第1節 ACTチームへのグループインタビュー調査(調査Ⅲ)
1 本調査の位置付け
第4章で、ACTを利用していない家族とACTを利用している家族の3年間の間の変化を比 較分析し、ACTの介入によって、当事者と家族とACTの3者の信頼関係が構築され、その結 果、家族がリカバリーしていると言えることを示した。第5章では、家族のリカバリーに 至ったACT支援の要因を明らかにするために、第4章で対象とした当事者と家族が利用し た2つのACTのチームメンバーへのインタビューを行った結果を分析した。
本節では2つのACTのチームのスタッフメンバーに対するグループインタビューの結果 をまとめて報告する。ACTにおいては、利用者1人ひとりに対して、ケースマネジャーが責 任をもって対応している。このグループインタビューの目的は、ACT経験4年以上のケース マネジャーが、当事者と家族に対してどのような考えで、生活支援を行なっているのかを 明らかにすることである。
2 目的と方法
1)目的
ACTの利用家族に直接対応しているスタッフのケースマネジャーにインタビューを行い、
その結果を分析し、家族のリカバリーが生まれるに至った要因を明らかにすることを目的 とする。
2)対象
2つのACTにそれぞれ3名と4名の合計7名のスタッフにグループインタビューを行った。
対象者はACTチームで支援者となって4年以上となる人である。なおACTのチームリー ダーもグループインタビューの場に同席したが、次の項で単独インタビューの結果を分析 することとし、こちらでは、その発言は聞き取り調査の対象とはしなかった。
112 表5-1-1 対象者のプロフィール
ACT1は、地方の政令指定都市にある病院の中に存在するスタッフ6名のチームである。
ACT2は、首都圏にあるクリニックで展開しているスタッフ5名のチームである。
3)調査期間
ACT1に対しては2016月8月23日、ACT2に対しては2016年9月1日にインタビューを 行った。
4)データの分析方法
安梅(2001)のグループインタビュー法を参考に分析を行った。インタビューの回答を 帰納的に検討し、最終的に確定した。表示は≪ ≫→大カテゴリー、【 】→カテゴリ ー、< >→焦点コード、「 」→事例コードとした。インタビューから、当事者で5、家
族で4、スタッフを支える3、ACTの特徴2の計14のカテゴリーを抽出した。
5)倫理的配慮
本研究は東洋大学大学院の「研究倫理規定」に基づき適切な倫理的配慮を行った。調査 対象者には、研究の目的・方法・協力の任意性・匿名性の保証・個人情報の保護等につい て、書面及び口頭で説明を行い、同意を得て実施した。データは分析作業後廃棄した。
3 結果
1) 大カテゴリーの設定
インタビュー結果を分析して、≪当事者の変化≫、≪家族の変化≫、≪支援者の支えに なるもの≫、≪ACTの特徴≫の4つの大カテゴリーを設定した。大カテゴリーを構成するカ テゴリーは表5-1-2の通りである。
ACT メンバー 性別 年齢 役職 資格 障害者支援歴 経験歴(ACT)
1 A 男 40代後半 チームリーダー 精神保健福祉士 17年 13年7ヶ月
2 B 女 50代前半 ケースマネー
ジャー 看護師 21年7ヶ月 8年7ヶ月
3 C 女 30代後半 ケースマネージャー 精神保健福祉士 14年7ヶ月 8年7ヶ月
4 D 女 30代前半 ケースマネー
ジャー
精神保健福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
8年 7年
5 E 男 40代 チームDr 医師 20年 4年
6 F 男 30代 チームリーダー 精神保健福祉士 13年 4年
7 G 女 40代 ケースマネージャー 看護師 23年 4年
1
2
113
表5-1-2 グループインタビューカテゴリー一覧
3) カテゴリー別の結果
≪当事者の変化≫
大カテゴリー≪当事者の変化≫は、【第3者と出会う】、【関係を維持する】、【さま ざまな積み重ね】、【本人と丁寧に付き合う】、【スタッフもともに成長】の5つのカテ ゴリーより構成される。
表 5-1-3-1 当事者の変化
大 カ テ ゴ リ ー カ テ ゴ リ ー 第3者と出会う
関係を維持する さまざまな積重ね 本人と丁寧に付き合う スタッフもともに成長 専門家と繋がる安心 家族に共感、傾聴
本人と家族の両方への支援 本人と家族の相互関係の回復 チームに支えられる
利用者の反応
自分と向き合う時間
