• 検索結果がありません。

DEM による河床変動量の定量評価

第 3 章 支流域における堆積状況の定量評価およびその手法の開発

3.3 UAV 測量データを用いた堆積状況の定量的な変化の評価

3.3.2 DEM による河床変動量の定量評価

(1) 作成したDEMデータに関する基本情報

3次元モデルより構築したDEMはGIS上ではラスター形式であり,格子状に任意のサ イズ(本データは2 cm×2 cm)のセルが配列したデータである。ラスター形式は座標点を データの左下の一点に持ち,絶対座標系下においては指定されたサイズのセル(四角形)が 南北を縦軸,東西を横軸に規則正しく配列したデータである。本章で作成したDEMについ ては,測量領域内の一点を基準とした相対座標により規定されている。従って,セルサイズ については2 cm×2 cmであるが,データの配列方向に関しては川内川と増谷川で異なる。

(2) DEMデータによる河床変動量の評価

SfMソフトウェアによって構築された各測量期間のDEMから河床変動の評価を試みる。

データの分析については GIS で行う。基本的な作業としては,Spatial Analyst ツールの

「ラスター演算」機能を用いて各測量期間の共通範囲の抽出および差分データの計算を行 い,期間ごとの堆積侵食の変化の傾向及びその変化量の把握を行う。

まず,全測量期間の中で9月30日~10月7日については,間隔が1週間であり堆積状況 にほとんど変化がなかったため,得られた DEM の差分計算を行い数値のばらつきの確認 を行った。これは測量時の天候等の状況よるモデル構築への誤差(表 3-5)とは別に,河床 変動として堆積,侵食の傾向評価を行う際に河床が変動していないと判断する際の指標と すべきだと考えている。その結果の図及び差分結果のヒストグラムを図 3-10,図 3-11に

62

示す。共通範囲内における河床変動量の平均値については,図 3-12に従って差分計算結果 のラスタデータから相加平均として算出した。差分計算のラスター表示については全て,全 測量における評価を基に,最大値±2 m(正:堆積,負:侵食)で表示している。

(a)川内川 (b)増谷川

図 3-10 9/30~10/7のDEMの差分計算

(a)川内川

(b)増谷川

図 3-11 差分結果のヒストグラム(セル単位)

63

図 3-12 河床変動量(平均値)の算出概念

図 3-10からは両測量領域ともに,全体的に目立った堆積変化はなく,堆積物の粒径につ いても変化は確認できない。各領域の河床変動量の平均値は,川内川で+0.09m,増谷川で

-0.02mであることを確認した。また,図 3-11の各測量領域のヒストグラムを確認すると,

川内川では-0.05m~0.2mの範囲に数値データが集中しており,増谷川では-0.17~0.14mの 範囲に数値データが集中していた。

堆積場を形成せず全体的に水流がある川内川では数値だけを見ると全体的に河床が少し 上昇していることになるが,各数値の分布と河道堆積状況について加味するとこの変化は 水底部観測時の誤差及びモデル作成における影響が大きいと推測される。

7/26~9/30の期間に顕著な堆積傾向を示した増谷川では平均値について見ると-0.02mで

ありほとんど変化していないことが推察される。一方で数値のばらつきとしては,0.3m程 度と評価されている。

降雨状況については後で説明するが,9月 30 日~10 月7日の期間内においても対象期 間中日単位で4番目に大きな降雨が確認されている。しかし,状況として堆積状況の変化に ついては目視では確認できないほどであった。これについては次のように考察している。降 雨状況の評価に用いているのはアメダスの観測データであり,観測局ごとに離れている(本 評価において考慮した観測局は,川内川は諸塚及び鞍岡,増谷川は諸塚及び神門の各2局で ある)。そのため,観測局ごとの距離に比べ,地形の尾根谷が煩雑に分布している山地河川 においては観測局単位の雨量評価では実現象と誤差が出るのかもしれない。また,山地河川 における河床変動は流量変化及び水位に依存している。短期間の降雨規模としては大きい が,連続した降雨として評価した場合に当該期間は流量及び水位が十分に上昇していなか ったなど河床変動に至らなかったと考察している。

この期間の河床変動の指標として用いるならば,平均値として±0.1程度はまず河床変動 がないとして評価するべきである。また,モデル誤差等についても評価に加味し,計算され たDEM内のヒストグラムからも数値の分布傾向を考慮すべきである。

