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第 4 章 PMT R3479 パフォーマ ンステスト

4.2 結果

今回テストしたPMTは新品のPMT54本とWoomeraで使用後に故障 として持ち帰られたもの63本の計117本である。新品のPMT54本の内 53(98.1% )本は実際の観測で使用可能。1本(1.9% )は量子効率が悪く使 用圏外であった。故障として持ち帰られた63本の内53本(84.1%)は真 空が破れて放電現象を起こしているもので使用不可能であった。また63 本の内5本(7.95% )は正常に動作して使用可能であり、5本(7.95% )が 量子効率が落ちてしまっていて仕様圏外であった。故障として送り返さ れたPMTの内5本が使用可能となったので、今後もう一度Woomeraに 持っていき、再度使用可能かどうか調査する必要がある。図4.10 に上記 した結果を示す。4.2.1項から4.2.4項では図4.10 でのNew(新品)、Used でEverything O.K.となった53+5=58本にBad Q.E.(量子効率が低い)の 5+1=6本を足した合計64本のPMTについて行ったテストの結果を示し ている。

図 4.10: R3479、全PMTの結果概要。新品のPMT54本とWoomeraで 使用後に故障として持ち帰られたもの63本の結果。Everything O.K.の ものは実際の観測で使用可能。Bad Q.E.のものは量子効率が悪く、使用

圏外。Sparkは真空が破れて放電現象を起こしているもので使用不可能で

ある。

4.2.1 Gain HV 依存性

GainのHV依存性の結果について説明する。この測定によりPMTの ゲインを任意の値に揃えることができる。測定は10p.e.相当の入射光量で 行なった。4.1.5項の手順で示した様に、Gainが1.2×107となるHVの値 HV1を計算式より見積もり、HV1の時のGainが2倍、1/2 倍となるHV の値HV2、HV1/2を計算式より見積もり、各値でのPMTの出力をADC で1000events取った。使用しているADCは1チャネル当たり0.244pCな のでゲインは次式で求める。

Gain= (ADCmean−pedestal)·0.244×1012

1.6×1019 (4.10)

(分母は電子の素電荷(C))。上式で求めたゲインとHV値をプロットし次

の関数でフィッティングした:

Gain=K ·(HV)α (4.11)

図4.11の左が結果で(縦軸はlogスケール)、右は上式のαのばらつきを 表すヒストグラムである。

HV vs Gain

Voltage (V)

Gain

1100 1200 1300 1400 1450

Alpha vs Count s

0 1 2 3 4 5 6

4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 5 5.1 5.2 5.3

ID Entries Mean RMS UDFLW OVFLW ALLCHAN

100 64 4.869 0.7448E-01 0.000 0.000 64.00

alpha

Number ofPMTs

図 4.11: 左はPMTR3479(ID : KA8706)での印加電圧とゲインの関係を 示す。右は全PMTのフィッティングパラメータαのばらつきを示す。

αは左の図で傾きを表し、64本の結果が4.9(σ = 1.5% )と非常によく 揃っており、これはPMTの特性が良く揃っていることを示している。過 去のPMTテストでは4.9(σ =2.1%)[9]、4.8(σ =2.0%)[10]であり、3点 の測定でも同程度の結果が得られた。またフィットのαそのもののの誤差 は1%程度で十分小さかった。

4.2.2 HV 値の決定

PMTのゲインは実際の観測に則して1.2×107(60倍ゲインのプリアン プ込み)になる様に決定した。GainのHV依存性を測る際(4.2.1項)に、

HVの見積もりを行ってしまったこ事で3点のデータでPMTの特性を示 すαを求める事ができ、始めに見積もりを行ってしまった事で、ここでの HV値の決定において結果的に1本のPMTにつき10分程度の時間の短縮 (全工程90分程度)に成功した。調節の判断は、NDフィルターで入射光 量を1 p.e.とした状態でA/D変換したPMTの出力をヒストグラムに し、4.1.3項のフィッティングパラメーターでHV値を微調整し行なった。

つまりパラメーターのP1(平均光電子数)が1に、P4 (ゲインをADCの チャンネルに変換したもの)が8になるようにした。但し、実際には精度 良く決定すればするほど時間が掛かり素早いテストが困難になる為、そ れぞれ±20%、±2.5%の精度で決定した。

