ITSPプログラムにおける特徴的な科目をい くつか挙げる。
PBL:先端IT特別演習プロジェクト(春・秋、
各2単位)
【科目概要】
先端ITスペシャリスト育成プログラム(ITSP)
の中で、企業やNPOで実施されるインターンシ ップ科目の履修と併せて履修することを前提と した、学生参加型のPBL型研究プロジェクト科 目として設置されるものである。春学期は、履 修する学生全員に対し、ITSPカリキュラム検討 委員会が設定した、組込み系システム等を題材 とする統一課題を課す。複数人によるプロジェ クトチームの中で、<システム仕様策定/詳細 設計/実装/評価検証>に関する一連のPDCA サイクルを体験することで、実践力や応用力の 集中的な育成を行う。
【PBL教員体制/講師情報/評価方法】
各研究科で大学教員1~2名と企業側教員1
~2名からなるプロジェクト担当教員(メンタ ー)を設定する。プロジェクトの成果物、報告 書、学期末に開催される「プロジェクト合同レ ビュー」での成績により、総合的に合否を判定 する。判定には、ソフトウェア創造力、成果物 の完成度、タスクの実施能力、プレゼンテーシ ョン能力を重視する。
【PBL実施期間/時間数】
PBL実施期間は3ヶ月弱、時間数にして週2 時間×15回程度。週1回ペースのプロジェクト ミーティング(13回)での担当教員によるメン ティングと、履修者、ITSPプログラム参加教 員全員によるプロジェクト合同レビューを実施 する。
【PBL教材の概要】
春学期:ITSPカリキュラム検討委員会が、
組込み系システム、Webアプリケーション等 を題材とした統一課題を用意する。例えば、慶 應義塾大学大学院政策・メディア研究科が2008 年度、2009年度に準備した課題は次の通りであ る。
・初等教育用ヴィジュアルプログラミング環境 の開発
・iPod touch上での直感型情報アクセスツール の作成
・多人数同時参加型お絵かきソフト“iPictChat”
の開発
・Gumstixによる組み込み型トランシーバの開 発
各課題の教材には、要求仕様書、予備実験向 け演習課題が含まれる。2009年度秋学期合同 レビューの様子を図6. 3に示す。2009年度は、
概ね1プロジェクト3~4名のメンバーにより 実施された。
【PBL教育の効果】
本プログラムが想定している人材育成像に基
づき、履修生を定量的かつ総合的に評価する必 要性から、2008年度合同レビューから新たに5 つの定量的な評価基準を導入した。合同レビュ ー時ではリアルタイムに採点ならびに評価コメ ントを参照できるWebベースの評価システム を構築し、履修生には、総合点、各評価尺度で の採点結果のみならず、平均点、標準偏差など の統計量も通知し、履修生自身に強み・弱みを 認識させることに成功した。また、産業界出身 教員との連携により、多くのフィードバックが かかっており、今後も積極的に連携を深めてい きたい。産業界出身教員と大学教員とでペアリ ングでカリキュラムを構成していることが、ス キル移転を進めることを可能にしていると分析 しており、この仕組みは今後も維持していきた いと考えている。
先端IT特別講義(春2単位)
【科目概要】
次世代情報システムの創出に果敢に挑戦し続 ける企業・NPOから、各研究・開発分野の第 一線で活躍される方々を講師として招き、実践 的な講義及び演習を実施して頂き、先端IT特 別演習プロジェクト、ITSPインターンシップ 等の履修と併せて、実践力や応用力の集中的な 育成を行う。
【講師情報】
春学期は、本プログラム協力企業、NPOで あるNTT、IBM、Mozilla Japanで各4回の講 義を担当する。
【時間数】
各学期13 ~ 14回。他にガイダンス1回。講 義は各拠点(研究科)が3~4回ずつをホステ ィングし、多拠点には遠隔講義システムで配信 する。
【教材の概要】
教材・資料は、各回の講義担当者が準備する。
成績は、各回で出題される演習・課題へのレポ ートの内容により総合的に判定する。2009年度 の講義スケジュールは次の通りであった。
第1回 企業研究所における高速ネットワーキ ングの研究開発とは?
