本プログラムに参加した学生たちが構築した システムやソフトウェアには、当初の計画通り 非常に新しいものが散見した。例えば、慶應義
塾大学大学院政策・メディア研究科の森君の「リ アルタイム興味情報収集システムの設計と実 装」で発表されたシステムは、「NHKおはよう 日本のニュース」で紹介されたシステムである。
また、慶應義塾大学大学院理工学研究科の手嶋 君は、「日本語Wikipediaに基づく領域オントロ ジー構築ツールの開発」を合同レビューにて発 表しているが、日本IBMが主催したWeb上に公 開されている複数のサービスを組み合わせて新 しいサービスを作るマッシュアップをテーマと したコンテスト「Scholars Challenge Program 2007」において「さくっとデートへGo!!」を 作成し、最優秀賞を受賞している。
さらに、産学連携プロジェクト「慶應義塾大 学/早稲田大学/伊藤忠商事・次世代Web技 術共同研究開発プログラム」において、早稲田 大学大学院基幹理工学研究科の下山君が「次世 代商品検索エンジンemono」で最優秀賞を、慶 應義塾大学大学院理工学研究科の木村君・桜井 君・手島君のチームが「複数人での総合的旅行 プラン設計サービス~旅サブロウ」にて優秀賞 を、同じく慶應義塾大学大学院理工学研究科の 石井君・今井君のチームが「施策品提供の場の 想像~イノベーター理論を基にした推薦アルゴ リズムの応用」というテーマで佳作を受賞した。
3賞のすべてに本プログラム参加学生が選出さ れたことは、特筆に値する。
2009年度には、早稲田大学大学院基幹理工学 研究科の舟橋君が、情報処理学会2008年9月度 データベースシステム研究会「情報処理学会 コンピューターサイエンス領域奨励賞」を、同 じく早稲田大学の内山君が、第16回 ソフトウ ェア工学の基礎ワークショップFOSE 2009に て学生奨励賞を、さらに同じく早稲田大学の城 間君が、ソフトウエアエンジニアリングシンポ ジウム(SES2009)にて学生奨励賞をそれぞれ 受賞しており、本プログラムの特徴でもあるア カデミアな側面での高い教育効果が現れてきて いることがはっきりと確認できた。
また、協力NPOであるMozilla Japanでのイ
図6. 6 国際シンポジウム(パネルⅠ)
図6. 7 国際シンポジウム(パネルⅡ)
ンターンシップ(2008年夏)に参加した、慶應 義塾大学大学院理工学研究科 木村君・同大学 大学院政策・メディア研究科 中川君・中央大 学大学院理工学研究科 柄沢君・村田君の4人 は、インターンシップ終了後も4人でプロジ ェクトチームを組み、インターン先での課題 テーマの延長として、オンラインプレゼンテ ーションを支援するFirefoxプラグインツール
「Mockingbird」をMozilla Japanと連携しつつ 開発し、秋学期合同レビュー直前にベータリリ ースまで漕ぎ着けた。Mozillaでのインターン シップに関しては、慶應義塾大学大学院理工学 研究科の吉原君が、Mozilla Japanの仲介もあ り、米国Mozillaでのインターンを経験してい る。これらは、本プログラムでの産学連携が非 常に有効に機能していることを示す特筆すべき 事例であろう。
本プログラム参加学生の就職予定状況に関 しても、特筆すべき結果があがっている。昨 年度春、ITSP 1期生として参加した学生諸君 が修了、サーティフィケートが授与されたが、
早稲田大学から参加している学生諸君の場合、
NTTにてインターンシップを行った3名が高 い評価を得てNTTに就職し、同様に1名がイ ンターンシップ先であった日本IBMに就職して いる。また慶應義塾大学の学生も連携企業群だ
けに限らず、キヤノン、野村総合研究所、アク センチュア、KDDIなどに就職している。企業 の採用サイドからも、本プログラムに参加して いる学生諸君のレベルが高いとのコメントを頂 いている。第2期生学生諸君たちの企業などで の活躍は、この春の修了後となるが、大いに期 待できる人材が育成されつつあると認識してい る。2009年度修了予定者の就職先(いずれも予 定)は、次の通りである(順不同)。
NTT研究所、NTTソフトウェア、日本IBM、任 天堂、野村総合研究所、三菱UFJ証券、 ヤフー、
ジャフコ、KDDI、ソニーグローバルソリュー ションズ、野村證券、東芝ソリューション、エヌ・
ティ・ティ・コミュニケーションズ、キーエン ス、ニッセイ情報テクノロジー、グリー、東芝、
コーエー、メタテクノ、ハミングヘッズ、経済 産業省、博士課程進学(2名)
サーティフィケートに関しては、全国統一の ロゴマークを採用することに大きく貢献でき た。しかし、学生諸君からは就職活動を行う上 で、修士課程の修了時では意味が薄れてしまう という意見が多く寄せられたため、2008年度か らは、プログラム所属証明書とプログラム修了 見込証明書を発行するよう改善した。
今 後 の 予 定 ・ 構 想
スタート当初より、初期段階における遠隔授 業システム等のインフラ整備のみならず、研究 科間の単位互換制度をはじめとするソフトウェ ア面の整備・確立を進め、支援期間後も自立的 に継続可能とすることを目指してきた。当初の 計画を整理すると次のようになる。
