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Abstruct CANGAROO-III (PhotoMultiplier Tube PMT PMT ) PMT PMT R3479 ND 1 PMT 10 ( 90 ) Woomera PMT PMT (Light Guide LG) LG 0.944±0.023 PMT (4 ch) PMT

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(1)

CANGAROOIII

望遠鏡の

光電子増倍管性能評価、修繕

及び次世代望遠鏡光電子増倍管開発

東京大学 理学系研究科

物理学専攻 修士課程二年

國澤 利貴

January 16, 2009

(2)

Abstruct

CANGAROO-III 望遠鏡システムの現行光電子増倍管 (PhotoMultiplier Tube、PMT、以下 PMT の略称も用いる) の性能評価、その修繕方法、及 び次世代望遠鏡PMT の開発、設計、その性能評価について述べる。 現行PMT、 R3479 の性能評価は、長期間使用していなかった ND フィ ルターのキャリブレーションから行い、測定の精度向上、時間短縮のため 若干の変更を行い測定した。測定法の変更により1 本の PMT につき 10 分程度(全工程 90 分程度) の時間短縮に成功し、その結果は前回の結果よ り信頼出来る結果を得る事が出来た。また、観測地であるWoomera にて 使用し、故障PMT として送り返された PMT の故障原因をまとめ、その 修繕を行い、結果をまとめた。更に、ライトガイド(Light Guide、LG) の 傷による集光率の低下についても測定し、十分傷つき汚れたLG では集 光率が0.944±0.023 倍に低下するという結果を得た。 次世代望遠鏡の候補PMT として、メタルパッケージマルチアノード (4 ch) 角型 PMT、R8900U の製造を浜松ホトニクス (HPKK) に依頼し、そ の測定を行った。R8900U では光電面の材質を Bialkali から Ultra Bialkali

に変更する事で量子効率がR3479 の 1.65 倍 (光の波長 470 nm) となった。 この結果より波長350 nm では 1.88 倍、さらに PMT 光電面を Borosilicate ガラスからUV ガラスとする事で 2.09 倍の量子効率の向上が期待できる。 R3479、R8900U 双方の PMT についてアフターパルスを測定し、その レート、及びイベント数のPulse Height、時間との依存性を求めた。次世 代望遠鏡では夜光程度(幅 100 ns 、平均 8 p.e. 程度) の入射光量で Pulse hight 6 p.e. 以上のアフターパルスは入力信号の 0.03% 以下のレートが 求められる。測定結果はR3479 で最大 0.30±0.07% 、R8900U では最大 0.38±0.17% となった。また、Pulse Height、発生時間との関係では、ア

フターパルスはPMT や入射光量に関係なく Pulse Hight では数 p.e. 程度

の定数、発生時間では数百ns 程度の時定数で減少していく事が分かった。

アフターパルスに関しては次世代望遠鏡の目標レート0.03% を達成する

(3)

目 次

第1 章 Introduction 11 1.1 宇宙線と γ 線物理学 . . . 11 1.2 解像型大気チェレンコフ望遠鏡 . . . 13 1.2.1 空気シャワーとチェレンコフ光 . . . 13 1.2.2 イメージング法とステレオ観測 . . . 16 1.2.3 世界の IACT . . . 20 第2 章 CANGAROO-III 望遠鏡 22 2.1 CANGAROO-III 実験 . . . 22 2.1.1 望遠鏡 . . . 23 2.1.2 反射鏡 . . . 24 2.1.3 カメラ . . . 26 2.2 PMT . . . 28 2.2.1 原理 . . . 28 2.2.2 入射窓 . . . 29 2.2.3 ダイノードとゲイン . . . 30 2.2.4 暗電流 . . . 31 2.3 CANGAROO-III 次期計画 . . . 32 第3 章 将来計画と今回の R&D 33 3.1 ガンマ線観測将来計画 . . . 33 3.1.1 CTA . . . 33 3.2 今回の R&D の概要 . . . 35

(4)

第4 章 PMT R3479 パフォーマンステスト 36 4.1 テスト内容及びテスト方法 . . . 36 4.1.1 PMT R3479 . . . 36 4.1.2 テストセットアップ . . . 39 4.1.3 PMT の出力信号 . . . 42 4.1.4 予備実験 ND lter キャリブレーション . . . 46 4.1.5 対象 PMT と手順 . . . 51 4.2 結果 . . . 53 4.2.1 Gain の HV 依存性 . . . 54 4.2.2 HV 値の決定 . . . 55 4.2.3 PMT ダイナミックレンジ . . . 57 4.2.4 R3479 の量子効率比のばらつき . . . 59 4.3 PMT、故障の種類と修理 . . . 61 4.3.1 ダイナミックレンジの小さい PMT の修理 . . . 61 4.3.2 PMT 放電現象 . . . 63 4.4 全 PMT の Gain を上げる準備 . . . 65 4.5 ライトガイドの傷による集光率の低下 . . . 67 第5 章 次世代 PMT、Ultra Bialkali PMT 72 5.1 UBA R8900U シリーズについて . . . 72 5.2 予備実験 . . . 77 5.2.1 予備実験 暗室内環境 . . . 77 5.2.2 予備実験 R3479 と SA0079(自作プリアンプ回路) の 比較 . . . . 81 5.3 R8900U シリーズパフォーマンステスト . . . 83 5.3.1 R8900U での Gain の HV 依存性 . . . 84 5.3.2 R8900U での HV 値の決定 . . . 86 5.3.3 R8900U でのダイナミックレンジ . . . 87 5.4 R3479 と R8900U との比較結果 . . . 90 5.4.1 R3479 との量子効率比較 . . . 90

(5)

5.4.2 ゲイン比の場所依存性 . . . 95 5.4.3 量子効率の場所依存性 . . . 96 5.4.4 実効効率の場所依存性 . . . 97 5.4.5 入射窓ガラス . . . 98 5.5 性能比較 . . . 102 5.5.1 性能比較 . . . 102 第6 章 PMT アフターパルス 104 6.1 テスト内容及びテスト方法 . . . 107 6.1.1 テスト内容 . . . 107 6.1.2 テスト方法 . . . 108 6.2 結果 . . . 112 6.2.1 アフターパルスのレート . . . 112 6.2.2 Pulse Height との関係 . . . 113 6.2.3 時間との関係 . . . 115 第7 章 Discussion 118 7.1 現行の PMT R3479 . . . 118 7.2 R8900U、350 nm での量子効率比 . . . 119 7.3 次世代カメラへの UBA の利用のために . . . 120 第8 章 Conclusion 121 8.1 PMT   R3479 パフォーマンステスト . . . 121 8.2 新品 LG と傷つき汚れた LG の集光率 . . . 122 8.3 Ultra Bialkali PMT . . . 122 8.4 PMT アフターパルス . . . 125

(6)

図 目 次

1.1 エネルギースペクトルの概念図 . . . 12 1.2 空気シャワーの簡単なモデル . . . 14 1.3 チェレンコフ光の放射角の図 . . . 16 1.4 イメージング法パラメータ概念図 . . . 17 1.5 カメラによる実際のイメージ . . . 18 1.6 ステレオ観測概念図 1 . . . 19 1.7 ステレオ観測概念図 2 . . . 19 1.8 IACT の位置を示す世界地図 . . . 20 2.1 CANGAROO-III 実験の観測地地図 . . . 22 2.2 CANGAROO-III 望遠鏡 . . . 23 2.3 CANGAROO の望遠鏡とその配置 . . . 24 2.4 小型鏡の結像性能 . . . 25 2.5 小型鏡写真と調整システム概念図 . . . 25 2.6 カメラの前面と後面 . . . 26 2.7 光電子増倍管モジュール R3479 . . . 27 2.8 1 号機と 2 号機以降でのライトガイド . . . 27 2.9 PMT の原理図 . . . 28 2.10 入射光の波長と透過率の関係 . . . 29 2.11 劣化した鏡 . . . 32 3.1 CTA 望遠鏡配置イメージ図 . . . 33 3.2 CTA 計画が目指す sensitivity . . . 34 4.1 3/4 inch PMT モジュール . . . 37

(7)

