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PFC 回路のコモンモードノイズ

ドキュメント内 車載電力変換器の低ノイズ化に 関する研究 (ページ 55-60)

C ESL

4.2 PFC 回路のコモンモードノイズ

昇圧チョッパ方式のPFC回路を例にし,コモンモードノイズ発生メカニズムを説明す る。図4.1に昇圧チョッパ方式のPFC回路図を示す。点gはグランド電位とする。交流 電源電圧と相似波形となるようにインダクタ電流iL を制御することで力率を改善する。

この時,半導体素子MOS1 のドレイン端子が接続されている点pの電位がスイッチング 動作に伴い変動するが,半導体素子MOS1ドレイン端子と筐体間には放熱シートが存在 し,浮遊容量Cpg が形成されているため,コモンモード電流が流れる。コモンモード電流 は筐体を介して,LISNの接地端子を通り,チョッパ回路部に戻ってくる。

コモンモード電流の抑制には,コモンモードチョークと Yコンデンサで形成するコモ ンモードフィルタを用いることが一般的である。しかし,コモンモードフィルタ追加によ る体格及び重量増加は,充電効率及び走行中の電費低下を招き,省エネルギーの妨げとな る。また,その影響は充電電力の大電力化でさらに顕著になる。

これに対し,コモンモード電流の発生が少ない図4.2に示すバランス型PFCの回路が 研究されている。図4.1のPFC回路との違いは2点あり,整流ダイオードdr3とdr4のア ノード電位と半導体素子MOS1 のソース電位点nとの間にインダクタLn を設けている ことと,負荷の一本端の点lnと点n間にダイオードdnを設けていることである。バラン ス型PFC回路の理想動作波形の概要図を図4.3に示す。インダクタLpLn のインダク タンス値が同値の場合,グランド電位の点gからみた半導体素子MOS1 のドレイン電位 点p,ソース電位点nそれぞれの対地電圧vpgvng は相補的な電圧となる。(以降におい て,単に対地電圧と記す場合はグランド電位点gからみた各点の電圧とする。)半導体素 子MOS1 のソース電位点nにはダイオードdn のカソード端子と筐体間で浮遊容量Cng が形成され,半導体素子MOS1のドレイン電位の点pにも筐体との間に浮遊容量Cpg が 存在しており,CpgCng のキャパシタンス値が同値の場合,対地電圧vpgvng を相補 的に動作させた場合,浮遊容量CpgCng を介して流れるコモンモード電流を回路内で還 流し,外部に流れるコモンモード電流は抑制される。また,ダイオードdp,dnの両端電 圧をそれぞれvdpvdn とすると,負荷端子の点lp,点lnの対地電圧vlpgvlng はそれぞ れ(1)(2)式で表される。

vlpg =vpg +vdp (4.1)

MOS1

LISN g

-iL p

n dr1

dr3

dr2

dr4

dp

Cpg 6 vds

図4.1 Circuit diagram of the boost chopper type PFC

MOS1

LISN g

p

n Lp

Ln

Cpg

Cng

lp

ln dr1

dr3

dr2

dr4

dp

dn v-dp

vdn 6 vds

図4.2 Circuit diagram of the balanced boost PFC

vlng =vng−vdn (4.2)

対地電圧vlpgvlng は理想的には直流電圧となるため,負荷端子の点lp,点lnと筐体 間に存在する浮遊容量ClpgClng の影響は無視することができる。

このように,図4.2のバランス型PFCの回路はコモンモードノイズの抑制性能は高い が,半導体素子MOS1がオンの場合,整流ダイオードdr1〜dr4の中で対となる2つのダ イオードと半導体素子MOS1 の3素子を導通し,半導体素子MOS1 がオフの場合,整流 ダイオードdr1〜dr4の中で対となる2つのダイオードとダイオードdp,dn の4素子を 導通するため,損失が大きいという課題がある。

vds

0 vpg

0

vdp

0

vlpg 0 vng

0

vdn

0 vlng 0

図4.3 Illustrated waveforms of the balanced PFC

4.2.1 バランス型 PFC 回路の低損失化

ノイズ性能と損失低減を両立するバランス型ブリッジレスPFC回路が提案されており,

その回路図4.4に示す。交流電源電圧と点 pと点nの間にそれぞれインダクタ LpLn を配置し,双方向スイッチ構成の半導体素子MOS1 とMOS2 で力率改善するようにイ ンダクタ電流iL を制御し,整流は後段のダイオードブリッジdr1〜dr4 で行う。インダ クタLpLnのインダクタンス値が同値の場合,半導体素子MOS1 のドレイン電位点p, MOS2のドレイン電位点nそれぞれの対地電圧vpgvng は相補的な電圧となる。点p は半導体素子MOS1 のドレイン電極と筐体間の浮遊容量及びダイオードdr3 のカソード 電極と筐体間の浮遊容量が形成され,図4.4では合成容量Cpg として示している。また,

MOS1

MOS2

LISN

lp

ln g

p

n -iL Lp

Ln

Cpg Cng

dr1

dr3

dr2

dr4 6

vpn

6 idr1

6 idr4

図4.4 Circuit diagram of the balanced bridgeless PFC

表4.1 Calculation condition of the loss Input voltagevin[V] 200 Output voltagevout[V] 400 Output powerpout[W] 3000 Switching frequencyfsw[kHz] 25

点nには半導体素子MOS2 のドレイン電極と筐体間の浮遊容量及びダイオードdr4のカ ソード電極と筐体間の浮遊容量が形成され,図4.4では合成容量Cng として示している。

バランス型PFCと同様に,CpgCngのキャパシタンス値が同値の場合,対地電圧vpgvng を相補的に動作させることで,コモンモード電流は浮遊容量CpgCng を還流し,交 流電源側に流れるコモンモード電流は抑制される。

また,表4.1の条件で損失試算した結果を図4.5に示す。整流ダイオードdr1〜dr4に高 速ダイオードが必要となり,図4.2のバランス型PFC回路の整流ダイオードに対して,順 方向電圧は大きくなるが,半導体素子MOS1がオンの場合,MOS1とMOS2 の2素子の みの導通で,半導体素子MOS1がオフの場合,整流ダイオードdr1〜dr4の中で対となる 2つのダイオードのみの導通となり,主電流の通過素子数を低減できるため,バランス型 PFCに対して,約10 %の低損失化が期待できる。

このように,バランス型ブリッジレスPFCは高効率と低ノイズを両立する性能を有し ている。次章ではバランス型ブリッジレスPFCの具体的な動作と課題について説明する。

0 10 20 30 40 50[W]

balanced boost PFC

balanced bridgeless

PFC

図4.5 Loss breakdown

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