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で述べる特許群の戦略的な管理手法がある。この特許群の管理を利用して、

ドキュメント内 知財戦略事例集 (ページ 116-126)

例えば、複数の特許出願の相対評価をしたり、製品の上市の時期と連動させたりす ることで、的確なメリハリのある審査請求ができるようになる。 

また、審査請求の要否判断を行う段階において、特許出願時には未公開であった 先願特許などを中心とした先行技術調査を行うことにより、無駄な審査請求を防ぐこ とも重要である。 

 

なお、業務の効率化のために、早いタイミングでの審査請求の要否の判断を行うケ ースもある。これは、特許出願の要否判断、あるいは海外特許出願の要否判断と同 時に審査請求の要否を確定することにより、その後に審査請求の要否の判断は行わ ないという手法である。すなわち、特許出願の要否判断と同時に審査請求の要否を 確定する手法によれば、審査請求する発明のみが特許出願の対象となり、特許出願 と同時に審査請求することが通常である。また、海外特許出願と同時に審査請求の 要否を確定する手法によれば、特許出願から1年以内に、海外特許出願の手続を進 めると共に国内の審査請求の手続を行い、審査請求をしないと決定した案件は取り 下げることで、特許出願から1年6月後に単に公開されてしまうことを防ぐということも できる。 

このような手法は、特に、特許出願時や海外出願検討時と、出願から3年経過時と

で、発明の評価が大きく変わらないような製品を扱っている企業であれば、人的コスト

の削減を図ることが可能となり、有益である。ただ、この場合も、特許法第29条の2 の規定による拒絶理由の有無の判断をすることができないというリスクはある。 

次に、審査請求に関する各企業の取組事例を紹介する。 

   

1)審査請求の要否の観点−企業の事例から− 

   

[235] 他社の実施可能性が審査請求のメルクマール 

 

特許出願時には、自社の実施予定にかかわらず、他社が実施する可能性がある場合に特許出 願をしている。そして、審査請求の要否の検討時点である特許出願から2年が経過した段階で、当 該他社の事業戦略や開発戦略を予測して、実施可能性がなくなっていないと判断された場合に審 査請求をしている。 

   

[236] 審査請求の要否判断の観点例 

 

審査請求の要否判断は、「自社が実施中・実施予定」、「他社が実施中・実施予定」、「重要開発 テーマから生まれた発明の特許出願」、もしくは「特許自体が売れる可能性」という観点から検討す る。なお、特許出願時には調査できなかった範囲(特に、特許出願時に未公開の先願特許)につ いて先行技術調査を行ってから、審査請求の要否判断を行っている。 

   

[237] 審査請求の要否判断の観点例(特許的評価・技術的評価・経済的評価) 

 

審査請求の要否は、以下の観点の総合評価から判断する。 

 

①特許的評価  ②技術的評価  ③経済的評価 

・新規性・進歩性 

・排他独占性 

・侵害事実把握の容易性 

・自社周辺特許の補強性 

・クロスライセンスの可能性 

・当社実施状況 

・他社技術との競合関係 

・発明の技術的完成度 

・代替技術の有無 

・製品売上寄与の度合 

・継続実施の可能性 

・実施許諾による収益性 

・権利売買による収益性 

・経費(年金)との関係 

   

[238] 包括ライセンス契約締結後は、審査請求しない企業 

 

発明の関係する事業について、競合他社と長期的な包括ライセンス契約を審査請求前に締結 した場合には、その競合他社との関係では特許権を新たに取得するメリットがないので、契約終了 のタイミングを考慮しつつ、発明としての評価点が高いとしても審査請求をしないという判断をする ことがある。したがって、むしろ包括ライセンス契約の交渉の段階までに有力な特許を成立させて おくことができるように、審査請求をしている。 

 

 

 

2)特許出願後の早期に審査請求の要否を判断している企業の事例   

[239] 海外特許出願の要否の検討と同時に審査請求の要否も検討1 

 

当社は、米国における販売が全体の70%を占め、海外での生産が全生産の99%を占めている。

したがって、海外へ出願しなければ特許出願をする意味はない。そこで、国内の特許出願後3ヶ月 から半年で、関係者(知財及び技術メンバー)の合議体で国内特許出願の審査請求の要否を検討 し、これと同時に海外特許出願の要否と出願国も検討している。自社及び他社での実施の可能性 を重点において選抜するので、結果的に、日本で審査請求するものは、ほとんど海外(特に米国)

