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IAS 2, IAS 36

5. 契約変更

5.1 契約変更の識別

新基準の規定

IFRS 15.18

契約変更とは、契約の範囲または価格(あるいはその両方)の変更である。実務においては、注文変更、仕様変更あ

るいは修正と呼ばれる場合がある。契約変更が承認されると、契約の当事者の強制可能な権利及び義務が新たに 創出されるかまたは変更される。収益認識モデルのステップ1における契約が存在するか否かの判定と同様に、この 承認は書面、口頭での合意で行われる場合もあれば、事業慣行によって含意される場合もあり、また法的に強制可 能でなければならない。

契約の当事者が契約変更を承認していない場合は、企業は契約変更が承認されるまで、新基準の規定を既存の契 約に引き続き適用する。

IFRS 15.19

契約の当事者が契約の範囲の変更については承認したが、それに対応する価格の変更についてはまだ決定してい

ない場合(すなわち、価格が未決定の注文変更)は、企業は、変動対価の見積り及び取引価格の制限に関するガイ ダンスを適用することにより、取引価格の変更を見積る(3.3.1を参照)。

KPMGの見解

IAS 11.13-14

顧客との契約から生じるすべての収益に適用される

現行のIFRSにもU.S. GAAPにも、工事契約及び製造請負型契約が締結される業種のための契約変更に関するガ イダンスが含まれている。ただし、いずれの収益認識フレームワークにも、契約変更の会計処理に関する一般的 なガイダンスはない。

新基準においては、契約変更に関するガイダンスは顧客と締結されるすべての契約に適用されるため、工事契 約や製造請負型契約以外の契約を締結している業種の企業にとって、また、工事契約や製造請負型契約を締結 している業種であっても変更の種類によっては、実務が変更される結果となり得る。

一部の企業では、新たなガイダンスに従い契約変更を継続的に識別し、会計処理するために、新たなプロセスを 開発し、それらのプロセスに対する適切な内部統制を整備する必要がある。

強制可能性に焦点を当てて判定する

契約変更が存在するか否かを判定する際には、契約変更に伴い新たに創出されるかまたは変更される権利及び 義務が強制可能か否かに焦点を当てる。この判定を行う際に、企業は契約条項や関連する法規制を含む関連性 のあるすべての事実及び状況を考慮する。管轄地域によっては、また一部の契約変更においては、特に、契約の 当事者間で契約の範囲または価格に関して争いがある場合に、判定に際して重要な判断が要求される場合があ る。強制可能性に重大な不確実性がある場合には、契約の当事者が契約変更を承認していることを結論付ける ために、書面による承認や法律の専門家による見解が必要な場合がある。

IFRS 15.BC39, BC81

評価するための追加的な要件(回収可能性を含む)

契約変更に関する新基準のガイダンスでは、契約変更が承認されているか否かを企業が判定する際に、対価の 回収可能性の評価が必要かについて明確にされていない。ただし、契約変更に関するガイダンスの目的、及び当 該ガイダンスが契約変更により強制可能な権利及び義務が創出されるか否かに焦点を当てていることは、収益 認識モデルのステップ1における契約の識別に関するガイダンスと整合している(3.1を参照)。契約の識別に関す るガイダンスにおいては、契約が存在するか否かを判定する際に以下の要件が用いられている。これらの要件は 契約変更が存在するか否かの判定にも役立つ。