4.2 R3479 のディバイダー部分回路 . . . 38 4.3 PMT R3479 のプリアンプ回路 . . . 38 4.4 PMT パフォーマンステストのセットアップ暗箱内 . . . 39 4.5 PMT パフォーマンステストのセットアップ概略図 . . . 40 4.6 多重ガウス分布でのフィッティング概念図 . . . 42 4.7 1p.e. 概念図と実際に得られた図 . . . 45 4.8 LED NSPB510s の発光スペクトル . . . 46 4.9 分光光度計を用いて測定した各 ND フィルターの波長依存 透過率 . . . . 48 4.10 R3479、全 PMT の結果概要 . . . 53 4.11 R3479、印加電圧とゲインの関係 . . . 54 4.12 少ない光量での ND フィルターの線型性 . . . 56 4.13 R3479、HV 値のばらつき . . . 56 4.14 R3479、ダイナミックレンジ . . . 57 4.15 R3479、PMT 全体の飽和点のばらつき . . . 58 4.16 R3479、入射光量 1p.e. と 100 p.e. での比較 . . . 59 4.17 R3479、入射光量 1p.e. と 100 p.e. での相関図 . . . 60 4.18 R3479 の筒を外した状態 . . . 61 4.19 プリアンプ交換前ダイナミックレンジ . . . 62 4.20 プリアンプ交換後ダイナミックレンジ . . . 62 4.21 放電 PMT 内訳 . . . 63 4.22 オシロスコープでの放電 . . . 64 4.23 光球 . . . 64 4.24 ライトガイド . . . 67 4.25 Winston Cone の原理図 . . . 68 4.26 ライトガイドの有無による光量を比較 . . . 69 4.27 新品の LG と傷つき汚れた LG のデータヒストグラム . . . 70 5.1 R3479 と R8900 . . . 74 5.2 R8900U シリーズの構造 . . . 75

(8)

5.3 R8900U シリーズのディバイダー回路 . . . 76 5.4 暗室内でのテストセットアップ . . . 77 5.5 暗室内での x 方向の光量分布 . . . 79 5.6 暗室内での y 方向の光量分布 . . . 79 5.7 暗室内での光量分布 . . . 80 5.8 暗室内中心付近の光量分布 . . . 80 5.9 自作プリアンプ . . . 81 5.10 暗室内にてライトガイドの有無による光量を比較 . . . 82 5.11 R8900U 印加電圧とゲインの関係 . . . 84 5.12 メタルチャンネルダイノード型 PMT . . . 85 5.13 R8900U での 1p.e. フィットの図 . . . 86 5.14 R8900U ダイナミックレンジ . . . 87 5.15 プリアンプ MAX4107 と AD8009AR のダイナミックレンジ 88 5.16 6mm 角マスクを施した R3479 と R8900 . . . 90 5.17 量子効率の波長依存性 . . . 93 5.18 16 分割でのゲイン比の場所依存性 . . . 95 5.19 16 分割での量子効率比の場所依存性 . . . 96 5.20 16 分割での実効効率比の場所依存性 . . . 97 5.21 ガラスの材質による透過率の波長依存性 . . . 98 5.22 ガラスの材質による量子効率の波長依存性 . . . 99 5.23 受光面ガラスの材質別 4 分割でのゲイン比 . . . 100 5.24 受光面ガラスの材質別 4 分割での量子効率比 . . . 101 5.25 受光面ガラスの材質別 4 分割での実効効率比 . . . 101 6.1 低エネルギーでの Crab パルサーからの信号 . . . 106 6.2 オシロスコープで見たアフターパルス . . . 107 6.3 アフターパルス計測セットアップ . . . 108 6.4 アフターパルスのスキャン . . . 109 6.5 アフターパルス、ADC cut . . . 110

(9)

6.6 アフターパルスの Pulse Height とイベント数との関係のヒ ストグラム . . . . 113

6.7 アフターパルスの発生時間とイベント数とのヒストグラム 115 6.8 アフターパルスの発生時間とイベント数とのヒストグラム

(10)

表 目 次

1.1 世界の IACT プロジェクト . . . 21 4.1 PMT モジュール R3479 の仕様 . . . 37 4.2 PMT に直接関係する機器類 . . . 41 4.3 PMT パーフォーマンステスト用機器類の仕様 2(CAMAC モジュール) . . . 41 4.4 分光光度計を用いて測定した各 ND フィルターの波長依存 透過率の結果 . . . . 49 4.5 R3479 を用いて測定した各 ND フィルターの波長依存透過 率結果 . . . . 50 4.6 HV1、HV 値 HV2と α の値 . . . . 66 4.7 ライトガイドの有無による R3479 の比較 . . . 69 4.8 ライトガイドの傷と汚れによる集光率の低下結果 . . . 71 5.1 R3479 と R8900U-200-M4 の効率比較予測 . . . 73 5.2 PMT モジュール R3479 の仕様 . . . 75 5.3 ライトガイドの有無による R3479 と SA0079 の比較 . . . . 82

5.4 Bialkali と Ultra Bialkali の量子効率比 . . . 91

5.5 Bialkali と Ultra Bialkali の量子効率比 . . . 92

5.6 LED の波長別量子効率 . . . 94

5.7 受光面ガラスの材質別量子効率比 . . . 98

5.8 R3479 と R8900U-200-M4 の効率比較 . . . 102

6.1 アフターパルスのレート . . . 112

(11)

6.3 アフターパルスの時間とイベント数の関係 (1) . . . 117

6.4 アフターパルスの時間とイベント数の関係 (2) . . . 117

7.1 波長 350 nm での量子効率比 . . . 119

8.1 UBA のまとめ . . . 124

(12)

1

Introduction

1.1

宇宙線と

γ

線物理学

1900 年に Wilson が大気の電離現象について発表し、その 10 数年後 Hess が気球に載せた電離計で宇宙線を発見して以来、宇宙線の起源、特に 高エネルギー宇宙線の起源は謎として今日も研究が続けられている。1952 年に早川とMorrison がそれぞれ独立に、宇宙線が星間物質と衝突して π0 中間子をつくり、更に π0 → γγ 崩壊によって γ 線が発生することを指摘 し、γ 線天文学の可能性を開いた。その後1961 年に最初の衛星観測が行 なわれ、1972 年からは SAS-2 号、COS-B によって本格的な γ 線観測が開 始された。γ 線の観測による宇宙線の研究では電荷を持つ宇宙線の観測と 比較して次の利点がある。それは γ 線が電荷を持たないため地球への伝 搬の過程で磁場などの影響を受けず、γ 線発生源の方向の情報を失わない というものである。これにより天体の高エネルギー現象の解明等が γ 線 の観測で可能となる。 さて γ 線発生の機構だが π0 → 2γ の他に逆 Compton 散乱による発生 機構等も挙げられる。通常光子が静止している電子に衝突しエネルギー が減少するのがCompton 散乱だが、逆 Compton 散乱は電子が光子にエ ネルギーを与える現象である。例えばかに星雲では、星雲中で加速され た電子がシンクロトロン光子を発し、それを逆Compton 散乱し 100MeV 以上の γ 線を生み出していると考えられている。π0 → 2γ、逆 Compton 散乱などいずれの γ 線発生機構にしても、親粒子とその加速機構の違い がエネルギースペクトルに反映されるため、γ 線のエネルギースペクトル は加速機構の解明の重要な鍵を握る。図1.1 に高エネルギーのエネルギー

(13)

X-ray

Gamma-ray

from Inverse Compton

from Proton

Energy

E dF/dE

2

from Synchrotron

図 1.1: エネルギースペクトルの概念図。親粒子とその加速機構の違いが γ線スペクトルに反映されると考えられる。また、親粒子が他波長でも観 測される場合は、加速機構の強い観測的証拠となる。

(14)

1.2

解像型大気チェレンコフ望遠鏡

天体からの γ 線の観測の方法としては、人工衛星による観測と地上の 機器による観測に分けられるが、ここでは地上での空気チェレンコフ光 の観測について説明していく。

1.2.1

空気シャワーとチェレンコフ光

天体から伝搬してきた γ 線が大気に入射する(一次宇宙線) と空気シャ ワーと呼ばれる電磁相互作用を引き起こす。入射した γ 線が電子陽電子 の対生成を起こし、この電子対が制動輻射で更に γ 線を放射する。この 過程が繰り返しおこり、電子はねずみ算式に増えて行き、その現象を空 気シャワーと呼ぶ。  この制動放射について実際の地上での観測に即して考察していく。制動 放射の断面積を σB(ν)とすると、電子が dx(g/cm2)走る間に、ν、ν + dν の振動数の光子を制動放射して失うエネルギーは: −(dE) =ν { 原子一個と相互作用する確率 (ν) × dx(g/cm2 )中の原子の数 ×制動放射した光子のエネルギー (ν)} = ∫ νmax 0 (σB(ν)dν)· (dx N A)· (hν) (1.1) (但し N はアボガドロ数で A は原子量) となる。そこで、電子のエネルギーを E とすると hνmax ≈ E より νmax = E/hとし、具体的な σBを代入して上式を計算すると −dE E = 4 Z2e2 ¯ hc N A( e2 mc2) 2ln(184Z−1/3)dx (1.2) となる。ここで X0を次の様に定義すると X0 ={4 Z2e2 ¯ hc N A( e2 mc2) 2ln(184Z−1/3)}−1 (g/cm2) (1.3) 微分方程式1.2 の解は E = E0exp(Xx0)となる。この X0は放射長

