第 3 章 ソフトシリコーン伝導型 NAM マイクロフォン
3.9 新 NAM マイクロフォンの工夫
3.9.1 NAM マイクロフォンに関する雑音のまとめ
また聴診器型NAMマイクロフォンにてNAMのサンプリングを多数行っ た経験上,NAM サンプリングの際に NAM 信号以外に混入する,体表から 直接センシングするという特殊性ゆえの様々な雑音をすでに既述のものもあ るがもう一度整理しておく.
A) 機械雑音(ハムノイズなど)
B) 接触雑音(NAMマイクロフォンへの接触により起こる)
C) マイク側背部漏入気導外部雑音(マイクの構造上の欠陥)
D) 運動性体表雑音(歩行,随意運動,衣擦れなど)
E) 体内生理雑音(脈音,呼吸音など)
F) 体内伝導外部雑音(体を伝導して感音面からNAMと一緒に入る)
A)はDATやコンピューターなどの収録機器のAC電源が原因であったり,
皮膚に接したNAMマイクロフォンとマイクアンプの電位差のために起こる.
B)は突発的に何かがマイクやそのコードに触れて起こる雑音であるが,も うひとつ別の原因で起こる重要な雑音でもある.NAM マイクロフォンを指 で支持して皮膚に圧着することにより,一見静止しているかに見える指の震 えにより起こる.
C)はマイクを改良する事で排除できる雑音であり,聴診器型からソフトシ リコーン型になって大きく改善された点であり,気導音の排除が重要である.
D)については体伝導音の性質上やむを得ないが,自分の意志では制御不能 の外部雑音と異なり,入力時には随意的にコントロール可能な雑音であるた めあまり問題とならない.むしろ逆に非入力時の行動モニタリングや意図的 雑音によるパラ言語表現入力として使用できる可能性もある.
E)について脈音はパワーが低く音声よりはるかに低域を占め,全く認識や 通信の妨げとならない,非発話時の呼吸音とNAMとの鑑別は重要であるが,
NAM発話時にはNAMそのものが呼気音であるため,NAMと通常呼吸音が 重なることはなく,これも解決可能と考える.
F)が A)〜E)までがすべて解決されたとしても残る体内を伝導する外部雑 音である.体はローパスフィルターの役割を果たすとはいえ,低域の雑音は 肉伝導する.感音面からNAMと一緒に入ってくるため,これだけは信号処 理を駆使して除くべき雑音である.
つまりNAMマイクロフォンを製作するに当たって,雑音に関して製作者 が責任を負うのは上のA),B),C)の三つである.
3.9.2 マイクアンプの工夫とハムノイズ対策
図3.33 NAMマイクロフォンのマイクアンプ
体から離して使用する気導音マイクロフォンで音声を収録するときもハム ノイズが経験されることがあるが,人間の体に直接接触させて使用する NAM マイクロフォンでは特にこの問題が顕著になる.現在の段階ではセン サー部分が試作段階であるため,センサー部からマイクアンプを1m 前後の コードでつないで分離しているので,センサー部とマイクアンプ間の電位差 がその原因であると考える.またセンサー部を小型にするため3極式でなく 2 極式コンデンサマイクロフォンを用いていることもその原因の一つである.
まずPCやDATのAC電源から直接入るハムノイズは,AC電源を抜いて バッテリ使用することで大きく低減するが, PCなどを机から離して膝の上 に乗せたりすることも有効な手段である.しかしそれでも前述の電位差によ るパワーの低いハムノイズは残る.図3.33に現行マイクアンプの構造を参考 のために掲げるが,マイクアンプ出力の標準ジャックを金属製にし,使用時 にはここに指を触れて体とマイクアンプをアースしてやると,完全にハムノ イズが除去できることがわかった.図3.34がそのハムノイズ除去の例である.
将来的にNAMマイクロフォン内にマイクアンプやバッテリ,プロセッサ ー等が埋め込まれれば解決可能である.
図3.34 ハムノイズ除去の例