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エスケープピーク

ドキュメント内 ] 博士論文、修士論文 uchiyama mron osx (ページ 44-49)

図5.4、5.5の中で現れているエスケープピークは公開されている版のEGS4を用いたシミュレー ションでは再現させることができなかった。今回使用したGeant4の低エネルギー拡張の電磁相互 作用モデルのコードに不具合を発見し、修正を行なった結果、最終的には実験で見られていたエ スケープピークを十分再現できることがわかった。

§4 の結果から全吸収ピークの10% 以上のエスケープピークが見られるものもあるのでHXD のエネルギー応答を定量化する上で、エスケープ事象は考慮にいれる必要がある。ここではまず 単体GSO結晶でのエスケープ事象をシミュレーションにより定量化しておく。

周囲の物質がないジオメトリで垂直にγ線を入射させる。20-700 keVのラインγ線に対して、

Gd-Kα/βのエスケープ事象が発生する割合、

Escape Probability= Escape Event

Fullpeak Event + Escape Event (5.1) をシミュレーション結果から計算した。ここで Gd-Lのエスケープはシミュレーションに入れて いない。結果を図5.6 に示す。なお、後に述べる計算による曲線も同時に示してある。

ここで注意すべき点としてGeant4の光電効果のコードは蛍光X線を出す際に蛍光収率が考慮 されていないことがある。束縛電子のエネルギー準位間の遷移に伴って必ず光子として(蛍光X 線)エネルギーの放出を行なうようになっており、オージェ電子の放出はまだコーディングされ

ていない( §C.2 )。従ってここでの結果はGdの蛍光収率が計算に入っていないが、GdはZの大

きな元素であるためK殻の蛍光収率は 94% と大きくあまり問題にならない。シミュレーション にGd-Lエスケープを入れなかったのもこの事情による。L殻の蛍光収率は15%しかないからで ある。

Gd-K エスケープ事象は、入射光子のエネルギーがGd K端を越えてから起こり始め、その確 率はK端を越えてすぐのところで最大でおよそ 20%である。高エネルギーになるに従い200keV あたりまでは減少していく。これは高エネルギーのγ線ほどGSO結晶の奥で光電吸収され、発生 した蛍光X線がエスケープしにくくなっていくからである。一方、200keV から先はほぼ 3% く らいに収束しているが、これは光電吸収を起こす場所がGSO内に一様に分布してくることによる ものと考えられる。

簡単な計算によりこの効果を評価してみる。ただし反応としては光電吸収のみを、またGd-Kα のエスケープのみを考える。GSO結晶表面からの距離をx、エネルギーEの光子の光電吸収によ る吸収係数をµ(E) とすると(§B.1 )、エネルギーEの入射光子が x∼x+dxで光電吸収される 確率は、

µ(E) exp(−µ(E)x)dx (5.2)

である。厚さLの結晶に垂直に入射した光子が結晶内で光電吸収される確率P(E)は、

P(E) = Z L

0

µ(E) exp(−µ(E)x)dx= 1−exp (−µ(E)L) (5.3) である。

光電吸収のうちK殻電子をたたき出す割合を τK、K殻の蛍光収率を ωK、Kα 光子の吸収係 数をµ、θ を光子の入射方向とKα 特性X線光子の放出方向のなす角と定義すれば、

Escape probability×P(E) =τKωK Z L

0

µ(E) exp(−µ(E)x)dx Z π/2

0

1

2sinθdθexp µ

−µx cosθ

(5.4)

5.4. エスケープピーク 45 ここでエスケープは上下の表面(x= 0 orx=L)のより近い方からのみ計算に入れている。また 特性X線は球対称に放射されるとしている。積分を実行するために分子の最後の指数関数の中で cosθ∼1という近似を行なうと、

Escape probability∼ τKωK 2

µ(E) µ(E) +µ

1−exp (−(µ(E) +µ)L)

1−exp (−µ(E)L) (5.5) この式に

L = 5 mm (5.6)

τK = 0.8 (5.7)

ωK = 0.94 (5.8)

µ = 30.1cm1 (5.9)

µ(E) = 100

µ E 50.2 keV

3.5

cm1 (5.10)

の値を用いて計算したのが図 5.6にある曲線である。簡単化した計算ながらよく一致していると 言えよう。入射光子のエネルギーが十分に大きく、µ(E)¿µ でµ(E)L¿1 のとき、(5.5)は 次のような一定値となる。

Escape probability∼ τKωK 2

1−exp (−µL)

µL (5.11)

GSO結晶の全吸収効率はこのようなGdによるエスケープ事象によりGd K端で下がることにな る。シミュレーションから計算した全吸収効率を図 5.7に示した。

46 CHAPTER 5. GSO結晶シンチレータのγ線応答

Figure 5.4: 実験データとGEANT4の比較(109Cd,241Am,57Co)

5.4. エスケープピーク 47

Figure 5.5: 実験データとGEANT4の比較(133Ba,137Cs)

48 CHAPTER 5. GSO結晶シンチレータのγ線応答

Figure 5.6: GSO Gd-Kエスケープ確率

Figure 5.7: シミュレーションによるGSO全吸収効率

Chapter 6

HXD 最終全系試験

HXDの最終地上較正実験が1999年6月6-29日にかけて24時間体制で宇宙研D棟において行な われた。HXDは36ユニットが相互に依存しあっているため、全てのユニットを組み上げた状態 で、種々のγ線源を照射する試験をすることが必要である。この実験はフライト品を組み上げた 状態で行なわれた最初で最後の較正実験である。本章ではフォスイッチカウンタに関して得られ た較正データを解析し、HXDフォスイッチカウンタの基本的な特性である

吸収エネルギーとFast/Slow整形波高値の関係

吸収エネルギーとFast/Slow整形波高値の分散(エネルギー分解能)の関係

を求める。またFast-Slow 2次元ダイアグラムに関する解析も行なう。これらはHXDの応答関数 を構築する上で必須な情報である。

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