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CQ107 授乳中に服用している薬物の児への影響について尋ねられたら?

ドキュメント内 産婦人科診療ガイドライン 産科編2011 (ページ 74-77)

2)放射性ヨードなど,治療目的の放射性物質.診断用の放射線物質は核種によって対応が異なるの で,専門書を参照するか,専門家に意見を仰ぐ.

B 慎重投与

1)てんかん薬:phenobarbital,ethosuximide(ザロンチン,エピレオプチマル),primidone

(プリミドン)では,児の摂取量が「常用投与量」の 10%,あるいはそれ以上に達する.他剤への変更 を考慮する.

2)抗うつ薬とリチウム:三環系抗うつ薬と SSRI の児の摂取量!常用投与量比は一般に 10% 以下 であり,児への大きな悪影響は見込まれない.ただ,fluoxetine(プロザック)と doxepin(ドキセピ ン)で,児への有害事象(腹痛発作と傾眠傾向)発生の症例報告がある.リチウムは児での血中濃度が 高くなりやすい.低体温,チアノーゼの症例報告もあり,授乳禁止が無難.

3)抗不安薬:児の傾眠傾向をきたす可能性がある.具体的には,diazepam(セルシン)長期投与に おいて,児の傾眠傾向と体重増加不良が報告.alprazolam(コンスタン,ソラナックス)の突然の中止 で,児の withdrawal syndrome が報告.抗うつ薬,抗不安薬,抗精神病薬について,「児への不都合の 症例報告は非常に少ないが,長期投与の場合には,注意が必要である」と米国小児科学会は記述した(Pe-diatrics 2001; 108: 776).この論文は撤回されてしまったが,記載自体は正しいとする専門家の意 見があるので参考にできる.

C 乳汁分泌を低下させてしまう薬剤

cabergoline カベルゴリン(カバサール),ergotamine エルゴタミン(カフェルゴットは 2008 年 3 月で発売中止,クリアミンは販売継続),bromocriptine ブロモクリプチン(パーロデルなど)な ど.これら薬剤は,母乳分泌を低下させてしまう.

日本医薬品集(添付文書)では,多くの薬物に対して「投与中は授乳を避けさせる(動物[例えばラッ ト]で乳汁中へ移行することが報告されている)」などと記載されている.前段で述べた通り,ほとんど すべての薬物は程度の差こそあれ,乳汁中へ分泌されるので,この記載を厳守すると,授乳婦へ投与で きる薬は限られてしまう.国立成育医療研究センターのサイト4)には「安全に使用できると思われる薬」

が 99 薬剤,「授乳中の治療に適さないと判断される薬」が 4 薬剤掲載されている.この 4 薬剤とは,ヨ ウ化ナトリウム(131I と123I),コカイン,アミオダロン(抗不整脈薬)である.これまで 24 薬剤が掲載 されていたが,抗癌剤などはこの表から落とされているので(2010 年 12 月 24 日改訂),抗癌剤服用 中で授乳を希望する場合には個別に検討する.

B に属する薬剤を服用中の妊婦が,授乳を強く希望した場合は以下のように対応する.

1.当該薬物に関するデータをお話する.

2.起こり得る児の症状(傾眠傾向,飲みの低下,機嫌が悪い,体重増加不良など)有無を観察するよ う指導する.

3.授乳させ,その直後に服薬させる(授乳後服薬).服薬後に母乳中の薬物濃度は上昇するので,高 濃度薬物包含の母乳を飲ませない.ただし,この方法がどのくらい有効かに関するデータは少ない.児 がお乳を欲する時間が予想できないこともあり得るから,授乳後服薬 を過度に強調すると母親が過敏 になってしまう可能性もあり,授乳後服薬 を厳密に求めるのは行き過ぎだ,との考えもある.

4.母乳中,あるいは児血中薬物濃度を計測し,それらが危険閾にないことを確認する.抗てんかん剤 やリチウムの場合に欧米先進施設で採用されている方法である.3 と 4 の採用については,臨床薬理学 部門の協力を要請するか,あるいは,国立成育医療研究センターなど専門機関へのコンサルト,などを 考慮してもよい.

発売されてから長年月を経た薬物は,新しい薬物に比して,ある程度その安全性が確認されていると

いえる.薬物選択余地に幅がある場合には,古くからの薬物で,高頻度に処方されている薬物を選択す る.

ただ,古くからの薬物であっても安心できない場合がある.「常用量のコデイン内服授乳婦からの新生 児が生後 13 日目に死亡した症例」が報告されている5).コデインは代謝されてモルヒネになる.ある遺 伝子型(薬物代謝酵素 P450 2D6 コード)の人においては,コデイン→モルヒネ変換が急速大量に起 こってしまい(ultra-rapid metabolizer of codeine),通常量のコデイン投与でも血中および乳汁中の モルヒネ濃度が異常高値を示し(期待値の数十倍),母乳栄養児にモルヒネ中毒が起こる.本邦では,リ ン酸コデイン,リン酸ジヒドロコデインは主に鎮咳薬として,一部鎮痛薬や抗下痢薬として使用されて いる.総合感冒薬の中にも含有されているものが多い.現時点では「投与中は授乳を避けることが望ま しい」記載である.今後,薬剤添付文書が変更される可能性もある.

このように,本分野では,新しい情報が追加されているので,最新の情報にアクセスできるようにし ておくことが望ましい.実際の処方にあたっては,専門書やインターネットの専門サイトを参照す

4)6)〜8).国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」のサイト4)は有用である.

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 文 献 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

1)Ito S: Drug therapy for breast-feeding women. N Engl J Med 2000; 343: 118―126 (Re-view)

2)日本産婦人科医会:乳房疾患の管理 研修ノート No 81.2009;1―106

3)Moretti ME, Lee A, Ito S: Which drugs are contraindicated during breastfeeding? Practice guidelines. Can Fam Phys 2000; 46: 1753―1757 (Review)

4)国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」:http:!!www.ncchd.go.jp!kusuri!lactatio n!druglist.html[2011. 1. 1]

5)Koren G, Cairns J, Chitayat D, et al. : Pharmacogenetics of morphine poisoning in a breastfed neonate of a codeine-prescribed mother. Lancet 2006; 368: 704 (III)

6)Briggs GG, Freeman RK, Yaffe SJ: Drugs in Pregnancy and Lactation. 8thedition, Phila-delphia, Lippincott Williams & Wilkins, 2008, 1―2117 (Textbook)

7)Lactmed http:!!toxnet.nlm.nih.gov!cgi-bin!sis!htmlgen?LACT [2009. 11. 10]

8)Motherisk program http:!www.motherisk.org![2009. 11. 10]

ドキュメント内 産婦人科診療ガイドライン 産科編2011 (ページ 74-77)

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