塩本 公平 氏(NTTネットワークサービ スシステム 研究所主幹研究員(リーダー))
開講キャンパス:慶應SFC
第2回 音を専門とする研究者のつくり方 日和崎 祐介 氏(NTTサイバースペース 研究所 主任研究員)
開講キャンパス:慶應理工 第3回 シリコンバレーって
首藤 一幸 氏(東京工業大学 大学院情報 理工学研究科 准教授)
開講キャンパス:早稲田
第4回・第5回 知ってて良かった!プロジェ クト・マネジメント
板倉 真由美 氏(日本IBM株式会社 東京 基礎研究所)
開講キャンパス:慶應理工
第6回 アップルやグーグルはどのように時代 を巻き込んでいったのか
林 信行 氏(フリーランスITジャーナリ スト)
開講キャンパス:中央大学
第7回 オープンソース時代の研究プロセス アーリーワイン・マイケル・芳貴 氏(Mozilla Labs 研究員)
開講キャンパス:中央大学
第8回 革新的サービスが生まれる土壌 ~ Google成功の秘訣~
西尾 信彦 氏(立命館大学 情報理工学部 教授)
図6. 3 合同レビューの風景
第2章6 慶應義塾大学拠点
開講キャンパス:慶應SFC
第9回 ミドルウェアとプラットフォーム ~ クライアントサーバからWeb、ICカード、
RFIDとサービスコンピューティングまで~
山本 修一郎 氏(NTTデータ技術開発本 部 システム科学研究所長)
開講キャンパス:慶應理工
第10回 ITと他分野の融合による事業創造の 実際
加藤 浩一 氏(早稲田情報技術研究所 社長)
開講キャンパス:早稲田
第11回 ソフトウェア開発の実践:Rubyの場合 笹田 耕一 氏(東京大学大学院 情報理工 学研究科 講師)
開講キャンパス:中央大学
第12回 日米ユビキタス研究開発事情
増井 俊之 氏(慶應義塾大学 環境情報学 部 教授)
開講キャンパス:慶應SFC
第13回 開発方法論と開発支援環境~構造化 手法からナレッジマネジメントと「すりあわせ」
まで~
山本 修一郎 氏(NTTデータ技術開発本 部 システム科学研究所長)
開講キャンパス:慶應理工
オープンソースシステム(秋、2単位)
【科目概要】
近年、オープンソースソフトウェア(OSS)
が社会に普及し、幅広く利用されはじめ影響を 与えている。ここでは、オープンソースプロジ ェクトのいくつかを例に、グローバルな開発モ デル、オープンソースプロジェクト運営、コミ ュニティ形成、ライセンス管理について学ぶ。
またその中においてデファクト・スタンダード の意義や、市場にもたらす影響など今後の方向 性も考察する。また、実際のオープンソースの プロジェクトに参加し、実習体験を行い進めて いく。
【講師情報】
徳田 英幸、瀧田 佐登子(Mozilla Japan)、
浅井 智也(Mozilla Japan)
【時間数】
全13回(講義、実習・演習)
【教材の概要】
実習・演習での課題情報を含むすべての教材を、
講義ホームページにて履修者向けに公開する。
上記講義を含む、本プログラムで2009年度に 提供されたプログラム科目リストを次にまとめ る。
図6. 4先端IT特別講義 遠隔講義の様子(慶應SFC)
設置主体 科目名 科目担当者 開講学期 時間割 遠隔
研究科共通 先端IT特別講義Ⅰ オムニバス講義 春 水・5 ○
慶應SFC
自律分散協調システム論 徳田 英幸
中村 修 春 月・4 ○
システムソフトウェア バンミーター・ロドニー 春 火・2 ○
オープンソースシステム 瀧田 佐登子
浅井 智也 秋 水・4 ○
インターネットの進化と可能性 村井 純
バンミーター・ロドニー 秋 木・3 ○
次世代WEBプラットフォーム論 増井 俊之 春 木・5 ○
慶應理工
システムシミュレーション 山本 喜一 春 月・2(英語) ○
Webインテリジェンス論 山口 高平 春 火・3 ×
実世界指向コミュニケーション特論 今井 倫太 春 金・2(英語) ○
情報意味論 櫻井 彰人 秋 月・3 ○
