C ESL
5.3 提案サージ抑制法
5.3.1 励磁電流を用いた ZVS サージ電圧抑制法
二次側のダイオードサージ電圧を低減するには,ダイオードが逆回復した後に端子間静 電容量を充電するインダクタ電流成分を出来るだけ小さくする必要がある。これを実現す
(a)voltage rise time 50 ns 3.5A
t1
700 V
t1
50 ns 200 ns
800
0
0 5
-5
0 1600 800
100ns
i
equi[V]
[A]
[V]
v
c2( v
in-v
sw)
800
0
0 5
-5
0 1600 800
100ns
i
equi[V]
[A]
[V]
v
c2( v
in-v
sw)
(b)voltage rise time 200 ns
図5.6 Waveforms of the simplified equivalent circuit(Fig.3.5) when the primary-side switch turns on
る手段として(1)ダイオードの逆回復期間中は二つの一次側スイッチ素子をオフ状態と しデットタイムを設け,(2)二次側の平滑用フィルタインダクタの電流リプルを大きく して,その下限値が変圧器励磁電流よりも小さくなるようにする方法を考案した。
初めに,プッシュプル型DC-DCコンバータの各動作モードにおける変圧器励磁電流に 着目して,二次側ダイオードD1,D2の転流期間の動作モードとダイオードサージ電圧の 関係を導出し,これを用いてダイオードサージ電圧を抑制する条件を明らかにする。
図5.7に一次側スイッチ素子ターンオン時における変圧器励磁電流と負荷電流経路,図 5.8に各部の模式波形を示す。二次側スイッチ素子にもMOSFETを用いているが,同期 整流を用いない場合の動作から説明する。
load current excitation current
(a)mode(1)
(b)mode(2)
(c)mode(3)
(d)mode(4)
(e)mode(5)
SW1 SW2 SW3 SW4
vgs16 vgs26 vgs36 vgs46 vsw1
6 isw1
?
vsw2
6
vsw3
6 iL
isw3
vtr16 6vtr2
is
ip
vsw1
6 vsw2
6 vsw3
Cds1 Cds2 C6ds3
itr1?
itr2? ?itr3
itr4
?
SW1 SW2 SW3 SW4
SW1 SW2 SW3 SW4
SW1 SW2 SW3 SW4
SW1 SW2 SW3 SW4
(1)- (2) -(3)-(4)-(5) vgs1
0 vgs2
0 vgs3
0 vgs4
0 iL iL
iLm iLm
0 isurplus
0 isw10
isw3 0
vsw1 0 vsw3
0
図5.8 Illustration waveforms when the primary-side switch turns on(proposed method)
モード(1)は一次側スイッチのオン期間(図5.7の場合はSW2がオン)で,インダクタ 電流iLが上昇する。この時,変圧器励磁電流iLmは一次側スイッチを流れ,励磁電流に 直流成分が含まれない場合,(1)式を用いて計算すると,一次側スイッチがオフする直前 の励磁電流の絶対値は次式で与えられる。
iLm= 0 +iL+ voutTlimit
2LmN −iL+ 0 (5.8)
|iLm|= voutTlimit
2LmN (5.9)
ここで,vout は出力電圧,Lmは励磁インダクタンス,Tlimitは還流限界時間(詳細は後
述,モード(1)とモード(2)の合計時間),N は一次側に対する二次側の変圧器巻数比で ある。
モード(2)は一次側スイッチSW1,SW2がオフ期間で,インダクタ電流iL は二次側 ダイオードを還流する。この期間において,励磁電流iLmも同様に図5.7(b)に記す向き で二次側ダイオードを流れている。励磁電流はダイオードの順方向電圧の影響で減少する が,その影響を無視し,モード(2)の期間において一定とすると,二次側スイッチSW3, SW4に流れる電流isw3,isw4 はダイオードの順方向を正の向きとすると下記式で表さ れる。
isw3 = iL
2 − |iLm|
2N (5.10)
isw4 = iL
2 + |iLm|
2N (5.11)
励磁電流を2で除しているのは,起磁力一定に対し,二次側経路の励磁電流は2巻線通る ことによるものである。二次側スイッチSW3に流れる電流はダイオードとして用いてい る場合,式(10)からもわかるようにインダクタ電流が小さくなると流れることが出来な くなる。インダクタ電流を還流することができる期間を還流限界時間Tlimitとし,その時 のインダクタ電流の下限値をiLminとすると,
