Answer
1.上行感染防止のため,内診は必要最少限にとどめ,腟鏡を使用した状況把握に努め る. (B)
2.臨床的絨毛膜羊膜炎(解説参照)と胎児 well-being に注意し,母体体温,脈拍数,
腹部触診,血算,CRP,NST(妊娠≧26 週)などの諸検査を適宜行う. (C)
3.臨床的絨毛膜羊膜炎(妊娠≧26 週)と診断した場合は,陣痛発来を待機せず,24 時間以内分娩を目指した分娩誘発もしくは帝王切開を行う. (C)
4.母体発熱下(≧38.0 度)での分娩中は母体敗血症なども考慮し,母体状態監視を強 めるとともに,連続的胎児心拍数モニター(妊娠≧26 週)を行う. (B)
5.妊娠 37 週以降では,分娩誘発を行うか,陣痛発来を待機する. (B)
6.妊娠 34〜36 週では妊娠 37 週以降に準ずる. (C)
7.妊娠 34 週未満では,以下のように対応する.
1)原則として低出生体重児収容可能施設で管理するか,あるいは低出生体重児収 容可能施設と連携管理する. (B)
2)抗菌薬投与下での待機を原則とするが,低出生体重児対応能力により早期の分 娩を考慮してもよい. (C)
8.妊娠 32 週未満では,児の肺成熟や頭蓋内出血予防を目的として,母体にステロイド 投与する(CQ303 切迫早産参照). (B)
9.26 週未満では,個別に対応する. (B)
▷解 説
前期破水は陣痛開始前の破水であり,入院させての管理を原則とする.診断は,患者の自覚症状,腟 内の羊水貯留,腟内貯留物の pH 検査,また最近では,腟分泌物中の胎児フィブロネクチンやα―フェト プロテインなどの生化学物質を検出するキットなどにより行う.前期破水の管理方法は,妊娠週数,胎 位,感染の有無,臍帯圧迫,それらに伴う児の状態の変化により,規定される.preterm に前期破水が 起こった場合,切迫早産と児 well-being に特段の注意が必要である.子宮収縮活動と児 well-being を同時にモニター可能なノンストレステスト(NST)は極めて有用であり,連日定期的に行われること が望ましい.特に感染徴候の把握が重要で,母体の 38.0 度以上の発熱,血中白血球数の増加,CRP 上昇,子宮収縮の増加,子宮の圧痛,胎児頻脈がある場合は臨床的絨毛膜羊膜炎を疑う.しかし,白血 球数の増加や CRP 上昇は,他に症状がない場合,特にコルチコステロイドを使用している場合には感染 状況を反映していないことがあるので注意が必要である1).また,羊水穿刺による羊水感染診断は,有用 性が必ずしも明らかになっていない.前期破水においては,子宮内と外界が直結しており,指診は感染 のリスクを増加させる2)ので,診断は腟鏡診を中心に行う.また,産道に B 群溶連菌(GBS)感染があ る場合は,新生児への感染リスクがあり,抗菌薬の母体予防投与が必要となるため3),GBS 感染の確認 を行う(CQ603 参照).
絨毛膜羊膜炎の診断は分娩後の胎盤病理検査でなされるので,臨床の場では臨床的絨毛膜羊膜炎の診 断を行う.臨床的絨毛膜羊膜炎診断の目安は以下のとおりである4),
①母体に 38.0 度以上の発熱が認められ,かつ以下の 4 点中,1 点以上認める場合 母体頻脈≧100!分,子宮の圧痛,腟分泌物!羊水の悪臭,母体白血球数≧15,000!μL
②母体体温が 38.0 度未満であっても,上記 4 点すべて認める場合
ただし,肺炎,腎盂腎炎,虫垂炎,髄膜炎,インフルエンザなどが①に合致してしまう可能性がある ので,母体発熱時にはこれらの鑑別診断も行うことが望ましい.
