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総合考察

ドキュメント内 学位の分野 社会福祉学 (ページ 193-200)

第1節 ACTにおける家族支援の有効な3つの要因

本項では、調査ⅠからⅤまでを通してACTの家族支援において有効性が示唆され、検証 された3つ要因、第1の要因、当事者と家族の生活全体に関わる、第2の要因、フラット な関係、第3の要因、支援システムの存在について考察を加える。

1 第1の要因―当事者と家族の生活全体に関わる

1)当事者と家族の生活全体に関わることの有効性の根拠

第1の要因は、「当事者と家族の生活全体に関わる」である。ACTが本人と家族に繋がり、

家族全体に関わることで生活問題が具体的解決に至っていることが、今回の調査で確認さ れた。ACTが当事者及び家族に対して行う個々のサービスは、他の組織でも存在している。

しかし、多くの場合、そのサービスと情報は、行政の縦割り組織の枠の中で存在しており、

利用者の生活の立場で使いやすいように組み立てられてはいない。現状では同居又は一人 暮らしをしていても家族が、当事者に代わって必要な情報を集め、該当するサービス関係 先に繋げているのが実態である。今回、ACTが、当事者と家族の両方に繋がることで、家族 全体に関わる問題が具体的解決に繋がった例をいくつも見ることが出来た。

具体的には以下の通りである。

事例A)ACTによって、家族が気付かなかったDの息子の家事労働を報酬化することで息

子が作業意欲を高め、息子と家族との関係が改善し、日常的会話も外出も可能となる(調 査ⅡのD)。

事例B)一家は、3人暮しで当事者である息子は障害者年金を受けている。しかし、父親

は職人で、年金が無く、母親のアルバイトだけで生活している状況であった。一家の生活 が安定しなければ当事者への自立の援助は不十分と判断したACTは、一家に生活保護申請 を提案、Eも受け入れたため、実現に至った(調査ⅡのE)。

事例C)当事者は、ACTの援助で暮らし始めたグループホームで2階の住居人とトラブル

になり、アパートに転居した。しかし、そこで日中過ごす場がなく、引きこもりがちとな り、親も対応できずにいたところ、ACTが対応、日中過ごす作業場、週末の創作活動の場所 を探し、当事者の日中の居場所を確保した(調査ⅡC)。

こうした生活支援の実現自体が家族に対する支援でもあるが、さらに、その過程で生じ る家族支援の要素についても考察していきたい。

第1に、当事者の症状や障害の問題、及び家族の抱える問題は、当事者固有の問題だけ でなく、様々な人間関係や生活上の問題から発生している可能性が高く、したがって、生 活上の困難や課題を明らかにする上では、当事者と家族を全体として生活環境も含む様々

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な関係性の中で見る視点が、欠かすことが出来ない。スタッフは「本人の問題は、病気の 症状そのものが原因というより、関係性の中で起きていることが多いので、特に同居の場 合は、世帯単位で生活全体を見ることが必要で、本人だけでは解決しない」(調査Ⅲ)と 述べている。一般に、家庭内では当事者が困難を抱えて、その困難ゆえ個々のコミュニケ ーションが難しくなっており、意思疎通ができない対立関係だけでなく、逆に共依存関係 になっている場合がある。特に当事者がストレスの増大で危機的状況に陥り、暴力的にな った時、家族は当然巻き込まれ、家族だけの対応では極めて困難な場合が多い。また家族 関係の問題は世代間に渡って影響し、一過性で済まない可能性をはらんでいる。例えば、

当事者と家族が親子の場合、親子関係の修復ができないと、将来当事者が親となった場合、

子供との関係を築き上げることができず、その子供にも影響する問題でもある。鈴木は「症 状がなくなっても、当事者が成長できていない、対処力が育っていないと、社会の中で対 応できず、苦しみ、再発します。将来を見据えての対応が必要です」(鈴木 2017:30)と 述べている。対処力とは、まず家族とのかかわりの中で経験され、身に付けるべきものと 考えられる。

また「本人、家族との相互関係の回復」を具体的に進めていく上で、重要なことはACT が「各家族それぞれに合わせて対応」することである。どちらかを立て、あるいはどちら かを排除する形での家族支援は解決に繋がらないためACTによっては、家族それぞれに個 別に担当者を付けて対応するなど、効果を生み出すための工夫が行われていた。