【フェーズⅠ】2007年度より修士課程のプログ ラムをスタートさせ、2008年度末に最初の修 了生(サーティフィケート授与者)を出す
【フェーズⅡ】2009年度より学部教育・後期博 士課程教育との連携を図る
【フェーズⅢ】2011年度より国際連携(国外大
学との連携)を強化する
上記のうち、フェーズⅠについては順調に立 ち上がり軌道に乗っている。遠隔教育のインフ ラや大学間横断授業の運営ノウハウ確立も2008 年度中にはほぼ完了する見込みである。一方、
フェーズⅡについては、これまで修士課程プロ グラムの安定運用に注力したため、2009年度中 での運営開始は難しい状況となっている。フェ ーズⅢに関しては、慶應義塾大学大学院政策・
メディア研究科において、ベトナムのIT人材 育成事業としてハノイ工科大学から修士課程・
後期博士課程の学生受入が2008年度より既に始
第2章6 慶應義塾大学拠点
まっており、本プログラムとの具体的な連携に までは至っていないものの、将来的な発展の素 地が現実的にできつつある。慶應義塾大学理工 学研究科においては、既にコンピュータ科学の 国際コースが開設されており、エコールサント ラル(フランス)とのダブルディグリー制度も 実施されている。国際コースは9月入学のため そのままでは現状のプログラムに参加すること はできないが、今後留学生が本プログラムへ参 加できるような体制を考えている。
実際、この3年間で、共通基盤がハードウェ ア・ソフトウェアの両面に関してしっかりと構 築できたと自負しており、支援期間終了後の運 営継続を自立的に行う体制が整ってきたと考え ている。具体的には、インターンシップ科目・
研究プロジェクト科目の合同レビュー・遠隔授 業によるプログラム科目群等が対象となるが、
運用についてノウハウが各研究科において蓄積 されており、支援終了後も本育成プログラムを 継続することが可能となっていると考える。
また、複数大学間の連携についても、研究科 間の単位互換の制度が確立されている点や、学 生が他キャンパスのプロジェクトに参加できる 仕組みが確立されている(早稲田大学の学生が 慶應大学大学院政策・メディア研究科のプロジ ェクトに参加した実績がある)点から、運用継 続が可能と考えている。インターンシップの継 続についても、協力企業・NPOから協力の継 続を承認して頂いている。
産業界出身教員からのスキル移転等について
は、これまでにもプログラム科目や研究プロジ ェクト科目において、産業界出身教員との連携 により、多くのフィードバックがかかっており、
今後も積極的に連携を深めていきたい。特に、
産業界出身教員と大学教員とのペアリングでカ リキュラムを構成していることが、ソフトウェ ア開発時のマネジメントスキルや知識をはじめ とする各種のスキル移転を効果的に進めること を可能にしていると分析しており、この仕組み は今後も維持していきたい。
問合せ先
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 湘南藤沢事務室学事担当
tel:0466-49-3406
E-mail:[email protected] 慶應義塾大学大学院理工学研究科 理工学部学事課
tel:045-566-1465
E-mail:[email protected]
早稲田大学大学院基幹理工学研究科 村岡研究室
tel:03-3209-5198
E-mail:[email protected] 中央大学大学院理工学研究科 理工学部事務室
tel:03-3817-1735
E-mail:[email protected] 情報セキュリティ大学院大学 事務局
tel:045-410-0225
E-mail:[email protected]
現在、インターネットは社会基盤として重要 な役割を担うようになってきたが、その確実な 運用のためにはセキュリティを堅持することが 必要不可欠となっており、それを実現するセキ ュリティ技術者の育成は急務の課題となってい る。セキュリティ技術者は、単に機器の設定や 運用といった技術的知識を持つだけでなく、セ キュリティポリシの策定や他組織との連携に必 要となる法律・政策・経営・倫理に関わる知識 を必要とする。
独立行政法人情報処理推進機構セキュリテ ィセンターがまとめたセキュリティマップで は、情報セキュリティのプロフェッショナルに 必要となる知識を16項目の大分類から479項目
の小分類にまで体系化している。本プロジェク トの教育コースでは、公的機関や企業等にお いて情報セキュリティ対策実施の責任者とな る最高情報セキュリティ責任者(CISO: Chief Information Security Officer)、および実際に 対策を立案しその実行を指示する情報セキュリ ティ担当者(CISO補佐)の育成に焦点を絞り つつ、これらの知識・能力の育成を図っている。
関西圏を中心とした高い専門性を有する情報 系4大学院の教員に加え、先進的な情報セキュ リティ対策を行っている4企業・団体等の実務 者の力を結集し、産学連携型の教育拠点を形成 し、このような高度な情報セキュリティの人材 育成に取り組んでいる。