第1節 要因の検証のための家族が作ったACTへの面接調査(調査Ⅴ)
1 本調査の位置付
第5章でACTの家族支援に効果のある要因が他のACTにおいても認められるかを検証す べく、同じACTのフィデリティを満たしているが、家族の強い要望で、家族が中心になり、
多くの専門家の協力で運営されているACTのスタッフにインタビュー調査を行った。
2 目的と方法
1)目的
5章で導き出されたACTチームにおける家族支援に効果をもたらす3つの要因、すなわち
「当事者と家族の生活全体に関わる」、「フラットな関係」、「支援システムの存在」が 他の家族が作ったACTの家族支援においてもその有効性が認められるか否かを検証する。
2)対象
家族が作ったACTの事業責任者の専務、設立の中心だった家族会の会長、現場のチーム リーダーの3人にインタビュー調査を対象とした。特に家族が作ったACTということで、
家族会の代表の方にもインタビューに加わっていただいた。家族会の会長は、支援者とい う立場のほか、二人の子どもを当事者としてもつ母親の立場で経験を述べた。対象者のプ ロフィールは以下のようであった。
表6-1-1 対象者のプロフィール 3)調査時期
インタビュー時期は2017年1月30日に実施した。
対象者 性別 年齢 役職 資格 障害者支援歴 ACT経験歴
1 A 男性 50代 専務 10年 5年
2 B 女性 40代 チームリーダー ・作業療法士
・精神保健福祉士 20年 10年 3 C 女性 80代 家族会会長 ・精神保健福祉士 40年 5年
163 4)調査方法
第5章から得られた要因に関するものなどについて、あらかじめ質問を用意し、半構造 化で、対象者3名に対し同時に実施した(グループインタビュー)。
得られたデータは、テープ起こしをしたうえで、以下の分析に供した。
5)分析方法
質的データ分析方法(佐藤 2008)を参考に行った。あわせて、安梅(2001)のグループ インタビュー法も参考にした。
表示は以下のようにした。大カテゴリー=≪ ≫、カテゴリ-=【 】、焦点コード
=< > 事例=「 」
6)倫理的配慮
本研究は東洋大学大学院の「研究倫理規定」に基づき適切な倫理的配慮を行った。すな わち調査対象者には、研究の目的・方法・協力の任意性・匿名性の保証・個人情報の保護 等について書面及び口頭で説明を行い、同意を得て実施した。データは分析終了後廃棄し た。
3 結果
1)カテゴリー設定
大カテゴリーは以下7つに分かれる。すなわち、≪当事者の変化≫、≪家族の変化≫、
≪スタッフの態度≫、≪スタッフの支えになるもの≫、≪精神保健医療の現状≫、≪地域 の連携≫、≪ACTの医師≫である。また、大カテゴリーは20のカテゴリーより構成される。
表6-1-2 大カテゴリー一覧
大カテゴリー カテゴリー
症状安定、現実と直面 ACTと関わり、生活変わる 家族の交流とその深化 孤立から味方が出来る 本人、家族の相互関係の回復 本人と家族の両方への支援 3者共有でリカバリー 何でも相談できる 家族が変る
家族の生の苦しみを聞くことから出発 家族とは同志のような関係
スタッフの役割 スタッフの支えになるもの 利用者から伝わる思い
当事者の変化
家族の変化
スタッフの態度
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≪当事者の変化≫
【ACTと関わり、生活変わる】、【症状安定、現実と直面】の2つのカテゴリーより構成 される。
表6-1-3 当事者の変化
【ACTと関わり、生活変わる】
このカテゴリーは次の2つの焦点コード、<本人、ACTとのやり取りで、生活、表情変わ る>、<ACTで退院実現>から成り立っている。
<本人、ACTとのやり取りで、生活、表情変わる>
息子(50代)は、ACTと関わるようになり、母親は「ACTと本人とのやり取り見て、本人 が変って行くのが見える。顔の表情か変わる」のが分ったという。「妄想の世界だが、現実的