当事者が各自の義務を履行することを確約しているか否か、及び各自の契約上の権利を強制する意図を有する か否か、を判定する際には、以下の事項を考慮する。

顧客が契約変更に従って行動するかに関する不確実性に相応した契約条項及び条件が付されているか

過去に、類似する状況において行われた類似する契約変更において、顧客(または顧客層)が義務を履行し なかった経験があるか

過去に、類似する状況において、企業が類似する契約変更における自社の権利を顧客(または顧客層)に対 して強制しないことを選択したことがあるか

契約上のクレームの会計処理に関するガイダンスは含まれていない

現行のU.S. GAAP及びIFRSには、工事契約におけるクレームに関する収益認識についてのガイダンスが含まれ ている。クレームとは、施工者が顧客またはその他の当事者から回収することを要求する、合意された契約価格 を超過する金額(または当初の契約価格に含まれていない金額)をいう。クレームは、顧客に原因がある遅延、仕 様や設計の誤謬、解約、契約の範囲と価格の両方について争いがあるかもしくは承認されていない注文変更、ま たは予想されない追加的なコストを生じる他の理由により、生じる可能性がある。

新基準には、このようなクレームに関する具体的なガイダンスがないため、契約上のクレームは、契約変更に関 するガイダンスを用いて評価することになる。基本契約や他の管理文書に、その契約におけるクレームの解決プ ロセスが記載されていたとしても、クレームに関連して契約変更が存在するか否かを判定するためには、法的な 立場を詳細に理解すること(第三者からの法的助言を含む)が要求される場合がある。解決のための客観的なフ レームワークが存在する場合(例:補償を受ける権利がある超過コストのリスト、及び価格リストまたは料金表が 契約に含まれている場合)、この判定は比較的単純となり得る。反対に、単に解決のフレームワークが存在する

対価の回収可能性が高い(probable)*

承認されており、当事者が自身の義務を 確約している 移転される財またはサービスに関する 権利及び支払条件を識別できる

経済的実質がある

契約が存在する、

とは

*

「probable」という文言の意味がIFRSとU.S. GAAPで異なるため、両者における閾値は異なることになる。

のみである場合(例:訴訟ではなく調停により解決することのみが規定されている場合)は通常、そのクレームに 法的強制力があるか否かを判定するために法的助言を得ることが企業にとって必要となる。契約上のクレームに 伴う強制可能な権利が存在しない場合、契約変更は発生しておらず、承認が行われるか、または法的な強制力 が確立するまで、追加的な契約について収益を認識しない。

契約変更が承認される前に発生したコストの会計処理は、コストの内容に依存する。状況によっては、それらのコ ストは発生時に費用処理するが、コストの発生が見込まれるものの取引価格がそれに応じて増加しない場合、不 利な契約に関する引当金の認識が要求されるか否かについて検討することが必要となる場合がある(8.7を参 照)。また別のケースで、契約変更が特定の予想される契約とみなされ、契約変更の承認前に発生したコスト(す なわち、契約前コスト)について、新基準の契約を履行するためのコストに関するガイダンスに基づき資産化する か否かを検討する場合がある(4.2を参照)。

現行のIFRSとの比較

IAS 11.14

IAS 11.13

新たなフレームワーク

IAS第11号には、工事契約におけるクレーム及び変更の会計処理に関して、以下のようなガイダンスが含まれて

いる。

クレーム クレームとは、契約価格に含まれない原価の補償として、顧客(またはその他 の当事者)から回収することを企業が求める金額である。クレームは、以下の すべてを満たす場合にのみ契約収益に含める。

交渉が最終段階まで進んでいる。

顧客がクレームを受け入れる可能性が高い。

金額が信頼性をもって測定できる。

変更 変更とは、実施すべき工事の範囲を変更する顧客からの指示をいう。変更は、

以下の両方を満たす場合に契約収益に含める。

顧客が変更を承認する可能性が高い。

収益の金額が信頼性をもって測定できる。

これらのガイダンスは、新基準には引き継がれていない。工事契約におけるクレーム及び変更は、新基準の契約 変更に関する一般的なガイダンスに従って会計処理する。

新基準の規定に従い、契約変更の認識、及び変動対価に関する一般的な規定を一部の契約変更に適用すること により、クレーム及び変更に関する現行のガイダンスと比較して、収益認識のタイミングが変わる可能性がある。新 たなガイダンスにより収益認識が前倒しされるか、先送りされるかは、契約に固有の事実及び状況による。