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家族の実態と家族支援の研究

ドキュメント内 学位の分野 社会福祉学 (ページ 36-61)

第1節 日本の精神障害者の家族の実態

1 全国家族会アンケート調査から見る家族の困難

全家連の1985年、全国精神保健福祉会連合会(以下みんなねっと)の2009年、京都精 神保健福祉推進家族会は2010年、みんなねっとは2017年で、それぞれ家族についての生 活上の困難と支援に関する調査を行っている。生活上の困難という視点からその結果を外 観してみたい。4つの調査の概要は以下の通りである。

A 1985年の全家連の「家族福祉ニーズ調査」と「本人福祉ニーズ」(有効回答9540名)

B 2009年のみんなねっと「家族支援に関する調査」(有効回答4419名)

C 2010年の京都精神保健福祉推進家族会の調査(有効回答252名)

D 2017年のみんなねっと「家族支援等のあり方に関する全国調査」(有効回答3129名)

これらの調査を見るとこの四半世紀で、変わったニーズと全く変わらないニーズがある。

個別に調査の内容を見てみたい。

第1に1985年の全家連の家族福祉ニーズ調査は、精神障害者と家族の生活実態を全国的 規模で系統的にまとめた最初の調査である。調査は、家族を対象にした「家族福祉ニーズ 調査」、精神障害者を対象にした「本人福祉ニーズ調査」、家族会リーダーを対象にした

「施策に関する意識調査」からなる。この「家族福祉ニーズ調査」の「家族生活上の困難」

についての回答から見てみたい。ここでの家族生活上の困難についての問いに対して、親 亡き後の問題を中心とした「将来の見通しが立たない不安」71%、「病気が回復しても働 ける職場や訓練の場所がない」55%、「心身ともに疲れる」53%、「医療費などの経済負 担」49%、「結婚問題で気苦労」45%、「一家だんらんの機会が少なくなる」44%、「服 薬を続けさせる苦労」41%等が挙げられている。又役立つ制度として家族は「障害年金」

63%、「身近に相談できる専門家」56%、「勤められる職場」54%、「悩みを気楽に話た り、相談できる集まり」48%、「毎日通えるデイケア・作業所」43%、「患者が友達作り 出来る集まり」43%、「家族に急用が出来たときあずかる場所」34%、「週に1日通える デイケア」30%を挙げた。家族自身の生活の困難の問いに対して家族自身の介護負担感等 の相談等よりも当事者の自立へ向けた対策を求めているかが分かる(岡上ら編 1988:60)。

第2に2009年のみんなねっと「家族支援に関する調査」については、まず、家族が直面 してきた困難については大きく7つに分類し、それぞれの分類でさらに詳しく、困難な問 題点を明らかにしている。7つの大きな家族の困難とは、1)病状悪化時に必要な支援が無 い、2)困った時いつでも相談でき、問題解決してくれる場がない。3)本人回復に向けた 専門家による働きかけがなく家族まかせ、4)利用者中心の医療になっていない、5)多く

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の家族が情報を得られず困った経験を持つ、6)家族は身体的・精神的健康への不安を抱え ている。7)家族は仕事を辞めたり、経済的な負担をしている、である。

1)では①本人がいつ問題を起こすか恐怖心が強くなった64.8%。②家族自身の精神状

態・体調に不調を生じた58.7%。③早期の訪問による支援が必要88%。2)では①現在信 頼して相談できる専門家はいない30.8%。②専門家が多忙で、相談をためらう63%。③本 人の精神的不調に初めて気が付いた時、訪問を開始してくれる専門家がいればより早く治 療が開始されたと思う72.2%。3)では、サービスの利用や就労状況ではどれも利用してい ない29.4%。4)では、現在の診察時間5分30.4%、10分間診療34.8%。5)では家族が 情報を得られず困った経験ある87.5%。6)では今後予想される困難や不安として上げられ ているのは、①家族の高齢化84.7%。②家族の病気56.5%。③収入の減少52.3%である。こ うした現状を踏まえて、みんなねっとは、家族のニーズに対応し、家族の直面する課題や 長期的な展望も含めて、家族の7つの提言をまとめている。

第3に2010年の京都精神保健福祉推進家族会の調査であるが、こちらも結果を7つにま とめている。結果1.本人の異変を感じてから初診まで平均1年10ヶ月経過している。結果 2.初診時には本人の混乱も大きいため、家族は大きな苦労と困難を経験する。本人も家族 も、この時期に度々傷つき、不幸な形で医療と出会うことになっている。結果3.初診から 病状の安定まで平均13年8ヶ月経過している。結果.4家族自身の困難を主治医や他の専門 職に尋ねたことがない家族は49.6%。結果.5家族とともに「一緒に行動してくれる支援」