大カテゴリー カテゴリー
ACT認知されず、ケアマネジメント機能せず 隔離の病院と絶対主義の医師
病院、医師も患者の生活が見えず 地域からの反応
草の根活動で信頼確得 医師と連携し地域を変える
ACTの医師
チームの中の医師の存在精神医療保健の現状
地域の連携
カテゴリー 焦点コード 事例
ACTで退院実現
・ACTのサポート受け、それから変わり、退院。退院出来たACTのお陰と親も思っている。
・長男が退院可能なら、みんな可能と言われる。
・自分で入院するようになった。いい入院の仕方だった。
本人、ACTとのやり取りで、生活、
表情変わる
・妄想の世界だが現実的関わりが出来るようになり生活変わる。
・ACTと本人とのやり取り見て本人が変って行くのか見える。顔の表情か変わる。
次男、結婚-出産-再発-離婚 ・弟は症状、落着いた時期あり。子どもが2人目の時、再発、離婚。
長男、別人の様に落ち着く。現実 と直面悩む。
・亡くなる前、本当に別人の様に落ち着いていた。現実と直面、みんな気にしていた。
・最初とは、別人のよう。本人の意思で入院も大きい。
長男、結婚願望強く、現実的苦悩 始まる
・結婚願望あるが出来ない自分と 現実があり、苦しみ悩みも増えてきた
・結婚願望は強く、求婚。最後、物事がきちんと理解でき、苦しむ。
長男の死
・長男亡くなる。遺体で発見された。自殺とまでいかない事故死。
・その夜帰らず、私も夜探しに行ったが、池の近くで溺れてみたい。
・もう深く考えてもですね。お葬式もやりみなさん来て下さいました。
ACTと関わり、生活変わ る
症状安定、現実と直面
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関わりが出来るようになり生活」が変り、「ACTのサポート受け、それから変わり、退院」と なる。ACTとの出会いで、長男が症状はありながら表情が変わる様子を伝えている。
<ACTで退院実現>
母親は「退院出来たのは、ACTのお陰と親も思っている」という。
入院中は「長男が退院可能なら、みんな可能と言われる」程の重篤な症状であった。
【症状安定、現実と直面】
このカテゴリーは次の4つの焦点コード<次男、結婚-出産-再発-離婚>、<別人の様 に落ち着く。現実と直面悩む>、<結婚願望強く、現実的苦悩始まる>、<長男の死>よ り成り立っている。
<次男、結婚-出産-再発-離婚>
次男の症状は一時安定、結婚、2人の子供が生まれる。しかし、その後再発、現在は入院 中という。
<長男、別人のように落ち着く。現実と直面し、悩む>
退院後、一人暮らしを始め、いろいろ挑戦が始まった。
「いろいろやるけれど、できない自分だったりとか、本当に彼女が欲しいとかね、結婚したい とか、ずっとあった」という。その中で、長男が「そうはいっても、なかなか、やっぱり、こ う、踏み出せない、うまくできない、どうしたらいいんだというところが空回りってみたいの がずっとあったから、なんかね、気にはなっていたんですよね、ずっと」とBはいう。
症状が安定し、1人暮らしを始めると、今まで見えなかった人間としてのごく普通の夢と 希望が見えてきたのであろう。同時に彼の目の前には、厳しい現実もまた見えてきた。Bは その時の様子を次にように述べている。
「亡くなる前、本当に別人のように落ち着いていた。現実と直面、みんな気にしていた」。
<長男、結婚願望強く、現実的苦悩始まる>
「結婚願望があるが、出来ない自分と現実を知り、悩み苦しみも増えてきた」
症状が落着くに従い周りの物事が見え始め、新たな苦しみが生まれたのではとBは述べ ている。
<長男の死>
長男は、ある日、行方不明になり、その日から5日後、池の畔で発見される。自死なの か事故なのか分からない。確かなことは、亡くなる前、長男は別人のように落着き、これ からの人生を悩んでいた。そして、周りのスタッフは、それに気が付き気になっていたと いう。
