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M1 氏の VOT

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 55-58)

2 発話実験 1 :語頭子音の VOT

2.5 被験者別にみる VOT 特徴:平音と激音が重複しない話者の存在

2.5.3 M1 氏の VOT

次の図 15(P類)、図 16(T類)、図 17(K類)は、M1氏の調音位置ごとのVOTを示 したグラフである。激音/pʰi/(図 15)は、3回の発話のうち1回目の発話時に母音の無声化 が起きたため、グラフ上には2点のみプロットしている21

21 山崎亜希子(2012)は、ソウル方言における2音節語C1V1C2V2(C:/k, kʰ, k’/、V:/a,

e, i, ɔ, o, u, ɯ/)の母音V1の無声化の生起条件として、必須条件の① C1が平音または激

音、② V1が狭母音、③ C2が激音または濃音、さらに確率が高まる条件として④ V2が /a/のときを挙げている。また、これら①~④の配列に一致していても、生起には個人差 があるという(ibid.: 55)。本稿のデータのうち、母音の無声化が起きたのはM1氏によ

る激音/pʰi/のみである。本実験では助詞/ka/を後続した/pʰi.ka /[piɡa]で発話されているため、

上述した条件③に反し、C2が平音であっても母音の無声化が起きた。母音の無声化には、

調音位置も関与する可能性もあり(山崎2012は軟口蓋破裂音、本稿データでは両唇破裂 音)、今後の研究が期待される。

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15:語頭P類のVOTM1氏)

16:語頭T類のVOTM1氏)

M1

/Pu/ /Pe/ /Pɔ/

/Pa/ /Pi/

( ms ) VOT

M1

/Tu/ /Te/ /Tɔ/

/Ta/ /Ti/

( ms ) VOT

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17:語頭K類のVOTM1氏)

平音、激音、濃音分布の重なり

M1氏についても、F1氏やF2氏と同様、濃音の分布は、同じ調音位置であれば平音・激 音の分布と重なるデータはなかった。平音と激音の分布が重なっているのは、P 類では/pe/

と/pʰe/以外の4ペア、T類では/ta/と/tʰa/の1ペア、K類では/ku/と/kʰu/、/kɔ/と/kʰɔ/の2ペア である(点線で表示)。これらは分布が重なっているものの、最も短いのは平音のデータで あり、平音の分布が、激音の分布よりも下方向(VOTの短いほう)に広がっており、F2氏 と共通している。

濃音上限25msを超えているデータ

M1氏は、濃音で、上限の25msを上回っているのは、K類の6データである(グラフ上 に丸囲み)。濃音/k’i/は、発話3トークンすべてが、濃音上限25msを上回っているが、平音

/ki/ や激音 /kʰi/ と重なっていない。K類では濃音のみではなく、平音や激音も含めて全体

的にVOTが長くなっており、調音位置によるK類の内在特性と考えられる。

M1氏の体系

M1氏でも、濃音は平音・激音と分布が重ならない。また、これまでの2名の被験者(F1 氏、F2氏)と異なり、調音位置や後続母音にかかわらず、激音で50msを下回ったものはな

M1 /Ku/

/Ke/ /Kɔ/

/Ka/ /Ki/

( ms ) VOT

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かった。平音と激音でデータ分布範囲が重なるものはあるが、平音は50msを下回るものが あり、平音は激音に比べて下方向に分布範囲を広くとることができる。K類では、平音・激 音ともに 50ms を超えるが、その中でも激音はさらに長い傾向がはっきり観察される。F2 氏と同様、激音と平音にはある程度の制約が働いており、VOT が「平音<激音」を維持し ようとしている傾向がある。

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