SIC 31
IFRIC 18
測定の閾値が変更された
現金以外の対価を公正価値で測定することを求めるIFRS第15号の規定は、現行のIFRSと概ね類似している。た だし、現行のIFRSにおいては、受け取る財またはサービスの公正価値を信頼性をもって測定できない場合、当該 収益は、手放した財またはサービスの公正価値で測定し、移転した現金があればその額だけ修正することとされ ている。対照的に、新基準においては、このような状況において、企業は取引価格を移転した財またはサービス の独立販売価格により測定する。
さらに、現行のIFRSにおいては、現金以外の対価の公正価値を測定の基礎として用いるための閾値は、企業が 公正価値を「信頼性をもって測定できる」ことであり、「合理的に見積ることができる」ことではない。
宣伝サービスを伴う交換取引
現行のIFRSでは、宣伝サービスの交換取引は、信頼性をもって測定できる場合、提供する宣伝サービスの公正 価値で測定する。さらに、類似した宣伝サービスの交換は、IAS第18号のもとで収益を発生させる取引とはならな い。
IFRS第15号には、宣伝サービスを伴う交換取引の会計処理に関するガイダンスは含まれていない。したがって、
現金以外の対価の測定に関する一般原則が適用される。
顧客からの資産の移転
現行のIFRSとは異なりIFRS第15号には、企業が顧客から有形固定資産項目の移転を受けた場合に関するガイ ダンスは含まれていない。ただし、企業がその移転時に収益を認識する場合、測定属性に変更はないため、企業 は引き続き移転された項目の公正価値で収益を測定する。
3.3.4 顧客に支払われる対価
新基準の規定
IFRS 15.70
顧客に支払われる対価には、企業が顧客(または顧客から企業の財またはサービスを購入する他の当事者)に対して支払うかまたは支払うと見込んでいる現金の金額が含まれる。顧客に支払われる対価には、企業(または顧客か ら企業の財またはサービスを購入する他の当事者)に支払うべき金額に充当できるクレジットまたは他の項目(例:
クーポン、バウチャー)も含まれる。
企業は、顧客に支払われる対価が、取引価格の減額であるか、区別できる財またはサービスに対する支払いである か、またはこれら2つの組合せであるかを評価する。
IFRS 15.71
企業が顧客から受け取る財またはサービスの公正価値を合理的に見積ることができない場合は、顧客に支払われる対価の全額を取引価格の減額として会計処理する。
IFRS 15.70-72
支払われる対価の超過分
は、取引価格の減額として 会計処理する残りの金額は仕入先から
の購入として会計処理する企業は受け取る財またはサービスの公正価値を 合理的に見積ることができるか
顧客(または顧客の顧客)に支払われる対価が、
区別できる財またはサービスに対する支払い であるか
はい いいえ
支払われる対価 は仕入先からの
購入として 会計処理する
支払われる対価は、取引価格の 減額として会計処理し、以下の いず れか遅いほうで認識する
企業が関連する財または
サー ビスの移転について収益を 認識する時点
企業が対価を支払うかまたは 支払いを約束する時点(含意されている場合もある)
支払われる対価は、区別できる財またはサービスの 公正価値を超過するか
いいえ
いいえ はい
はい
設例16 顧客への支払い
IFRS 15.IE160-162
消費財製造業者Mは、小売業者Rに製品を1年間販売する契約を締結した。R社は1年間で少なくとも15,000千円の価値の製品を購入することを確約している。M社は、R社の商品陳列棚をM社の製品のために整える作業の見 合いとして、契約開始時にR社に150千円の返金不能の支払いを行った。
M社は商品陳列棚の支配を獲得しないため、R社への支払いは区別できる財またはサービスとの交換ではないと
結論付ける。したがって、M社は150千円の支払いを取引価格の減額であると判定する。M社は、財の移転につい て収益を認識する時に、支払った対価を取引価格の減額として会計処理する。KPMGの見解
流通業者や小売業者への支払いは、区別できる財またはサービスに対するものである場合がある
