今後の在り方についての検討
1. 2013 年度の JI 関連の状況分析と JI 監督委員会の検討動向
(1). プロジェクト動向分析
JIプロジェクトについては、2014年2月1日時点において、トラック1で555件、トラ
ック2で49件のプロジェクトが登録済みとなっている。1
その後、2013年以降は発行数が大幅に減少し、さらに2013年9月以降はほとんど発行 されていない。これは、ERUの価格が 1 ユーロ/tCO2e以下にまで低下したこと、第二約 束期間のAAUが発行されるまでの移行期間は第二約束期間に有効なERUが発行できない ことなどが要因である。2014年1 月末時点での発行数は約8.3億 tCO2eで、このうち約 97%がトラック1によるものとなっている。
またJIのクレジット(ERU) の発行数をみると、第一約束期間が終了する2012年末前後に、ホスト国がクレジットを発 行できるスキームであるトラック1からの大量の発行があり、6億tCO2e程度にまで急激に 上昇している。この上昇については、第一約束期間に排出できる初期割当量(AAU)と実 際の排出量のギャップである余剰AAUを第二約束期間に繰り越すことが可能かどうかが当 初は定められておらず、また 12 月のCOP決定ではこの繰り越し可能量の上限をAAUの 2.5%とされたことが最大の要因である。余剰AAUを大量に持つロシアや東欧諸国にとって は、第一約束期間内になるべく多くのクレジットを発行する方が好ましいため、発行まで に要する時間が短いトラック 1 でのプロジェクト実施およびクレジット発行が急増した。
もう一つの要因としては、排出量報告の規定違反で取引の禁止措置を受けていたウクライ ナの適格性が2012年3月に復帰したことが挙げられる。
国別の発行数を見ると、ウクライナが55%、ロシアが36%を発行しており、この2カ国 で9割強を占めている。また、発行済みERUの種類を見ると、メタン排出削減関連が53.9% と最も多く、省エネルギー関連が25.6%、産業ガスが13.6%となっている。
1 JI pipeline, UNEP RISOE center
図5:ERU発行数
(出典)UNEP RISOE center のJI pipelineより
図6:国別のERU発行量
(出典)UNEP RISOE center のJI pipelineより
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
Jan-09 Apr-09 Jul-09 Oct-09 Jan-10 Apr-10 Jul-10 Oct-10 Jan-11 Apr-11 Jul-11 Oct-11 Jan-12 Apr-12 Jul-12 Oct-12 Jan-13 Apr-13 Jul-13 Oct-13 Jan-14
ERU発行数(百万ERU)
Total Track 1 Track 2
ロシア
265.1 Mt-CO2eq (32%)
ウクライナ
490.8 Mt-CO2eq (59%)
フランス 9.2 Mt-CO2eq
ポーランド 20.0 Mt-CO2eq ドイツ 13.3 Mt-CO2eq
その他
(リトアニア、ブルガリア、ニュージーランド、
スウェーデン、ハンガリー、フィンランド、
エストニア、チェコ)
ルーマニア 8.9 Mt-CO2eq
図7:発行済みERUの種類
(出典)UNEP RISOE center のJI pipelineより
(2). 第9回京都議定書締約国会合(CMP9)における決定
2013 年 11月にワルシャワで開催された第9回京都議定書締約国会合(CMP9)では、
JI監督委員会(JISC)の年次報告書で挙げられていたCDMとJIの認定手続きの統一化や暫 定的なAAU発行といった事項が議論されたものの、最終的に2014年12月に開催予定の次
回会合(CMP10)に持ち越しとなった。以下にCMP9決定分における要点を記載する。2
・2012-2013 の年次報告書における(a)JI ガイドラインのレビューに関する提案 (b)CDM とJIの認定手続きの統一化に関する提案を留意する。
・JISCに対して、JIの認定システムをCDMの認定手続きと統一化することに対して提案 を明確化するよう要請する。また実施に関する補助機関会合(SBI)に対して、本件につ いて第40回会合で検討するよう要請する。
(3). JIの審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性
JIについては、前述の通り、クレジットであるERUの価格低下と第二約束期間の初期割 当量(AAU)が未発行であることから2013年に入り新規プロジェクトは激減している。こ のため、審査期間に関する問題提起は特に見られなかったものと思われる。
2 Decision 5/CMP.9
HFCs, PFCs &
N2O reduction 14.9%
CH4 reduction
& Cement &
Coal mine/bed
& Fugitive 54.9%
Renewables 2.5%
Energy efficiency
24.1%
Fuel switch 3.0%
Afforestation, Reforestation
& Avoided deforestation
0.6%
図8新規JIプロジェクト数の推移
(出典)JI pipeline, UNEP RISO
JIの審査手続きにおいては、二つの手続きが併存しているJIの審査手続きを統合するこ と、あるいはCDMとの手続きとの統合が現在、課題となっている。CDMではCDMがプ ロジェクトの登録、CERの発行を一元的に管理しているが、JIの審査手続きにはトラック 1とトラック2の2種類があり、ホスト国が京都メカニズム参加資格を有している場合は、
クレジットであるERUの発行をホスト国が決定するトラック1を適用できる。これに対し、
