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8. その他の論点

8.2 製品保証

概要

新基準においては、以下のいずれかを満たす場合、企業は製品保証または製品保証の一部を履行義務として会計 処理する。

顧客が製品保証を別個に購入するオプションを有している。

製品保証の一部として追加的なサービスが提供される。

それ以外の場合は、製品保証は引き続き、現行のガイダンスに従って会計処理する。

新基準の規定

IFRS 15.B29

新基準のもとでは、顧客が財またはサービスを製品保証付きで購入することも製品保証なしで購入することも選択で

きる場合、製品保証は履行義務と考えられる。

IFRS 15.B29-B30, IAS 37 製品保証が別個に販売されない場合であっても、製品保証(または製品保証の一部分)が、製品が合意された仕様 に従っているという保証に加えて顧客にサービスを提供している場合は、履行義務となる。製品が合意された仕様に 従っているという保証のみを提供する製品保証は、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従って会計処理 する。

企業は製品保証の種類を以下のように区分する。

IFRS 15.B31

保証により顧客に追加的なサービスが提供されるか否かを判定する際に、企業は以下のような要因を検討する。

製品保証が法律で要求されているか否か:

そのような規定は通常、欠陥製品を購入するリスクから顧客を保護するために存在するものであるため。

保証対象期間の長さ:

対象期間が長いほど、企業が欠陥製品からの保護だけではなく、サービスを提供している可能性が高い。

企業が履行を約束している作業の内容

IFRS 15.B29

製品保証または製品保証の一部が、履行義務とみなされる場合、企業は、収益認識モデルのステップ4の規定を適

用して(3.4を参照)、取引価格の一部をサービスの履行義務に配分する。

IFRS 15.B32

企業が保証の要素とサービスの要素の両方を含む製品保証を提供し、企業がそれらを合理的に別個に会計処理で

きない場合は、両方の製品保証をまとめて単一の履行義務として会計処理する。

IFRS 15.B33, IAS 37

製品が損害を生じさせた場合に補償金や損害賠償を支払うことが法規制で定められている場合、当該企業の義務は

IFRS第15号の履行義務ではなく、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従って会計処理する。

製品保証は履行義務とならない。保証に関するコストについて

IA S第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従い

会計処理を検討する 保証型の製品保証

製品保証または 製品保証の一部分を

履行義務として 会計処理する サー ビス型の製品保証

約束した製品保証(または約束した製品保証の一部分)が、

製品が合意された仕様に従っているという保証に加えて 顧客にサービスを提供しているか?

顧客は、製品保証を別個に購入するオプションを 有しているか?

いいえ

いいえ

はい

はい

設例35 製品保証が付された製品の販売

IFRS 15.IE223-229

製造業者Mは製品の購入に付随して以下の保証を顧客に付与する。

 M社は、製品が合意された仕様に従っており、購入日から3年間約束どおりに機能することを保証する(以

下、標準保証という)。

顧客に20時間の研修サービスを提供することに合意する。

これらの保証に加え、顧客は追加2年間の延長保証を購入することも選択できる。

この設例では、M社はこの契約に以下のとおり3つの履行義務が含まれていると結論づける。

研修サービスにより、製品が仕様に従っていることを保証することに加えて別個のサービスが提供されるため、研 修サービスは単一の履行義務である。

延長保証は別個に購入できるため、単一の履行義務である。

製品が契約に記載された仕様に従っているという保証を提供する標準保証は、保証型の製品保証であり、単一 の履行義務とはならない。したがって、M社は他の関連するガイダンスに従い製品が販売された時点でコストの引 当てとして会計処理する。

KPMGの見解

「合理的に別個に会計処理できない」という指標は定義されていない

新基準では、サービス型の製品保証と保証型の製品保証とを合理的に別個に会計処理できない企業は、それら をまとめて単一の履行義務として会計処理することとしている。「合理的に別個に会計処理できない」という指標を どのように解釈することが意図されているのかは明確ではない。

サービスに関する保証へのガイダンスの適用に関する説明は限定されている

保証に関する新基準のガイダンスは財と同様にサービスにも適用することが意図されている。しかし、新基準で は、このガイダンスの概念のサービス(例:企業が提供されたサービスに満足していない顧客に返金を提示する 場合)への適用方法について詳細には説明していない。サービスについては、保証に関するガイダンスと、返品 権付きの販売に関するガイダンスのいずれを適用すべきかをどのように判定するべきかが、必ずしも明確では ない。

契約

履行義務ではない 履行義務

製品の移転 研修サービス 延長保証 標準保証

現行のIFRSとの比較

IAS 18.16(a), 17.

IAS 37.C4

現行のIAS第18号においては、販売契約における通常の保証条項により、売手が重要なリスクを保留することに ならない場合には、製品の販売日に収益を認識する。このようなケースでは、企業は販売日にIAS第37号に基づ き、欠陥製品を修理するか、または交換するために発生するコストの最善の見積金額で製品保証引当金を認識 する。ただし、通常でない保証義務を有する場合には、所有に伴う重要なリスク及び経済価値が買手に移転して いないことが示される可能性があり、その場合には収益を繰り延べなければならない。

現行のIFRSと異なり、新基準では、製品保証が存在することにより販売に伴うすべての収益認識が妨げられるこ とは想定されていない。したがって、一部のケースでは収益認識が前倒しされる可能性がある。