←
=0.154°
CuK
α(222)
(311)
20 30 40 50 Diffraction Angle 2θ(deg)
60
図3−3−1SrS(1180°C,3rd)粉末を出発材料として1200°Cで焼成を行ったSrS:Ce粉末蛍光 体のXRDパターン.挿入図は,3種類のSrS出発母体粉末,および作製した SrS:Ce粉末蛍光体における29°付近に見られるS6の(200)面に起因する回折 ピークの半値幅(FWHM)を示す. X線源はCuK。線を用いた・
っていることが示唆される。一方、1200°Cの焼成を行うと、いずれの母体を用いた場合 においても、900℃の焼成を行った場合よりも半値幅は狭くなる。しかし、出発材料が SrS(900°C,1st)とSrS(1000℃,2nd)の場合には、1200°Cの焼成を行った粉末蛍光体の半値 幅は、出発材料のそれよりも広い。これに対して、出発材料にSrS(1180°C,3rd)を用いた 場合には、1200℃の焼成を行うことにより、出発材料の半値幅よりも狭くなり、結晶性 が良くなっていることが示唆される。
続いて、同粉末試料におけるPL特性の検討を行う。図3−3−2は、出発材料に
SrS(1000°C,2nd)を用いた場合、図3−3−3は、 SrS(1180°C,3rd)を用いた場合のSrS:Ce粉末
蛍光体におけるPLおよびPL励起スペクトルである。なお、それぞれの出発母体におけ るスペクトルも示す。図3−3−2のSrS(1000°C,2nd)粉末のみ10倍にしてスペクトルを示し ている。測定は室温条件下において行った。
図3−3−2を見ると、900℃にて焼成を行った試料では、励起帯のピークが258nm(4.81 eV)に観測される。また、258 nm励起により、発光ピークが486 nm(2.55 eV)に位置し、
長波長側に裾を引くようなスペクトルが得られる。励起帯のピーク波長が出発母体のそ れと異なっていることから、この発光は、SrS母体のバンド間励起によるCe3+発光中心の 5d−4f内殻遷移に起因すると考えられる。しかし、その発光強度は非常に小さい。一方、
1200℃の焼成を行うと、PL励起スペクトルより、274 nm(452 eV)をピークとするSrS 母体のバンド間励起(間接励起)に起因する励起帯と432nm(2.87 eV)をピークとするCe3+
発光中心の4f−5d励起(直接励起)に起因する励起帯の2つが観測される。(均274 nrn励起 により、490nm(2.53 eV)をピークとし、長波長側に裾を引くようなスペクトルが得られ る。この発光も、Ce3・発光申心に起因する発光であると考えられる。このスペクトルのピ ーク強度は、900°Cで焼成を行った試料のそれと比較して、約65倍に増加する。また、
Ce3+の発光以外にも380 nm(3.26 eV)に小さな発光帯が観測される。これは、前節で説明 した1200℃の焼成を行うことにより生成されるSr欠陥に起因する発光であると思われ る。一方、432nm励起により、480 nmをピークとする理想的なSrS:Ceの発光[5d(2T2g)−
4f(2F,。),4f(2F,彦)]が観測される。〈>1〜3)Sr、 S組成やSrS母体自体の発光強度がほぼ同じであ ったSrS(900℃,1st)を出発母体材料とした場合においても、図3−3−2と同様の結果が得ら
一75一
2
1
0 2 1 08
(・・
ムぼ.£邑む目日霞﹈臨曝ば
6
4 2 0
SrS(1000°C,2nd)Powder
eXCltatlon e〃113∫zoη
λ ・=485nm λ
SrS:Ce(0.2 mo1%)Powder Phosphors
Fired at 900°C
300 400 500
Waveleng出(nm)
600
図3−3−2 出発母体にSrS(1000℃,2nd)を用いて作製したSrS:Ce粉末蛍光体におけるPL およびPL励起スペクトル.参考として, SrS(1000°C,2nd)出発母体のスベクト ルも示す.室温条件下において測定を行った。
2
1
︵U ︵∠ 41 ︵UOO
(°・
S﹃§ζ担目胃田ば曙ば
6
4 2 0
SrS(1180°C,3rd)Powder
● ■ ● ・
eXCltatlon εmz55「10η
λmoni=485 nm λex=311η功