(15)

(radi-ギーが 1/e になることを示している。空気中では X0 = 36.8g/cm2であ る。入射粒子が γ 線の場合を考えると、物質1g/cm2当たりの電子対生成 確率は N Aνmax 0 σpcdν ∼= 7 9 1 X0 (1.4) となり、一放射長当たり約一回の電子対生成が起こることが分かる。但 し、以上の空気シャワーの過程に於いて電子はいつまでも増殖する事は は出来ない。電子は走行中にクーロン場と相互作用しエネルギーを損失 (電離損失) するので制動放射に限界ができるからである。つまり単位放 射長当たりの電離損失と制動放射による損失が等しくなるところまで電 子の平均エネルギーが下がると(臨界エネルギー)、制動放射による γ 線 の放射は減り、電子の増殖は終るのである。空気中の臨界エネルギーは 約84MeV である。  次に、Heitler(1944) による空気シャワーの簡単なモデルを用いシャワー の最大の粒子数とそのときの高度を見積もってみる。図1.2 が空気シャ ワーの簡単なモデルである。このモデルでは γ 線が大気に入射してから 0 図 1.2: 空気シャワーの簡単なモデル。 深さ X での粒子の数は N (X) = 2X/X0 (1.5)

(16)

となる。個々の粒子のエネルギーが臨界エネルギー Ecになったとき粒子 の増殖は止まり、そのとき空気シャワーの粒子数が最大になるのでエネ ルギー保存則から EcNmax(Xmax) = E0 → Nmax(Xmax) = E0 Ec (1.6) となる(E0は入射 γ 線のエネルギー)。又、式 1.5 と 1.6 から Xmax = X0 ln(E0/Ec) ln2 (1.7)

となる。以上の Nmax ∝ E0と Xmax ∝ ln(E0/Ec)の性質は高エネルギー

の γ 線による空気シャワーのときにほぼ成り立つ。実際には空気電磁シャ ワーのカスケード方程式を解く必要がある。シャワー理論[1] によると大 気へ γ 線が入射し、2 次粒子が電子のとき Xmaxは次式で与えられる: Xmax = X0(ln E0 Ec + 1 2) (1.8) 簡単の為に入射 γ 線のエネルギーを1TeV、臨界エネルギーを 100MeV と すると、上式より Xmax ∼= 10X0となる。つまり 10X0 ∼= 370g/cm2 = 0.36 気圧なので、これは高度約8km に相当しこの高度に於いて空気シャワー の粒子数は最大となるのである。さて、荷電粒子が屈折率 n の媒質内を 走り、その速度が媒質中の光速 c/n より速い場合チェレンコフ光と呼ば れる光を放射する。粒子の軌跡に沿って物質の分極が起こり、それが元 に戻るときに光子を放出するのである。空気シャワーによって発生した 電子や陽電子もチェレンコフ光を放射する。荷電粒子の進行方向とチェ レンコフ光の放射角の関係は図1.3 の様になる。図 1.3 より放射角は cos θ = c/n v → θ = cos−1( 1 ) (β = v c) (1.9)

(17)

v c n -図 1.3: チェレンコフ光の放射角の図。 となる。β∼ 1 とし、高度 8km での空気の屈折率 n = 1.0001 をこの式に 代入すると θ = cos−1( 1 1.0001) = 0.8 (= 0.014rad) (1.10) となる。従って空気シャワーが地面に対してほぼ垂直に高度8km 地点に 発生したとすると、チェレンコフ光は地上で半径 8km×0.014rad = 112m の円に広がることになる。このようにチェレンコフ光は地上で面積にし て約 1.3× 104m2 に広がり、地上の観測機器はこの一部を観測すればよ い。以上の物理的背景から γ 線観測の効率は上空の衛星より地上での空 気チェレンコフ光の観測の方がよいと言える。

1.2.2

イメージング法とステレオ観測

解像型大気チェレンコフ望遠鏡(Imaging Air Cherenkov Telescope, IACT)

では反射鏡で集光したチェレンコフ光を光電子増倍管(PMT) のアレイで

検出する。反射鏡の全面積を大きくすると集光するチェレンコフ光子の数 が増えるので、観測できる空気シャワーのエネルギー閾値が下がる。又、 PMT の数を増やすと解像度が増すという特徴がある。IACT ではこの

(18)

PMT のアレイでとらえた像の形から、空気シャワーを起こした親粒子が 陽子または原子核か γ 線かを区別する(イメージング法)。イメージング 法に用いられるパラメータには、視野内の光子の分布のシャワー形状と 方向を表すものとしてAlpha( α )、Width、Length、Distance などがあ る[2]。図 1.4 にこれらのパラメータとシャワーの関係の概念図を示す。 Distance Length Width 図1.4: イメージング法に用いられるパラメータを示す。CANGAROO-III ではカメラ視野は約4 度である。  それぞれのパラメータは以下の内容を示している。 ˆ Width シャワー形状を楕円でフィットしたときの短軸方向の標準 偏差。 ˆ Lengh シャワー形状を楕円でフィットしたときの長軸方向の標準 偏差。 ˆ Distance シャワー重心と視野中心との距離。 また,これらからAlpha ( α ) と呼ばれる角度が計算される. ˆ Alpha(α) シャワー重心と視野中心を結ぶ直線は,望遠鏡中心から 見たシャワー重心の方向に対応する.この方向とシャワー長軸の成

(19)

 イメージング法は、一次粒子がハドロンか γ 線かで上記イメージパラ メータ分布に違いが生まれる事を利用して識別を行う。また、シャワー方 向についても情報が得られる事から、イベント毎に到来方向との結びつけ が可能となる。天体が γ 線天体かどうかはAlpha が 0 に近いイベントのみ に注目し望遠鏡がトラックしている天体からくるイベントが優位に高いフ ラックスを示すかどうかで決定出来る[3]。図 1.5 に実際に CANGAROO-III 望遠鏡 (後述) で得られたシャワーイメージを示す。 図 1.5: カメラによる実際のイメージ。この像に対しパラメーターが与え られ、γ線とハドロンのどちらの起源によるシャワーイメージなのかが 解析される。  上に述べたイメージング法では、望遠鏡一台の像について各パラメー タを考えていたが、実際は望遠鏡一台だけの観測ではシャワー軸を完全 に再構築する事は出来ない。複数台の望遠鏡によるステレオ観測によっ て初めてシャワー軸の交点として γ 線の到来方向の高精度の決定が可能 となる。また、複数のイメージに対してハドロンと γ 線の区別が行える ため、1 台による解析に比べてイメージの揺らぎの影響を小さくでき、よ り感度を向上させる事もできる。図1.6、図 1.7 にシャワー軸再構築の原 理を示す。

(20)

shower orientaion angle

camera A camera B

shower image

shower impact position telescope A

telescope B

図 1.6: 左図 : 2 台の望遠鏡による到来方向角の定義。右図 : シャワー落

下点の定義。

shower orientaion angle shower impact position

telescope A camera B camera A telescope B 図 1.7: ステレオ観測を行うことで空気シャワーのシャワー軸を 3 次元的 に再構築出来る。

(21)

1.2.3

世界の

IACT

現在、世界ではCANGAROO-III も含めて主に 4 つの IACT を用いた 高エネルギーガンマ線観測プロジェクトが進行中である。CANGAROO の他には、H.E.S.S.、MAGIC、VERITAS が挙げられる。現世代の IACT の特徴として、10 m 級大口径望遠鏡とステレオ観測を挙げることができ る。これらのIACT 高エネルギーガンマ線観測プロジェクトによって、現 在100GeV 付近までの低エネルギー閾値の観測が達成されている。4 つの IACT 高エネルギーガンマ線観測プロジェクトについて図 1.8、表 1.1 に まとめた。

VERITAS

H.E.S.S.

