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BGB 立法過程からみる贈与、負担付贈与の特質

第二章 ドイツ法

一 BGB 立法過程からみる贈与、負担付贈与の特質

(一) ドレスデン草案、部分草案

ドレスデン草案では、贈与については、両当事者の出捐に関する無償の合意、または相手方 を利得させる意図を持って贈与がなされることを要求し、さらに出捐者の財産減少によって他 人に財産的利益を得ることが贈与であるといった内容であった。負担付贈与については、負担 付で贈与がなされる場合があり、受贈者は自己に課された負担の履行によって、贈与の履行を 要求することができるとしており、負担の内容に関しては贈与者の利益、あるいは第三者の利 益のために設定することができることを認めていた。また、受贈者の費用償還の請求について も認めている。部分草案でもドレスデン草案を基礎に、贈与の成立に相手方の受諾を必要とし、

贈与は贈与者の財産が減少し、相手方が利得を得ることであるとして、これを贈与の概念と位 置付けていた。負担付贈与においては、これもドレスデン草案を基礎に、贈与者と受贈者との 間で成立することによって、贈与者は給付を行うが、受贈者もその贈与によって負担を引き受 けることを想定するものであるとし、負担の内容を第三者のために設定できることも認めてい た。

(二) 第一委員会

第一委員会では、贈与は、他人に対する出捐、つまり出捐者の財産が減少し、他人に利得さ せるものであり、他人を利得させる意図でなされると決議されている。そして、贈与が常に契 約であることが決定され、贈与者と受贈者の合意が必要であるとされた。ここでの理由として は、「誰もその意思に反して贈り物をされてはならない」から受贈者の承諾が必要とされると説 明されていた。負担付贈与は、特に負担の内容について議論されている。ドレスデン草案、部 分草案と同様に、第三者のために負担を設定できると認めている。また、第三者のために負担 の設定が可能であるということと関連して、負担付贈与の負担の内容についても審議されてい た。しかし、どのようなものが負担であると判断されるかは、具体的な事情によって判断され るとし、より詳細な負担の内容を条文に規定することはなされなかった。その後、第一草案が 提案され、それと合わせて理由書が公表されていた。理由書においても、贈与は、一方より他 方になしたる贈与により贈与者の財産が減少し、他方に利得を生じなければならず、贈与を相 手方の利得の目的で行い、かつ贈与を贈与物として相手方が受諾しなければならないと解説さ

れてた。負担付贈与について、負担を贈与者、第三者のための利益のため、または、受贈者の 利益のために定めることができると認めているが、負担をどのように判断するべきかは、実際 の状況に従い、これを判断するとする。また、贈与者と受贈者との間の負担付贈与は、贈与物 の価額が負担の価額を超過する限度においてのみ、負担付贈与の規定が適用されると解説され ていた。

(三) 帝国司法庁準備委員会、第二委員会

帝国司法庁準備委員会では、贈与における出捐の定義を他人の財産を増加させることである 等の修正案がされ、贈与には、ある者がその負担で他人の財産を増加させ、両当事者がその増 加が無償でなされる点で合意することが必要であると決議されていた。贈与は、ここでは、贈 与は贈与者が無償で財産を出捐することによって相手方が利得をするという無償の出捐契約で ある理解され、「利得させる意図」の文言は条文から削除されている。負担付贈与については、

第一委員会と同様の内容のまま決議されている。その他、委員会では、負担付贈与における「負 担」が公共の利益の実現のためになされる場合について審議されており、贈与者の死後、所轄 官庁が、公共の利益のための負担の実行を請求することができると提案されていた。

