第 6 章 PMT アフターパルス
6.1 テスト内容及びテスト方法
6.1.1 テスト内容
R3479で入力信号の光量を変化させ、オシロスコープの積分モードで
アフターパルスを見てみる(図6.2)と、アフターパルスの発生時間は入力 信号の光量に依存せず、入力信号立下り後、最大のもので2 µs 程度であ る事が確認できた。また、アフターパルスの大きさ(Pulse Height)の最 大値は入射光量に依存せず、ほぼ一定(図6.2では60 mV程度)であると いう予想を立てる事も出来た。
図6.2: オシロスコープの積分モードで見たR3479のアフターパルス。左 はLEDの入力信号が5 p.e.、右はLEDの入力信号が100 p.e.の時のも の。入力信号の大きさに関わらず最大約60 mV程度のアフターパルスが 2μs程度の幅に渡って見られる。
上記の結果より、アフターパルスの計測では入射光量を変更して入射 光量との関連を確かめる事、その際は入力信号の立下り後2µsに渡って データを取得する事が必要である事が分かった。
6.1.2 テスト方法
暗箱内にてR3479、暗室内にてR8900U共に計測を行った。その際の R8900Uのセットアップを図6.3に示す。R3479では、暗室の部分が暗箱 に変更される。
gate & delay generator 100nsec width
ADC pulse
generator
attenuator 19dB
TTL/NIM convertor
50 ohm LED 4mLEMO cables (2)
ND filters
PMT module
27m gate
OUT
IN OUT
gate IN PC
8m Dark room
oscilloscope
図6.3: アフターパルス計測のセットアップ。暗室内にて、R8900Uの計測 を行った。オシロスコープでGateの位置を確認出来るようにした。R3479 では暗室の部分を暗箱に変更して測定を行った。
図6.2に示したように、アフターパルスは2 µs 程度に広がっている。
ADCのGateを2 µs と設定すれば、アフターパルスの発生時間の全範囲 をカバー出来るが、一般にADCのGateの最大幅は数百ナノ秒程度であ り、その為一度に2 µs に渡るアフターパルスを測定する事は出来ない。
今回使用した豊伸電子製、C009チャージ積分型ADCでは最小ゲート幅
は50 ns とあるが、最大のゲート幅については情報がなく、実際に信号を
入力して確かめて見たところ、Gateが160 nsであれば確実にアナログ信 号をデジタル信号へ変換出来る事が確認できた。そこで今回の実験では ADCのGateを160 ns に設定し、そのゲートの開始時刻をオシロスコー プで確認しながらずらしていき、160 ns × 13 = 2080 ns のデータをカ バーし、13個のデータの合計を2080 ns に渡るアフターパルスのデータ と考えた。(概念図: 図6.4) データはひとつのGateにつき、25000 counts のデータを取得した。
. . . .
LED signal
ADC Gate 1 ADC Gate 2
ADC Gate 13
2080 ns
図 6.4: オシロスコープでみたLEDの信号とADC Gateの概念図。ひと つのGateを160 nsとして、Gateをずらしていき、160×13 = 2080 nsの 範囲をスキャンしていく。Gate1つにつき25000countsデータを取得、13 個のデータを合計して、2080 nsに渡るアフターパルスのデータとした。
本章の冒頭で述べた様に、次世代望遠鏡ではPulsar等からの低いエネ ルギー閾値(Ethreshold = 10 GeV 程度)でのデータ取得が求められる。エ ネルギー閾値の低いデータ取得では、バックグラウンドデータである夜 光のアフターパルスが邪魔になる。夜光は一般的に幅100 ns、8 p.e.程度 であり、またアフターパルスの大きさ(Pulse Height)は一般的に0〜30 p.e.程度と言われている。低いエネルギー閾値では、6 p.e.程度のPulse
Heightを持ったアフターパルスからデータ取得の障害となってくる。従っ
て、次世代望遠鏡に使用されるPMTでは、幅100 ns、入射光量8 p.e.程 度でPulse Heightが6 p.e.以上のアフターパルスのレートが小さいもの が求められる。アフターパルスのレートは一般的に、
アフターパルスのレート= アフターパルスの事象
入力信号の事象 (6.1) と表され、次世代の望遠鏡で使用するPMTでは6 p.e.以上のPulse Height であるアフターパルスの事象が0.03% 以下のレートで求められている。
以上の議論より、今回の実験では、夜光程度の入射光量で、Pulse Height が6 p.e.以上でのPMT R3479及びPMT R8900Uの測定が必要となる。
認の意味と、単純に入射光量との関連性を調べる意味とで複数の入射光 量での測定が必要である。また、Pulse Heightについては、6 p.e. 以上の データだけを取得出来ればよいが、データを取得後にADCのチャンネル
で6 p.e. 以上のデータのみ採用する方法の方が遥かに単純なのでこれを
行った(6 p.e. カット)。同時に、この方法では同じデータを用いて他の Pulse Heightでのカットも可能なので、3 p.e. (6 p.e.の半分)以上のデー タのみ採用する3 p.e. カットも行い比較した。このADC チャンネルの カットは、ペデスタルのADCチャンネル平均値 =P edestalに3 p.e.、6 p.e.分を足したADCチャンネルを
Ch3pecut =P edestal+ (3p.e.分のADCチャンネル) (6.2)
Ch6pecut =P edestal+ (6p.e.分のADCチャンネル) (6.3)
と表せば、Ch3pecut、Ch6pecut未満のデータを採用しないという方法で行っ た。(図6.5参照)。
図 6.5: 左図 : ペデスタルのヒストグラム。右図 : 実際に得られたア フターパルスのヒストグラム。左右ともに、横軸がADC count、縦軸が count数。ペデスタルのMeanの値からADC countで3 または6 p.e.の
ADC channelのカットを行った。黒丸で囲っている部分がアフターパル
スのデータ。
アフターパルスのデータ取得の流れをまとめると以下のようになる。
1. PMTによる違い
PMT R3479(PMT ID:KA8650使用)、PMTR8900U-200-M4の 2つのPMTで測定
2. 入射光量による違い
各々のPMTで3、5、10、30 p.e.(全て幅100 ns )の4つの光 量でデータを取得。(夜光が幅100ns、平均8 p.e. 程度の光量 と言われている為、平均値より少し大きな10 p.e.と小さな値 として3、5 p.e.で測定。30 p.e.のデータは大光量での参考の 為に取得。)
3. Pulse HeightでのADC チャンネルでのカット
PMT、光量毎のデータで3 p.e.以上の大きさのアフターパル スを採用(3 p.e. cut)
PMT、光量毎のデータで6 p.e.以上の大きさのアフターパル スを採用(6 p.e. cut)