MAGIC

CANGAROO-III

180o -150o -120o -90o -60o -30o 0o 30o 60o 90o 120o 150o 180 60o 30o 0o -30o -60o 図 1.8: 現在稼働中の 4 つの IACT を用いた高エネルギーガンマ線観測プ ロジェクトと世界地図。それぞれの位置を見ると、北天を MAGIC、VER-ITAS、南天を H.E.S.S.、CANGAROO がカバーしている事が分かる。

(22)

大気チェレンコフ望遠鏡は地上で観測を行うため、天球上の観測可能 領域は望遠鏡の緯度により決定される。また、昼間や雲があるときは観 測が出来ない為、全天の観測、時間変動の観測などのためには異なる経 度、緯度に望遠鏡が複数ある事が望ましい。現在のプロジェクトでは北 天をMAGIC、VERITAS、南天を H.E.S.S.、CANGAROO がカバーして いる。

4 Big IACT projects

Project Location mirrorshape FOV d f f /d System

CANGAROO 31.1S, 136.8E,160 m asl Parabolic 4.0 10 m 8 m 0.8 array

MAGIC 28.8N, 17.9W,2225 m asl Parabolic 3.5 17 m 17 m 1.0 single

HESS 23.3S, 16.5E,1800 m asl Davies-cotton 5.0 12 m 15 m 1.25 array

VERITAS 31.7N, 110.9W,2300 m asl Davies-cotton 4.0 10.9 m 10 m 1.2 array

表 1.1: 世界の IACT プロジェクト。f は主鏡焦点距離、d は主鏡の直径を

(23)

2

CANGAROO-III

望遠鏡

2.1 CANGAROO-III

実験

CANGAROO(Collaboration of Australia and Nippon for a GAmma Ray Observatory in the Outback) は名前の通り天体ガンマ線観測のため の日豪共同の国際協力実験であり、オーストラリア南オーストラリア州 ウーメラで解像型大気チェレンコフ望遠鏡を用いて南天での観測を行っ ている。 図 2.1: CANGAROO-III 実験の観測地地図、オーストラリア南オースト ラリア州ウーメラで解像型大気チェレンコフ望遠鏡を用いて南天での観 測を行っている。 CANGAROO-III は口径 10 m の望遠鏡 4 台による観測を行っており、 400 GeV 以上に感度を持つ。2009 年 1 月現在、CANGAROO プロジェク

(24)

トは第三段階にありCANGAROO-III 実験と呼ばれる。CANGAROO 実 験は、1995 年に口径 3.8 m の鏡と 250 本の光電子増倍管からなるカメラを 持つ望遠鏡1 台による観測から始まった (CANGAROO-I)。その後 1999 年に口径7m の鏡と 3.0 度の視野を持つカメラからなる望遠鏡が完成した (CANGAROO-II)。反射鏡は一年後に口径 10m まで拡張されいくつかの 系内の天体からガンマ線を発見した。2002 年から 2004 年にかけてさらに 3 台の望遠鏡を改良を加えながら建設し、望遠鏡 2 号機、3 号機、4 号機 (それぞれ、T2、T3、T4 と呼ばれる) がそれぞれ 2003 年 1 月、2003 年 7 月、2004 年 3 月に観測を開始した。 図 2.2: CANGAROO-III 望遠鏡 4 台。

2.1.1

望遠鏡

CANGAROO 望遠鏡は経緯台式、直径 10 m の回転放物面に 114 枚の 小型球面鏡を取り付けたものであり、焦点距離は8 m で焦点面にカメラ が取り付けられている。回転放物面を採用することによって、平面波の入 射に対して焦点への到達時間が同じであることから、チェレンコフ光の

(25)

テムクロックを精度1 μ sec の GPS と同期させた PC の時刻から方位角 と俯角を計算しEthernet 経由で望遠鏡制御 PC に送る一方、望遠鏡の現 在位置を示すエンコーダーのデータが100msec 毎に望遠鏡から制御 PC に送られて、正しく追尾できていることを確認している。制御PC には リアルタイムOS である KURT を使用している。このシステムの下で 1 分角以下のトラッキング精度が保たれている。 図 2.3: CANGAROO の望遠鏡とその配置。写真は 4 号機 (T4) である。

2.1.2

反射鏡

放物面鏡は光路差がないことが利点であるが、直径10m の鏡となると 自重による変形が避けられない。しかし軽量な小型鏡を並べることによっ てこの問題を回避している。CANGAROO で用いられている直径 80 cm の小型鏡は、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic) という強化プラス

チック製で、丈夫さと約5kg という軽量さを実現している。その構造は、

硬質の発泡剤のコアをGFRP と接着剤シートを積み重ねたもので挟み込

み、表面に反射体のアルミシートを引いた上からフッ素コーティングで仕

(26)

で約0.2 度となっている (図 2.4、[18])。 また、光軸調整の為に必要とされる自由度は、焦点面内の2 次元の動 きに対応する2 つの軸周りの傾斜になる。そこでステッピングモーター とギアで構成されるリニアアクチュエーターシャフトとばねシャフトの 組を一枚の鏡につき2 組つけ、アクチュエーターの伸縮による 2 軸の傾 斜制御をおこなっている。その精度は0.02 度である (図 2.5[12])。 図 2.4: 小型鏡の結像性能。明るい恒星に望遠鏡を向けてスクリーンに 集光しCCD で撮影したもので 4 号機の鏡である。右は X 方向の radial prole。曲線は Lorentzian でフィッティングしたもの。 図 2.5: 左図 : GFRP 小型鏡 (三菱電機製)。直径 80 cm で重量は約 5kg。 右図 : 小型鏡の調整システム。リレースイッチを接続してリモート制御 が可能。

(27)

2.1.3

カメラ

カメラは、シャワーからのチェレンコフ光などの光子を電気信号に変換 する高感度光センサで、望遠鏡の焦点面に位置する。視野は約4 °ϕ であ り、1 ピクセルあたり 0.168 °ϕ となっている。カメラには浜松ホトニクス 社製の3/4 インチ光電子増倍管モジュール R3479(MAXIM 社製プリアン プMAX4107 が一体化したモジュール) を 427 本使用しており、六方最密 に敷きつめている(この光電子増倍管 R3479 の性能など詳細は 4 章、4.1.1 項にて述べるのでここでは省略する)。カメラの重量は全体で約 120kg、 サイズは80cm ϕ × 100cm である。この重量は、カメラを支えるステイ が歪まない為の重量制限を大きく超えないように設計されている。 図 2.6: 左図 : カメラの前面。ライトガイドを取り付けた光電子増倍管が 427 本六方最密に敷きつめてある。右図 : カメラの後面。光電子増倍管が 427 本インストールされており、その配線で覆われてしまい、この状態で は光電子増倍管が見えない。光電子増倍管の交換を行なう際はここから 光電子増倍管を取り出す。 光電子増倍管の前面には集光率を上げるために図2.8 右のような Win-ston cone 型ライトガイドが付けられている (これも詳細は 4.5 節へ)。こ れは、光電子増倍管間の透き間(dead space) を減らして光量を増やし、ま た鏡の外からやって来る夜光などの外遊ノイズの除去の為33 °より大き

(28)

い角度で入射して来る光をカット出来るという特徴を持つ(4.5 節)。ライ トガイドを使用することにより理想的には入り口と出口の面積比である 2.57 倍の集光が可能になるが、内面の反射率が 80% 程度であるので実際 には2.1 倍程度となっている (4.5 節)。高電圧供給ユニットは CAEN 社 製SY527 で、光電子増倍管 1 本ずつ個別に電圧をかけることができる。 これによって、カメラ視野内に明るい星が入っても該当する光電子増倍 管の電圧を切るだけで観測を行うことができる。 図 2.7: 光電子増倍管モジュール R3479。 図 2.8: 左が 1 号機、右が 2 号機以降で使用されているライトガイド。ラ イトガイドはポリカーボネイト製で、内面はアルミ蒸着にSiO コーティ ング。内面の反射率は80% 以上。

(29)

2.2 PMT

2.2.1

原理

ここではCANGAROO-III に使用されている光電子増倍管について説 明する[4][5]。図 2.9 に PMT の原理図を示す。

図 2.9: PMT の原理図。 入射窓を通過し光電面に入射した光子は光電効果により光電面内の電 子を叩きだす。そして叩き出された電子(光電子) は印加されている電場 にそって移動し第一ダイノードに集められる。その後第一ダイノードに 入射した電子はダイノード間に印加された電圧により複数の2 次電子を 放出し更に増幅され次の第二ダイノードに集められるのである。この過 程を各ダイノードに於いて繰り返されて電子は増幅して行く。増幅され た電子は最期はアノードに集められパルス信号として出力される。これ がPMT の原理である。PMT には幾つかの性質があるのでそれについて 説明していく。まず量子効率について説明する。量子効率 η は次式によ り定義される。 η = 光電子数 入力光子数 × 100 (%) (2.1) この定義式から分かるように、量子効率の値が大きいほどそのPMT の感 度は良いといえる。この量子効率は光電面の材質によりほぼ決定される。

(30)

現在CANGAROO-III で使用している PMT モジュール R3479(詳細は後 述) では光電面が Bialkali(波長範囲 300∼650 nm 、ピーク波長 420 nm) と呼ばれるPMT を用いている。これは空気チェレンコフ光のピークが 300∼600 nm に渡っており、その波長域と合致しているためである。

