• 検索結果がありません。

E国

ドキュメント内 知財戦略事例集 (ページ 97-116)

観点③ 観点④

生産が見込まれ ない国 他社生産国

(予想国を含む)

自社生産国

(予定国を含む)

他社生産 の差止・阻止

ライセンス料 獲得 子会社からの

技術料回収

他社生産 の牽制(=F国)

特許出願・

権利化

特許出願・

権利化

 

⑤:知的財産権に関する各国の現状・将来予測 

WTOの枠組みの中で、知的財産権が適切に保護されていく方向性にあることは間 違いないものの、知的財産権に関する各国の現状は様々である。そのため、「⑤知的 財産権に関する各国の現状・将来予測」を考慮して、海外特許出願国の検討に反映 させて行くことも必要である。 

また、特定の競合他社という観点とは別に、模倣品が発生しやすいと指摘される国 もある。こうした国においても、技術流出の可能性や権利行使の実行可能性等を踏ま えながら、特許出願をしていくことも重要となる。さらに、こうした模倣品が発生しやす い国において模倣品を排除しようとすると、その国の経済的・政治的な友好国に模倣 品が流れるということもあるので、こうしたことも注視しながら海外特許出願先を決定 していくことが求められる。 

 

なお、特許権は特許出願から20年という長期間に及ぶ独占権であることから、自 他社の中長期的な事業戦略を確認・調査・分析して、海外特許出願国の検討に反映 させて行く必要性があることは言うまでもない。 

   

[170] 「自他社の生産拠点」と「現在と将来の市場」へ出願 

 

海外出願国の選定基準は、「自他社の生産拠点」と「現在と将来の市場」の有無である。自他社 の生産拠点は東南アジアが中心で、将来市場として中国を重視している。海外出願をするか否か の最終的な判断は知的財産部が行うが、事業部が出願希望国を含めて提出することになってい る。 

   

[171] 「市場」と「自他社の生産地」のバランスを考慮して出願 

 

海外出願国は、市場と生産拠点を中心に考えている。具体的には、次の国が海外特許出願の 対象国となる 

①市場の大きい国 

②市場が大きくなる可能性のある国 

③競合会社の生産拠点国 

④自社の生産拠点(予定を含む) 

市場と生産拠点のどちらを優先的に考えるかは、事業内容によって異なる。極端な事例としては、

ある部品事業について、生産拠点は日本であるものの、顧客メーカーがほぼ米国に限られており、

将来的にも日本では市場が見込めないことから、その部品関連の発明は、日本へ特許出願せず に米国のみへ特許出願するようになったものが挙げられる。 

   

[172] 「市場」と「競合他社の生産地」へ出願 

 

海外出願先は、基本的に市場と競合他社の生産地のあるところが中心で、米、中、韓、英、独、

仏が多い。ただ、コストの問題があり、海外で永続的に販売している製品関連の特許については積

極的に海外へ出願しているが、あまり売れない製品(もともと市場規模が小さい製品)関連の特許 について、費用対効果の観点から出願国を絞るか海外へは出願しない。 

   

[173] 市場を重視して出願(販売しなければ利益なし) 

 

具体的な海外出願国の決定に際しては、製造方法については生産拠点を考慮するが、一番重 視しているのは市場である。製造できても売れなければ意味がないからである。ただ、当社の事業 内容から、基本的に市場は世界中にある。 

   

[174] 市場を重視して出願(生産拠点は転々と移転) 

 

当社が海外へ特許出願する国としては、現在及び将来の市場のある国を重視している。他社の 生産国も検討要素とはしているが、高い頻度で移動してしまうので権利化できた頃には、その国で 生産していないということがあり得る。 

   

[175] 競合他社の拠点と大きな市場に出願[欧州企業] 

 

当社は、まず自国に特許出願する。国内には、当社の競合企業も多いし、特許出願から権利化 までに要するコストも海外出願と比較すると安価であるためである。そして、発明の革新性が高く、

海外でも権利化すべきだと判断された特許については、「競合企業が多く存在する国」および「既 に大きな市場が形成されている国」に特許出願することが多い。特に、大きな市場が存在する国は、

競合他社も事業展開を狙ってくるので権利化の必要性が高い。このような観点から考えると、自然 と日本、米国、欧州域内の国への出願が多くなる。 

ブラジル、インド、ロシア等の、将来の市場形成が期待される国にも特許を出願することもあるが、

日米欧への件数と比較すると少ない。 

   

[176] 日本を含めた大市場に出願[欧州企業] 

 

海外特許出願先としては、大きな市場のある国が対象となる。その市場における自社のシェアは 関係ない。それは他社からのライセンス料を獲得できる可能性があるからである。特許の価値は、

市場の大きさに依存する。 

当社は、どの国に対しても右肩上がりで特許出願件数を増やしてきている。日本に出願するもの は9割以上になる。つまり日本は大きな市場と認識している。その他、米国、欧州、韓国、中国、オ ーストラリア、ブラジル、ロシアなど様々な国へ特許出願している。 

   

[177] 模倣品多発国との友好国へ出願 

 

ある国から東南アジアへ輸出された模倣品を押さえたことがある。そうしたところ、その模倣品と 同じ種類のものが、当社が特許出願していなかったアフリカのある国に流れてしまったことがあった。

