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河床材料に基づく流域地形の分析

第 5 章 ダム貯水池内の土砂流出現象の実態把握

5.2 土砂流出現象に関係する要因の整理

5.2.2 河床材料に基づく流域地形の分析

(1) 河川支流河口の堆積物の粒度分布の整理

基本的に支流河口の状況は支流域内部の状況に比べて河床勾配が緩くなるため,粒径の 評価としては比較的粗いものが確認される傾向にある。例えば貯水池内では砂や細粒分が 主体であるように,支流域河口の河床材料と実際に移動している土砂量の粒度分布は大き く異なる傾向にある。しかし,そういった河口の河床状況は支流域からの土砂流出の影響を 受けた結果であり,支流域単位の土砂流出に対する質的な違いとして捉えることができる と推測される。図 5-1 に示す支流においても河口域の河床材料の調査データがあり,支流 域ごとの土砂流出の質的な違いを確認できるものと考えられる。これらの傾向を把握する ために,支流域(全16支流)における河床材料をD10,D50,D90に分けて整理した。 表 5-1に支流域河口の河床材料について整理した情報を示す。平均粒形(D50)だけを見ると 増谷川は最も粒形が大きく,第3章で確認したような礫を含む土砂流出をしている河川の イメージと合致する。野川谷川,山瀬川についてはD90が最も小さく,もともと土砂の流 出は盛んではなく細かい土砂の流出を主とした状況がこれまで報告されている 11)。また,

これらは川内川を支流としてもつ七ツ山川の粒度分布とも近く,粒形2mmのような細かい 土砂を主体とする土砂移動状況に似た傾向を持つと考えられる。

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図 5-1 河床材料を確認した支流位置

表 5-1 支流域河口の河床材料に関する情報

(上位3支流:オレンジ,下位3支流:をブルーで表記)

支流名 D10(mm) D50(mm) D90(mm)

西ノ八峡川 28.5 77.8 268.0

尾迫川 18.1 50.0 204.0

弓木谷川 19.3 55.5 145.5

山瀬川 12.8 35.6 100.0

小川内川 7.5 36.1 188.6

唖谷川 30.6 70.0 181.8

八峡谷川 44.3 104.5 224.0 野川谷川 31.1 52.7 100.0 桑ノ木原川 17.0 47.1 154.5

増谷川 55.5 115.9 248.0

田代川 44.3 95.0 252.0

不土野川 25.4 70.0 190.9

小崎川 18.4 35.0 100.0

柳原川 17.0 58.2 170.5

七ツ山川 17.0 52.7 115.9

十根川 20.8 52.7 115.9

七ツ山川

十根川 柳原川

野川谷川

不土野川

小崎川

桑ノ木原川 弓木谷川

山瀬川

唖谷川 増谷川

尾迫川

田代川 西ノ八狭谷川 八狭谷川 小川内川

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(2) 堆積物の粒度分布に基づく支流域の分類

堆積物に対する粒度分布については,現地状況と関連する状況もありこのような粒度デ ータ(D10,D50,D90)を用いれば,支流域を河床材料に応じて分類することができると 考えられる。そこで,粒度データに対してクラスタ分析を実施し,粒度データの似通った支 流を特定することを試みた。クラスタ分析については,統計分析に特化したフリーソフトウ ェアであるRを用いた。クラスタ分析の手法としては,wardD法を採用し,各支流域のパ ラメータ間の距離計算についてはマンハッタン距離を採用した。その結果を図 5-2に示す。

図 5-2 より,クラスタ分析結果として大別すると各支流域は以下のように大きく3区分 に分けることができる。図の縦軸は各支流域の粒度データ間の距離を示しており,短い距離 でグループ化された支流域ほど近い粒度を持つ。

Group A(4):西ノ八峡谷川,八峡谷川,増谷川,田代川

Group B(5):山瀬川,小崎川,野川谷川,七ツ山川,十根川

Group C(7):柳原川,弓木谷川,桑ノ木原川,唖谷川,不土野川,尾迫川,小川内川

粒度データの区分の傾向については次にまとめたとおりである。

 Group AはD10,D50,D90ともに他の支流より大きい。

 Group B,Group CはD10,D50がともに似た傾向であるが,D90についてはGroup

CがGroup Bより大きい。

 一部異なるが,耳川本流に対して下流から,Group A,Group B,Group Cの支流が分 布している。

このように,粒度データと空間的な支流位置についても何かしらの関係性があることが想

図5-2 粒度データに対するクラスタ分析によるグループ化

パラメータによる支流間の距離 西ノ八峡谷川 八峡谷川 増谷川 田代川 山瀬川 小崎川 野川谷川 七ツ川 十根川 柳原川 弓木谷川 桑ノ木原川 唖谷川 不土野川 尾迫川 小川内川

Group A Group B Group C

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定される。しかし,第3章において説明したように山地河川の地形は複雑であり,支流域を 3つの区分だけで分類することは早計であると考え,図 5-2 で示すような赤線を基準とし て,表5-2に示す7つのグループに分類して地形に対する考察を行う。

(3) 流域特徴として考慮する因子

まず,グループの分類については表 5-2 のように7つに区分して考察する。また,地形等 の流域特徴を表すパラメータとして,支流域単位で表 5-3 のパラメータを整理する。パラ メータに関しては,誘導地形量,地被条件,地質の3種類とする。

