第 3 章 支流域における堆積状況の定量評価およびその手法の開発
3.2 UAV による空中写真測量技術を用いた堆積状況の測量
3.2.1 調査解析手法
(1) UAV(無人航空機)を用いた空中写真測量
昨今のUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)を取り巻く状況は,局所的な範 囲で,UAVの落下に対する安全の確保が可能な場所では,低高度からの空中写真の撮影が 実用的に行えるようになっている。現在,河床変動の観測では,定期縦断測量,定期横断測 量などが行われているが,作業員が危険な場所に入らなければならなかったり,現場での作 業に時間を要したりしている。また,地上レーザ測量では,レーザスキャナを設置する適当 な場所がなければ,必要な箇所を計測できない可能性が生じる。このような場所においては,
UAVを用いることにより,危険な場所に立ち入ることなく短時間で撮影し,撮影した空中 写真から3次元点群測量を行うことにより河床変動の観測が行えるようになる。UAVを用 いた空中写真測量は,基本的には航空写真測量と同じ技術であるが,局所的な範囲の測量に おいては経済性,機動性に優れることから国内での実施事例も増えつつある。UAV は,有 人機と比較して低高度で撮影することができるため,高精度な地上画素寸法の地形情報を 取得することができる。また,有人機と比較して安価であり,高頻度の観測が可能である。
ここに,地上画素寸法とは,デジタル航空カメラを用いた場合の数値写真上に投影された1 画素に対する地上の寸法であり,UAVを用いた空中写真測量における精度は,撮影高度50m
未満では 25〜40 mm 程度とされている。UAV を用いた空中写真測量においては,SfM
(Structure from Motion:複数の写真から特徴点を抽出して撮影状態を求めるとともに,
撮影状態に基づき空中写真から高密度に3次元点群を抽出し,3次元形状を復元する技術)
ソフトウェアを使用する。SfMソフトウェアの近年の技術進歩及び低価格化は目覚ましく,
一般的な利用普及が期待されている。
本研究ではSfM ソフトウェアには,Agisoft PhotoScan Professional Edition を使用す
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る。また,UAVには,DJI Phantom 3 Professionalを使用し,撮影にはUAVに搭載され たカメラ(1/2.3” CMOS,有効画素数12.4 M)を用いた。
(2) GIS(地理情報システム)
GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは,地球で起きている様々 な現象や状態を定量的に把握するためのツールである。また,「空間的に現象を把握する」
という目的に対して利用できる学問,技術,知識をコンピュータ技術により統合したツール である。様々な定量情報を一元的に管理し,空間に関する多様な情報源から大量の空間デー タを取り込み,地図情報を主体としたデータベースを作成し,それをコンピュータ技術によ って効率的に蓄積,検索,変換,解析,出力することで,利用者の意思決定を強力に支援す ることができる。GISを利用することにより,地図の図形情報とその図形情報に貼り付けら れた各種情報を空間的に関連付け,その情報を様々な形で表示し,解析することができる。
つまり,地図情報をベースに異なる様々な情報を新しい情報に変換でき,合意的に意思決定 を行うことができる。また,コンピュータで処理を行うため,瞬時にそして視覚的に情報を 伝えることができる。GISが行う解析は,現実の世界のみならず仮想現実に対するシミュレ ーションも可能である。
本研究においては,作成したDEM及びオルソ画像を扱う。堆砂変化や移動土砂の粒径に ついて定量的に評価する。使用するGISソフトウェアには,ESRI ArcGIS Pro 2.2.4であ る。
(3) SfM処理による3次元モデルの構築
SfM 処理により空中写真測量により取得した写真から3次元モデルを生成するまでの流 れは図 3-2に示す通りである。SfMソフトウェアでは以下の3)から6)までを処理する。1) 写真撮影,2) 写真の選別,3) 3次元モデルの構築,4)座標設定,5)オルソ画像出力,6) DEM 構築。次に各工程における詳細な内容を述べる。
1) 写真撮影
UAV による空中写真測量を行う。撮影写真については基本的に一律垂直写真とする。植 生等により撮影不可な部分については別途撮影角度を調節する。また,撮影場所のGPSの 位置情報は写真に付与しない。理由は写真の撮影ごとにウェイポイントとして位置情報が 登録されるが,この場合のGPSの位置精度は1周波によるものであり,写真の相対的な位 置関係から生成する3次元モデルの精度に比べてGPSの位置情報の精度が著しく劣るため である。
49 2) 写真の選別
撮影された空中写真のうち,3次元モデルの構築に最適な写真を選別する。白飛びや黒潰 れにより大部分の情報が欠損した写真,ピンボケやブレの発生した写真は,マッチングの失 敗の原因となるため使用しない。また,遠景を含んだ写真については極力使用せず,マスク 処理などを行うことにより3次元モデル生成のデータには含まれないよう配慮する必要が ある。
3) 3次元モデルの構築
SfM ソフトウェアにより3次元モデルを全自動で構築する過程において,まず「写真の アラインメント」が行われる。アラインメントとは各写真のオーバーラップから写真を撮影 した位置を解析する工程である。また,同時にポイントクラウドも作成される。ポイントク ラウドとは,画像から特徴的な点を自動的に抽出し,重なり合う領域の画像間で同じ特徴点 をマッチングしてできる点群のことである。次に,「高密度クラウド構築」が行われる。点 群の高密度化処理をすることで,より精細な3次元モデル及び DEM を構築することがで きる。次に,「メッシュ構築」が行われる。メッシュとは,3次元モデル全体を構成する面 の集合のことである。最後に,「テクスチャー構築」を行う。作成メッシュに対して,写真 より抽出した画像,色彩を付与する。
4) 座標設定
地形モデルを生成する場合,測定座標と測定スケールを入力して点群に座標データを付 与し,3次元モデルに対して複数の地上基準点を設定する。これにより,3次元モデルに地
図 3-2 UAV空中写真測量からDEM作成までの流れ
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理空間座標が定義され,DEMとして出力できる状態になる。
本測量調査では,複数測量期間のデータを重ね合わせるために10月の調査において測量 範囲の特徴点に対してXYZ座標データを取得した。いずれも相対座標である。この座標デ ータについては3次元モデルにマーカーとして作成して入力する。XYZ 座標データ取得以 前のモデルに対しては,構築モデル内の不動点とリンクさせることにより座標スケールを 取得させた。
5) オルソ画像出力
3次元モデル構築の際に,抽出されたタイポイントを考慮して写真を合成処理し,地形表 面のオルソ画像(正射投影画像)を出力する。
6) DEM構築
SfMソフトウェアで生成した3次元モデルは,そのままではGISなどで利用することが できない。そこで,GeoTIFなどのDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)と してファイル出力する。DEMデータは,地表面を等間隔の正方形に区切り,それぞれの正 方形に中心点の標高値を持たせたデータである。座標設定により DEM にはスケールが付 与される。構築されたDEMはいずれもセルサイズ 2 cm メッシュであった。