2 発話実験 1 :語頭子音の VOT
2.5 被験者別にみる VOT 特徴:平音と激音が重複しない話者の存在
2.5.4 M2 氏の VOT
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かった。平音と激音でデータ分布範囲が重なるものはあるが、平音は50msを下回るものが あり、平音は激音に比べて下方向に分布範囲を広くとることができる。K類では、平音・激 音ともに 50ms を超えるが、その中でも激音はさらに長い傾向がはっきり観察される。F2 氏と同様、激音と平音にはある程度の制約が働いており、VOT が「平音<激音」を維持し ようとしている傾向がある。
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図 19:語頭T類のVOT(M2氏)
図 20:語頭K類のVOT(M2氏)
平音、激音、濃音分布の重なり
M2氏についても、濃音の分布は、同じ調音位置の平音や激音と重なるデータはなく、こ れまでの3名の被験者と同様の結果であった。
平音と激音の分布が重なっているのは、/ta/と/tʰa/、/ki/と/kʰi/、/ku/と/kʰu/の 3ペアである
M2氏
/Tu/ /Te/ /Tɔ/
/Ta/ /Ti/
VOT
M2氏
/Ku/ /Ke/ /Kɔ/
/Ka/ /Ki/
VOT ( ms )
( ms )
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(点線で表示)であり、ほかの被験者に比べて少ない。このうち、平音と激音の分布は、
平音/ku/と激音/kʰu/の分布を除いて、/ta/と/tʰa/、/ki/と/kʰi/はそれぞれ、平音/ta/の最高値
(50.51ms)と激音/tʰa/の最小値(48.80ms)、平音/ki/の最大値(58.38ms)と激音/kʰi/の最小
値(57.04ms)の差が2ms 以下と、平音の最高値と激音の最低値VOTが近く、激音の分布
は平音の分布に続き、連続しているようである。
濃音上限25msを超えているデータ
M2氏は、濃音で、濃音の制約25msラインを上回っているデータはない。
平音と激音の分布
平音で、濃音の制約25msを下回ったのは/pu/(24.49ms)、/pe/(18.02ms)、/pɔ/(21.48ms) の3データであった。ただし、それぞれ対応する濃音の(/p’u/、/p’e/、/p’ɔ/)と分布は重な っていない。
激音で、激音の制約 50ms を下回ったのは、P 類では/pʰa/(47.92ms)、/pʰu/(49.95ms)、 そして/pʰe/の3回の発話すべて、T類は/tʰa/(48.80ms)、/tʰe/の2データ、K類は/kʰu/(37.32ms) の1データで、合計9データであった。激音のうち、9データが50 msを下回っているにも 関わらず、平音の分布と重なっているのは、/tʰa/(48.80ms)と/kʰu/(37.32ms)の2 データ のみである。残りは平音、激音、濃音それぞれの分布が重なることはない。
M2氏の体系
M2氏の特徴として、激音であっても50msを下回るものが多い。激音/pʰe/は、3データす
べてが50 msを下回っている。/pʰe/は、調音位置が両唇音で、かつ、後続母音が/e/であり、
短いVOTが出現する条件が2つ揃っているためと考えることもできる。しかし、ほかの3
名の/pʰe/で50ms を下回るのはせいぜい1データ(F2氏=48.75ms)しかなく、また、同じ
く男性のM1氏の/pʰe/の最低値は70msを超えているので、性差によるとも言えない。ほか
の被験者についても平音は50 ms を下回るものはあるが、M2氏の場合、/ki, ku/ を除くす べての平音が50msを下回っている。
M2氏の激音が50msを下回るものが多い特徴は、一見すると例外的に見えるが、平音は それ以上に短いなど、全体的にVOTが短い傾向にあり、M2氏個人の体系内ではVOTの差 は保たれている。このことから、激音の50ms制約とは、被験者全体の傾向からは目安と考
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えられるが、激音ならば50ms以上の値である、というように値から判断できるものではな く、「激音:VOT50ms」の制約は万能な数値ではないことをM2氏のデータが示している。