表 5-2 地形特徴の評価を行う支流の分類

Group1 Group2 Group3 Group4 Group5 Group6 Group7

西 ノ 八 峡 谷川

八峡谷川 増谷川 田代川

山瀬川 小崎川

野川谷川 七ツ山川 十根川

柳原川 弓木谷川 桑 ノ 木 原 川

唖谷川 不土野川

尾迫川 小川内川

表 5-3 流域の特徴評価に用いるパラメータ

パラメータ 定義 データソース

誘 導 地 形 量

円形度 4 × 円周率 × 流域面積 / (流域縁辺長)2

DEM(2011年撮影航 空レーザー測量デー タより作成)

伸長率 2 × (流域面積 / 円周率)1/2/ 流域末端から の最遠点距離

起伏比 最大標高差 / 流域末端から最高標高点ま での距離

粗度数 最大標高差 × 水流密度 曲率 標高の2次導関数の標準偏差

傾斜角 標高の1次導関数の平均値,標準偏差 単位流れ盤 単位面積あたりの流れ盤の面積 単位受け盤 単位面積あたりの受け盤の面積 水流密度 全ての水流長さ / 流域面積 一次水流密度 1次水流長さ / 流域面積 地

被 条 件

土地利用 荒地,建物及び人工造成地,森林,田及び農 用地の4つに区分

国土数値情報 土地利 用 細 分 メ ッ シ ュ

(H26)

裸地 植生がなく斜面崩壊の危険性がある箇所 衛星データ,航空写真

地質 砂岩と泥質岩に区分 宮崎県地質図第5版

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誘導地形量については,流域の形態的特徴を表したパラメータを含むものとして,鈴木12), 田代ら13)が定義したものである。各パラメータ示す特性は次に記すとおりである。

A) 円形度14)

円形度は,流域面積と流域縁辺長を基に形状の複雑さを図る特徴量であり,表5-3の定義 式より算出され,円形度の値が 1 に近いほどその流域が真円に近いことを示している。逆 に1より低いほど円から遠ざかる平面形状であることが分かる。

B) 伸長率15)

伸長率は,流域面積と流域末端からの最遠点距離を基に流域の平面形状を把握したもの である。平面形状を表すために算出された伸長率は,一般的に気象や地質構造の影響を受け,

0.6~1.0 の値をとる。値が1に近いほど起伏が穏やかな地域を示し,0.6~0.8では通常,

起伏が高く急岐な地域であると考えらえている。また,伸長率の値を用いて平面形状を3つ に区分ができ,0.9以上の値の場合は円,0.8~0.9の場合は丸に近い楕円,0.7以下の場合 は値が小さくなるほど縦長の楕円に近い形状を成す16)のが一般的である。

流域の平面形状である円形度や伸長率は,河道の発達とも関係性があり,流量の流出状況 に強く影響することが挙げられる。また,流域面積が同じならば細長い流域より流域幅の広 い流域のほうが河谷発達の進んだ状態であるとされ,ピーク流量は円形に近いほど急増す ることも特徴とされる。ただし,直線谷に関しては逆の特徴を示す。流域の平面形状は多様 であり,定量的に把握する必要があり,このような円形度や伸長率が考案されている。

C) 起伏比

起伏比は最大起伏を最高点距離で除したものである。起伏比はダムの平均年間比堆砂量 と相関があることが報告されており,流域の起伏は河川流量に影響するとともに,土砂流出 量とも強く結びつく 17)。そのため,大きな値を示す支川流域は比流出土砂量が多いと考え られる。

D) 粗度数18)

粗度数は,表 5-3 の定義式のとおり支流域の起伏の険しさを無次元のパラメータとした ものある。起伏量が同じ数値となり河川密度が異なる支流域が存在する場合,河川密度が大 きな値を示す支流域の方が起伏の険しい流域として評価される。

113 E) 単位流れ盤・単位受け盤

流れ盤,受け盤は地層走行や地層傾斜に対する地形の向きによって定義づけられる。流域 の地質は北東-南西方向に帯状に配列し,北西方向に傾斜した構造をしている。地層傾斜が 地形傾斜と同一方向である場合,これを流れ盤と呼ぶ。また,地層傾斜が地形傾斜と同一方 向である場合,これを流れ盤と呼ぶ。耳川流域では,一般走向が N45°~60°E であるこ とが分かっており19),N60°Eに対して,平行・直角方向の4方向に傾斜方向を整理し,流 れ盤及び受け盤を計算した。一般的に流れ盤は土砂生産が活発とされている。

F) 曲率

曲率は,地形表層の二次導関数で傾斜角の傾斜を表し,地形の凹凸を評価する。地形の凹 凸は,流水の集まりやすさ,表層物質の下方への移動に関係する因子である20)

G) 傾斜角

傾斜角は一般的に斜面崩壊のような土砂生産に影響を与えるとともに,生産された土砂 の輸送を制約する重要な要因である。傾斜角(平均傾斜角)については土砂流出影響因子と して考慮されるケースが散見される。

H) 水流密度

水流密度は地形変化の過程を表す一つの指標である。水流の次数区分の方法は

Horton-Strahler の方法が標準とされる。支流のない水流を一次水流と呼び,その一次谷流域にお

ける水流密度を一次水流密度とする。また,一次水流においては,複数の河川が分岐する前 の状態であり,流量が少なく河床に土砂が堆積しやすく,土砂の生産場と考えられている20)

I) 土地利用

土砂流出現象において植生の影響や人為的影響を考慮するにあたり,国土交通省国土調 査課が整備した土地利用図をベースとして以下のように整理する。ベースとしたデータは H26 に整備されたデータであり,耳川流域に分布するカテゴリとしては7項目ある。しか し,全域で 95%を森林が占める状態にあり,全域における影響評価としては難しいデータ でもある。そこで,特に土砂流出に影響のありそうな「森林」,「建物及び人工造成地」,「田 及び農用地」,「荒地」,の4項目として整理した。