よく調べてみると、本件の模倣品の生産国が、そのアフリカの国と協定を結んでおり製品が流れや すいという背景があった。 

当社は、そのような協定があることを知らず、そのアフリカの国へ特許出願をしていなかった。今 では、模倣品が製造されやすい国が、どこの国と仲が良いかも情報収集し、出願国として重要視 するようになった。 

なお、海外の営業部隊は、自分たちのシェアを拡大することに躍起なので、模倣品情報に最も 敏感である。したがって、その営業部隊からの情報を特に注視している。 

   

[178] 市場を重視して出願(ロシア・メキシコ・東欧も意識) 

 

特許出願先国を選定する際には、市場のある国か否かという点を最重要視している。当社にお いては、主に米欧中韓である。近年、ロシアにおいても市場が拡大した事業分野もあり、特許出願 を検討しなければならないと思っている。しかし、現状はロシアで特許権を取得し権利行使するた めの知識が不足しているため、効率的な権利取得・活用ができていない。また、製品によっては、メ キシコや東欧も重要になりつつある。こうした新たな市場国については、まず制度等の調査を進め ている。 

   

[179] 「競合他社の生産地」を重視する中間部品メーカー 

 

海外出願する場合の出願先は、以下の基準を満たした国としている。特に、この中でも競合他 社が生産をしている国を重視している。当社は、中間部品を製造する事業が中心であることから、

市場となる自他社の販売拠点に特許出願したとしても、当社の顧客や顧客となり得る最終製品メー カーを訴えることは、当社として、できないからである。 

①当社製品を生産する子会社又は合併会社が存在する国 

②当社製品が販売される国 

③有償の技術供与が行われる国 

④当社と競合する製品を有するライバルが生産拠点又は販売拠点としている国 

⑤R&D分野又は応用分野での将来製品の市場規模が大きく見込める国 

   

[180] 「他社の製造・販売地」へ出願 

 

海外への特許出願先国は、「他社が、その技術に関連した製品を製造もしくは販売する可能性 が高い国」という観点から選択している。 

   

[181] 将来を見越して(期待して) 、広めに海外へ出願 

 

当社は、化学系の物質を製造することを中核事業としており、海外への出願国は、次の観点で 選定している。 

・現在、自社が生産もしくは販売をしている国 

・将来、自社が生産もしくは販売をする可能性がある国 

・現地企業が生産する可能性のある国 

現時点では市場が小さい事業であっても、将来を見越して(期待して)、広めに海外へ特許出願 している。 

 

 

[182] 欧州は代表国に出願すれば十分

 

当社は、以前、欧州の多くの国に特許出願をしたことがあった。しかしながら、欧州は経済的に 統合されているので、代表国だけ出願すれば十分であると考えるようになった。当社の製品につい ていえば、競合会社が英・仏・独を外して販売することは想定できないために、近年は英・仏・独に 絞って出願するようにしている。極端な話としては、欧州は、英・仏・独のいずれか1ヶ国だけ出願 すれば良いのかもしれない。 

   

[183] 欧州はドイツを中心に出願 

 

欧州への特許出願に当たっては欧州内で物流が活発であることから、ドイツだけで権利化する 戦略を採用している。当社の製品の性格からみてドイツを避けて流通ルートを構築できないためで ある。ただし、大手メーカーが英仏等に存在する場合は、直接、そのメーカーに権利行使をしやす くするために、そのメーカーの本拠地に出願をしている。 

   

[184] 7〜10年後の市場規模の予測で出願[欧州企業] 

 

当社は、特許出願するもののうち、ほぼ全件を海外にも特許出願している。というのも、海外にも 特許出願することを決めてから自国に特許出願するからである(海外に特許出願しないものは自国 にも特許出願しない)。とにかく特許出願し、その後で海外出願する案件を選ぶアプローチとは全 く異なる。出願対象国の選択基準は、その国の市場規模のみである。特に7〜10年後の市場規模 予測で評価する。競合他社の動向や特許制度の整備状況も確認はするが、あくまで参考情報に 過ぎない。なお、欧州域内についても、市場規模が小さい国(例えばルクセンブルグなど)では権 利取得をしない。 

   

[185] 「顧客の製造工場地」に併せて特許出願国を変更する中間材料メーカー 

 

当社は、中間材料を製造している化学系メーカーである。海外への出願先としては、次の国が 中心である。 

①発明に関係する製品の輸出を実施または実施予定にしている国 

②合弁会社を設立する等により、自社で直接実施または実施予定にある国 

③自社が技術輸出を実施または実施予定にしている国 

④他社から技術導入を実施または実施予定にしている場合において、当該他社のある国  当社の製品は、最終製品を製造するための化学系の中間材料であるために、当社にとっての市 場となる国は、顧客となるメーカーの製造工場のある国である。それが、上述①に該当する国という ことになる。したがって、顧客メーカーの製造拠点の移転およびその移転予測に合わせて、当社の 海外出願国は変更されていくことになる。 

例えば、当社のある製品を消費してくれる顧客工場が東南アジアのある国に進出したため、その 製品事業に関する発明について、その国への特許出願を増やしている。なお、当社は、研究者が 顧客メーカーのところに出入りして、顧客のニーズを聞いてくることが多いので、その際に研究者が 顧客メーカーの海外製造拠点に関する情報を仕入れてくるようにしている。そうした情報を知的財 産部において集約して、海外出願戦略を立てるようにしている。 

ドキュメント内 知財戦略事例集 (ページ 97-116)