ところで、今回の実験ではLEDに与える電圧値は常に5Vと一定とし、

LEDから出る光量が常に一定となる様にした(5Vの電圧を与えていれば 温度変化などによる影響はほぼ受けない[9])。PMTにはこのLEDから出 た光をNDフィルターで減光して入射させた(今回、全PMTの測定にお いてNDフィルターの設定は同一とした)。しかし、実際にはNDフィル ターを介さず周りからPMTに入射している光も微量ではあるが存在し、

その光の影響は入射光量が少ないほど大きい(56頁、図4.12)。

この周りからの光とPMT個々の特性によるばらつきを考慮すると、ND フィルターの設定を少ない入射光量に設定した際は、PMTの信号から算 出される平均光電子数の値には多少のばらつきが出る。従って、1p.e.の 入射光量でフィッティングをする際にはP1は高い精度は要求されず、そ の為±20%とした。一方、P4の値によってPMTのゲイン(プリアンプ 込みで1.2×107)を揃える為のHV値が決定するため、P4は±2.5%と 高い精度で求めた。4.1.5項で示した様に、ここではP4でゲインを一定 にするHV値のみを決定し、次項で示すPMTのダイナミックレンジを 見る際には周りからの光を無視でき、NDフィルターの直線性が信頼出来

Photoelectrons VS ND filter ratio

Photoelectrons

ND filter ratio

図4.12: 少ない光量でのNDフィルターの線型性。横軸がNDフィルター の倍率、縦軸がPMTによる出力光電子数を表す。4 p.e.程度の光量から 1 p.e.程度の光量ではNDフィルターの周りから入る光の効果で線型性が 保たれていない事が分かる。

る、より大きい入射光量(10〜20 p.e.程度)で出力光量を見積もり、その 後NDフィルターの透過率を元に光量を調節し測定を進めていった。

各PMTで決定したPMTのHV値の結果を図4.13に示す。

HV, where 1.2e7 gain

0 1 2 3 4 5 6

900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 ID

Entries Mean RMS UDFLW OVFLW ALLCHAN

101 64 1275.

100.7 0.000 0.000 64.00

HV (V )

Number ofPMTs

図4.13: PMT R3479のゲインをプリアンプ込みで1.2×107に揃えるHV 値の決定を行なった。その平均値は1275V(σ = 7.9% )であった。

全PMTの結果は1275V(σ = 7.9% )で、ばらつきは非常に少ないと いえる。過去のテスト結果は1144V(σ =6.7%)[9]、1230V(σ=10%)[10]

と同程度の値となった。決定したHV値の平均値などの違いはHPKKの PMTは生産の度にラインを作り直す為、年によってPMTの特性にばら つきが出る為に生じたものと考えられ問題ない。

4.2.3 PMT ダイナミックレンジ

NDフィルターの透過率から期待される出力光量に対して実際に出力さ れた光電子数は4.1.3項のパラメーターP4を使って求める。P4はゲイン (1光電子の増幅率)をADCカウントのチャンネルに換算したものなので、

実際の出力光電子数= ADCmean−pedestal

P4 (4.12)

で求められる。期待される出力光電子数と、測定値から計算した光電子 数をプロットし次式でフィッティングした[10]。

f(x) =

x (x≤a)

((xa+c)bcb)

b c(1b)+a (x > a) (4.13) この関数は正比例の関数と巾の関数がa点で滑らかに接続するようになっ ている。a点は飽和する光電子数を表す。図4.14はPMTR3479の中の一 本(PMT ID : KA8706) に対する結果である。

Linearity

0 100 200 300 400 500 600 700 800

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 Expected p.e.

Output p.e.

Linearity Deviation

-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 Expected p.e.

Deviation(%)

図4.14: PMT R3479(PMT ID : KA8706)でのダイナミックレンジ。左図 : Linearity(横軸 : NDフィルターの透過率から期待される光量(p.e.)、 縦軸: 実際の出力光量(p.e.)。右図 : Deviation(横軸: 期待光量(p.e.)、

縦軸: 直線からのずれ(%)

図4.14の左はNDフィルターを用いて光量を調節し、期待される出力 光電子数と測定による光電子数をプロットし上式でフィッティングしたも のである。図4.14右は直線からのずれを表す(%)。図4.15のヒストグラ

Saturation point vs Count s

0 2 4 6 8 10

120 130 140 150 160 170 180 190 200 210 220 ID

Entries Mean RMS UDFLW OVFLW ALLCHAN

103 64 165.1 6.765 0.000 0.000 64.00

Saturation point (p.e.)