2.2.2

入射窓

ここでは、PMT において最初に光が通過する部分である入射窓につい て述べていく。入射窓の材質によっては紫外線を吸収するなど、PMT 感 度の短波長限界等が異なってきており、入射光の波長によってはその性 質が出力信号に大きな影響を与える(図 2.10)。 図 2.10: 入射光の波長と透過率の関係。材質により短波長限界が異なる。 空気チェレンコフ光を観測する実験では、その波長域が約300∼600nm まであるのでこれに対応した短波長限界をもつ入射窓を選ぶ必要がある。 CANGAROO の実験では UV ガラスでできた入射窓を持つ PMT を観測 機器として使用している。以下に主な入射窓とその性質を示す。 (1)MgF2結晶

(31)

性(空気中の水分を吸収して融ける性質。) があるのが欠点である。しか しMgF2結晶は殆んど潮解性が無く実用的な材質である。115nm まで真 空紫外線を透過する。 (2) サファイア Al2O2結晶でできている。短波長限界は150nm 近辺である。 (3) 合成石英 短波長限界は160nm である。但し石英はヘリウムガスを透過しやすいの でヘリウムガス雰囲気では使用できない。 (4)UV ガラス (UV 透過ガラス) 紫外線(UV) を良く通す。短波長限界は 185nm である。 (5) 硼硅酸ガラス (Borosilicate ガラス) 最もよく使用されている材質。但し300nm より短い紫外線は透過しない ので紫外線の検出には向かない。暗電流の大きな要因となる40K(カリウ ム40) を含まない材質である。

2.2.3

ダイノードとゲイン

ここでは、PMT のダイノードとゲインについて述べる。PMT では電 子増倍部(ダイノード) で二次電子が増幅されそのゲインが決定される。 一つのダイノードによる電子の増幅率(二次電子放出比) を δ とし、ダイ ノード間の電圧を V 、ダイノードの数を n とするとゲイン G は δ = A· V (A = const.) (2.2) G = δn = (AV )n (2.3) と表す事ができる。実際には V の指数はダイノード段数だけでなく an(a = const.) と定数がかかる。この a は電極の構造、材質で決まる定数で0.7 ∼0.8 の値をとる。 ここまで述べてきた原理、性質によってPMT の感度は決定されるが、 PMT の感度は外部の磁場などの影響をうける。従って、外部の磁場の影

(32)

響を減らすためPMT はシールドした方がよく、CANGAROO 実験で使 用しているPMT では地磁気などの影響を減らすためμメタル (ニッケル が主成分で強磁性体の合金、厚さ0.2mm) でシールドしている。

2.2.4

暗電流

PMT は光が入射していないときでもわずかな電流が流れている。これ を暗電流という。微小電流、微弱光を扱うPMT にとっては極力小さいこ とが望まれる。暗電流の原因を以下に記す。 (1) 光電面及びダイノード面からの熱電子放出による電流。 (2) 管内の陽極と他の電極間、及びステムにおいて陽極ピンと他のピン間 の漏洩電流。 (3) ガラスや電極支持材の発光による光電流。軌道をはずれた電子が側管 ガラスに当たったときわずかに発光する。 (4) 電界放出による電流。印加電圧が大きくなりすぎると電場が強くなり 電子が叩きだされる。これはPMT の寿命を縮めるので最大印加電圧が設 けられている。 (5) 残留ガスのイオン化による電流 (イオンフィードバック)。PMT 内部 は 10−6から 10−5P a(10−7T orr) の真空度だが、わずかに残るガスが電子 と衝突し、イオン化された分子のうち正イオンがダイノードや光電面に 衝突し2 次電子を放出する。 (6) 宇宙線やガラス中の放射性同位体元素からの放射線や、環境γ線によ るガラスの発光による電流。宇宙線の中でおもにミューオンがガラス窓 を通過するとチェレンコフ光が発生する。又ガラス中に微量に含まれる 40Kが放射性同位体で、ベータ線を放出する。 以上でPMT に関する記述は終了し、次節では CANGAROO-III 次期 計画について述べていく。

(33)

2.3 CANGAROO-III

次期計画

CANGAROO-III 望遠鏡は 4 台目の望遠鏡 (T4) が完成して (2004 年) か ら既に5 年経っており、望遠鏡の劣化が激しい。観測地が砂漠地帯である ために砂、風にさらされている鏡の劣化、更にはPMT のゲインも最大で 2 分の 1 程度まで低下している。図 2.11 に劣化した鏡を示す。   図 2.11: 左図 : CANGAROO-III 望遠鏡。表面のアルミシールドが剥が れてしまっている鏡、落下してしまった鏡があるのが分かる。右図 : 落 下してしまった鏡。アルミシールドの大半が剥がれてしまっている。 上で示したように、厳しい自然環境での望遠鏡の劣化は大きく修繕の 必要がある。しかし、現在の望遠鏡の修繕だけではより進んだチェレン コフ望遠鏡による γ 線の観測には限界がある。そこで、CANGAROO-III 望遠鏡の修繕は次章で示す高エネルギーの γ 線観測の将来計画に繋がる ような修繕+α としていく事が求められる。新しい次世代の望遠鏡のため の開発を行い、それを用いて修繕を行なっていく事が求められる。その 為に以下の様な開発が必要と考えられる。 1. よりスポットサイズが小さく、軽量で劣化しにくい反射鏡の開発 2. 量子効率がより良くアフターパルスのレートが低い光電子増倍管の 開発 3. カメラシステムの軽量化を図り、光電子増倍管の本数を増やす事に よる視野の向上 次の章では高エネルギーの γ 線観測の将来計画について述べていく。

(34)

3

章 将来計画と今回の

R&D

3.1

ガンマ線観測将来計画

3.1.1 CTA

CTA(Cherenkov Telescope Array) は欧州を中心として進められている 国際協力による次世代のチェレンコフ望遠鏡による γ 線観測の大計画で ある[8]。北半球、南半球の両半球に大気チェレンコフ望遠鏡を並べた大 規模観測装置群を作り、1 つのプロジェクトで全天をカバーするという計 画である。 - L 図 3.1: CTA 望遠鏡配置のイメージ図 [8]。中心付近から外に行くほど望 遠鏡の口径は小さくなる。中心付近の濃い灰色の円の半径が70 m 程度。 図3.1 に CTA 計画における大気チェレンコフ望遠鏡配置のイメージ図 を示す。図で中心付近の濃い灰色円で囲った部分が半径70 m 程度、その 外の薄灰色円の部分が半径250 m 程度である。中心部 (濃灰色円) には大

(35)

口径の望遠鏡(口径 20∼30 m 程度)、その周囲 (薄灰色円) には中型 (口径 10 m 程度) を配置、更にその外側には小型の望遠鏡 (口径 10 m 未満) を半 径数km 程度に渡って配置する予定である。IACT では、口径が大きい方 がガンマ線の電磁シャワーからのチェレンコフ光をより多く集める事が 出来るため、口径が大きい方がより低いエネルギーまで見る事が出来る。 また、ガンマ線のエネルギーが上がるほど単位面積当たりのイベント数 は減少するので高いエネルギーのイベントを得る為には望遠鏡を配置す る面積を大きくする必要がある。従って、エネルギー閾値(Ethreshold) は中 心部から70 m のところで∼10-20GeV、250 m のところで∼50-100GeV、 数 km のところで∼1-2TeV を想定しており、今までよりもはるかに広い エネルギー帯についての情報が全天に渡って得られるのである。

次にCTA での sensitivity についてみていく。図 3.2 に sensitivity のレ ンジを示す。 図 3.2: CTA 計画が目指す sensitivity(赤)。現行のどの大気チェレンコフ 望遠鏡よりも10 倍以上良い sensitivity が期待出来る。 図に示すように、CTA 計画では現行のどの大気チェレンコフ望遠鏡よ りも10 倍以上良い sensitivity が期待でき、より少ない観測時間で詳しい 測定が可能になっていく。 CTA 計画はプロジェクト開始から 5 年以内に観測を開始し、本観測を 8 年以内に開始することを目指して動き出している。

(36)

3.2

今回の

R&D

の概要

今回行なったR&D は現行 PMT でのパフォーマンステストとその修繕 および次世代望遠鏡PMT の選定と設計、開発である。その詳細を以下に 示す。 1. 現行 PMT でのパフォーマンステスト (時間短縮、信頼性向上のた めの測定法の変更を含む) 2. 現行 PMT の故障原因の判定とその修理 3. 現行 PMT よりも量子効率が高い次世代 PMT の性能測定とその評価 4. 現行 PMT、次世代 PMT でのアフターパルスの測定とその評価 上記の内容は、現在のCANGAROO-III 計画に必要である事はもちろん、 CANGAROO-III の次期計画、さらには次世代の大気チェレンコフ望遠鏡 実験にも繋がるR&D として行なった。3.、4. に関しては、量子効率の高 いPMT の開発とその性能評価とともに、大気チェレンコフ望遠鏡に使用 されるPMT のアフターパルスに関しての正確な情報を得る事を目的とし て行なった。これらはCANGAROO-III の次期計画、次世代の大気チェ レンコフ望遠鏡実験にとって重要なテーマである。 次項4 章から実際に行った R&D について述べていく。