次に,全測量期間における増谷川,川内川の河床変動を確認するために,7月 26 日~9 月30日と9月30日~11月29日の2つの期間に分けて,差分計算およびヒストグラムに よる評価を行った。以下,期間①:7月26日~9月30日,期間②:9月30日~11月29 日とする。

64 A) 川内川

期間①及び期間②の河床変動(差分計算結果)を図 3-13に示す。

期間①においては,右岸側及び左岸側については植生のデータを含んでいると考えられ るため,河床変動に対する評価としては無視する。河床変動については,一様に変化してい るよう見え,土砂が顕著に堆積するような領域がないことについては現地状況と一致して いる。また,差分計算結果からは右岸側が若干侵食しているような傾向に見える。共通範囲 における平均値は-0.21m である。しかし,図 3-14 からヒストグラムを確認すると,数値 は-0.42~+0.35 に集中しており,侵食と見られる河床に比べ植生と思われる部分の影響が 強い傾向にある。DEMから数値傾向を確認すると,約-0.51mを境として図 3-13(a)に見 られる植生がほぼ除外でき,河床変動量の平均値は-0.07mであったため,期間①において 川内川はほぼ河床変動がなく,定常的な状態であったと考察した。

期間②については,共通領域内の河床変動量の平均値は-0.04mであり,期間①と同様に 河床変動がなく定常的な状態であると考えられる。一方で,右岸側で先ほどと同様植生によ る影響を受けた箇所も確認できるため,検証のため除外して平均値について検討し直した。

それでもやはり河床変動量の平均値は,-0.06mであったため,期間②についても期間①と 同様に定常的な状態であったと評価した。

すなわち,川内川については局所的に堆積した砂や細粒分などは見られることから,上流 から供給された土砂が堆積することなく流下する領域であることが考えられる。また,河床 低下と粗粒化の十分な進行により河床材料が静的安定に至った区間であると推測される。

(a)期間①:7/26~9/30 (b)期間②:9/30~11/29 図 3-13 川内川における河床変動(差分計算)

65

(a)期間①:7/26~9/30

(b)期間②:9/30~11/29 図 3-14 差分結果のヒストグラム

B) 増谷川

期間①及び期間②の河床変動(差分計算結果)を図 3-15に示す。

増谷川では期間①において測量した共通範囲内で大きな河床変動を確認した。右岸で大 きな堆積を確認した。期間①における差分計算結果については,大規模な出水による植生の 流出も含み河床変動そのものを評価したものではないが,もともと深い水深を有していた 右岸側での堆積が読み取られ,現地観測による所見と一致する。図 3-16に示すヒストグラ ムから差分結果の平均値としては+0.16mと堆積傾向に見られるが,流出した植生部の影響 が大きいため,期間①については河床変動を図 3-17 に示すような区分で再計算を行った。

領域区分については,7月26日分のオルソ画像より河道,植生,護岸の3つとした。各領 域の平均値は,河道部は+0.86m,植生部は-1.05m,護岸部は+0.09m であった。オルソ画 像による領域区分は,オルソ画像の精度レベルである。これらの結果から右岸側では+0.86m の堆積が生じ,左岸側では植生の流出も合わせて標高値として-1.05mの低下であったと考 えられる。この共通領域全体における河床変動の評価としては,区分した領域から河道部と 植生部を合わせて+0.16mの堆積傾向として評価できる。

66

期間②においては図 3-15 より期間①において堆積傾向にあった箇所が若干侵食されてい るように考えられる。図 3-15及び図 3-16による評価においても目立ったエラー値は含ま れず共通領域全体の平均値-0.29mは侵食傾向であると考えられる。また,先ほど作成した 領域区分ごとの平均値についても計算すると,河道部は-0.41m であり,植生部は-0.18m,

護岸部は+0.15mであった。護岸部については,9月30日時点で護岸部の植生については ほとんど流出しており,護岸そのものをモデル化してある。従って,勾配として急である護 岸部をモデルから DEM に変換した際に生じる水平誤差の影響が数値として顕著に出たも のと推察している。また,期間②における河床変動としては侵食傾向にあり,期間①におい て堆積した堆積物がさらに流下したものと評価した。

以上から,増谷川は河床変動が活発であり,河床材料としても礫分等が活発に移動したこ とから上流に豊富な土砂の供給源とそれを流下させる掃流力を有する河道構造であると考 察した。

(a)期間①:7/26~9/30 (b)期間②:9/30~11/29 図 3-15 増谷川における河床変動(差分計算)