第2に、当事者や家族の関係全体を見るためには日常生活の場に行くことが必要となる。

そのためには家庭を訪問することが最も有効である。来所先で会うのと異なり、家庭訪問 は当事者と家族の生活の場で行われ、そこには当事者、家族の生き方や歴史が刻み込まれ た多様で、誰一人として同じではない個別の世界が広がっている。同時に訪問先では、病 院の時とは違って、主客の関係が逆転する。訪問先では当事者や家族が主である。病院の 時のように治療する人―される人という上下関係、職業的権威の主従関係は通用しない。

伊藤(2017)は、訪問は生活の場に一方的に侵入するものではない。あくまでも当事者や 家族が、どのような人生を送っているのか教えてもらい、共にこれからの生活を考えて行 こうとする姿勢なくしては成り立たないという。

したがって、生活全体を把握するためには、訪問が重要となり、訪問を行うためには、

当事者や家族の信頼を得る必要が生じ、その結果、病院での支援者‐被支援者という関係 ではなく、むしろ主客が逆転した関係となり、そうした状況が成立した時に初めて、当事 者や家族が本音で語る状況が生まれ、そこで行われる支援を家族は今までとは違う支援と 受け取るに至るということである。

以上のように、ACTの訪問により、当事者と家族の生活全体に関わることで、家族の相互 扶助機能が補強され、当事者、家族の日常生活の対応処理能力が向上し、家族全体に関わ る問題も具体的解決に繋がることなどを通じて、家族は有効な支援をされていると感じる ようになることが示唆された。こうした当事者、家族の生活全体に関わるACTの技術につ

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いて、三品はサブカテゴリーの「家族生活の安定化」スキルで、「24時間安心を届ける」、

「全員の生活支援」、「多様な相談に応じる」、「ぬくもりのある家庭づくり」の実現の プロセスを紹介している(三品 2013:381)。

2)家族支援を生活者の立場で総合的に見る視点

生活者の視点に立って生活問題を論じているのは岡村(1983:68-70)である。また窪田 は福祉の専門性として、生活問題の全体把握の視点を指摘している(窪田 1979:13-15)。

今まで、家族が取組んでいた情報の総合化とサービスに繋げる役割を今回、ACTが行って いた。こうした、生活問題を生活者の立場に立って一体的・総合的に捉えて生活の改善に 結び付けて行くことの必要性と重要性を社会福祉の視点で理論的に提示したのが岡村

(1983)である。現代の分業社会では、全ての個人は、「社会生活の基本的要求」を満た すには、社会制度との間に多数の「社会関係」を結ばなくてはならない。その場合、それ ぞれの社会制度は、社会構成員全員に利用を認めている訳では無く、一定の条件を満たす こと即ち、「社会的役割」を求めているという。これは社会制度の側からは「役割期待」

であり、生活主体者からは「役割遂行」となる。岡村は特定の制度が構成員に求める役割 期待を社会関係の「制度的側面」または「客体的側面」と名付け、それに対して、もう一 方を相互に無関係な多数の社会関係を1人の生活主体者として統合調和していくことを「個 人的側面」または「主体的側面」と呼んだ。社会関係は社会制度の側から規定される客体 的側面と生活主体者の側から規定される主体的側面が絡み合った「二重構造」であるとい う(岡村 1983:84-92)。ここからが岡村の中心的主張である「社会福祉」の展開となる。

社会福祉固有の視点として、社会福祉は、社会関係の主体的側面の困難に着目する援助 として、他の社会的施策や援助と区別される固有の対象領域が存在するとして、「社会福 祉はこの社会関係の主体的側面に独自固有の視点を据えて、新しい生活問題と援助対策を 提起することができる」(岡村 1983)としている。

また、窪田は生活問題把握における専門性について、生活問題を捉える時、「生活の全 体性を見失わず、さらにその中で現代における生活の重層性をきちんと把握すべき」でそ れが「福祉の専門性の1つ」であると指摘している(窪田 1984)。

生活の重層性と何か、窪田は4つ挙げている。①諸問題間の相互関連性、②生活問題の 世代的、生活史的累積、③問題状況の固定化、長期化による人間関係の深刻な利害の絡み 合いと情緒的な色彩の濃い悪循環の成立、④関係者たちの人格形成上の歪みである(窪田 1984)。岡本理論及び、窪田の主張するところの生活問題の把握とは、生活を生活者の視 点に立ち全体的、総合的に把握することの重要性である。こうした社会関係から最も関係 が希薄になっているのが精神障害者、当事者であり、その家族である。この現状に対して、

ACTが生活支援の視点で本人と家族の両方に繋がり、地域での制度の利用、人々との繋がり

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