SrS:Ce(0.2 mol%)Powder Phosphors
Fired at 900°C
486nm 260ηm
Fired at 1200°C
268ηm
484nm 432〃卿
300 400 500
Waveleng癒(nm)
600
図3−3−3 出発母体にSrS(1180℃,3rd)を用いて作製したSrS:Ce粉末蛍光体におけるPL およびPL励起スペクトル.参考として, SrS(1180℃,3rd)出発母体のスペクト ルも示す.室温条件下において測定を行った。
一77一
れた。
次に、図3−3−3の900°Cの焼成を行った粉末試料のPL励起スペクトルを見ると、励起 帯が260mn(4.77 eV)に観測される。260 nm励起により、486 nm(2.55 eV)をピークとす
るブロードな発光スベクトルが得られる。一方、1200°Cの焼成を行った試料は、図3−3−2 の1200°Cの焼成を行った試料と同様に、間接励起帯と直接励起帯が観測される。間接励 起帯のピークである268nm(4.63 eV)において励起を行うと、484 nmをピークとするプロ ードな発光が観測され、Ce3+の直接励起(432 nm)を行うと、480 nmをピークとする理想
的なCe3+の発光が得られる。(+1〜3)
出発母体のSrS(1000°C,2nd)粉末とSrS(1180°C,3rd)粉末の大きな違いは先述したよう にSr/S組成比、すなわち母体内におけるSr欠陥の存在量である。前者がSr欠陥が少な
く、後者が多い。その存在量の違いは、表3−2−1より添加したCe濃度と同程度であると 思われる。固相反応が活発でなく、主に結晶粒子の表面で反応が生じていると予想され る900°Cの焼成では、Sr欠陥の少ないSrS(1000°C,2nd)を母体とした場合に比べて、 Sr欠 陥の多いSrS(1180℃,3rd)を母体とした場合の方が、発光が約2.4倍(ピーク強度において 比較)強く、SrS格子中にCe3・発光中心が多く付活されているものと推測される。また、
いずれの試料においてもCe3・の直接励起帯が観測されていないことから、付活された Ce3+の量は少なく、それらはSrS粒子の表面付近に存在しているものと考えられる。これ に対して、固相反応が活発な1200℃における焼成では、SrS(1000°C,2nd)を出発母体とし た場合には、間接励起による発光が支配的であるが、SrS(1180°C,3rd)を出発母体とした 場合には、Ce3・直接励起による発光が支配的である。Ce・・直接励起による発光は、
SrS(1000°C,2nd)を出発母体とした場合に比べて、 SrS(1180°C,3rd)を出発母体とした場合 に約22倍(ピーク強度による比較)強い。また、間接励起による発光は、直接励起の場合 とは逆にSrS(1000°C,2nd)を出発母体とした場合が約2.2倍(ピーク強度による比較)強 い。つまり、SrS(1000℃,2nd)を出発母体にした場合にはSrS粒子の表面付近に、
SrS(1180℃,3rd)を母体にした場合にはSrS粒子の内部にCe3+発光中心が多く付活されて いるものと考えられる。以上の結果より、Ce3+発光中心のSrS格子中への付活には、 SrS 母体内のSr欠陥が大きく関与していると考えられる。 Sr欠陥の生成が活発ではない焼成
条件(900°Cの場合)においては、出発母体のSr欠陥の存在量が多い場合にCe3+発光中心 がより多く付活される。また、Sr欠陥の生成が活発な焼成条件(1200°Cの場合)において は、もし、出発母体に存在するSr欠陥の量が多ければ、そのサイトに容易にCe3+発光中 心が取り込まれ、さらに、SrS粒子の再構成により蛍光体粒子の内部へCe3+発光中心が取
り込まれると考えられる。一方、出発母体にSr欠陥が少ない場合には、焼成時にSr欠陥 が生成された後にCe3+発光中心がSrS格子中に取り込まれるために、蛍光体表面にCe3+
発光中心が多く分布すると推測される。
次に、母体内におけるSr欠陥の生成と、それに伴う間接励起帯のピーク波長の変化に 関して論ずる。900°Cで焼成した試料は、いずれの母体を用いた場合においても、260nm 付近に励起帯のピークがある。これらの試料は、SrS母体中にSr欠陥が少ないと考えら れる。一方、1200°Cで焼成した場合には、SrS(1000°C,2nd)を出発母体とした場合には、
