3.2 解析手法
3.2.6 Cherenkov 検出器原理
チェレンコフ光は荷電粒子が屈折率(n)の物質中での光速度(c/n)より速い速度で通過する場 合に発生する。発生したチェレンコフ光の光量は少ないため、反射材で収集しPMTへ輸送し 増幅し検出する。チェレンコフ光の波面は球状ホイヘンス波であり、波面と荷電粒子のなす角 度は
cosθc = 1
nβ (3.21)
表3.2: S2補正前後のp, π+ピークの分解能 Coin-time resolution σcoin [ns] π+ p
No correction 1.10 1.22
S2 offset and path length correction 0.786 0.355
58 第3章 H(e, e′K+)Λ/Σ0のデータ解析
図 3.17: S2 パラメータ補正前後のcoincidence time の分布図:緑のヒストグラムは S2の path length correction や、offsetの調整を行う前のcoincidence time。青のヒストグラムは path lengthとS2 offset調整を行った後のcoincidence time。補正を行うことによってπ+, p のピーク幅が小さくなっていることが見て取れる。
となる。電荷量(Z)の荷電粒子が単位長さあたり屈折率(n)の物質中を通過したときに放出 される光子数はチェレンコフ光波長(λ)、微細構造定数(α)を用いて
d2N
dλdx = 2πZ2α λ2
(
1− 1 β2n2
)
(3.22) と表すことができる。物質中の屈折率 (n(λ)) の波長依存性が十分小さく無視できる場合、
ACDの感知できる波長領域で(λ1 < λ < λ2)で積分をすると dN
dx = 2πϵαZ2sin2θ ( 1
λ1 − 1 λ2
)
(3.23) となる。ϵは検出効率であり、検出器によって異なる。本実験で用いるAC1, AC2の屈折率、
検出波長領域を式 (3.23)に代入するとそれぞれの光量は図 3.18のように見積もることがで きる。
本実験では、KIDとして2種類のエアロゲルチェレンコフ光検出器を用いる。中心運動量 pK = 1.8 GeV/cの各粒子の速度(β)は以下のようになる。
βπ = 0.997 βK = 0.964 βp = 0.887 (3.24)
3.2 解析手法 59 表3.3: Particle identification with AC
index π+ K+ p
n=1.015 (AC1) detection no detection no detection n=1.055 (AC2) detection detection no detection trigger condition AC1 & AC2 AC1 &AC2 AC1 &AC2
粒子の速度が物質中の光速度βn >1(n:物質の屈折率)の時チェレンコフ光を放出する。本実 験では輻射体としてシリカエアロゲル(n=1.015, 1.055)を用て粒子識別を行う。
各荷電粒子(π+, K+, p)がAC2, AC2を通過する際、放出するチェレンコフの有無と荷電 粒子の関係は表3.3に示した。
表3.3より、AC1, 2のチェレンコフの検出の組み合わせにより粒子の識別が原理的に可能
である。
3.2.7 エアロゲル検出器のパラメータ設定
HRS-Rで用いるACDの光量を正しく評価するためには、各チャンネルごとにgainを合
わせる必要がある。FADCで得られたADC情報を物理量である光量に変換する必要がある。
ADCと光量数が1次相関を持つと仮定し、宇宙線テストで得られたACのペデスタルピーク と1photon-electron(1PE)ピークのADC情報から光量数(NPE)を次のように定義する。
NPE = ADC−ADCped
ADC1PE−ADCped (3.25)
図3.18: エアロゲルチェレンコフ検出器の輻射体を荷電粒子が通過した際のチェレンコフ光の
発光量の運動量依存性。左図にAC1、右図にAC2の発光量を示した。
60 第3章 H(e, e′K+)Λ/Σ0のデータ解析
図3.19: AC1 宇宙線データにおける光電子数:ガウシアン関数でフィットした結果、宇宙線
による全光電子数は 2.0 PEsと求まった。
ADC1PE,ADCpedはそれぞれ1PEとペデスタルのADC情報であり、宇宙線データからそれ ぞれのピークをガウス関数でFitしてピークの中心値を求め、NPE情報の変換を行う。
それぞれACのセグメント毎にADCチャンネルからNPE単位に変換しACの光電子数を 見積もった。AC1, 2の全PMTの光電子数の和を図(3.19, 3.20)に示した。その結果、AC1, AC2の全光電子数はそれぞれ2個と 20個であることがわかった。2002年に行われたACテ スト実験では、AC1, AC2の光電子数和はそれぞれ(NAC1, NAC2) = (6, 30)程度であるこ とからAC1の高電子数の発光率は30 %、AC2は75 %程度まで減少していることがわかる。
しかし、AC1ではπ+ 中間子が通過した場合2 PEsの光電子数を出すため、K+, π+ の選別 においては十分な性能であることを確認できた。