(37)

4

PMT R3479

パフォーマ

ンステスト

4.1

テスト内容及びテスト方法

4.1.1 PMT R3479

 CANGAROO-IIIのカメラには3/4inchの光電子増倍管(PMT)(R3479、 浜松ホトニクス社(HPKK) 製, 表 4.1) が 427 本使用されており、8m の焦 点を持つCANGAROO 望遠鏡に於いて 4 °ϕ の視野となっている (1 ピク セル当たり0.168 °ϕ)。 PMT モジュール、R3479 へは個々に印加高電圧 (HV) を掛けられる様 になっている。従って、PMT 個々の HV 値を求める事が必要になってく る。またPMT、R3479 は個々に HV を掛けられるだけでなく、プリアン プも内蔵の一体型PMT モジュールである。 従って、以下の様な利点が ある。 ●PMT1 本 1 本のメンテナンスがしやすい。 ●同一のプリアンプボード使用によるクロストークをなくす。 ●各PMT に異なる HV をかけゲインを揃えることができる。これにより 信号のトリガーレベルが全てのピクセルに対し均一になる。 ●明るい星がはいるPMT のみの HV を OFF できる。 以下図4.1、表 4.1 に PMT モジュール R3479 の写真とその仕様を示す。

(38)

図 4.1: 3/4 inch PMT モジュール、R3479(浜松ホトニクス)。PMT に アンプ回路が直接組まれている(MAX4107)。直径約 2cm、長さ 17cm、 約86g(ケーブル含む)。ダイノードが直線状に並んだラインフォーカスタ イプ。 PMT モジュール R3479 の仕様 特性 数値 外形サイズ φ18.6mm(3/4 inch) × 170mm 86g(ケーブル、コネクタ含む) 入射窓 UV ガラス フォトカソードサイズ φ15mmMIN. フォトカソード材質 バイアルカリ ダイノード 8 段ラインフォーカス型 シールド μメタル(0.2mm 厚) 量子効率 25 % (400nm の入射光に対して) ゲイン 1.7 × 106 at 1700V 上昇時間(PMT のみ) 1.3nsec(プリアンプ込みで 5nsec) 電子走行時間 14nsec T.T.S.(走行時間の揺らぎ) 0.36nsec(FWHM) 表 4.1: 空気チェレンコフ光のスペクトルは主に 300∼600nm に広がって いるので同じ波長域に感度をもつPMT が採用された。

(39)

以下にR3479 のディバイダー回路、プリアンプ回路を示す。 R1,R2 : 2MΩ±5% 1/10W R3 : 1MΩ±5% 1/10W R4,R6 : 750kΩ±5% 1/10W R5,R8,R9 : 820kΩ±5% 1/10W R7 : 470kΩ±5% 1/10W R10,R11,R12 : 51Ω±5% 1/4W R13 : 10kΩ±5% 1/10W C1 : 1000pF, 2kV C2 : 4700pF, 2kV ACTIVE BASE C1 C2 R13 R12 R11 R10 R9 R8 R7 R6 R5 R4 R3 R2 R1 P K

DY1 DY2 DY3 DY4 DY5 DY6 DY7 DY8

+HV SIGNAL photomultiplier tube (H8820) 図 4.2: PMT R3479(KA シリーズ、HPKK) のディバイダー部分回路図 ディバイダーの比は14:2:3:2:2:2:2:2:2。 C3 : 1000pF, 2kV C4 : 4700pF, 2kV D1 : 1SS352 C7,C8 : 4.7 microF, 2kV C5,C6 : 0.1 microF, 2kV L1,L2 : NFM41P11C204 U1 : MAX4107 図 4.3: PMT R3479(KA シリーズ、HPKK) のプリアンプ回路の回路図。 以上でPMT R3479 についの詳細説明を終了し、次項でパフォーマン ステストのセットアップについて述べていく。

(40)

4.1.2

テストセットアップ

PMT と光源となる LED は図 4.4 の様に 1 つのジュラルミンケースに納 められており、PMT は更にシャッター付きの金属筒に納められている。 図 4.4: PMT パフォーマンステストのセットアップの暗箱内。このセッ トアップは暗箱の中に収められている。この暗箱は大気中ノイズと光対 策としてジュラルミンケースに納められている。左上の2 本の赤いケー ブルがPMT への HV 供給用ケーブル、PMT からの信号は中央上部にあ るレギュレータボードを通し、フラットケーブル(27m)で暗箱の外へ信 号を伝えている。PMT はシャッター付きの筒に納められており、HV を 掛けた状態でもND フィルターの交換等が可能である。セットアップの 全概略図は図4.5 に示す。 PMT のデータを取るときはジュラルミンケースを閉めシャッターを開け、 光量調節のためにフィルターを交換するときはシャッターを閉めケースを 開ける。このようにPMT をシャッターつきの筒 (シャッター用のスイッチ はケースの外にある) に納めることで、HV がかかった状態でもケース内 の設定を調節することが可能である(HV を一旦切ってしまうと、セット アップ全体の温度が安定するまでに30 分以上の時間が掛かってしまう。

(41)

そのためHV を切らずに ND フィルターを交換する事は非常に重要であ る)。ケース内部には HV、プリアンプ用電源、信号用の接続ボードが容 易されている。今回LED の光量を安定させるため約 5V(過去の測定では、 3.5V[9]) のパルスを与えた。ケースが小さく (60cm × 43cm × 22cm) 距離 による減光は難しいため光量の調節は全てND フィルターで行なった。図 4.4 は PMT が入っているジュラルミンケースの暗箱の写真で、図 4.5 は PMT のセットアップ概略図である。

gate & delay generator 100nsec width ADC pulse generator attenuator 19dB TTL/NIM convertor LED 50 ohm 4mLEMO cable ND filters PMT module 27m gate OUT IN OUT gate IN PC Dark box 図4.5: PMT パフォーマンステストのセットアップ。PMT の光電面と ND フィルターは3 cm 程度の距離。暗箱内の詳細は図 4.4 を参照。 詳細は、4.1.5 項にて述べるが、このセットアップで PMT の次の特性 を調べた。 (1)Gain の HV 依存性。 (2) プリアンプ込みで 1.2 × 107のゲインとなるHV 値。 (3) ゲインのダイナミックレンジ。 また、今回のテストで使用する機材の仕様を表4.2、4.3 に示す。また、そ の結果を次節4.2 節に示す。

(42)

PMT パーフォーマンステスト用機器類の仕様 1

実験機器 製造元 型番 仕様

LED 日亜化学 NSPB510s 順電圧3.6V、順電流 20mA、主

波長470nm、指向性 30 °

NDlter シグマ光機 MAN series 吸収型光学ガラス 適応波長400

∼700nm [10]

pulse generator AVTECH AVI-V-C-N 出力:1ch、周期200∼20KHz、パ

ル ス幅10∼100nsec、0∼50V、 トリガー:TTL レベル、100nsec 幅、遅延時間0∼250nsec、外部 制御不可 HV CAEN SY527(crate) A932AP(board) 出力0∼+2550V、24 チャネル/ 1ボードで10ボードまで設置可、 外部制御可、AC100V 電源 [10] 表 4.2: 主に PMT に直接関係する機器類を記す。 PMT パーフォーマンステスト用機器類の仕様 2(CAMAC) 実験機器 製造元 型番 仕様 ADC 豊伸電子 C009 16ch、12bit、チャージ積分型、0∼-1000pC(0 ∼- 5V) のアナログ入力、最小ゲート幅 50 ns、 リセット時間800nsec 平均 50 カウントのペデ スタル、1LSB の直線性 TDC 海津製作所 3781 8ch、12bit 100、200、500nsec のフルスケール 設定で1 カウント当たり 25、50、125psec の 分解能 表 4.3: PMT テストで使用している CAMAC モジュールを記す。

(43)

4.1.3 PMT

の出力信号

PMT の信号を見る際、実際に観測地 Woomera でも ADC を用いてそ の信号をカウントしている。ここでは、PMT のパフォーマンステストの 際にPMT の出力を実際に ADC でカウントし、その際に得られたヒスト グラムを解析するときに用いたフィッティングの方法について説明する。  PMT の出力信号はポアソン分布に従う。そして、大きな光量が入射し た際、その信号は単純ガウス分布と仮定できる。一方、1 Photoelectron (1 p.e.) 程度の小さい光量ではそのポアソン分布は単純なガウス分布では 近似する事が出来ない。その為1 p.e. 分布はポアソン分布を多重ガウス 分布でフィッティングする方法で求めた。多重ガウス分布でのフィッティ ングの概念図を図4.6 に示す。

p.e.