臨床的絨毛膜羊膜炎時の分娩法
37 週以降に種々の適応により初回帝王切開となった 16,650 例(うち 37.7 度以上の発熱があり臨 床的に絨毛膜羊膜炎が疑われた症例は 12% の 1,965 例)の検討5)では,臨床的絨毛膜羊膜炎診断から 帝王切開までの時間長(95% が 12 時間以内で 89 例が 12 時間以上)は弛緩出血,アプガールスコア 5 分値≦3,ならびに新生児人工呼吸器使用と有意の正の関連を認めた(帝王切開までの時間が 1 時間 延びるごとに 3〜9% 危険が増す).しかし,検討したその他の大半の項目では有意な関連性が認められ ず,同論文5)の論調は臨床的絨毛膜羊膜炎のみを適応とした帝王切開を正当化するものでない(帝王切開 は将来にわたって種々危険を押し上げるため).したがって,臨床的絨毛膜羊膜炎と診断した場合,抗菌 薬を投与しながらの 24 時間以内分娩を目指した分娩誘発も,緊急帝王切開と同等な選択肢となる.た だし,母体敗血症等には十分注意する.
母体発熱下(38.0 度以上)での経腟分娩時の注意
発熱原因が絨毛膜羊膜炎等の感染症でなくとも,母体発熱下では胎児酸素需要量が増し,胎児機能不 全を通常より示しやすい可能性がある6).したがって,分娩中に母体発熱を認める場合には通常より胎児 well-being 監視を強める必要がある.この観点から,母体発熱下(38.0 度以上)で経腟分娩を行う場 合には母児状態を厳格な監視下におき,連続的胎児心拍数モニターを行う.
妊娠 37 週以降の前期破水において,分娩誘発は,自然陣痛発来を期待しての待機に比べ,新生児感 染率や帝王切開率にほとんど差が認められないが,絨毛膜羊膜炎や分娩後の母体発熱を減少させる.分 娩誘発と待機両群の違いは大きいものではないので,いずれも選択肢となりうるが,待機時間が長いと 臨床的絨毛膜羊膜炎への進展が懸念されるので,分娩誘発の方が望ましい1)7)8)(分娩誘発方法については CQ 412 参照).
正期産に近い週数(34〜36 週)での前期破水に対しては, 分娩誘発する方が待機の方針とするより,
母児の感染が少ない9).この週数では胎児肺が成熟していることが多いので,分娩誘発を考慮する.しか し,時に胎児肺成熟が不十分のこともあり,新生児呼吸障害管理に懸念がある施設では待機(tocolysis を含む)としてもよい.また,この週数での,抗菌薬母体投与の有効性は明らかでない1).この週数にお ける,コルチコステロイド母体投与の児に対する効果は明らかでない.
