第 4 章 K + 中間子識別解析
4.4 考察
本研究で開発した KID 手法を用いて計算した Λ の微分断面積は CLASの値と同程度であ ることを確認することができた。しかし、式(4.25) では系統誤差を厳密に導出していない。
virtual photon fluxは検出角度θee′ と散乱電子エネルギーEe′ に依存するため、これらの依 存性を厳密に考慮するためにはMonte Calro Simulator(Gean4) 用いたシミュレーション解 析が必要である。また、本研究ではΛ, Σ0 ピークをガウス関数と一次関数の重ね合わせで評 価したが、様々なフィット関数を用いて評価することが望まれる。これらを厳密に評価するこ とによってnnΛの微分断面積計算に適用することができる。また、本研究で開発したKID手 法を用いて H(e, e′K+)Λ/Σ0 データ用いた運動量校正を行うことにより、本実験の要求性能
∆m∼100 keVの中心値決定精度を達成することが期待できる。
4.4 考察 81
図4.17: ACカット条件を課したときのΛピークのフィット結果
図4.18: AC2カット条件を課したときのΣ0 ピークのフィット結果
82 第4章 K+ 中間子識別解析
図4.19: 仮想光子の角度依存性図:青・黒・赤線はそれぞれ散乱電子のエネルギー値が2.2,
2.1, 2.0 GeV に対応しており、HRS 運動量アクセプタンス ∆p/p = 4.5 % に対応してい る。赤枠は HRSの検出角度領域を示している。中心運動量 (pe′ = 2.1 GeV/c)、中心角度 (θee′ = 13.2◦)でのvirtual photon fluxは3.2×10−6 /(MeV·sr·e)となる。
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第 5 章 まとめ
2013年ドイツのGSIにおいてHypHIグループがnnΛの束縛状態と思われるピークを確 認したと報告して以降、多くの理論家がnnΛ束縛状態を説明しようとしたが未だに成功して いない。そこで我々東北大グループはアメリカのジェファーソンラボ研究所(JLab)にて高い 中心値決定精度∆m∼100 keVを用いたnnΛ状態探索実験を2018年10-11月にかけて行っ た。本実験は2つのスペクトロメータ(HRS)を用いて散乱電子とK+ 中間子の測定を行う。
K+中間子側のHRSはバックグランドとしてπ+, pがK+ 中間子イベントの約100倍程度 混入する。そのためバックグランドからK+中間子イベントを選別するKID手法を本研究で 開発・性能評価を行った。第三章では、両アーム HRSのtime of flightの差から定義される coincidence timeを計算することにより、π+, pの選別を行い、π+, pの残存率のエアロゲル チェレンコフ検出器(AC)の threshold依存性を調べ、ACが正常に機能していることを確認 した。第四章ではΛ, Σ0 の欠損質量分布からΛ, Σ0イベント数の見積もりを行った。Λ, Σ0 のピークをpeak significanceで定義したFOMが最大となるAC cut tuningを行った結果、
AC1, AC2カット条件式(4.9, 4.10)を用いたときΛのpeak significanceは54となり、Λの 残存率は60 %となることがわかった。また、KID手法の評価を行うべく、Λの微分断面積の 計算を行った結果dσΛ/dΩ = 400±20+190−130 nb/srとなった。Λの微分断面積を計算し同じく JLabで測定されたCLASのΛの微分断面積 dσΛ/dΩ = 360 nb/srと比較すると誤差の範囲 内で一致している。この結果からKID手法は正しく機能していることを確認できた。本研究 で確立したKID手法をnnΛ 解析に適用させることにより、nnΛ状態の探索を行うことがき でる。
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