消費財を扱う企業は、流通業者や小売業者に支払いを行うことが多い。その中には、支払いが識別できる財また はサービスについてのものであるケースもある(例:自社製品のための陳列ケース、提携した宣伝)。そのような場 合、顧客が提供する財またはサービスは、顧客による売手の製品の購入とは区別できる可能性がある。企業が 顧客から受け取る財またはサービスの公正価値を見積ることができない場合は、当該支払いを取引価格の減額 として認識する。顧客への支払いが提供された財またはサービスの公正価値を超過する場合、その超過部分に ついては取引価格の減額とする。
現行のIFRSとの比較
IFRIC 13
カスタマー・インセンティブ
カスタマー・インセンティブやそれに類似する項目の会計処理は複雑であり、現行のIFRSには、カスタマー・ロイヤ ルティ・プログラムに関する特定のガイダンスを除き、限定的なガイダンスしかない(8.4を参照)。カスタマー・イン センティブには、現金インセンティブ、割引及び数量リベート、無料のまたは値引きされた財またはサービス、カス タマー・ロイヤルティ・プログラム、ロイヤルティ・カード、クーポンといった、様々な形態が含まれる。現在、インセン ティブを収益の減額、費用、または別個の提供物(カスタマー・ロイヤルティ・プログラムのように)のいずれとして 会計処理すべきかに関し、実務上ばらつきが生じている。新基準の規定により、一部の企業の会計処理が変更さ れる可能性がある。
3.4 ステップ4-取引価格の履行義務への配分
概要
IFRS 15.73, 75
取引価格は、企業が約束した財またはサービスを顧客に移転するのと交換に権利を得ると見込んでいる対価の金額を描写するように、個々の履行義務(あるいは区別できる財またはサービス)に配分する。
IFRS 15.74
通常、取引価格は、独立販売価格の比率によって各履行義務に配分される。ただし、特定の要件が満たされる場合には、値引きまたは変動対価を1つまたは複数(ただし全部ではない)の履行義務に配分する。
IFRS 15.76
契約開始時に取引価格を各履行義務に配分するための作業は、以下の2つにわけられる。3.4.1 独立販売価格の算定
新基準の規定
IFRS 15.77
独立販売価格とは、企業が約束した財またはサービスを別個に顧客に販売するであろう金額である。独立販売価格の最善の証拠は、財またはサービスを、同様の状況にある顧客に別個に販売すると仮定した場合における観察可能 な財またはサービスの価格である。契約に記載された価格や定価は財またはサービスの独立販売価格である可能 性はあるが、そうであると推定してはならない。
IFRS 15.78
独立販売価格が直接的に観察できない場合には、企業はそれを適切な方法で(3.4.1.1を参照)見積らなければならない(下図参照)。
IFRS 15.79
履行義務1
独立販売価格に基づき配分
履行義務2 履行義務3
独立販売価格の決定
観察可能な価格を使用する
調整後市場評価 ア プ ローチ
はい いいえ
独立販売価格を見積る 観察可能な価格は入手できるか
予想コストに マージンを加算する
ア プローチ
残余アプローチ
(限定的な状況 でのみ)
独立販売価格の算定
(3.4.1を参照)
取引価格の配分
(3.4.2を参照)
KPMGの見解
IFRS第15号には、信頼性の要件は含まれていない
新基準においては、独立販売価格は、契約に含まれる個々の履行義務について契約開始時に決定される。いか なる状況においても、独立販売価格がないことを理由として収益認識が延期されることはない。観察可能な価格 が入手可能である場合は、その価格が独立販売価格を決定するために用いられるが、入手可能でない場合は、
企業は独立販売価格を見積ることが要求される。新基準は独立販売価格を「信頼性をもって」見積ることができる ことは要求しておらず、また他の要件も示していない。企業は観察可能なインプットを最大限用いることが要求さ れるが、いかなる状況であっても、独立販売価格を算定し、取引価格を契約に含まれる個々の履行義務に配分 することが求められる。観察可能な価格があるが、それらの価格の変動性が高い場合には、判断が求められる。
現行のIFRSとの比較