妊娠 34 週未満の前期破水に対しては,感染徴候がなく,児の状態が安定していれば,床上安静によ り羊水流出の減少と再貯留を図りつつ,待機して,妊娠期間の延長を図ることを原則とする.羊水過少 の状態が持続する場合には母体感染徴候や胎児モニタリング所見と関わりなく早期に分娩させる方が良 いとの報告もあるが,まだ確定的でない.抗菌薬を 7〜10 日間母体投与することは,この週数の前期破 水の母児感染リスクの軽減に有効であるが1)10)〜12),長期投与についてはその効果は明らかでない.抗菌薬 としては,アンピシリンとエリスロマイシンの併用が最も推奨される.一方,アンピシリンとクラブラ ン酸の合剤は新生児の壊死性腸炎の頻度を増加させ,避けるべきである1)12).また,コルチコステロイド を 1 週間以内に分娩が予想される,妊娠 32 週未満の前期破水妊婦に投与すると,新生児の呼吸不全や 頭蓋内出血のリスクを軽減させる1)14)〜17).しかし,コルチコステロイドは一方で,母児の感染リスクを増
加させる可能性があり,初回投与後周期的に使用することに関しては有用性が証明されていない1)13)14). また,妊娠 32〜33 週の前期破水では,コルチコステロイドの有効性は必ずしも明らかでないが,肺の 未熟性が証明されていれば,有効である可能性がある1).妊娠 34 週未満の前期破水に対する子宮収縮抑 制薬の予防的使用は,妊娠期間を短期間延長させる効果があるが,児予後改善に寄与するか否かについ ては明らかでない.子宮収縮がある患者における子宮収縮抑制薬の妊娠期間延長効果についても明らか
ではない17)〜20).しかし,子宮収縮抑制薬の使用方法は,本邦と欧米諸国ではかなり異なっており,これ
らの報告をもって子宮収縮抑制薬が不要ということにはならない.早産期の前期破水に対する人工羊水 注入は,有用性が明らかでない21)(CQ317 参照).臨床的絨毛膜羊膜炎では早期児娩出も考慮されるの で,母体体温,脈拍数,子宮の圧痛,末血中の白血球数,血中 CRP 値などを適宜検査する.しかし,こ れらの絶対値は子宮内感染を反映しない場合(子宮内感染があるにもかかわらず,これらが異常所見を 示さない)もあるので,児の娩出時期に関しては,在胎週数も十分考慮して慎重に判断する.
前期破水の分娩に際し緊急帝王切開を行う際には,羊水量の減少のため子宮壁と胎児が接している可 能性が高く,胎児損傷が起こりやすいので,子宮を切開する際には注意が必要である22).
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 文 献 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
1)Premature Rupture of Membranes: ACOG Practice Bulletin, No 80, April, 2007 (Guide-line)
2)Schutte MF, Treffers PE, Kloosterman GJ, et al.: Management of premature rupture of membranes: the risk of vaginal examination to the infant. Am J Obstet Gynecol 1983;
146: 395―400 (III)
3)ACOG Committee Opinion Number 279, December, 2002. Prevention of Early-Onset Group B Streptococcal Disease in Newborns. Obstet Gynecol 2002; 100: 1405―1412 (Committee Opinion)
4)Lieberman E, Lang J, Richardson DK, et al.: Intrapartum maternal fever and neonatal out-come. Pediatrics 2000; 105: 8―13 (III)
5)Rouse DJ, Landon M, Leveno KJ, et al.: The Maternal-Fetal Medicine Units cesarean reg-istry: Chorioamnionitis at aterm and its duration-relationship to outcomes. Am J Obstet Gynecol 2004; 191: 211―216
6)Lencki SG, Maciulla MB, Eglinton GS.: Maternal and umbilical cord serum interleukin lev-els in preterm labor with clinical chorioamnionitis. Am J Obstet Gynecol 1994 ; 170 : 1345―1351 (III)
7)Hannah ME, Ohlsson A, Farine D, et al.: Induction of labor compared with expectant man-agement for prelabor rupture of the membranes at term. N Engl J Med 1996 ; 334 : 1005―1010 (I)
8)Dare MR, Middleton P, Crowther CA, et al.: Planned early birth versus expectant manage-ment (waiting) for prelabour rupture of membranes at term (37 weeks or more). Cochrane Database Syst rev 2006; 1: CD005302 (Cochrane Review)
9)Mercer BM, Crocker LG, Boe NM, et al.: Induction versus expectant management in pre-mature rupture of the membranes with pre-mature amniotic fluid at 32 to 36 weeks: a ran-domized trial. Am J Obstet Gynecol 1993; 169: 775―782 (I)
10)Mercer BM, Miodovnik M, Thurnau GR, et al.: Antibiotic therapy for reduction of infant morbidity after preterm premature rupture of the membranes. A randomized controlled trial. National Institute of Child Health and Human Development Maternal-Fetal Medicine Units Network. JAMA 1997; 278: 989―995 (I)