iLmin
2 = |iLm|
2N (5.12)
Iout− vout
L
Tlimit
2 (1− vout
N vin
) = voutTlimit
2LmN2 (5.13)
1
Tlimit = vout
2LmN2Iout + vout
2LIout(1− vout
N vin) (5.14)
となり,負荷電流直流分Iout,励磁インダクタLm,平滑インダクタL等により変化す る。Tlimit を用いてモード(1)の時間t1 とモード(2)の時間t2を計算すると下記の様に なる。
t1 =Tlimit
vout N vin
(5.15)
isurplus vsw3
? 6 vtr2
6 vtr1
vsw2
? vsw16 Cds1
Cds2
Cds3
6ip is6
図5.9 Equivalent circuit of the Fig.5.8 on mode(3)
t2 =Tlimit(1− vout
N vin) (5.16)
モード(3)は励磁電流によるスイッチ端子電圧充放電期間である。モード(2)で二次側 ダイオードを還流していた励磁電流は時間t2より長くオフ状態が継続すると,片方のダ イオード(今回の場合は二次側スイッチSW3)は非導通となり,励磁電流の一部が一次側 に転流し,スイッチ端子電圧の充放電(今回の場合は一次側スイッチSW1が放電,一次 側スイッチSW2が充電)を開始する。この時,一次側及び二次側のスイッチ端子電圧は,
下記式を満足している。
vsw4−vsw3 =vt2 =vt1 =vsw1−vsw2 (5.17) つまり,変圧器の一次側電圧vt1 と変圧器の二次側電圧vt2 が一致する条件下で,励磁電 流が一次側と二次側で分配されることになるが,この時の動作を図5.9の等価回路を用い て説明する。
モード(3)移行時刻をt= 0とすると,式(10)において,t= 0で二次側スイッチSW3 に流れる電流は0となり,インダクタ電流が減少する分の電流が余剰励磁電流isurplus(ダ イオード導通不可電流)となる。余剰励磁電流isurplusは下記式で与えられる。
isurplus(t) = 1 2L
∫ t 0
vL·dt= 1 2L
∫ t 0
(vout−vsw3)·dt (5.18) t = 0において,図5.9の各部のスイッチ端子電圧は
vsw1 =vin (5.19)
vsw2 =vin (5.20)
vsw3 = 0 (5.21)
であり,余剰励磁電流 isurplus が一次側と二次側のスイッチ素子経路のキャパシタ ンスに応じて分配され,スイッチ端子電圧が充放電する。一次側及び二次側スイッチ
SW1-SW4がすべて同一の素子を用い,端子間静電容量Cdsが等しいとすると,一次側
スイッチ電圧を充放電する余剰励磁電流ipは
ip(t) = 1 1 + N22
isurplus(t) (5.22)
で与えられる。一次側スイッチSW1端子電圧vsw1 は vsw1 = 1
Cds
∫ t 0
ip ·dt= 1 1 + N22
1 2LCds
∫ t 0
(vout−vsw3)·dt (5.23)
となる。計算簡易化のために,端子電圧変化によるインダクタ電流減少分を無視する と,一次側スイッチSW1端子電圧vsw1 が電源電圧vinV から0 Vまで放電する時間t3
は下記で計算することができる。
t3 =
√
(1 + N22)4vinLCds
vout (5.24)
一次側スイッチSW2端子電圧vsw2 が電源電圧vinVから2vinV まで充電する時間と 二次側スイッチSW3端子電圧 vsw3 が0 Vから 2vinV まで充電する時間も同様にt3 で ある。モード(3)移行から時刻t3 経過時(一次側スイッチのターンオン完了時)の図5.9 の二次側スイッチ端子電圧を充放電する余剰励磁電流isは
is(t3) =
√
vinvoutCds
(1 + N22)L (5.25)
で表され,二次側スイッチ素子のオフ状態の定常電圧からのサージ電圧∆vはこの電流 値に起因する。サージ電圧∆vについては次節で検討する。
モード(4)は一次側スイッチのオン期間(図5.7の場合はSW1がオン)である。励磁電 流は電源に回生され,一次側スイッチSW1電流isw1 はゲート信号がきていなければ逆並 列のダイオードを流れる。既に,一次側スイッチSW1電圧vsw1は0 VのためZVS(Zero Voltage Switching)を実現できている。一次側スイッチSW1電流isw1は下記となる。
isw1 =iL−iLm (5.26)
リアクトル電流iLは上昇,励磁電流iLmは減少し,一次側スイッチSW1電流isw1 はい ずれ反転するが,その時間はt4 は