Number ofPMTs

図 4.15: R3479、PMT全体の飽和点のばらつき。

ダイナミックレンジを示す飽和点の結果は165 p.e.(σ = 4.1% )であっ た。この平均値はプリアンプ修理前の飽和点の低い132 p.e.のデータ(図 4.15にてSaturation pointが130付近のイベント)も含んでおり、その分 ばらつきは大きくなるはずであるが、それでも非常によく揃っている。過 去の結果は226p.e.(σ =7.3%)[9]、202p.e.(σ=6.3%)[10]であり、今回の 結果の方がばらつきは小さくなっている。また、過去の結果と比べて約 50 p.e.程度飽和点が小さくなっているが、この違いは今回の測定でLED に与える電圧値を5 V (過去の測定時では3.5V[9])とLEDに与える電圧 の絶対値を変更した事を理由として説明される。5VはLEDの光り始め の電圧閾値(NSPB510sでは約2.5V)よりも十分に大きな値であり、温度 変化などの影響も受けにくい値である[9]。その為、過去の測定時よりも LEDの出力光量は安定しており(過去の測定では不安定であったと考え られる)、PMTに入る信号の立ち上がり時間などが安定し、プリアンプ でのピーク電圧値が大きくなる。結果、サチュレーションがより早く観 測される事となった。

以上の議論より、PMTのダイナミックレンジについて今回の測定の方 がばらつきも少なくより信頼できる値が得られたと言える。

4.2.4 R3479 の量子効率比のばらつき

4.1.3項、図4.6や図4.7で示した1 p.e.のフィッテイングの際のパラメー タP1は入射光量1 p.e. でGainを1.2×107とするHV値に合わせた際の 平均出力光量であり、Gainは各PMTで揃えているので、そのばらつきは そのまま量子効率比のばらつきとなる。P1が0.8を下回ったPMTは量子 効率比が低いため、出力光量が少なかったと考えられる(今回の測定では P1が1.2を超えるものは存在しなかった)。入射光量1 p.e.での出力光量 (量子効率比)のばらつきを図4.16左のヒストグラムに示す。また、入射 光量が多い方が、出力光量の値はより信頼できるものとなるため、入射光 量100 p.e.でも同様にPMTの出力光量のばらつきを見た(図4.16右図)。

Input 1 p.e.

0 1 2 3 4 5 6 7

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5

ID Entries Mean RMS UDFLW OVFLW ALLCHAN

200 64 0.9648 0.1248 0.000 0.000 64.00

phtoelectrons

NumberofPMTs

Input 100 p.e.

0 1 2 3 4 5 6

50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150

ID Entries Mean RMS UDFLW OVFLW ALLCHAN

201 64 97.23 13.01 0.000 0.000 64.00

phtoelectrons Number ofPMTs

図 4.16: PMTR3479について、左図 : 入射光量1 p.e.での出力光量のば らつき、右図 : 入射光量1 p.e.での出力光量のばらつき。この測定の際 はPMTのGainは1.2×107で揃えているので、出力光量のばらつきはそ のまま量子効率比のばらつきとなる。

入射光量100 p.e.でのヒストグラムを見てみると、100 p.e.の光を入れ て、80 p.e.以下の出力光量となった量子効率比の悪いPMTは新品でも 54本中1本(1.85% )、Woomeraから返ってきたPMTでは63本中5本 (7.93% )あった。これらのPMTで入射光量が1 p .e. の時の結果を見て みると、その出力光量はいずれも0.8 p.e. 以下であり、入射光量が100

p.e. と1 p.e. の結果で相関が取れていると考えられる。実際にその相関 をとってみたところ図4.17に示すようになった。

図 4.17: R3479、入射光量1p.e.と100 p.e.での出力光量の相関図。入射 光量1p .e.と100 p.e.での出力光量の相関が取れている事が分かる。

図4.17の様に、入射光量100 p.e.での出力光量と1 p.e.での出力光量 の相関が取れているので、入射光量1 p.e.での出力光量が信頼出来る値 である事が分かった。

以上より、1 p.e.のフィッテイングの際のパラメータP1の1.0±0.2(±20%

)という精度の設定の信頼性が実証された。また新品のPMTであれば、

ほぼこの1.0±0.2の精度内に量子効率のばらつきが収まることも確認で

きた。この結果は現行PMT、R3479においても生かす事が出来、また後 述する次世代望遠鏡PMT、R8900Uシリーズにおいても生かす事が出来 る統計結果である。