。実際に1本
のPMTR3479を用いてこれらの特性を確認したので報告する。
実験方法について説明する。PMT R3479を用いて、
1. 新品のライトガイドをPMTに装着した場合と装着していない場合 の集光率を比較
2. 新品のライトガイドと傷つき汚れたライトガイドで集光率を比較 という方法で特性を調べた。
1.新品のライトガイドの集光率図4.26に示すように、新品のライトガイ
ドの集光率を調べるために、ライトガイドを装着した場合と、ライトガイ ドの土台を付けた場合で集光率を比較した。ライトガイドの土台を付ける 事で、光が入射する光電面を等しくする事ができ、正確な比較が可能であ る。結果を表4.7に示した。新品のライトガイドを付けた場合2.13±0.22 倍に集光率が上がる事が分かった。
Lgiht Guiede (LG )の有無によるR3479の出力光量の比較 No LG (p.e.) LG (p.e.) LG / No LG KA8650 (R3479) 54.0±7.39 115±11.8 2.13±0.22
表 4.7: ライトガイドの有無によるR3479の比較。約2.13倍という結果 が得られた。
2.新品のライトガイドと傷つき汚れたライトガイドで集光率比較新品 のLGと傷つき汚れたLGで集光率の比を比較した。ひとつのライトガイ ドに付き試行を10回行い、新品LG4個、傷つき汚れたLG4個、計8個 測定した。その実際のデータを図4.27に示す。ADC countの値で比較す る事で新品のLGと傷つき汚れたLGで集光率の比の値が得られる。
図 4.26: ライトガイドの有無による光量を比較した。左がライトガイド
を外した状態、ライトガイドの土台でマスクをしている。右がライトガ
New Light Guide 1 (ADC)
New Light Guide 2 (ADC)
New Light Guide 3 (ADC)
New Light Guide 4 (ADC)
Old and damaged Light Guide 1 (ADC)
Old and damaged Light Guide 2 (ADC)
Old and damaged Light Guide 3 (ADC)
Old and damaged Light Guide 4 (ADC)
図 4.27: 新品のLG(左)と傷つき汚れたLG(右)のデータを示す。ひとつ のライトガイドに付き試行を10回行い、新品LG4個、傷つき汚れたLG4 個、計8個測定した。縦軸はカウント数、横軸はADC countである。
実際に得られた新品のライトガイドと傷つき汚れたライトガイドでの ADC countと集光率の比の結果を表4.8に示す。傷つき汚れたライトガ イドでは新品のライトガイドと比較して集光率が0.944±0.023倍になる 事が分かった。CANGAROO-III望遠鏡で使用しているライトガイドは傷 つき汚れた状態でもその集光率が著しくは低下しない事が分かった。
新品のLGと傷つき汚れたLGの比較 (ADC count) New LG Old & damaged LG Old & damaged / New 1 676±2.49 661±2.88 0.978
2 668±2.36 621±3.32 0.929 3 669±2.21 624±3.11 0.933 4 669±3.54 625±2.89 0.934
total 670±3.97 633±19.1 0.944±0.023 @470nm
表 4.8: ライトガイドの傷と汚れによる集光率の低下の結果を示す。傷 つき汚れたライトガイドでは新品のライトガイドと比較して集光率が 0.944±0.023倍(主波長470 nm のLED、NSPB510sを使用)になる事が 分かった。CANGAROO-III望遠鏡で使用しているライトガイドは傷つき 汚れてもその集光率は大きく低下しない事が分かった。
この結果より、現在CANGAROO-III望遠鏡でカメラ部分においてそ の改修を行う際、ライトガイド部分の修繕(交換など)は優先順位が高 くない事が分かった。