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観察方法

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 64-67)

3 発話実験 2 :後続母音の F0

3.1 観察方法

ここでは、破裂音の3系列子音を語頭に持つ語を対象に、第1音節とそれに続く第2音 節(主格助詞)の高さを比較する。

第1音節の母音区間の中央部(V1)、第2音節の母音区間の始点の定常部(V2)のF0値

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を計測し、それらをセミトーン値に変換して2音節間の高さを比較する。3系列子音の違い によって、その2点を結ぶ直線の傾きや高さの特徴を観察する。

3.1.1 F0値の測定手順

F0 値(単位:Hz)の測定には、音声分析ソフトPraatを用いた。計測したのは、第 1音 節の母音(V1)と第2音節の母音(V2)のF0で、第1音節は実験語(表 12)、第2音節は 助詞/ka/にあたる。

第 1 音節の母音区間の中央部(V1)は次のように決めた。まず、第 1 音節の母音の第 1 フォルマントと第2フォルマントが揃って現れた時点を「始点」とし、F0曲線と波形を確 認しながら、継続してフォルマントがはっきり現れている区間を持続時間、それが終わる 時点を「終点」とした。その始点と終点のちょうど中央に位置する点を「中央点」とし、

そこをV1の計測点とした。V2も、V1と同様に「始点」を決め、その定常部をV2の計測点 とした22

22F0値の計測箇所(F2氏の/pa.ka. a.nin. kɔt. ka.tʰa.yo/)第1音節:実験語/pa/、第2音節:助詞/ka/

22 第2音節にあたる助詞/ka/の平音/k/は、母音間に位置するため、音声実現は軟口蓋有声 破裂音[ɡ]または軟口蓋有声摩擦音[ɣ]で実現していた。IPA上では「有声」であるが、図 22とは異なり、スペクトログラム上で/pa/と/ka/の間にボイスバーが観察されないことが 多かった。母音間における「有声」とボイスバーの有無については、山崎亜希子(2014) を参照されたい。

始点 終点始点 中央点

59 3.1.2 観察データ

3.1.1で測定したV1とV2のF0値をセミトーン値に変換した。たとえば、100 Hzから200

Hz、200 Hzから400Hzは、Hzでは上昇幅がそれぞれ100Hz、200Hzと異なるが、どちらも

同じ12セミトーンの上昇であり、聞こえ度の上昇が同じである。このように、2音間の差 をセミトーン値にすることで、「聞こえ」を同じスケールで示すことができ、本論文での発 話実験のように男女一緒のデータを比較するなど、声の高さの違う人の声の上昇、下降を 比較する場合に有効なスケールである。セミトーン値(D)は、D=12×log2f1/f2(Hart, Johan’t

ほか 1990: 24)で求めた。f1、f2は2母音のF0値である。被験者ごとに、それぞれの調音

点のうち、平音で後続母音(V1)が/a/の発話3データの中で、もっとも低かったF0値を基 準としてセミトーン値を計算した。これによって基準を統一することができ、後続母音や3 系列子音の違いによる高さの傾向を見ることができる:

18:セミトーン値変換時の基準に用いたF0値(/pa//ta//ka/各発話3データのうちのV1最低値)

P類 T類 K類

/pa/の最低値 /ta/の最低値 /ka/の最低値

F1 186Hz 198Hz 182Hz

F2 184Hz 185Hz 184Hz

M1 163Hz 163Hz 160Hz

M2 120Hz 119Hz 118Hz

23/pa/V1F0最低値を基準とした、V1V2のセミトーン値比較-F1氏データ(左:Pa、右:Pu

( semitone )

P類:/Pu/

( semitone )

F1 P類:/Pa/

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図 23は、F1氏の高さ比較グラフである。縦軸はセミトーン、2点のプロットはV1の中 央値とV2の始点定常部である。左グラフは、語頭P類(p, pʰ, p’)で後続母音が/a/、右グラ フは後続母音が/u/である。どちらも基準は、F1氏自身の平音/pa/の3回の発話におけるV1

のF0最低値(186Hz)であり、セミトーン値は186 Hzから聞こえの差がどのくらいかとい

うことになる。同一被験者で、調音位置が同じであれば、同じ基準であるため、3系列の高 さ比較がしやすい。両グラフの平音(▲印)/pa/と/pu/のV1値を比較すると、/pa/の縦軸は0 から2セミトーン以下であるのに対し、/pu/では2セミトーン以上であり、後続母音が/a/の ときよりも、/u/のほうが値が大きい、つまり高いことがわかる。これは、通言語的に観察 される母音の内在的特徴が影響していると考えられる。また、平音/pa/を基準に統一するこ とで、平音・激音(ともにグラフ上、点線)との高さの領域の違い示すことができる。こ のように、同一子音系列を同じ基準でセミトーン変換することで、後続母音による違いの みならず、系列の違いによる特徴も観察することができる。なお、F0 で示したグラフは、

Appendix 3を参照されたい。

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