6.3.1 エネルギーと波高値の関係
種々の線源スペクトルの全吸収ピークをシングルガウシアンでフィットし、波高値の中心値を求 め、エネルギーと波高値の関係を求める。
Slow整形波高値
16本のユニットのうち、W00(定義は §2.8参照)のみGSO結晶のエネルギーと波高値の関係を 図6.2に示す。HXD-AEの持つ電子回路による非直線性は補正してある。W00のみならず殆んど のユニットで、非常に良い線形性が成り立ち、60 keV以上で典型的に≤1%であった。このよう な良い線形性を持つのはGSO結晶の特長である。一方、40 keV以下では高エネルギーから外挿 した直線から外れることが確認された1。
この非直線性は、§4.4で議論したGSO結晶の電子応答および光子応答の特徴である。従って ユニット間の応答の比較を行なう場合は、エネルギーと波高値の関係よりも光子応答曲線の方がよ り重要である。§4 の結果から、GSO結晶の規格化された光子応答曲線L344(E)/E は温度や個体 に大きく依存しないと考えられる。ここでは特に個体に依存しないことを確認しなければならな い。吸収エネルギーE に対する各ユニットi=W00−W33の波高値の平均P HSlow とL344(E) の関係は(4.1)と同じように
L344(E) = (P HSlow−bi)/ai (6.1) と書ける。ただし L344(344keV) = 344 となるように ai を定義する。ペデスタル bi は HXD-AE の試験により求められているものを用いる。それぞれのユニットのエネルギー波高値関係からai
1本論文では順序が逆であるがこのことから§4の実験を行なうことになった。
6.3. GSO結晶の特性 51 とL344(E)を求めることができる。ai およびbi は§6.6 の表 6.1にまとめた。
図6.3 に16ユニットについてのL344(E)/E をプロットした。W00-03,W30-33はそれぞれユ ニットごとに非常によく揃っているが、W10-13,W20-23についてはユニット間に多少ばらつきが ある。これは3週間に及ぶ較正実験において、光電子増倍管の増幅率に変化があることに起因し ている考えられる。実際に初期の測定と末期の測定の間では、同じエネルギーの波高値に 3% 程 度の変化が見られた。ただし、図6.3で示したデータは、その影響を抑えるためになるべく時間 的に近い測定結果を用いている。
W30-33のデータを用いてLL344(E)、LK344(E) をそれぞれ直線で近似して求めたところ、
LL344(E) = 1.0167×E[keV]−3.90[keV] (6.2) LK344(E) = 1.0213×E[keV]−7.39[keV] (6.3) となった(図6.3にプロットしてある)。LL344(E)は用いることのできるデータが、133Ba30 keVと
152Eu40 keVのみであり、また133Ba30 keVについてはトリガーにかかりはじめてすぐであり信 頼性があまりない。従ってここでは、40 keVと344 keVの2点を直線で結ぶ直線とした。LK344(E) はデータを直線でフィットして求めている。
§4の結果である (4.21)の関数とはやや不一致が見られる。今回のユニット毎にはよく揃って いるのでこれはGSO結晶自体の個性ではなく、何らかの実験における系統誤差によるものと考え られる。不一致の原因の追求は今後の課題である。
Figure 6.2: エネルギーと波高値の関係 (W00)
Fast整形波高値
Fast整形の波高値に対してもLL344(E)やLK344(E)は同じ関数になるはずである。この光子応答は Slow整形のパルスハイトと同様にして求められるが、Fast整形に対してはHXD-AEの試験から求 めたペデスタルの不定性が大きいので今回は光子応答を直接計算することはしない。
ここでは P HSlow とP HF ast からペデスタルを差し引いたP H′Slow とP H′F ast が、
P H′F ast =κP H′Slow (6.4)
となることを確認し、κ の値を求めておく。そのために、P HSlow とP HF ast の線形関係を調べ た。図 6.4 はW30 に関しての結果であり、全てのエネルギー範囲で、線形関係は <1% で成り 立つことがわかる。なお、この関係とSlow整形のペデスタルbi からFast整形のペデスタルdi は 推定できる。求めたκ とdi を表 6.2 に示す。
52 CHAPTER 6. HXD最終全系試験
Figure 6.3: Slow整形波高値から求めた全ユニットのGSO結晶光子応答曲線
Figure 6.4: GSO Slow波高値とFast波高値の直線関係