必要な時期にすばやくサービス提供 多職種・自己完結型
当事者の変化
家族の変化
支援者の支えになるもの
ACTの特徴
カテゴリー 焦点コード 事例コード
第3者の出会いで変化 ・今までなかった第三者がご本人さんと会うということ自体が、何か変化とい う意味では良くも悪くも起こすのかな。
症状、家族関係から視点が変る
・それまではどうしても症状にとらわれていたりとか、何か家族との関係性と いうところばかりに目が向いていたところが、第三者の人が入ること で・・・・・。
第3者で抑制が利く、家族だけだと 歯止め利かず
・単純に第三者が入ることによって、ちょっと抑制が利くというか、そういうの はあるのかなと思いますよ。
関わることで気持ちのゆとり
・何か症状、家族だけに行かない、気持ちのゆとりじゃないけれど、どこか で間が持てるようになったことで、何か目の前でやりたいこととか、やろうとし ていることとか
関わる中で本人が意思表示 ・年金申請に必要な書類を取りに行くとか、そういったことを自分でやると 言ったりとか、スタッフと一緒に取りに行ったりとかですね。
関わることで変化が分かる ・関わり続けることで変化が分かる関わり続けていることが、利用者さんも変 わっていっている要因なのかなって、長く関わって分かったみたいな感じ。
ふり返りで気づく積重ねの大切さ ・何かそういう振り返りの場いうのが気づくことが多いですね。要因って、考 えると、やっぱり1個1個積み重ねていることで起こっているのかな 多職種のアセスメントの積重ね
・いろんな職種でもって、いろんな目で見て、今、起きていることをアセスメ ントしながら、そのときに合った対応がしていけてはいたのが、そんなところ がちょっとずつ積重なって、変化はしてきたのかなという印象。
第3者と出会う
関係を維持する
さまざまな積重ね
114 表 5-1-3-2 当事者の変化
【第3者と出会う】
このカテゴリーは3つの焦点コード、<第3者の出会いで変化>、<症状、家族関係か ら視点が変わる>、<第3者で抑制が効く、家族だけでだと歯止めが効かず>より成り立 っている。
<第3者の出会いで変化>、
Cは「今までになかった第三者にご本人が会うこと自体が、何か変化という意味で良くも 悪くも(変化を)起こす」という。
<症状、家族関係から視点が変わる>
Cは「症状に囚われ、家族との関係性にばかり目が向いていたのが、第三者が入ることで、
気持ちにゆとりじゃないけれど、どこか間が持てるようになったことで何か目の前のやりたい こととか、何かの行動っていうところに少し気持ちがむけるのかな」という。
<第3者で抑制が効く、家族だけでだと歯止めが効かず>
Eは「単純に第三者が入ることによって、チョット抑制が利くというというか、そういうの はあるかなと思います」という。
ここでは、外部からの第3者との出会いが、「何か変化という意味で、良くも悪くも起 こす」ことが全ての始まりといえる。この第3者との出会いの実現は、当事者の自発性に 全て任せるのではなく、外部からの積極的な介入によって、つまりACTが訪問することで、
カテゴリー 焦点コード 事例コード
心身不調時に、一緒にいる
・基本、何か1人の寂しい時間だったりとかで、やっぱり病状悪化したり というところもあるんで、その辺でこう、私たちが入ること(中略)関係が できる。
本人の意向を大切に向き合う
・ご本人がどうしたいのかということを自分でちゃんと決めていきながら、
そこに付き合っていきながら、それをまた返しながらということを丁寧に やっていくことによって、本人が気付くというか・・・・・。
こちらの意向で変わらず、本人 の気付きの時に付き合う
・こっちが変われと言っても本人は変われないわけですよ。だと、やっ ぱり本人はそういう自覚をしているか分からないですけど、何かしら気 付いたりとか、気付きというんですかね。そういうものがあったときに、
やっぱりちょっと少し変化していくということはたぶんあるかなと思います よね。
いつでも専門職へ相談でき、
安心
・何か24時間365日対応しているというあたりで、いつでも相談できると いうのがすごい安心材料かな。
スタッフもともに変化成長 ・要は関わっている私自身も一緒に変化してっていたりするんじゃない かなと、最近感じます。
変化の認識は後から分かる
・変化の認識は後から分かる振り返りをしているときとかに、(中略)こう いうところが変わっているなとか、っていうのを気づいたりすることが多い んですよね。
スタッフもともに成長 本人と丁寧に付き合 う