コンピュータグラフィックス特論 大野 義夫 秋 金・3(英語) ○
ソフトウェア工学特論Ⅰ 高田 眞吾 春 火・5(英語) ×
オペレーティングシステム特論 河野 健二 春 木・3(英語) ×
データベース特論 遠山 元道 春 金・4(英語) ×
システム評価法 山本 喜一 秋 月・2(英語) ×
ソフトウェア工学特論Ⅱ 高田 眞吾 秋 火・5(英語) ○
自然言語処理特論 小原 京子
斎藤 博昭 秋 水・2(英語) ×
ネットワーク工学特論 寺岡 文男 秋 木・2(英語) ×
早稲田
並列処理特論 村岡 洋一 春 月・3 ○
ソフトウェア基礎論特論 筧 捷彦 秋 火・3 ○
ソフトウェア開発工学特論 深澤 良彰 秋 水・3 ○
高信頼ソフトウェア 上田 和紀 春 水・2 ×
情報ネットワーク構成特論 後藤 滋樹 春 金・1 ×
分散組込み・リアルタイム処理 中島 達夫 秋 月・3 ×
ネットワーク・アプリケーション 山名 早人 秋 金・3 ×
データベース実践講座 大沼 啓希 秋 土集中 ×
中央
特殊講義Ⅰ(オペレーティングシステム) 土居 範久 春 金・3 ○
特殊講義Ⅰ(数値情報処理論) 久保田 光一 春 水・2 ×
情報セキュリティ
ネットワークシステム設計・運用管理A 佐藤 直 春 木・4 ○
情報セキュリティマネジメントシステムB 内田 勝也 秋 木・4 ○
第2章6 慶應義塾大学拠点
現時点までに、本プログラム用に作成した教材は次の通りである。
<教材>
◆「ソフトウェア基礎論特論 Ⅰ 論理と証明」 筧 捷彦
◆「ソフトウェア基礎論特論 Ⅱ プログラムの検証」 筧 捷彦
◆「ユビキタスコンピューティングシステム特論」 徳田 英幸
◆「インターネットの進化と可能性」 村井 純
◆「次世代WEBプラットフォーム論」 増井 俊之
◆「プロセスと同期」 土居 範久
◆「実世界指向コミュニケーション特論」 今井 倫太
◆「ネットワーク工学特論」 寺岡 文男
◆「ソフトウェア工学特論Ⅰ・Ⅱ」 山本 喜一
◆「ソフトウェア工学特論Ⅲ」 山本 喜一
◆「情報意味論」 櫻井 彰人
◆「Webインテリジェンス論」 山口 高平
◆「自然言語処理特論」 斎藤 博昭
◆「コンピュータグラフィックス特論」 大野 義夫・小原 京子
◆「システムシミュレーション」 山本 喜一
◆「先端IT特別演習」 山本 喜一
◆「システム評価法」 山本 喜一
◆「オペレーティングシステム特論」 河野 健二
◆「データベース特論」 遠山 元道
◆「先端IT特別演習」春学期(PBL演習用仕様書一式) 高汐 一紀
◆「先端IT特別講義」
<ビデオアーカイブ(公開版)>
◆「自律分散協調論」 徳田 英幸・中村 修
本拠点は、「集中型」拠点方式と異なりさま ざまな運営ノウハウが各参加校、協力企業、
NPOに蓄積されてきている点が大きな特徴で ある。育成プログラムの実施にあたっては、各 キャンパスを平等かつ対等に結ぶ形で、プロジ ェクト科目、プログラム科目が設置されており、
協力企業、NPOでのインターンシップをサー ティフィケート授与の必修要件としている。プ ログラムの運営にあたっては、次のような点に 留意する必要があった。
⑴プログラム科目の成績評価の調整
⑵プロジェクト科目の成績評価の調整
⑶プロジェクト科目提案書式の調整
⑷インターンシップ科目の募集・申請・報告書
の調整
⑸オムニバス形式の授業の評価方法の調整
⑹キャンパスの授業時間や休講日の調整
これらの問題を大学間・企業間で調整するた め、各項目についてガイドライン、様式を定め、
円滑に実施できるように適宜改善を行った。特 に、複数の大学・キャンパスで遠隔授業が前提 であるため、授業開始終了時刻の違いや、学年 歴の違いによる休講日の調整が必須となる。こ れらについては、ビデオアーカイブを積極的に 利用し、本来受講可能な学生が受講できなくな るような不利益が生じないよう配慮した。
また、2009年度は特に、当初計画した研究