第 3 章 反ド · ジッター空間とその性質 36
3.2.3 Brown-Henneaux 共形対称性
この理論のpoisson 括弧は作用の変分から読み取ることができ、
{Aγ, Aγ}= 2π
k Dγ (3.61)
となる。
Aγ = 2 k
∑
n
Jneinγ (3.62)
とmode展開して、この逆
Jna=−2Tr(JnTa) =− k 2π
∫
∂Σ
(Aγe−inγTa) (3.63) に対するpoisson 括弧を計算すると、式(3.61)を利用することで、
{Jna, Jmb}=−ϵabcJn+mc +ink
2 δabδn+m,0 (3.64)
となる。poisson 括弧を交換子にかえて、−i倍すると、
[Jna, Jmb] =iϵabcJn+mc +nk
2 δabδn+m,0 (3.65)
となり、levelk のsu(2) affine Kac-Moody代数の生成子となっていることが読み取れる。
また、torsion freeの条件から、Ta=dea+ϵabcωbωc = 0 となり、スピン接続ωa を多脚場ea を 用いて求めることができる。
ω1 = −1leρdy ω2 = 1leρdx ω3 = 0
(3.69)
Chern-Simons 理論を用いて考察したいので、多脚場とスピン接続をゲージ場に書き直す。 w =
x+iy、w¯=x−iy と書き直し、式(3.47)Aa=ωa+ ilea 、A¯a=ωa− ilea を用いる。そして、
Aa = Aawdw+Aaw¯dw¯+Aaρdρ
A¯a = A¯awdw+ ¯Aaw¯dw¯+ ¯Aaρdρ (3.70) と定義しなおすと、空間がAdS3 空間のときのゲージ場の値を求めることができる。
(A1w, A2w, A3w) = (i leρ,1
leρ,0) (3.71)
(A1w¯, A2w¯, A3w¯) = (0,0,0) (3.72) (A1ρ, A2ρ, A3ρ) = (0,0, i) (3.73) ( ¯A1w,A¯2w,A¯3w) = (0,0,0) (3.74) ( ¯A1w¯,A¯2w¯,A¯3w¯) = (−i
leρ,1
leρ,0) (3.75)
( ¯A1ρ,A¯2ρ,A¯3ρ) = (0,0,−i) (3.76) 次に 境界でこれらの値をとるようなゲージ場を探す。今、ゲージ場はF = 0 を満たしている。
式(3.73)はradial方向の座標の定義にあたっているので、この条件はいつも成り立っているとす
る。式(3.72)が境界で成り立っているとしてF = 0を解くと、境界以外でもAw¯ = 0 が成り立っ ていて、自由度は、
Aw=b−1A(w)b,ˆ b=
( e−ρ2 0 0 eρ2
)
(3.77) のみとなる。A(w)ˆ はw の関数になっていて、無限次元の自由度がまだ残っていることが分かる。
このゲージ固定を変えないようなゲージ変換は次のようなものである。
δAµ=Dµη, η=b−1η(w)bˆ (3.78) このとき、A(w)ˆ は次のような変換をする。
δA(w) = ˆˆ Dwη(w)ˆ (3.79)
式(3.60)に今求めた A を代入することで、Aγ= ˆA(w) となっていることが分かる。したがって、
A(w)ˆ はlevel k のsu(2) affine Kac-Moody 代数の生成子となっている。この解は affine 解を呼 ばれる。
さらに、境界でAdS3 空間になっているためには、式(3.71)も満たしている必要がある。Aˆ± = Aˆ1±iAˆ2を導入することで、
Aw = i 2b−1
( Aˆ3 Aˆ+ Aˆ− −Aˆ3
) b
= i 2
( Aˆ3 eρAˆ+ e−ρAˆ− −Aˆ3
)
(3.80) と書き直すことができる。境界はρ→ ∞に対応しているので、ρ → ∞の極限をとることで、Aˆ− が自由度として残り、
Aˆ3 = 0, Aˆ+=−2 (3.81)
とすればよいことが分かる。ここで、Virasoro代数と規格化を合わせるために、L(w) = (k/2) ˆA− とおく。このとき、条件(3.81)を用いて、式(3.80)を書き直すことで、
Aw =ib
( 0 −1
1
kL(w) 0 )
b (3.82)
となる。式(3.81)の条件の元でも、まだ無限次元の自由度が残っていることが分かる。このゲー ジ固定を変えないようなゲージ変換は次のようなものである。
η =−b−1
( i
2∂ε ε
1
kεL(w) + 12∂2ε −2i∂ε )
b (3.83)
このとき、ゲージ変換は式(3.78)で表され、L(w) は次のような変換性を示す。
δL=iε∂L+ 2∂εL+k
2∂3ε (3.84)
次に L(w) のmode展開
L(w) =∑
n
Lneinw (3.85)
が実際にVirasoro 代数をなしていることを示す。式(3.62)から Jn−=Lnとなり、式(3.81)は
Jn+=−kδn,0, Tn3= 0 (3.86)
となる。制限が加わった場合の量子化は poisson 括弧を Dirac括弧に置き換えることで行うこと ができる。式(3.86)はそれぞれの交換関係がnon-zeroの値をもつので、second constraintとなっ ている。ここで Jn±=Jn1±iJn2 として行列
C=
( [Jn+, Jm+] [Jn+, Jm3] [Jn3, Jm+] [Jn3, Jm3]
)
=
( 0 kδn+m,0
−kδn+m,0 kn 2 δn+m,0
)
(3.87)
を定義する。この行列には逆が存在するので、Dirac 括弧を定義することができる。ここで、式 (3.65)をJn± を用いて書き直すと
[Jm+, Jn−] = kmδm+n,0+ 2Jm+n3
[Jm3, Jn±] = ±Jm+n± (3.88)
[Jm3, Jn3] = k
2mδm,−n
となることを用いた。行列C−1 を用いることで普通の交換子とDirac括弧に対応する交換子は次 のような関係をもつ。
[a, b]∗= [a, b] + n
2k[a, Jn+][J−+n, b] + 1
k[a, Jn+][J−3n, b]− 1
k[a, Jn3][J−+n, b] (3.89)
この Dirac括弧に対応する交換子を用いることで、Virasoro代数の交換関係
[Ln, Lm]∗ = (n−m)Ln+m− k
2n3δn+m (3.90)
を再現することができる。central chargeは
c=−6k (3.91)
となっている。式(3.53)からk=−l/(4G)という関係がついているため、ニュートン定数を用い てcentral charge を書き表すと、
c= 3l
2G (3.92)
となる。この解はVirasoro 解と呼ばれる。Brownと Henneaux [17]は計量の形式を用いて境界 でAdS3 空間となるような条件の元で、境界に存在する共形場理論のVirasoro代数の生成子を求 めた。計量を用いる方法と Chern-Simons 理論を用いる方法とは互いに入れ換えることができる ため、本質的にこの節で行ったことと同じことをしている。