count

0 1 2 3 4

図 4.6: 多重ガウス分布でのフィッティング概念図。縦軸がカウント数、 横軸が Photoelectron 数を表す。緑色のヒストグラム : 光電子数のポア ソン分布、緑色の曲線: 各光電子数でのガウス分布、青色の曲線 : 各光 電子数のガウス分布を重ね合わせた多重ガウス分布、としてそれぞれ表 している。

(44)

このことについてもう少し詳しく見ていく。1 p.e. 程度の光量を LED

から光電面へ照射した場合、必ずしもADC のゲート幅の間に 1 p.e. が

来ているとは限らず、0 p.e. だったり、2 p.e.、もしくは 3 p.e. であった

りする。これは対象とするものが本質的にこのような分布をもっていて、 この分布で記述できるような物理量を測定していることを表す。この分 布をポアソン分布という。さらにポアソン分布であるので、離散的な値 を持つヒストグラムが現れるはずであるが、ダイノードで電子を多量に 生成し信号を増幅させる光電子増倍管の性質上、または各実験機器のノ イズがのったりするため、必ずしも正確な光電子数のポアソン分布のヒ ストグラムが作られるわけではない。実際には各光電子数に対応するガ ウス分布ができ、このガウス分布の重ね合わせが我々の実験で得るヒス トグラムになると推測出来る。その事から下の様な式が成り立つ。

Fpois = Fpois,0−pe+ Fpois,1−p.e.+ Fpois,2−p.e.+ ... = 1 (4.1)

⇒ Fpois = Fgauss,0−p.e.+ Fgauss,1−p.e.+ Fgauss,2−p.e.+ ... = 1 (4.2)

ここでFgauss,n−p.e. (n-p.e. の時の各ガウス分布の全体に占める面積) はポ

アソン分布の各入射光電子の占める面積と一致するはずであるので、こ の時のガウス分布は、

Fpois,n−pe = Fgauss,n−p.e.

⇔ Se−µµn n! = Fgauss,n−p.e. Fgauss,n−p.e. = S e−µµn n! × 1 2πσn exp ( (x− Xn)2 2 n ) (4.3) と表す事が出来る。ここで、S はヒストグラム全体の面積 (イベント数)、 µ は平均の入射光電子数、Xn はこのガウス分布の平均、σnはこのガウ ス分布の標準偏差である。Xnは以下のように表せる。 × (X − X × ∆X + X ̸= 0) (4.4)

(45)

さらに σn

σn=

n× σ (4.5)

と表せる。これらから、

Fpois = Fpois,0−pe+ Fpois,1−p.e.+ Fpois,2−p.e.+ ...

= Se−µ√ 1 2πσ0 exp(−(x− X0) 2 2(σ0)2 ) + Se −µµ1 1! × 1 2π√1σexp ( (x− X0− 1 · ∆X)2 2(√1σ)2 ) + Se −µµ2 2! × 1 2π√2σexp ( (x− X0− 2 · ∆X)2 2(√2σ)2 ) + Se −µµ3 3! × 1 2π√3σexp ( (x− X0− 3 · ∆X)2 2(√3σ)2 ) + ... (4.6) この式に現れるフィッティングに用いるパラメータは、まず、このポア ソン分布を形作る平均の入射光量(µ )、次に暗電流等によるペデスタルの

ADC の平均値 (X0) と標準偏差 (σ0) である。さらに 1 p.e. の ADC チャ

ンネルとペデスタルのADC チャンネルの差 (∆X), ポアソン分布の標準 偏差(σ) の計 5 つである。この式を無限大まで足し合わせれば原理的に はどんな入射光量に対してもたった5 つのパラメータでフィッティング が可能である。ただし、この重ね合わせは、前述の通り、10 p.e. 以上程 度の大きな光量では影響が少なく無視する事が可能(単純ガウス分布と考 えられる) で、1 p.e. 程度の小さな光量では無視する事が出来ない。今回 のパフォーマンステストではPMT に掛ける HV 値を決定する際に 1 p.e. を求めるので(後述)、10 p.e. まで足し合せわせフィッティングを行う事 で、1 p.e. を見積もった。実際の測定では上記パラメータと測定の際のカ ウント数を6 つ目のパラメータとして、 ●P1 =平均光電子数 (µ)。

(46)

P2 =ペデスタルの ADC の平均値 (X0)。 ●P3 =ペデスタルの ADC 標準偏差 (σ0)。 ●P4 = 1 光電子当たりの ADC チャネル (チャンネルを電子数に直すと PMT のゲインになる)。(∆X)P5 = 1 光電子に相当するピークの ADCrms 。(σ) ●P6=イベント数。 と定め光量を見積もっていった。これらパラメータの概念図と実際に得 られた1 p.e. 図を以下に示す。 count P2 = P1 P4 P3 P5 ADC channel total event = N =P6  

fit by Poisson-Gaussian convolutional function

0 250 500 750 1000 1250 1500 1750 2000 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 図 4.7: 左図 : 1 p.e. 概念図。右図 : 実際に得られた 1 p.e. 図。

(47)

4.1.4

予備実験

ND lter

キャリブレーション

PMT を使った実験には標準光源によるキャリブレーションが必要にな る。放射線源とシンチレータを使った光源は時間変動せず、いつも一定の 強度の光源であるが、トリガーが掛けられないなどの問題がある。一方、 LED(発光ダイオード) を使った光源は取り扱いが容易で、パルス幅や光量 を簡単に設定でき、トリガーも容易に掛けられるという利点がある。よっ て、今回のPMT パフォーマンステストには LED を使用した。PMT の感 度波長が青色/UV なので青色 LED、 NSPB510s (日亜化学、主波長 470 nm) を用いた。パルス電源としては立ち上がりの速い AVL-V-C-N(AVtech 社) を用いた。図 4.8 に NSPB510s の発光スペクトルを示す。 図 4.8: Ta = 摂氏 25 度、順電流 IF = 20 mA での LED NSPB510s の発 光スペクトル、赤色の線が示す470 nm 付近の発光強度が最も強い事が 分かる。

(48)

今回のPMT パフォーマンステストでは、PMT への入射光量の調節 のため、シグマ光機の枠付吸収型固定式ND フィルター MAN シリーズ を用いた。ND フィルターは今回実験を行うまで約二年ほど使用されて おらず、その間に傷などが付いている可能性があるため、宇宙線研究所 CANGAROO グループが保有する ND フィルター計 14 枚 ●2002 年以前に購入の ND フィルター : 1、10、20、30、40、50、70% の7 枚 ●2005 年に購入の ND フィルターは 1、10、30、40、50、70% の 6 枚 ●2008 年に購入の ND フィルターは 1% のみの 1 枚)ND フィルター のキャリブレーションを東京大学物性研究所2 階にある V570 分光光度計 (JASCO 社製) を用いて行った。分光光度計を用いた ND フィルター波長 透過率測定の手順を以下に示す。以下の手順で測定した。 1. 計測中大気の波長依存透過率 (1) 2. 2002 年以前に購入の ND フィルター 7 枚の波長依存透過率 (a) 2002 年以前に購入の ND フィルターは 1、10、20、30、40、50、 70% の 7 枚。 3. 計測中大気の波長依存透過率 (2) 4. 2005 年に購入の ND フィルター 6 枚の波長依存透過率 (a) 2005 年に購入の ND フィルターは 1、10、30、40、50、70% の 6 枚。 5. 計測中大気の透過率 (3) 6. 2008 年に購入の ND フィルター 1 枚の波長依存透過率 (a) 2008 年に購入の ND フィルターは 1% のみの 1 枚。 7. 計測中大気の透過率 (4)

(49)

図 4.9: 前頁の手順に示した分光光度計を用いて測定した ND フィルター (シグマ光機) の波長依存透過率を示す。縦軸は透過率、横軸は光の波長を 示す。 左上は計測中大気の波長依存透過率グラフ。青、水、赤、緑色の 順で測定。その他のグラフは左の上から1、10、20% 右の上から 30、40、 50、70% の結果であり、紺、赤、黄の色はそれぞれ 2002 年以前、2005 年、 2008 年に購入したフィルターの結果を示している。2008 年購入のものは 1% のみ、20% は 2002 年以前に購入した 1 枚のみである。

(50)

図4.9 に示している ND フィルターの透過率で、LED NSPB510s の主波 長470 nm での結果を求めると、表 4.4 に示す通りになった。表の Value by SIGMA KOKI が各 ND フィルターのシグマ光機の公称透過率を表し ており、全てのND フィルターの値が分光光度計の結果と良く合ってい て、傷や劣化が起こっていない事が確認できた。 分光光度計を用いて得られた波長470 nm での ND lter の透過率