トラック2ではJIの審査機関であるAIEがプロジェクトの有効性決定や排出削減量の検証 を行う。
・JI(トラック1): ホスト国 審査の所掌
・JI(トラック2): 認定独立組織(AIE)
JIの審査手続きに対しては、(a)トラック2の規模に対して独立した審査手続きおよび審 査機関を維持することで効率性が悪く高コストとなること、(b)トラック1ではホスト国が 審査するため透明性が確保できないこと、といった課題が挙げられており、解決策として 以下のような方法が検討されている。
・(a)の課題に対しては、審査手続きをCDMと共通化または統一化する。
・(b)の課題に対しては、トラック1とトラック2の共通化または統一化を図る。
0 10 20 30 40 50 60 70
Oct-06 Dec-06 Feb-07 Apr-07 Jun-07 Aug-07 Oct-07 Dec-07 Feb-08 Apr-08 Jun-08 Aug-08 Oct-08 Dec-08 Feb-09 Apr-09 Jun-09 Aug-09 Oct-09 Dec-09 Feb-10 Apr-10 Jun-10 Aug-10 Oct-10 Dec-10 Feb-11 Apr-11 Jun-11 Aug-11 Oct-11 Dec-11 Feb-12 Apr-12 Jun-12 Aug-12 Oct-12 Dec-12 Feb-13 Apr-13 Jun-13 Aug-13 Oct-13 Dec-13
月毎のJIプロジェクト数
審査手続きのCDMとの共通化または統一化については、今年度のJISCにおいて重点的 に議論された。詳細は後述するが、どこまでCDMの手順と共通化するかについて、以下の 3つのオプションを用意して議論が進められた。
・オプションA:CDMの認定手続きとの調和(現行の方針維持)
・オプションB:CDMの認定手続きを部分的に採用
・オプションC:CDMの認定手続きを完全に採用。DOEをJIの審査に活用。
議論の結果、効率性向上およびコスト削減に対して大きな効果が期待できる方法として オプションCを目指していくことで合意した。但し、現在審査業務を行っているAIEや DOEへの影響が非常に大きいことから短期的な変更は困難である。また、この変更には CMPの決定が必要となるが、2013年11月に開催された第9回京都議定書締約国会合
(CMP9)では決定されなかったため、今後引き続き検討が継続される。
もう一つのトラックの統一化については、JISCからCMP9への提言に盛り込まれたもの のこちらも決定には至っていない。JISCはトラック2が所掌範囲であり、ホスト国の所掌 範囲であるトラック1に対してJISCとして変更や改善を要求することはできない。このた めCMPの場で議論する必要があるが、ホスト国にとってはトラックの統一化によって複雑 な手続きを要する手順に移行するインセンティブが現状はないことから、なかなか議論が 深化しないという課題がある。将来的に、透明性の違いから、トラック1とトラック2の ERUの価格に差が生じた場合は、合意に進む可能性があると思われる。
各 JI 監督委員会での主なポイント
<JISC32>
○ 審査機関の認定手続き
JIの審査機関認定システムの今後のあり方については、JIトラック2の規模を考慮する と、独立の認定手順を維持することは非効率であることから、CDMとの統一化による 効率化がこれまで議論されてきた。今回の会合では、UNFCCC事務局が作成した CDMとの統一化に関する以下のオプション案について検討した。
・オプションA:CDMの認定手順との調和(現行の方針維持)
・オプションB:CDMの認定手順を部分的に採用
・オプションC:CDMの認定手順を完全に採用。DOEをJIの審査に活用。
各オプションにおけるコスト削減効果と審査機関への影響の大きさ等について議論さ れたものの結論は出ず、関連情報の提供をUNFCCC事務局に要請した上で次回会合 で引き続き議論することとなった。
○ 管理計画の採択
2013年のJISCの管理計画案を了承した。
○ CMPへの提案
CMP9への提案に向けて、以下を含むコンセプトノートの作成をUNFCCC事務局に 依頼した。
(a) JIおよびその他の炭素市場メカニズムを含む世界規模での認定システム
(b) JIガイドライン改定における標準化ベースラインおよびポジティブリストの方向 性
(c) ホスト国に対する義務的な基準および手続きの設定におけるJISCの方針 (d) 2012年のCMPへの提言に沿ったプロジェクトサイクルの手順
(e) 2012年のCMPへの提言に沿った移行期間の対応策(但しJIガイドラインの改定の 採択後)
<JISC33>
○ 審査機関の認定に関する業務停止
JI の審査機関(AIE)の認定に対して JISC に勧告を行う機関である JI 認定パネル
(JI-AP)の提案に基づき、審査機関であるJI-E-0005 “JACO CDM, LTD” (JACO)に 対して全スコープの有効性決定および検証に対する業務停止に合意した。
○ 審査機関の統一化
・CDMとJIの認定システムの統一化をCMPに対して提案することを決定。
・JISCとCDM理事会に対して、第10回CMPでどのように統一化を実施するかという提 案内容の作成で連携するよう要請することで合意。
・認定システムの統一にあたり、JIに関する認定に対してCDMの認定システムを活用す る方向でJISCは合意。
○ CMPへの提案
JISC は以下の事項に関して合意し、UNFCCC事務局に対して年次報告書に含める よう要請した。
1. JIとCDMの認定システムの統一化
2. 標準化ベースラインとポジティブリストの導入 3. ホスト国に対する統治組織の基準と手続きの開発 4. プロジェクトサイクルの手順明確化
○ 事前支払金の返金
プロジェクト参加者や認定審査機関からの要求に基づき、プロジェクト決定時に支払っ た有効性決定のための事前支払金の返金に合意した。