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BTOS の Up/Dp パワー比

ドキュメント内 博士論文表紙 (ページ 128-133)

第 4 章  縦アレイ NAM マイクロフォン による韻律表現

4.5   結果

4.5.1   BTOS の Up/Dp パワー比

 まずF0曲線との比較が容易なBTOS音よりステレオ収録を行った.もし BTOS音でF0とUp/Dpパワー比との間に相関が全くなければ,この上下ス テレオ収録のパワー比をとる方法で,喉頭の上下動を推定し,その結果ピッ チが推定できるという仮説そのものが誤りであったことになる.

 最初のサンプルはBTOS発声にて,すべて同音韻で,連続的に有声音ばか りで読み上げたものである.「ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ,ド」の8音階 を同音韻「a」で途切れなく発声した.図4.6がその上下BTOS音である.

図4.7は左上がBTOS音のF0曲線と(上部NAMマイクロフォンのもの), 左下がステレオ収録により得られた Up/Dp パワー比曲線である.右の図は 横軸に F0 基本周波数(ピッチ),縦軸に Up/Dp パワー比をとったときの散 布図である.相関係数は0.869であり,強い相関を認めた.

図4.6  BTOSにて同音韻「a」の8音階発声

図4.7  F0とUp/Dpパワー比の相関

次にBTOSによる読み上げ文収録を行った.収録内容は最初にCalibration として「a」の音韻で「ド,ミ,ソ,1オクターブ上のド」を発声し,その後 音素バランス文「一週間ばかり,ニューヨークを取材した」を読み上げた.

図 4.8は収録した上 NAMマイクロフォン(U)と下NAM マイクロフォ ン(D)のBTOS音信号,スペクトラムとパワー曲線である.

NAMの通常音声化の際に,F0に代わるパラメータとしてアクセント情報 のパワー曲線を用いてはどうかという考えもあるが,図 4.8 のキャリブレー ションのパワー曲線を見てわかるように,パワーのみでは1オクターブも高 さの異なる音声が,ほぼ同じ値で表されてしまうことになる.

図4.8 縦アレイNAMマイクロフォンでステレオ収録した上下BTOS音

 上部NAMマイクロフォンでサンプリングされた今の単独信号を,再度F0 曲線も加えて表示する.BTOSは肉伝導音であるが,通常音声の気導音収録 と同様に基本周波数が抽出され,図 4.9 のごとく F0 曲線が描出される.キ ャリブレーションで発声した「ド」と「1 オクターブ高いド」はその基本周 波数においてほぼ倍になっていて,正しく音階は発声されていることが観察 される.F0曲線は有声音部のみに現れ,無声音部や無音部は描出されない.

図4.9 上部NAMマイクロフォン収録BTOSのF0曲線

  図4.10に上部NAMマイクロフォンでサンプリングされた信号のパワーを Up,下部NAMマイクロフォンでサンプリングされた信号のパワーをDpと したときの Up/Dp パワー比を折れ線グラフ化したものを掲げる.同時に単 独 NAM マイクロフォンの音信号より得られた前図の F0 曲線の部分を,比 較のために時間軸を重ねて下に並べてみた.

まずわかることは,無音部では小さなノイズのため Up/Dp パワー比は極 端値をとって大きく上下に変動するということ.また F0 のとぎれの部分に 応じた位置が,比率1からはみ出して音素によって特定の特異値をとってい ることもわかる.これは舌先や舌背など声門以外のところで音源の最強点を 持つ無声子音に相当すると考えられる.例えば「sh」などの摩擦性の無声子 音は口唇近くで発声するため Uのパワーが相対的に高くなり,図 4.10 の矢 印のように特異値をとる.

Up/Dpパワー比曲線から,これらの極端値,特異値を除いたものが,有声

音部の喉頭の上下動を表す曲線に当たると考えられる.キャリブレーション 部では相対的にF0の高さに応じて,Up/Dpパワー比曲線が階段状に上昇し ているのがわかる.発話時の Up/Dp パワー比曲線は特異値が多く,そのま ま比較して見ただけでは有声音部のF0との相関が読み取りにくい.

図4.10  BTOSのUp/Dp パワー比曲線とF0曲線との対比

 そこで図 4.11 に単独サンプルのF0 値をもとに Up/Dp パワー比曲線の有 声音部区間だけを取り出し,F0とUp/Dpパワー比の散布図を描き,相関係 数を求めてみた.相関係数は0.683であり高い相関を示した.

図4.11  BTOSにおけるF0とUp/Dpパワー比の相関

  BTOSについてはSOL 法によるUp/Dp 曲線は有声音部においてF0と相 関の高いパラメータであり,どれくらい高さの声を出そうとしているかを表 現する別の指標となりうると言える.

ドキュメント内 博士論文表紙 (ページ 128-133)