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F1 氏の VOT

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 50-53)

2 発話実験 1 :語頭子音の VOT

2.5 被験者別にみる VOT 特徴:平音と激音が重複しない話者の存在

2.5.1 F1 氏の VOT

図 9(P類)、図 10(T類)、図 11(K類)は、F1氏の調音位置ごとのVOTグラフであ る。グラフの横軸は実験語、後続母音(/a, i, u, e, ɔ/、縦線は後続母音境界)ごとに左から 平音、激音、濃音の順である。たとえば、図 9のP類グラフの場合、左から3本のグラフ は後続母音が/a/で、それぞれ/pa/(語頭子音が平音/p/)、/pʰa/(同じく、激音/pʰ/)、/p’a/(同 じく、濃音/pʰ/)である。グラフの縦軸は VOT(単位:ms)である。/Pe/以外の点線は、分 布範囲の重複を示している。データの丸囲みは、制約ラインから外れているデータを示す:

9:語頭P類のVOTF1氏)

F1

/Pu/ /Pe/ /Pɔ/

/Pa/ /Pi/

( ms ) VOT

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10:語頭T類のVOTF1氏)

11:語頭K類のVOTF1氏)

平音・激音・濃音分布の重なり

F1 氏は、濃音の分布について、同じ調音位置の平音・激音と重なるデータはなかった。

平音と激音の分布では、/pe/と/pʰe/、/ta/と/tʰa/、/ke/と/kʰe/では重なっていなかったが、それ 以外は分布が重なっている(点線表示)。重なっている部分を点線で表示した。/Pi/では平音

F1

/Tu/ /Te/ /Tɔ/

/Ta/ /Ti/

( ms ) VOT

F1

/Ku/ /Ke/ /Kɔ/

/Ka/ /Ki/ VOT

( ms )

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/pi/と激音/pʰi/がほぼ重なっている。また、全体傾向(2.2)では、平音よりも激音が長い傾

向があったが、F1氏の場合、平音/ta/の 3回すべてが激音/tʰa/よりも長かった。つまり、平 音と激音の対立を保つ特徴として、聞き手はVOTを手がかりにしにくいことが予測される。

濃音上限25msを超えているデータ

F1氏は、濃音で25msを上回っているのは、/k’i/(30.66ms)と/k’u/(25.24ms、32.22ms) の3データである。この3つには共通点があり、いずれも、VOTが長い傾向にある軟口蓋 音、かつ後続母音/i, u/である。これらは全体傾向(2.2)で設定した濃音の制約 25ms ライ ンを超えてはいるが、F1氏は調音特徴の特徴(2.3)と一致し、K 類のVOT が全般的に長 いため、平音/ki/, /ku/や激音/kʰi, kʰu/と重なることはなく、30ms以上の差が保たれている。

濃音上限25msよりも短い平音データ

濃音の制約 25msラインよりも短い平音/pe/(14.39ms)が観察された。これはVOTが短 い傾向にある後続母音/e/であることの影響が関与したと考えられる。しかし、濃音/p’e/とは 重なっていないことから、VOT の絶対値に関係なく「濃音よりも長い」という特徴が守ら れている。

激音下限50msを下回る激音データ

激音の制約50msラインよりも短い激音/tʰe/(40.14ms)が観察された。これは、VOTから は説明できないが、F0は激音で共通して観察される高さ(HH)で現れている(3.2および

Appendix 2.2.1参照)。この激音/tʰe/の1データを除き、激音でVOTが50msを下回るもの

は観察されなかった。

F1氏の体系

F1 氏は、濃音は平音・激音と分布が重ならない。K 類が全般的に長い傾向があり、/k’/

も濃音の制約25msラインを超えているが、平音・激音ではそれよりも長く、分布は重なら ない。

図 9、図 10、図 11の点線で示したように、平音の3データすべてが激音よりも長い(/ta/) ものや、平音と激音のVOT ほぼ重なっており、平音・激音ともに50msを超えている。激 音が50ms以上であるという制約は守られているものの、平音も同等に長く、VOTでは平音

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と激音の対立を保つのは難しいと考えられる。しかし、第1音節のF0で両者に明確な差が つけられている(3章参照)。

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