ND lter old (%) old-2005 (%) 2008 (%) Value by SIGMA KOKI

1 % 0.98 0.96 0.79 1±0.5 10 % 10.9 10.1 N.A. 10±2 20 % 21.2 N.A. N.A. 20±2 30 % 31.6 31.5 N.A. 30±3 40 % 41.0 37.0 N.A. 40±4 50 % 50.7 51.8 N.A. 50±5 70 % 71.2 70.8 N.A. 70±5 表 4.4: 分光光度計での波長 470nm における ND lter の透過率を記す。 old は 2002 年以前購入、old-2005 は 2005 年購入、2008 は 2008 年購入を 示す。N.A. は購入しておらず存在しないフィルターである。 分光光度計を用いて各ND フィルターの波長依存透過率を求めること は出来たので、実際にPMT R3479、LED NSPB510s を用いて ND フィ ルターの透過率を求めた。その結果を表4.5 に示す。この結果は分光光度 計を用いて得られた波長470 nm での値表 4.4 の値と非常に良く一致して いることが分かる。 ここまでのND フィルターのキャリブレーションの結果より、 1. 全ての ND フィルターでシグマ光機の公称である透過率と良く一致 しており、全ND フィルターは傷や劣化は起こっておらずその透過 率は信頼できる。

(51)

PMT R3479 (ID : KA8706) を用いて得られた ND lter の透過率 ND lter old (%) old-2005 (%) 2008 (%)

1 % 0.90±0.30 0.89±0.40 0.72±0.40 10 % 10.5±1.3 10.0±1.1 N.A. 20 % 21.0±2.1 N.A. N.A. 30 % 31.2±2.8 31.3±2.6 N.A. 40 % 41.3±3.7 37.6±4.2 N.A. 50 % 50.7±4.8 52.0±5.3 N.A. 70 % 71.9±6.4 72.0±6.8 N.A. 表 4.5: PMT R3479(ID : KA8706)、LED NSPB510s を用いて得られた ND lter の透過率を記す。N.A. は購入しておらず存在しないフィルター である。 2. 実際の測定と同様にして PMT の出力信号より ND フィルターの透 過率を測定してもその結果は分光光度計で測定した値と良く一致 した。 ということが分かった。 従って、以降の実験では、ND フィルターの透過率は分光光度計で測定し た表4.4 の値を用いた。

(52)

4.1.5

対象

PMT

と手順

今回のパフォーマンステストの対象PMT は CANGAROO-III 実験で 使用しているPMT モジュール R3479 である。R3479 で、新品の PMT54 本とWoomera で使用後に故障として持ち帰られたもの 63 本の計 117 本 を対象としてテストを行った。(実際には、PMT の放電現象を確認しパ フォーマンステストを行えなかったPMT もあった。これについては後述 する。)パフォーマンステストの手順を下に示す。 1. HV の見積もりと Gain の HV 依存性 (a) Gain が 1.2 × 107となるHV の値 HV 1を計算式より見積もる。 (b) Gain が 2 倍、1/2 倍となる HV の値 HV2、HV1/2を計算式よ り見積もり、入射光量10 p.e. 程度で測定した 3 つのデータよ りGain の HV 依存性を求める。 (HV 値の見積もりは、HV 依存性を決めるパラメータ α の過 去のデータを使用して見積もった。) 2. HV 値の決定 (a) Gain が 1.2 × 107となるHV の値 HV tを実際に1p.e. の光量を 測定して求める。(HVtとHV1との差は±5 % 程度) 3. PMT のダイナミックレンジ

(a) ND lter の直線性が十分保たれている 10∼20 p.e. 程度で光量 の見積りを行う。 (b) 3.(a) で見積もった光量と ND lter の倍率より入射光量を調節 し、各入射光量とPMT の出力光量の関係より PMT のダイナ ミックレンジを求める。 1. で用いた HV 値を見積もる計算式など手順について補足を行う。現 在CANGAROO-III 望遠鏡に使われている PMT R3479 はプリアンプ一

(53)

体型のPMT モジュール (図 4.1) でこのモジュール全体で 1.2 × 107のゲ インを設定している。プリアンプ回路での増幅率が約60 倍なので PMT 単体では2 × 105のゲインである。この時与えているHV 値を手順 1. に あるHV1だとすると、 2× 105 G = ( HV1 1400 )α (4.7) が成り立つ。G は浜松ホトニクスが与電圧 1400V で行った試験より得た ゲイン値であり、α はPMT の HV 依存性を決めるパラメータ (後述、4.2.1 項参照) である。上式 4.7 式により HV1を求める事が出来る。次に、Gain を x 倍にした際のHV 値を HVxとすると、 (2× 105)· x G = ( HVx 1400 )α (4.8) が成り立つ。4.7 式を 4.8 式に代入して G を消去して次式が得られる。 HVx = HV1· x 1 α (4.9) 式4.9 より、Gain が 2 倍、1/2 倍となる HV 値 HV2、HV1/2を見積もる事 が可能となる。上記の流れでHV1、HV2、HV1/2の3 つの HV 値での Gain が求まりHV 依存性を求める事が出来る。ここで見積もった HV1は、過 去の測定で求められた α (α =4.9 [9] )、浜松ホトニクスでの試験結果を 信頼して求めた値なので、手順2. で Gain が 1.2 × 107となる正確なHV 値HVtを求めた。 過去の測定ではHV の見積もりは始めに行わず、 I. HV 値の決定 II. Gain の HV 依存性 (HV=1100、1200、1300、1400、1450 の 5 つのデータを使用) III. PMT のダイナミックレンジ の順で測定を行っていた。しかし、今回の測定では上述したように始め にHV 依存性を求め、その際に HV 値の見積もりを行った。始めに見積も りを行ってしまう事で手順2. での HV 値の決定までが早くなり結果的に 1 本の PMT につき約 10 分程度の時間の短縮 (全工程 90 分程度) を行うこ とが出来た。

(54)

4.2

結果

今回テストしたPMT は新品の PMT54 本と Woomera で使用後に故障 として持ち帰られたもの63 本の計 117 本である。新品の PMT54 本の内 53(98.1% ) 本は実際の観測で使用可能。1 本 (1.9% ) は量子効率が悪く使 用圏外であった。故障として持ち帰られた63 本の内 53 本(84.1% )は真 空が破れて放電現象を起こしているもので使用不可能であった。また63 本の内5 本 (7.95% ) は正常に動作して使用可能であり、5 本 (7.95% ) が 量子効率が落ちてしまっていて仕様圏外であった。故障として送り返さ れたPMT の内 5 本が使用可能となったので、今後もう一度 Woomera に 持っていき、再度使用可能かどうか調査する必要がある。図4.10 に上記 した結果を示す。4.2.1 項から 4.2.4 項では図 4.10 での New(新品)、Used

でEverything O.K. となった 53+5=58 本に Bad Q.E.(量子効率が低い) の 5+1=6 本を足した合計 64 本の PMT について行ったテストの結果を示し ている。 図 4.10: R3479、全 PMT の結果概要。新品の PMT54 本と Woomera で 使用後に故障として持ち帰られたもの63 本の結果。Everything O.K. の ものは実際の観測で使用可能。Bad Q.E. のものは量子効率が悪く、使用 圏外。Spark は真空が破れて放電現象を起こしているもので使用不可能で ある。

図 1.6: 左図 : 2 台の望遠鏡による到来方向角の定義。右図 : シャワー落
表 1.1: 世界の IACT プロジェクト。f は主鏡焦点距離、d は主鏡の直径を
図 4.1: 3/4 inch PMT モジュール、R3479(浜松ホトニクス)。PMT に アンプ回路が直接組まれている (MAX4107)。直径約 2cm、長さ 17cm、 約 86g(ケーブル含む)。ダイノードが直線状に並んだラインフォーカスタ イプ。 PMT モジュール R3479 の仕様 特性 数値 外形サイズ φ 18.6mm(3/4 inch) × 170mm 86g(ケーブル、コネクタ含む) 入射窓 UV ガラス フォトカソードサイズ φ 15mmMIN
図 4.9: 前頁の手順に示した分光光度計を用いて測定した ND フィルター (シグマ光機) の波長依存透過率を示す。縦軸は透過率、横軸は光の波長を 示す。 左上は計測中大気の波長依存透過率グラフ。青、水、赤、緑色の 順で測定。その他のグラフは左の上から 1、10、20% 右の上から 30、40、 50、70% の結果であり、紺、赤、黄の色はそれぞれ 2002 年以前、2005 年、 2008 年に購入したフィルターの結果を示している。2008 年購入のものは 1% のみ、20% は 2002 年以前に購入
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参照

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