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IAS 2, IAS 36

6. ライセンス

6.1 知的財産のライセンス

新基準の規定

IFRS 15.B52

ライセンスは、企業の知的財産に対する権利を顧客に与える。知的財産のライセンスの例として、以下のものが挙げ

られる。

ソフトウェアおよび技術

フランチャイズ

特許権及び商標権

動画、音楽及びテレビゲーム

化合物

KPMGの見解

知的財産のライセンスと販売は、会計処理が相違する

ライセンス契約により、ライセンス付与者は知的財産に対する権利を顧客に与えるとともに、当該権利を顧客に提 供する義務を負う。一般的に、潜在的な知的財産の利用に関する、世界で通用する永続的で排他的な権利すべ てに対する支配が移転する場合には、販売とみなされる。ライセンス付与者が知的財産の使用を制限する場合

(例:地域、使用期間、適用の種類による使用制限)や、知的財産に対する実質的な権利が移転していない場合 には、その移転は通常、ライセンス契約である。

取引が知的財産の販売である場合、新たな収益認識モデルのステップの適用対象となる。これには、変動対価 に関するガイダンスが含まれ、販売ベースまたは使用量ベースのロイヤルティについても、ステップ3における収 益認識累計額の制限の適用を受ける。ライセンス取引から生じる収益の認識については、販売ベースまたは使 用量ベースのロイヤルティの規定を含む、特定のガイダンスが設けられている(6.4を参照)。

知的財産は定義されていない

「知的財産」という文言は新基準では定義されていない。一部のケースでは、契約に知的財産が含まれていること が明らかである(例:商標)。他方、契約に知的財産が含まれているかが明らかではなく、いずれに判定されるか により会計処理が相違する場合もある。したがって、企業はライセンスに関するガイダンスを契約に適用するか否 かを判定する際に、判断の行使が必要となる。

6.2 ライセンスが区別できるか否かの判定

新基準の規定

IFRS 15.B53

ライセンスを顧客に移転する契約には、約束したライセンスに加え、他の財またはサービスを引き渡す約束が含まれ

る場合がある。これらの約束は、契約に明記されている場合もあれば、企業の事業慣行により含意されている場合も ある。

他の種類の契約と同様に、契約に、他の約束した財またはサービスに加えてライセンスを付与する約束が含まれて いる場合、企業は契約に含まれる個々の履行義務を識別するために、収益認識モデルのステップ2(3.2を参照)を適 用する。これには、以下の判定が含まれる。

顧客がライセンスからの便益を、それ単独で、または容易に利用可能な他の資源と組み合わせて享受すること ができる。

ライセンスが、契約に含まれる他の財またはサービスとは別個に識別できる。

IFRS 15.B54-B55

ライセンスが区別できない場合、企業は単一の履行義務について、結合された財またはサービスが顧客に移転した

時点で、または移転するにしたがって、収益を認識する。ライセンスを含む履行義務が一定の期間にわたり充足され るか、一時点で充足されるかを判定する際に、企業は収益認識モデルのステップ5を適用する(3.5を参照)。

IFRS 15.BC406

区別できないライセンスの例として、以下が挙げられる。

ライセンスの種類 例

有形資産の一部を構成し、その有形資産の機能に とって不可欠であるライセンス

車両の運転システムに組み込まれたソフトウェア

関連するサービスと組み合わせた場合にのみ、顧客 が便益を享受できるライセンス

企業のインフラ基盤にアクセスすることによってのみ利用 可能なオンライン保管サービスに関連するソフトウェア

ライセンスが他の約束された財またはサービスと区別でき、そのため別個の履行義務となる場合、ライセンスが顧客 に一定の期間にわたり移転されるか、一時点で移転されるかを判定する際に、企業はライセンスにかかる適用指針 の要件を適用する(6.3を参照)。

KPMGの見解

IFRS 15.IE49-58

IFRS 15.IE278-280

IFRS 15.IE281-288

ライセンスが区別できるか否かを判定する際に、重要な判断が要求される

ライセンスが区別できるか否かの評価は、複雑となることが多く、契約に関連する特定の事実及び状況を考慮す ることが要求される。新基準には、特定の事例を評価する際に役立つ設例が含まれている。

設例及び業種 契約の種類 説明 見解

設例11 テクノロジー

ソフトウェアのライセンス、導 入サービス、及びまだ特定 されていないソフトウェアの ア ッ プ デ ー ト 及 び 技 術 サ ポートを移転する契約

ソフトウェアが実質的にカス タマイズされるか、導入サー ビスの一環として修正される かにより、履行義務の識別 が相違する2つのケースが 挙げられている。

ソフトウェア・ライセンスのカ スタマイズまたは修正を伴う 導入サービスにより、ライセ ンスが区別できないと結論 付けられる場合がある。

導入サービスが重要なカス タマイズと修正のいずれで あるかを判定する際には、

重要な判断が要求される。

設例55 テクノロジー

財の設計及び製造プロセス に関連する知的財産のライ センス契約

契約により顧客は、新たな 設計または製造プロセスに つ い て ア ッ プ デ ー ト を 受 け る。

このアップデートは、顧客が ライセンスを使用するために 不可欠であり、企業はアップ デートを別個に販売しておら ず、顧客には、アップデート を除いてライセンスのみを購 入する選択肢はない。

この設例では、ライセンスと アップデートの相互関連性 が高く、そのため、ライセン スを付与する約束は区別で きないと結論付けている。

こ の 事 例 、 分 析 及 び 結 果 を、実務においてどのような テクノロジーに適用できるの かについては、見解が相違 し得る。

設例56 製薬

成熟製品である承認された 医薬品の特許権についての ライセンスを付与し、顧客の ためにその医薬品を製造す る契約

製造プロセスが独自の特殊 なものであるか否か、ライセ ンスを別個に購入できるか 否か、及び他の企業もその 医薬品を製造できるか否か により、履行義務の識別が 相違する2つのケースが挙 げられている。

他の企業も製造サービスを 提供できることにより、顧客 がライセンス単独で便益を 享受できることが示唆され る。

IFRS 15.BC406-407

これらの設例により、サービスと知的財産が高度に相互依存しているか、または相互関連性が高いか否かの判 定が困難であることが強調されている。例えば、企業はテレビゲームのライセンスを付与し、単独では販売されな い追加的なオンライン・サービスを提供する場合がある。この場合には、企業はそのサービスとテレビゲームとが 相互にどの程度関連しているかを判定することが必要となる。契約が全体として単一の履行義務となる場合もあ るが、追加のオンライン・サービスがなくてもテレビゲームを単独で使用できる場合には、それらは別個の履行義 務となる場合がある。

ライセンスが、顧客に移転する財またはサービスの主要な構成要素となる場合がある

ライセンスが区別できない場合、顧客に移転する結合された財またはサービスの主要な構成要素がライセンスで ある場合があると両ボードは考えている。移転するアウトプットがライセンスである場合、またはライセンスが区別 できる場合、企業はライセンスの性質を、新基準の適用指針に基づき評価する。ただし、「主要な」という文言は新 基準には定義されていないため、実務での適用方法に関して見解が分かれる可能性がある。TRGは、2014年7月 の第1回の会議において、販売ベースまたは使用量ベースのロイヤルティのこの概念について討議した。詳細な 説明については6.4を参照。

現行のIFRSとの比較