( 1 Lm
vin+ 1
L(vin−vout) )
t4 = 1
Lvoutt3 (5.27)
t4 = Lmvout
Lvin+Lm(vin−vout)t3 (5.28)
で与えらえる。ゲート信号出力はt4 までの期間に行う。
モード (1)からモード (4)の時間をすべて足した時間が任意の入力電圧vin,出力電圧 vout,負荷電流ioutにおける提案方式の運転周期となり,励磁電流を利用したZVSサー ジ抑制を行う際のスイッチング周波数fZV S は
fZV S = 1
t1+t2+t3+t4
(5.29) となる。
モード(5)は一次側スイッチSW1電流isw1が正方向期間であり,励磁電流は引き続き 減少し,いずれ磁化極性が反転する。以降はモード(1)のスイッチのペアを読み替えた場 合と同様の動作を繰り返す。
また,同期整流を用いる場合はモード(2)において,次にオンとなるスイッチ(今回の場 合は一次側スイッチSW1)とペアとなるスイッチ(今回の場合は二次側スイッチSW4)を デットタイム後にオンし,直前までオンしていたスイッチ(今回の場合は一次側スイッチ SW2)とペアとなり同期整流するスイッチ(今回の場合は二次側スイッチSW3) をインダ クタ電流の下限値が励磁電流以下になる領域になるまでにオフする(図5.8 の破線動作)。 このように動作させることでモード(3)以降はダイオード構成と同様なり,同期整流を用 いたZVSサージ抑制を実現できる。
表5.1 Circuit parameters of the push-pull DC-DC converter
Input voltagevin[V] 400 Output voltage vout[V] 300
InductanceL[µH] 50-1000
Transformer exciting inductanceLm[mH] 1,10 Drain-source capacitance(with snubber)Cds[pF] 500
Winding ratioN 1
5.3.2 適応範囲
図5.1のプッシュプル回路において,表5.1の回路定数を用いてサージ電圧と駆動周波 数を計算し,設計時の指針を得る。サージ電圧∆vは図5.9の二次側を還流する余剰励磁 電流is が流れる経路に存在するインダクタ成分の合計をLlss とし,下記式で求める。
∆v =
√Llss
Cdsis (5.30)
提案方式を実現するスイッチング周波数は式(29)を用いて計算する。
図5.10に平滑インダクタLに対するサージ電圧∆vの計算結果を示す。平滑インダク タLを大きくすると,サージ電圧∆vが小さくなる。これは,平滑インダクタを大きく するとインダクタ電流の減少速度が小さくなるため,少ない余剰励磁電流で時間をかけて 二次側スイッチ端子電圧の充電を行うことになり,オフ状態の定常電圧到達時の余剰励磁 電流が減るためである。また,二次側を還流する余剰励磁電流is が流れる経路に存在す るインダクタLlss の支配項はトランスの二次側の二巻線間の漏れインダクタンスである。
よって,更なるサージ電圧低減には二次巻線間の密結合化が有用である。
図5.11 に平滑インダクタL 及び負荷電流に対する提案方式実現スイッチング周波数 fZV S の計算結果を示す。平滑インダクタL及び負荷電流が大きくなると,インダクタ電 流が励磁電流と合致するまでの時間が大きくなるため,スイッチング周波数が低下する。
これに対し,励磁インダクタLmを小さくし,励磁電流値を嵩上げすることで,スイッチ
Inductane L[µH]
Serge voltage △v[V]
60 50 40 30 20 10
010 100 1000
Llss= 1.0µH
Llss= 0.5µH
Llss= 0.1µH
図5.10 Relationship between the surge voltage and the inductance
表5.2 Simulation condition
Input voltagevin[V] 430 Output voltagevout[V] 300
InductanceL[µH] 80
Transformer exciting inductanceLm[mH] 1 Transformer leakage inductanceLlss1,Llss2[nH] 200 Drain-source capacitance(with snubber)Cds[pF] 500
Winding ratioN 1
ング周波数を高周波化は可能である。サージ電圧とスイッチング周波数と励磁電流による 損失増加を総合的に考慮し,各種パラメータを決定する必要がある。