第二委員会では、贈与の契約性、贈与の要件、受贈者の利得について議論されていた。贈与 の契約性については、贈与は受贈者を利得させる無償の出捐であり、それについて双方が合意 するものと理解されていた。贈与の要件については、贈与者と受贈者との間で財産移転が行わ れる場合に、贈与は承認されるべきであり、それは、客観的な物的譲渡行為(その内容は移転の 対象によって決定される)と、主観的な、当事者の合意(この財産移転が無償で、利得させる目的 で、従って贈与としてなされる)」という客観的なものと主観的なものの二つの構成要素を必要 であるとしていた。受贈者の利得については、贈与は、無償の出捐により相手方を利得させる ものであるとされ、贈与者の財産減少によって受贈者が経済的な利益を受けるということで見 解が一致していた。そして、多くの人の協力によって達成される慈善目的のためになされる寄 付は(例えば、記念碑の設立等)、出捐の受領者が利得を受けるわけではないので、贈与とみなさ れないとしていた。負担付贈与については、主に負担付贈与における受贈者について議論され ていた。負担付贈与において、贈与者がなした出捐の受領者が、常に受贈者としてみなされる かどうか、贈与者の出捐を受贈者が受けるものの、出捐の価値が第三者の利益のためになり、

実際、第三者が利得を受けるような場合、そこでの受贈者は、贈与における本来の受贈者とな るか否かが問題であると提起されていた。これについて、委員会では、例えば、出捐者が、第 三者の利得を意図し、そのために、ある者に(第三者のために)財産を無償で移転する場合、そこ での負担は贈与における負担ではなく、負担付贈与における受贈者でもないとして、その場合 の出捐の受取人を、単に中間者、仲介人としての立場を認めるべきであるとしていた。

(四) BGB施行後

BGB施行後は、贈与は、贈与者の財産から受贈者への財産的利得を伴う無償の出捐であると 理解され、他者を利得させる出捐は、その出捐が無償で行われることに両当事者が同意する場 合にのみ贈与となると定義されている。贈与の要件については、贈与者の出捐と受贈者の利得、

財産移転の無償性に関する合意が必要であるとしている。贈与者の出捐と受贈者の利得につい ては、贈与者の財産の喪失から、受贈者に利得が生じなければならないとし、これは、贈与の 前後において、経済的観点によって決定される利得の客観的な増加と理解されるべきであり、

主観的な利得の意思は必要ないので、贈与者は利己的な動機のために行動することもできると する。受贈者の利得については、詳しく説明されており、贈与における利得は、受贈者が出捐 から利得を受けることに個人的な関心を持っている場合にのみ想定されるものであるとする。

例えば、信託において、受託者が自己の名で権利を行使することを認めておらず、彼自身が自 己の利益のために一時的な使用を許可されていない信託管理の場合の移転においては特に利得 が欠けているとされる。そして、これは特に、出捐の受取人が出捐の対象物を自ら使用せず、

第三者に転送するための中間者として受け取る場合も含まれるとし、そのような非営利の管理、

とりわけ、ある者が特定の慈善目的や理想的な目的のために使用されなければならない金銭の 出捐が寄付や、募金によって受け取れられた場合にもこれは該当すると述べてられていた(この 点、RGZ62 386ffも同様の見解であった)。

ただし、募金が法人の設立のために作成され、例えば、財団目的(定款)に従って使用される場 合、ここでの法的目的を促進するという実質的な利得は、出捐の受取人にとって利得であると して区別されている。

財産移転の無償性に関する合意については、出捐が無償でなされることに合意することであ り、出捐に反対給付がない場合、無償性の合意があるとする。それに対し給付と反対給付が対 価関係にある場合は、有償であり、贈与ではないと理解されている。このように、贈与は、贈 与者の財産減少と受贈者の利得という客観的な構成要件と、この財産移転の無償性に関する当 事者の合意という主観的構成要件が存在しており、後者の合意は契約であると理解されていた。

負担付贈与については、負担付贈与における無償の出捐は、受贈者の債務的な負担と拘束さ れたものであると理解されており、この負担は付随的なものであり、受贈者の給付に対する法 的な請求権を成立させるものである。負担の内容については、贈与者、受贈者、第三者のため に設定することができるとされていた。ここでも、受贈者の利得が要求されており、負担付贈 与の場合、当事者の意思は、負担を履行するために必要な手段によって財産が減少するものの、

依然として受贈者の利得が必要としなければならないとされている。