間接励起帯のピークは274nm、 SrS(1180℃,3rd)を母体とした場合には268 nmに存在す る。いずれの励起帯も、900°Cの焼成の場合よりも、ピーク波長は長波長側に位置する。
1200℃の焼成を行った試料は、900°Cで焼成した試料よりもSr欠陥が多いと考えられる。
また、SrS(1000℃,2nd)を母体として1200°Cの焼成を行った場合にのみ、間接励起による 380nmのSr欠陥に起因する発光が観測される。つまり、間接励起帯の長波長側へのシフ トは、SτS粒子の表面付近にSr欠陥の存在量が多い場合に生じると考えられる。逆に、
間接励起帯のピーク波長を観測することにより、SrS格子中に生成されているSr欠陥の 相対的な評価ができると思われる。
最後に、PLスペクトルの長波長シフトに関して少し触れておく。図3−3−2(a),(b)より、
SrS(1000℃,2nd)を母体として1200°Cで焼成を行った試料のPLピーク波長は、
SrS(1180℃,3rd)のそれよりも長波長側に位置(6 n⇒し、かつ、間接励起のPLピーク波 長は、直接励起のそれよりも長波長側に位置する。これは、Ce3+発光中心の周りにSr欠 陥が存在していることが原因であると思われる。これに関しては、3−3−3項において詳し
く説明する。
本実験により、単純な系(Sr, S, Ce)から構成されるSrS:Ce粉末蛍光体において、 Ce3+発
光中心がSrS格子中に多く取り込まれるには、 SrS結晶内のSr欠陥の存在量が最も重要
一79一
であることがわかった。出発母体としてSr欠陥が多い母体を用いることにより、焼成温 度が低い場合(〜900℃)においてでさえ、SrS格子中にCe・・発光中心が取り込まれる。一 方、出発母体としてSr欠陥の少ないSrS粉末を用いた場合においても、焼成温度を高く 設定すること(1000℃〜)により、SrS母体にSr欠陥が生成されるとともにCe3・発光中心 が取り込まれる。つまり、Sr欠陥が多く存在する出発母体を用いること、またはSr欠陥 が生成されやすい高い焼成温度を採用することが、Ce・・発光中心のSrS格子中への活性化 のための重要な鍵となる。
3−3−3.Ce3・発光中心の取り込みと最適濃度
3−3−2項において、Ce・・発光中心のSrS格子中への取り込みが、 SrS結晶中のSr欠陥の 存在量かつ生成量に依存することを示したが、一体、Ce・・発光中心はSrS格子中にどのよ うに取り込まれ、また、どの程度取り込まれるのであろうか。SrS:Ce粉末蛍光体、かつ SrS:Ce薄膜EL素子において、高い発光効率を得るためには、 SrS格子中にCe3Ψ発光中心 が多く取り込まれることが必要である。同時に、八面体対称性の保たれたCe3+発光中心
の5d(2T2g)−4f(2F,、2,2F,∂遷移による理想的な青緑色発光も要求される。
SrS母体中におけるCeの取り込み量に関する検討がH磁1らにより行われている。(>16)
彼らは、SrS:Ce,Na粉末蛍光体においてCe添加濃度に対するCeの3価としての付活量を、
電子常磁性共鴫(EPR:Electron Paramagnetic Resonance)法の評価を行うことにより調べ、
Ce添加濃度が0.2 at%までは、ほとんどすべてのCeが3価の陽イオンとして付活され、
◎.4at%以上の添加濃度では3価としてのCeの付活が飽和することを示している。また、
Ceを過剰に添加した場合のSrS母体内におけるCe3・発光中心の取り込まれ方(存在状態)
に関して記された文献がいくつか見られる。Huttlらは、 Ce濃度を0.01〜1.O at%まで変化 させたSrS:Ce,Na粉末蛍光体を作製し、それらの減衰時間を調べ、 Ce直接励起の場合に は、Ce濃度が0.7 at%以上においてCe同士の相互作用により減衰時間が短くなり、(詞 SrS母体のバンド間励起を介した場合には、 Ce濃度0.1 at%にて減衰時間が飽和し、それ 以上の添加により短くなることを示している。(>16)Warrenらは、 Ce濃度を450(0.04 mol%)〜7500(0.64 mo1%)ppmまで変化させたSrS:Ce粉末蛍光体のEPR信号を観測する