「訪問して支援」は不十分である。結果.6気軽に相談できる専門家がほしい。その緊急事 態のSOSに対して対応してくれる相談機関や医療機関がほしいが家族の希望。結果.7困難 や苦しみをくぐり抜けてきた家族は、もう二度とあの困難を味わいたくないと感じている。

そのことは家族の人生や本人のケアに対して強く影響している可能性がある。又、「症 状が安定するまでの家族の困った経験」との問いに対しては①本人の病状がいつ不安定に なるのか心配が強くなった62.1%、②家族自身の不調45.3%、③家族自身の就労に影響が

出た22.4%、④家族自身の危険を感じることが増えた15.9%、⑤近所との関係が疎遠、悪

化した15.1%と報告されている。

この調査は有効回答252名と他の2つの調査に比較すると調査数としては少ないが、前 年の質的調査によって生成された2つの仮説(困難の中心と支えになったもの)に基づき、

2010年に行った量的調査では、困難や支援の内容が丁寧に紹介され、解説されている。

第4に2017年度に行われたみんなねっとの「家族支援等のあり方に関する全国調査」で ある。調査の結果報告として10項目にまとめられている。そのうちの家族の現状や要望を 中心に見ていく。1)病状悪化時には続柄によらず3割ないし4割が暴言や暴力を経験し、

5、6割の人が「いつ起こるか分からない恐怖心」、「家族自身の精神的・体調の不調」を 訴えている。危機的状況では「同じ病気を体験した人が訪問してくれる」(68.4%)、「24 時間相談に乗ってくれる」(51.4%)要望が出ている。親亡き後の対応の中で「緊急時の 対応」を求める声が強く、特に訪問型の精神科医療の整備が必要。2)地域生活している人

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で本来入院の可能性のある「重度かつ慢性に相当する人」が15.7%存在する。そのうちの

44.5%が障害者総合支援法のサービスを利用していない。3)本人の2割が日中何もしてい

ない「無為自閉」の状態にあると危惧される。4)家族の状況では、うつ病や不安障害発症 の可能性が高いと考えられる人が5~7割(K-6日本語版用での評価で5点以上)、家族が 居なくなった後の心配としては「生活支援」(74.8%)、「経済面で問題」(60.1%)。5)

「信頼して相談できる専門家がいる」は67.7%、専門家の中では「主治医」63.7%が高く なっていた。「情報提供に不満足」が約半数、「相談できる人がいない」3分の1。6)ま た支援する家族がいなくなった時に入院していれば安心かとの問いに「ある」が44.3%、

「ない」が28.8%、分らないが26.9%であった。7)家族会については「苦労を話合い」

(77%)、病気や医療の知識(73.1%)、障害年金や制度の知識(68.9%)が上位を占め た。まとめとしては、現状に満足している家族は少なく、家族が本人の世話でかなり疲弊、

親の高齢化で親亡き後の不安が強いこと、家族へ十分な情報が届いていないことが示唆さ れた。また信頼できる相談者がいないこと、相談できる体制が整備されていないため、状 態悪化時の対応では、家族の負担が限界まで高まることが示された。

2 4つの調査からみえてくること

第1には、1985年度全家連の当事者、その家族への生活実態調査は、この種の調査とし ては初めて行われたものである(岡上ら編 1988:50)が、この中では家族自身の生活の困 難の問いに対して、家族自身の要望よりも当事者の現状の改善の要望の方が強く出ている。

これは、他の3つの調査と比較すると明らかである。家族自身の問題に対しても3番目に

「心身ともに疲れる」(53%)が出てくるが、それ以上に他に要望するような家族自身の 困難を訴える積極的内容は読み取れない。その後のみんなねっとの2009年度、2017年度の 調査、京都精神保健福祉推進家族会の2010年度の調査では、家族の精神状態を含む生活上 での困難や問題点について丁寧に質問する中で、家族の心身の状態や要望が具体的に明ら かにされてきている。家族の回答の変化の背景には、四半世紀の障害者と家族を取り巻く 環境と家族自身の意識の変化が大きく影響していると思われる。1985年度の全家連の調査 当時では、まだ家族が自らの生活実態を語り、他に援助を積極的に求めることが躊躇され る時代であったと思われる。

第2点は、家族の生活上の困難や困りごとについての問題である。項目としては、困難 についての問いとなるが、そこで出てくるのは、1985年度の全家連の調査では「心身とも に疲れる」53%、2009年度のみんなねっとの調査では「疲れやすい」47.4%で精神的不調 で処方箋を服用した経験ありが37.9%、2010年度の京都精神保健福祉推進家族会の調査で は、「心身不調」55.6%である。又、今後の相談や困りごとでは、1985年度の全家連の調 査では「将来の見通しが立たない」71%、2009年度のみんなねっとの調査では相談内容と して「自立の準備のために働きかけてくれる」62.4%、2010年度の京都精神保健福祉推進

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