要 約
Grade
C
MCL をはじめとする内側支持組織の重度の損傷が ACL 損傷に合併した症例では,ACL 再建術を受傷後早期に行った場合は,内側支持組織 の手術的修復の必要はない.
サイエンティフィックステートメント
●受傷後 2 週以内に BTB を用いた ACL 再建と MCL 修復を受けた群,BTB を用い て ACL のみを再建し MCL は保存的治療を行った群,ACL,MCL ともに保存的治 療を行った群で術後の外反動揺性を比較したところ,3 群間に有意な差は認めな かった(KF00724, EV level 7).
●ACL 損傷に 3°MCL 損傷を合併した症例に対し,BTB による ACL 再建と MCL の 保存的治療を行った場合,ACL,MCL 以外の軟部組織や関節軟骨の損傷がなけれ ば,ACL 単独損傷に対する BTB を用いた ACL 再建の治療成績と比較しても,同 様の成績であった.ただし,受傷後 3 週以内に ACL を再建した群は,受傷後 10 〜 12 週に ACL を再建した群と比較し,有意にその成績は低下していた(KF00396, EV level 7).
●ACL 損傷に 1°あるいは 2°の MCL 損傷を合併した症例に対し,BTB を用いた ACL 再建と MCL の保存的治療を行った場合,ACL 単独損傷に対する BTB を用い た ACL 再建術を評価した他の文献と比較しても,同様の成績であった(KF00910, EV level 7).
●ACL 損傷に 3°の MCL 損傷を合併した連続症例 47 例に対し,封筒法にて準無作 為割付し,BTB を用いた ACL 再建術に加え,内側支持組織を修復した群と内側 支持組織を保存的に治療した 2 群を術後,6 週,12 週,6 ヵ月,1 年,2 年で比較検 討した.その結果,術後 2 年で膝関節屈曲制限は MCL 手術群では平均 2°,MCL 非手術群で平均 1°,KT-1000(患健差)は MCL 手術群では 1.3 mm,MCL 非手術 群で 1.2 mm,IKDC A grade は MCL 手術群では 30.4%,MCL 非手術群で 37.5%,
Lysholm knee score が 84 点以上は両群とも 83% であった.
以上より,MCL をはじめとする内側支持組織の重度の損傷が ACL 損傷に合併 した症例に ACL 再建術を受傷後早期に行った場合,内側支持組織の手術的修復の 必要はないことを推奨している(K2F00070, EV level 5).
●2°以上の MCL 損傷を合併した ACL 損傷に対し,受傷後平均 7.5 日(0 〜20 日)に ACL 再建術を施行し,MCL 損傷に対しては保存的に加療した症例 18 例 19 膝の 追跡期間平均 45.6 ヵ月の成績を検討した結果,経過観察時の Lysholm functional knee score は平均 94.5 点,Tegner activity scale は平均 8.4 点と良好で,「ACL/
MCL 合併損傷例に対しては早期 ACL 再建術が待機的 ACL 再建術より利点が多
い」と推奨している.しかし,後向き調査であること,除外された症例の内訳の記 載がないこと,追跡率の記載がないこと,評価が Lysholm functional knee score と Tegner activity scale のみであること,対照群の設定がないことより,上記推 奨の臨床的根拠は乏しい(K2F00354, EV level 7).
解 説
単独 MCL 損傷例の保存的治療の臨床成績が良好であることより,ACL と MCL の合併損傷症例に対しては,ACL のみを再建し MCL は保存的治療を行う治療方 針が一般的になっている.しかし,これまで報告された研究の多くは,後向き調査 での比較あるいは ACL 再建術と MCL 損傷に対し保存的治療を行った成績のみの 前向き調査であり,その臨床的根拠は十分なものではなかった.Halinen ら(2006)
は ACL 損傷に 3°の MCL 損傷を合併した連続症例に対し準無作為割付し,BTB を 用いた ACL 再建術に加え,内側支持組織を修復した群と内側支持組織を保存的 に治療した 2 群を比較検討し,術後 2 年で膝関節可動域,膝安定性,IKDC grade,
Lysholm knee score,合併症の発生に差がないことを報告し,「MCL をはじめと する内側支持組織の重度の損傷が ACL 損傷に合併した場合,ACL 再建術を受傷 後早期に行った場合,内側支持組織の手術的修復の必要はないこと」と推奨して いる.筆者らは prospective randomized study としているが,群割付に封筒法 を用いているため,準無作為化比較となり,厳密には CCT に分類され evidence level 5 となる.しかし,数学的無作為化がされていない,評価者が盲検化されてい ないなどの欠点はあるものの,高い quality を有する調査と考えられ,本研究によ る推奨の臨床的根拠は高い.したがって,推奨 Grade を B とした.一方,受傷後一 定期間経過した後に ACL 再建術を待機的に行った場合の重度の MCL 損傷におけ る手術的修復の必要性に関する推奨はなく,今後,RCT による臨床的根拠の蓄積 が必要と考えられる.
文献選択基準
ACL 損傷に MCL 損傷を伴う症例に対し,一定の治療方針で同一の術式を用い て治療を行い,評価した level 7 以上の文献を採用した.
文 献
1) KF00724 Hillard-Sembell D, Daniel DM, Stone ML et al:Combined injuries of the anterior cruciate and medial collateral ligaments of the knee. Effect of treatment on stability and function of the joint. J Bone Joint Surg Am. 1996;
78(2):169-176
2006;34(7):1134-1140
5) K2F00354 Millett PJ, Pennock AT, Sterett WI et al:Early ACL reconstruction in combined ACL-MCL injuries. J Knee Surg 2004;17(2):94-98