へ特許出願することとなる。 

   

[240] 海外特許出願の要否の検討と同時に審査請求の要否も検討2

 

海外特許出願の要否判断の際に、審査請求の要否も同時に検討している。当社事業について いえば、試作品の作成までに概ね3年を要し、市場性の見極めも含めると4、5年を要する。したが って、3年の審査請求期間ぎりぎりまで待っても審査請求の要否判断を十分に的確に行うことは期 待できないので、要否判断のための労力の節減も考慮して、海外特許出願の要否の検討と同時 に審査請求の要否を検討している。 

   

[241] 特許出願前の発明評価が高かった案件を優先的に審査請求1 

 

審査請求の要否は、通常、国内特許出願から2年〜2年6月後に判断している。ただし、特許出 願前の発明評価が高かったものは、国内特許出願の要否検討の段階で早期審査の申請を含めて 審査請求の検討・判断をしている。 

審査請求の要否判断基準は、「技術の汎用性」、「自社が商品化する可能性」、「他社が商品化 する可能性」などの観点から評価し、評価点数が高いものを審査請求する。特許出願と同時に審 査請求するか否かの判断のときには、「他社が商品化する可能性」を特に重視している。 

 

 

[242] 特許出願前の発明評価が高かった案件を優先的に審査請求2 

 

特許出願前の発明評価が高かったものは、国内特許出願の要否検討の段階でも、次の観点か ら審査請求の要否を判断し、国内特許出願後に速やかに審査請求する。 

①自社が実施中または実施確定の発明であって、相当の実施がなされるもの 

②上記①の実施技術の代替技術であって、他社実施の可能性の高いもの 

③自社が2年以内に実施する可能性が極めて高く、他社実施の可能性が高いもの 

④他社が既に実施していることが明確なもの 

⑤他社が現在実施している可能性が高いもの 

⑥他社が2年以内に実施する可能性が高いもの 

なお、国内特許出願から2年半を経過した段階では、全ての案件について審査請求の要否を検 討している。 

   

 

3)特定の観点から審査請求を行う企業の事例   

[243] 標準化関連の特許出願は、標準化の作業の進捗状況に合わせて審査請求 

 

標準化に関係する技術については、標準化技術と完全に合致した特許権を取得したいため、

標準化が決まった後に、その標準の文言に合わせて特許請求の範囲の表現を補正したいことが 多い。したがって、こうした技術は、審査請求のタイミングを標準化の作業の進捗状況を確認しなが ら行うようにしている。例えば、できるだけ審査請求をしないでおき、標準が確定したところで早期 審査を請求する手法がある。 

また、こうした特許出願は分割出願も積極的に活用でき、特に特許査定後の分割出願は効果的 な手段になるだろうと考えている。 

   

[244] 第三者からの情報提供や閲覧請求があったら審査請求 

 

当社では、第三者からの情報提供と閲覧請求があった案件は、その後すぐに審査請求すること にしている。 

   

[245] 他社の実施関連発明は審査請求を早期に行う

 

自社の特許出願に係る発明と同じかそれに近い技術を、他社が事業化しそうだと判断された場 合には、その後すぐに審査請求する。 

他社が事業化するか否かの判断は、他社パンフレット(展示会)、他社特許公報に掲載された内 容、他社の発表情報、営業部隊が得る客先からの情報などを入手した段階で、逐次行っている。 

   

[246] 自社他社の実施関連発明は審査請求を早期に行う

 

自社か他社の実施化が決定した段階で、すぐに審査請求をする。 

 

 

                   

[247] コラム:優良な発明の種ほど時間をかけてブラッシュアップ 

 

審査請求の要否を検討するタイミングで、「戦略特許活動」を行っている。これは、いまだ審査 請求されていない出願について、1年に1回、金・銀・銅の3段階評価を行い、評価されたものに ついては、綿密に発明のブラッシュアップを行うことで、活用性が高く、国際的に通用する潰れ にくい質の高い特許を取得しようという活動である。金は年間20〜25件程度、銀は70件程度、

銅は200件程度である。 

金については、知財本部の各部長、各開発部長、副社長(CTO)等で認定し、管理する。近 年「金」評価を得るのは、開発部門からの特許ではなく、研究所からの特許が主となっている。

銀・銅については、各事業部と在勤の知財部長とで選考して各事業部長の決裁で決定される。 

 

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