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≪家族の変化≫
大カテゴリー≪家族の変化≫は、【家族の交流とその深化】、【孤立から味方ができる】、
【本人、家族の相互関係の回復】、【本人と家族の両方への支援】、【3者共有でリカバリ ー】、【何でも相談できる】、【家族が変る】の7つのカテゴリーより構成される。
表 6-1-4 家族の変化
カテゴリ- 焦点コード 事例
境遇の似ている家族が同じ悩みで繋 がる。
・家族が家族に経験を話す。スタッフでなく、境遇の似ている方が繋がるのがいい。
・同じ悩みを抱える会が無いと駄目だと言うところからなんですけどね。
家族交流の深化 ・最初は悩みの披露、最近は行政にどう働きかけるかの話。
・家族の方、だんだんお喋りなさり、顔の雰囲気が変る。
家族は親戚にも言えず、居場所がな い
・親戚が団地にいて、暮らせず、逃げるように福岡に来た。
・家族は、この病気を持っていると親類にも言えない。
病気の偏見、家族だけが抱える
・日本で統合失調症という病気に限りサポートがなかった。これはおかしな話と最近 思う。
・この病気変な眼で見られ、家族だけで抱える病気じゃないのに。
入退院の繰り返し、家族ぐるみの引き こもり
・49歳で入退院の繰り返し、家の中は、いつもぐちゃぐちゃ。
・家族ぐるみの引きこもりもある。
孤立から味方ができる、それが一番 ・孤立していたのに、本当に味方になってくれる印象。それが一番。
本人との関係、家族と事前調整 ・ケア会議は事前に家族と調整。
・何かする時は、事前に家族に言う。見届けてやってくださいと。
本人支援は本人、家族支援は親子 関係回復の家族ぐるみ支援
・支援者の役割はACT、家族は親子の関係を築くそれが意向。
・本人のための家族支援でなく家族のための家族支援。意識的に追及。
・くそおやじと言うが、ACTは本人に加担せず、家族ぐるみの味方。
家族担当は年配と同性が基本だが、
ケースバイ・ケース
・家族の対応の担当はケースバイケース。
・家族が母親の場合、私と50代の女性スタッフと行くこともある。
・ご家族の場合、経験則としてそこそこの年輩、同性が良いみたい。
・母親に対応できる男性スタッフは育っていない。
本人と家族担当別々で、時に代理戦 争
・うちは本人と家族は担当が分ける場合が多い。
・家族担当と本人担当でたまに、代理戦争があります。
3者共有でリカ バリー
3者の共有無しで絶対上手くいか ず。本人リカバリー無し
・家族抜きに、本人のリカバリー、何言っているのとなる?
・家族と当事者とACTの3者の情報共有、それなしに絶対に上手くいかず。
・だからうちはシステムをちゃんと作りたい。
何でも相談できる、体験しないと分ら ない
・身近に何でも話せて、当事者ともおしゃべりができる。父親、初めてで、驚いたと思 います。
・何でも言え相談できるということはすごい、私には体験した人でないと分からない。
スタッフが泊って飲む、みんな気負い がない。
・スタッフが泊まる。もう、驚きでここまでやってくださるのかってね。ACTと飲んだ時か ら父親、変わったと思います。
・みんな気負いがないのです。すごいことをやってくれているのに。
・本人が入院中でも、スタッフは家に行き、家族と話す。
・ご家族にあまり受け入れられないのは「偉そうなんだ」だから。
家族が病気の見方を変える ・イタリアの映画を家族会で見てから、病気に対する考え方が変る。
・家族が病気に対する考え方を変えなくては。
家族も周りも変わる ・毎月保健所のスタッフが来る。その方が変るのが分るのです。
・お父さんが5年目で久しぶりにギターを弾く。嬉しかった。
・家族交流は忌憚ない意見がでる。病院の家族教室、地域の家族会には無い。
・家族が自分の家族の話をする。自分のことなかなか人に言えない。
何でも相談でき る
家族が変る 家族の交流とそ
の深化 ACTの家族交流、忌憚ない意見出る
孤立から味方が できる
本人、家族の相 互関係の回復
本人と家族の両 方への支援